紅魔館の卵
とち狂った首領パッチに追われている私たち。いつまでも続くかと思われた追走劇にピリオドを打ったのはボーボボが連れてきた一人の超人だった。
「 恐怖のベンキ流し!! 」
腹部が和式便器になっている超人──ベンキマンが自分のお腹にある便器に首領パッチを頭から突っ込ませた後、水流とともに便器の奥へと流し込む。
「ありがとうベンキマン、お前のおかげで助かったぜ」
一応の決着が着いたのを見計らってから礼を述べつつ握手を求めるボーボボ。ベンキマンと呼ばれた彼も「なに礼には及ばん」とボーボボの握手に応じようとするが……
「 汚ない手で俺に触ろうとするんじゃねぇ 」
「え?」
ボーボボのその一言でベンキマンは動きを止めた。
その後、大手を振りながら森の奥へと消えていくベンキマン。気のせいか、その後ろ姿は寂しそうに見えた。やがて彼がいなくなったのを確認してからボーボボがほがらかな笑顔でベンキマンの心情なぞ関係無しに言う。
「いやぁ~、通りすがりのベンキマンがいてくれて助かったぜ」
「 通りすがりのベンキマンって何!?
それに助けてもらったのにあれは酷くない!? 」
「 便器ごときに下げる頭はない 」
「 貴方、本当に帝国と戦った戦士なの!? 」
この後もボーボボと延々と意味不明な会話を繰り広げていたのだが、途中で見るに見兼ねたパチェが苦言を申してきた。
──やめないと野宿するはめになるんだけど、いいの?
よくよく見れば東の空がうっすらと白み始めていた。
満場一致で私たちは移動を始める。いくら身体が頑丈な人外の集まりでも、さすがに道具無しで野宿は御免被りたいからだ。
少女移動中 NowLording…
それから歩くこと数分。案の定というか、やはし紅魔館は瓦礫の山と化していて、その中を秘密結社にいたであろうゴリラの群れがもくもくと瓦礫を片付けていた。やがて、そのうちの一体が私たちに気づいて話しかけてくる。
「貴女たちのおかげで我々は自由を取り戻した。改めて礼を言おう」
目を瞑り、深々と頭を下げるリーダー格のゴリラ。そいつにつられて他のゴリラたちも作業を止めて頭を下げる。何この光景……
「四男の三吉マーク2が我々よりも一足先に天に召されてしまったが、これも運命なのかもしれん」
そう言って空を見つめるゴリラ。てっきり長男である一郎が敵対してたゴリラ──アレクを道連れに自爆したと思っていたのだが、どうやら別のゴリラらしい。
もう二度と三吉マーク2と出会えないと思うと、ほんの少しだけ寂しく感じた。ましてや、その身内であるゴリラたちならば悲しみも大きいのだろう。私に話しかけたゴリラが涙を拭う仕草を見せる。
「私がお腹を痛めて産んだ子なのに……」
「え? あなたメスなの? というか母親?」
「はい、あの子たちの母で カトリーヌ花子 と申します」
「その図体で カトリーヌ花子 って……」
つくづくコイツらのネーミングセンスがよくわからん。名付け親がどんな奴なのか、ちょっと気になる。
「そこで我々は助けてもらった恩を返すためにこの一本の樫の木から……」
足下には近くの森から斬り倒してきたであろう一本の木材。それを元手に小屋を組み立て始める。なんとも律儀なゴリラである。そういや囚われていた妖精たちもいたんだが、どこに行ったのやら……
「──鉄筋コンクリート造の3階建て庭付き一戸建て を建ててみた」
「 なんかスゴいのが建ってる!?
というか樫の木どこに使ったのよ!? 」
瓦礫が撤去された跡地にはこれまた立派な3階建て庭付き一戸建てが建っていた。ご丁寧にガレージまで付いている。
「何はともあれ、これで野宿しなくて済むんだ。とっとと入るぞー」
勝手知ったる他人の家と言わんばかりに無遠慮に家へと入っていくボーボボと天の助。私を含む女性陣はゴリラたちに礼を言ってから家の中へと入っていく。視界の端にゴリラたちが森の奥へ移動していくのが見えた。
ちなみに家の中には紅魔館で使われていた家具が配置されていた。気が利くゴリラだなぁー、と思いつつ私たちは眠りにつく。
少女睡眠中 NowLording…
……トントントン。
台所から流れてくるリズミカルな包丁の音に目が覚め、眠い目をこすりながら1階へと向かう。ボーボボたち三人が来たときから聞こえてくる音に、いつものようにエプロンを着けたボーボボが朝食の支度しているのだろうと台所を覗いてみると……
「おはようございます。 カトリーヌ花子 です」
昨日、見たゴリラがエプロンを着けて立っていた。
「 あんたら森の奥に帰ったんじゃないの!? 」
「昨日、時間が時間だけに 新幹線のチケット が取れなかったので……」
「 文明の利器で帰るつもりなの!? 」
「それよりもご飯が冷めないうちにどうぞ召し上がってください」
──とテーブルの上に料理を並べていく。置かれた品は餃子、牛丼、ステーキ等々。
「 朝から重いんですけど!? 」
しかし、いつの間にかやって来た紅魔館の面々は片っ端から平らげていく。仕方なく自分も席につき、朝食に手をつける。もぐもぐと食事している私にふと思い出すたかのようにパチェが声をかけてきた。
「ゴリラたちが 紅魔館の卵 を拾ったんだけど、どこに植える?」
「 紅魔館の卵って何!? 」
「……何って、紅魔館が死ぬ間際に最後の力を振り絞って己の分身を吐き出したものだけど?」
わざわざ図入りで説明するパチェ。どういうわけか空中に浮かんでいる紅魔館。それを少年期の悟空が下から上へと貫いていた。
「 紅魔館はピッコロ大魔王か何かですか!? 」
パラッと二枚目をめくるパチェ。地面に埋められた紅魔館の卵を私を模したゆっくりが水を与えており、右隣の図には双葉の芽を取り囲んで喜んでいる(紅魔館メンバーを模した)ゆっくりたち、最後には紅魔館が完成した図がある。
「 植物と同じ手順で復活するの!? 」
いったいどんな魔法を使えばこんな芸当ができるんだか疑問が尽きないものの「元に戻るのなら何でもいいや」……と私は開き直って朝食を平らげることにした。わけのわからんことにいちいち悩んでいたら、こちらの身がもたん。
もぐもぐタイム。
「ここら辺でいいかしら、レミィ?」
「ええ、とっととやっちゃって頂戴」
全員が食事を済ませ終え、ダチョウの卵よりも巨大な紅い卵形の物体──紅魔館の卵という謎の物体を植えるために外に出た私たち。美鈴に日傘を差してもらいつつ、私たちは事の成り行きを静かに見守る。
やがて、植えた箇所の地面が盛り上がり、地面から芽が出たかと思えば、あっという間に人の身長ほどの背丈にまで成長し、さらにつぼみが出来上がる。それをのほほーんと眺める私たち一同を尻目につぼみが開く。
じゃ──ん。首領パッチでした──。
植えてビックリ。植物の花に当たる部分が首領パッチという不可思議な生物が誕生した。
私はパチェに対して無言の抗議を送るも彼女は首をゆっくりと左右に振り、次にパチェがボーボボに視線を向けると、やはし同じようにボーボボも首を振り、それから隣にいる天の助を無言で思いっくそ殴った。
「 いや、なんで!? 」
唐突に味方を殴るボーボボに思わず問いただす私。マトモな答えが返ってくるとは期待していないが……
「今はそれよりも紅魔館の卵の行方を探すのが先決だ。秘密結社の手に渡ったら大変なことになる」
「そうよ、レミィ。紅魔館の卵には地下図書館にある本が圧縮して納められてるんだから一刻も早く回収しないと……」
この私が空気を読めないヤツ扱いされた。納得できん。
かくして私たち一同は紅魔館の卵の捜索という意味不明な活動をすることとなった。
(´・ω・)にゃもし。
ちょっと、書き方を変えてみた。
あと遅れてスマン。そして読んでくれて感謝です。