不老不死を目論む怪老人との死闘から数日が過ぎた日の午後。
じいさんの残存勢力を警戒して紅魔館の守りを固めているものの、喜ばしいことに件の組織からの襲撃は今のところ一切無い。
『吸血鬼狩り』あるいは『亜人狩り』とも称される『ハンター』という名の教会の手先たち。
その無法者たちが来ない安息の日を迎えたのは、いつ以来だろうか…?
ハンターたちの雇い主である司教セイント・バレンタイン。
彼の老人を無力化するまでは… 連中はこちらの都合など一切微塵も考えずに昼夜を問わず執拗にまで襲撃を仕掛けてきた。
おかげさまで夜の眷属とも云われている吸血鬼の一員であり、スカーレット家の現当主でもある私が連中の襲撃に備え、または迎撃するため… 世にも珍しい日の光を苦手としながらも日中でも活動する吸血鬼になった。
「教会から、ちょっかいが来ないことはいいことだけど… 納得できない部分もあるわね」
すっかり元通りになった紅魔館。その中にある広々としたリビングにて各々くつろぐ紅魔館のメンバー。もっとも美鈴は門にて警備を、パチェはいつものように大図書館で引き込もり、フランは魔法に興味があるのか、大図書館で魔導書を読み漁っていて、この場には居ない者もいる。
余談だが、頭のイカれた彫刻家が作ったオブジェのごとく壁から生えたゴーレムの手足はキレイさっぱり無くなっている。あんなモノは二日目にしてパチェの魔法で消し去ってやった。
「そう言えば、あの巨大ロボって… どうなったのかしら…?」
ふと思い出すのは外敵を排除するために敵もろとも紅魔館を徹底的に破壊したロボット。名前は確かヒソウテンソクだったか…? あんなものが大暴れした挙げ句、空を飛べば… 人間たちの間でもかなり大きな話題になりそうなものなんだが…
「やっぱし、レミリアも気になるのか?」
そう声をかけてきたのは腕にデュエルディスクを嵌めたボーボボ。そのロボットを呼んだ張本人の一人。彼と
「──壁にある、あの黒いシミ…」
ボーボボの視線の先にある壁には黒いクレヨンで雑に描いたような人の形をしたシミがくっきりと浮かび上がっていた。ご丁寧にも目のような円でできた空白部分が二つあり、その二つの白い目で私たちを見ているような感じがしなくもない。
「 なんか心霊現象っぽいシミが出てるぅ────っ!!!! 」
大きさはボーボボほどではないが、少なくとも成人男性を優に超えている。そんなものが部屋にあれば私が気付かないハズがない。少なくともさっきまではこんなものは無かった。
「このシミ。上から塗り潰しても出てくるんだよな」
紅いペンキで塗る天の助。
しかし、塗った側から黒いシミが滲み… 元に戻る。
「 明らかな心霊現象!!!! 」
「でも、こういう人型のシミがあると如何にも『悪魔の館』って雰囲気が出るよな…」
「うんうん」と頻りに頷き、同意を求めるように私に顔を向けるボーボボに私は無視。
何度、塗り直しても元に戻るらしいのでボーボボと天の助に部屋にある家具を近くまで運ばせ… 例のシミを覆い隠すように配置。あとはパチェを呼んで彼女の魔法で浄化させれば問題は解決する。
ちなみに首領パッチはボーボボに頭をかち割られたせいで再起不能。今も床に突っ伏す形で気絶している。ついでに普通なら出血多量で死亡間違いない量の血液が傷口からドクドクと流れているが…
「あ~あ、床に付いた血ってなかなか落ちないんだよねぇー」
「すまない、レミリア。俺としたことがついカッとなって
──残念ながら、首領パッチの身を案じるような者は… 私も含めて、この場には誰もいない。せいぜい「南無三」と言いながら首領パッチの亡骸に合掌する程度。
「さーてと気持ちよく反省したことだし、テレビでも見るとするかー」
大きく背伸びをするとソファーにどかっと足を組んで座るボーボボ。ついでに咲夜から貰ったポップコーンを口の中に放り込んで ボリボリと頬張る。とてもじゃないが反省している態度には見えない。
「そう言えば咲夜の体の調子はどうなんだ?
あのじいさんが仕掛けた呪印で随分と苦しんでいたようだが…」
「……え? ええ、パチュリー様が解呪してくれましたので……」
ボーボボから急に声をかけられて戸惑う咲夜。
咲夜からしてみれば仲間を平気で殴り倒すような人物からそんな言葉が出てくるとは思わなかったのだろう。私だってそう思う。…が、実際ボーボボがはっ倒すのは首領パッチと天の助の二人のみ。案外というか意外である。
「そういう貴方たちは私のせいで大ケガを負ったハズなんですけど…
お身体は大丈夫なんですか…?」
「ああ、じょぶじょぶ、大丈夫♪
俺たちはこう見えても常日頃から体を鍛えてるから頑丈にできてるんだよ♪」
陽気に答える首領パッチ。先ほどボーボボにやられたケガがキレイさっぱりに消えており、当人も先ほど自分の身に起こった惨事なんぞ何事もなかったかのように平然と座っている。
咲夜はそんな彼らを見て軽く目眩を起こしたようで片手で頭を押さえている。小さく呟いた「この人たち、おかしい…」という言葉が耳に届いた。
『 核熱造神! ヒソウテンソク!! 』
聞き覚えのある名称とともに流れる音楽。
特撮のオープニングらしき画像がテレビに映し出される。
目を輝かせた緑髪の少女がコックピットらしき座席に搭乗すると、巨大な人型のロボットが鎮座する場面へと変わる。
それは紛れもなく紅魔館を破壊したあの時のロボットだった。
「 ええ~~~っ!?
ちょっと、どういうことなのよ!? なんであのロボットが映ってんのよ!?」
「レミリア、ちょっと静かにしてくれないか? 今、いいとこなんだから!」
よほど楽しみにしていたのか、立てた人差し指を口に当てて「シィーッ!」と必死に呼び掛ける首領パッチ。ほかの面々も気になるのか、私と同様に大人しく従う。
ちなみにパイロットである少女の名前は『早苗』
近所の神社にいる巫女という設定、とのこと(首領パッチ談)
大人しく視聴すること暫し、ロボットを操縦する早苗の前にローブで身を包んだ人物が立ちはだかる場面へと変わる。
『カカカ』と奇妙な笑い声を上げるとローブを脱ぎ捨て、その下から青い肌に三つの顔に六本の腕を持った一目で人間ではないと分かる男が現れた。
『カ──ッカカカ。俺の名はアシュラマン男爵。その巨大ロボを…』
『 必殺!! マスタぁぁぁ~~~~~スパぁぁぁ─────っっっク!!!! 』
相手が喋っている途中でなおかつ生身にも関わらず問答無用に両目から光線を放つヒソウテンソク。
憐れアシュラマン男爵は避ける間もなく獣が発するような絶叫とともに光に呑み込まれた。
『おのれ! こっちが喋ってるときに攻撃を仕掛けるなんて…!』
次に現れたのは深緑色の軍服を着た男。
着ている衣服を脱ぎ捨てレスラーのような格好になると…
『俺はブロッケンマン伯爵。キサマに討たれた…』
『 必殺!! マスタぁぁぁ~~~~~スパぁぁぁ─────っっっク!!!! 』
先のアシュラマン男爵と同じくロボットが放つ必殺技の餌食となる。
光をその身に浴びて断末魔のような悲鳴を上げるブロッケン伯爵。光が収まった後にはモザイクがかかった物体が二つ、地面に転がっていた。
「 モザイクがかかるようなもんを特撮でやるな! 」
主人公にあるまじき行為といい、このモザイクといい、とても子どもに見せる内容ではない。
製作者は余程ひねくれた人物に違いない。
『セイント・バレンタインがいない間を狙って、手薄になった本拠地を叩くとは…』
「無念」とキラキラした瞳で涙で流すアシュラマン男爵。
やがてロボットは厳かな雰囲気を放つ古びた教会に熱線を放射。建物は瞬く間に爆発四散。ごうごうと炎が燃え盛る。端から見てもロボットを操る主人公の方が過剰戦力で悪役に見える。…だが、それよりも気になるのはアシュラマン男爵が言っていた人物の名。
「セイント・バレンタインって…」
「──はい、映像に映っていた教会は私が所属していた組織が隠れ蓑として使っていた建物です」
感情のこもっていない平坦な、機械のような声音で淡々と語る咲夜。彼女が見つめるその眼差しは氷のような冷たい印象を受ける。
『──かくして、不老不死を目論む組織は早苗の活躍により壊滅したのであった。
しかし、人の欲に限りなはない。いずれ新たな組織が早苗の前に立ち塞がることだろう。
負けるな早苗! 戦え早苗!
全世界にいる全ての意思ある者たちに守谷の信仰を授けるために!』
フルフェイスのヘルメットを被ってバイクに跨がった
どこかの学校の… それも高貴な家柄のお嬢様たちが通いそうな立派な建物が画面いっぱいに映しだされ、その隅っこにタイトルが出る。
『このあとは… マジカル・プリキュア・ゆかりん♥-永遠の17才-
チャンネルはそのまま♪』
「 なんかタイトルからして不穏な番組が始まりそうなんですけど!?
サブタイトルも厚かましいにも程がある!! 永遠の17才って何!?」
前の特撮番組のようにセイント・バレンタインと関係性があるのでは…? ──と、終わりまで視聴したが… 全然1ミリも関係なかった。
(´・ω・)にゃもし。
遅れ気味の執筆。スマン。