因縁のある秘密結社との決着を着けるため、ティアラ婆さんの案内のもと彼らが隠れ家として利用している古城に侵入した私たち紅魔館一同。
──だが、その古城の地下へと向かう途中で首領パッチが前方不注意で 肥溜め に落下。
それゆえ彼をその場に置き去りにしなければならなくなったが… それ以外は概ね順調に進んでいき、私たちは最下層の一つ手前にある地下99階へと辿り着いた。
そこで私たちはここまで一緒に同行してきた筋肉ムキムキのマッチョババアことティアラ婆さんのフルネームを知ることとなる。
──バレンタインじゃ、
ワシの名は『ティアラ・バレンタイン』じゃよ?
そう名乗った彼女。
その名は以前、紅魔館にやって来た老爺と一緒のものであり…
「くっくっく。ワシはあのジジイの妻じゃよ」
あっさりと己の素性を白状する。
あの爺さんと同じくマッチョ老人という共通点があるし、なんら不思議ではないのだが、なぜ気付かなかったんだろう…
「強烈な
「貴方たちも大概だけどね」
今いるこの場所が戦場になるかもしれないというのに暢気に答える天の助に呆れ気味に返事を返す私。個性だけならこの男衆の面子も負けていない。
「こんなところまではるばるやって来て申し訳ないんだが、おたくら回れ右して帰ってくれないか?」
ティアラ婆さんの右隣に立つゴリラが不躾な態度でそう要求してきた。道中、咲夜からゴリラとの意志疎通が可能になったと説明を受けていたが…
「ここにいるゴリラたちはハンターから身を隠すため、労働力と引き換えに匿ってもらってるんだ。
この場所を失えば、俺たちゴリラはまたハンターたちに狙われてしまう…」
葉巻を手に持って煙を吐き出す。
随分と慣れた手つきでタバコを吸うゴリラの彼(?)に違和感を抱きつつ…
「ゴリラはゴリラらしく森に帰ってちょうだい。
今なら上の階での出来事に目を瞑ってあげるわよ?」
首領パッチには悪いが敵対する戦力を少しでも削ぐことができればと言ってみるものの、こんな状況になっても組織に残るような連中がはたして素直に従うものか…? そもそも何でゴリラがいるのよ?
「ようやく追い付いたな。レミリア嬢」
低く唸るような──それでいて威厳のある声に後ろを振り向くと、そこには迷彩柄の軍服に刀やアサルトライフルで武装したゴリラが四体。それがエレベーターの出入口を塞ぐようにして立っていた。
「なるほど。後ろのゴリラが到着するまで会話で時間稼ぎしていたわけか…」
鷹揚にして頷いて見せるボーボボ。美鈴が感知できなったとこを見るといつかの爺さんが使用していた気配を消す魔法道具でも持っているのであろう。
その四体のゴリラは手にした刀の穂先をこちらに向けると各々名乗りを上げていく。
「 長男、一郎! 」
「 次男、二郎! 」
次々と己の名前を告げるゴリラたち。
日本名であるものの意外に普通だなあ。
…と思ったのも束の間。
「 三男、三吉! 」
「「 三吉!? 」」
流れに逆らうゴリラの名前に思わず声をハモらせる私たち。
「 四男、三吉マーク2! 」
「「 三吉!? マーク2!? 」」
四体のゴリラが名乗り終えると今度は最初に会ったゴリラが口を開く。
「そして俺が五男の アレク だ」
「「 名前かっけええな、おい!? 」」
よくわからんゴリラの名前にいきなり出鼻を挫かれる私たち。
「ちょっと名前の付け方おかしくない!?」
半ば反射的に四体のゴリラに問うも彼らは無言でアサルトライフルを腰だめに構えると、なんの躊躇いもなく引き金にかけた指を引き…
けたたましい音とともに銃口から弾丸がばら蒔かれた。
私たちじゃなく
辺り一帯に飛び交うモヒカンたちの怒号と部屋内に響き渡る銃声。避ける間もなくまともに食らうアレクとティアラ婆さん。
しかし…
「くぅっ!? 血迷ったか兄者!?」
「魔法か何かで洗脳されたわけじゃなさそうじゃのぅ」
大量の銃弾を浴びせられたにも関わらず、体から硝煙を立ち上らせる程度で済んだアレクとティアラ婆さん。忌々しそうに四体のゴリラを睨む。
「我々はこの日を待ち望んでいた」
淡々と述べるゴリラの一体。
違いがわかりづらいがおそらく長男…?
「ここの秘密結社はゴリラを守るためと耳障りのいいことを言っているが実際は資金調達のためにゴリラを利用しているにすぎない。それどころかゴリラを商品にした非合法な売買も行われている」
思ってた以上にここの組織の闇は深いようである。もっとも、そのおかげで仲間割れが起きて私たちにとって好都合の展開。ゴリラたちの不意打ちも手伝ってか敵の数も減っている。
「ふん。まあ、よいわ。倒す敵が少々増えただけの話じゃ。アレクよ、あれをやるぞ」
「御意」
ティアラ婆さんの一言で周囲が慌ただしくなる中、彼女は相も変わらず直立不動の姿勢を変えないでいる。
「空間が歪んでいる?」
ポツリと漏らした咲夜の呟き。彼女がいち早く異変に察知したのは彼女の持つ能力のせいだろう。
彼女がそう呟いたあと部屋の景色が徐々に浸食するように変化していく。
無機質なドームから草原地帯へと、
「巨大な魔方陣はそれだけで大きな力を得る。
じゃがそれを作るには些か広い場所が必要になる。
ならば『横』ではなく『縦』ならば?
ここを地下深くまで掘ったにも理由があるというわけじゃよ」
それは奇しくも紅魔館の、うちの妹が監禁されていた地下の部屋と同じ造りのものであり…
「お嬢様! 首領パッチさんの気が近づいてきます!」
悲鳴に近い美鈴の報告。
ティアラ婆さんの付近の床に穴が開き、そこから何かがせりあがってくる。
それはアルファベットのエックスの形をした液体の詰まった容器。そしてその中には──
「バカな!? 首領パッチだと!? ヤツは死んだはずだぞ!?」
「いや、肥溜めに落ちた程度で死なないと思うけど?」
容器に入っている首領パッチを見て驚愕するボーボボに否定的な答えを言う私。
「お嬢様、どうやらこの空間の揺らぎの原因は首領パッチさんのようです。『凝』で見ると首領パッチさんから念が周囲に拡散されています」
そう言う美鈴の両目の瞳は不透明な炎で覆われていた。一体いつの間にそんな特技を…
「ここにいる連中が一体何を企んでいるか知らないが首領パッチが入っているあの容器を破壊すればこの騒ぎがおさまるというわけだな?」
どこからか取り出したバズーカを首領パッチに照準を合わせるボーボボ。アレクとティアラ婆さんは止めるような動きは見せずニヤニヤと笑みを浮かべるのみ。
味方であるにも関わらず発射するボーボボ。
砲弾が首領パッチが入っている容器に着弾して炎と煙が爆ぜ、容器ごと首領パッチが煙に包まれる。
「よし! 殺ったか!?」
「いやいや、味方を殺っちゃダメでしょ!?」
もくもくと排煙が吐き出されるバズーカの銃口を下ろして誰に言うわけでもなく喋るボーボボにすかさずツッコミ私。
やがて、首領パッチを包んでいた煙が霧散すると…
そこには砲弾を撃ち込む前と何ら変わりない彼の姿があった。
「なんだと!? いくら『殺ったか!?』という生存フラグを立てたからって…」
「生存フラグってそういうもんじゃないと思うんだけど!?」
悔しそうに歯軋りするボーボボ。だったら言わなければいいのにと思いつつも相手方を観察する。
「ここは縦長に作られた魔方陣の最下層。
水が下へ下へと流れていくように力もここに溜まっていくのはご存知じゃろ?」
なるほど。その力を使って防御力を高めていたのであろう。そのためボーボボのバズーカはもとより、ゴリラ兄弟のアサルトライフルも効かなかったのはそのためのようだ。
「なるほど。ここに溜まっている力と首領パッチの力を使って防御力を上げていたというわけか…」
ボーボボも私と同じ考えらしく納得したと言わんばかりに頷いてみせる。
「残念じゃがここの魔力溜まりを使って発動したのはそれではないぞ?」
しかし、ティアラ婆さんは私たちの考えを否定した。
「発動したのはおぬしらの使う『真拳奥義』じゃよ?」
にんまりと口の端を上げて嘲笑うティアラ婆さん。
──ワンダフル鼻毛7DAYSをな?
くっくっく… と、ティアラ婆さんの耳障りな含み笑いが頭に響く。
(´・ω・)にゃもし。
遅れてスマン。