「「 真っ赤な、お鼻のー♪ 」」
サンタの格好をしたボーボボと、トナカイの角をつけた首領パッチと天の助の3人がクリスマス定番の曲を歌ってはしゃいでいる。
「「 サンタのおじさんは言いました~♪ 」」
そこまで歌うと急に歌うのを止める3人。首領パッチと天の助は酷く暗い表情で足下を見ていて、二人の前方にはサンタの格好のままのボーボボが机を挟んで二人に背を向けた状態で椅子に腰掛けていた。彼らがいる部屋の中の空気がやたらと重く感じる。
やがて無限にも思える沈黙の後、二人に顔を向けることなくボーボボは冷たく言い放った。
「 今日中に辞表を提出したまえ 」
少女睡眠中 NowLoading…
「 いや、サンタ酷くない!? 」
ガバッと勢いよく上半身を起こして私は目覚めた。両隣には大きな熊のぬいぐるみを抱えた寝間着姿のフランとボーボボ。周囲を見渡すとそこは薄暗い飛行機の中なのだが、何者かに荒らされたのか散乱しているうえに他の乗客たちの姿が見えない。
「………………………………ん?」
不意に足下を、小動物が体を擦り付けるような何ともこそばゆい感触を感じ取り、そこに目を向けると見慣れた丸っこくデフォルメした頭部だけの妖怪──ゆっくり妖怪がたむろしていた。しかも見覚えのあるサークレットを口に咥えて。
どうやらこの小さな妖怪があの夢の中から抜け出すのに一端を担っていたようである。ボーボボのアフロに潜んでいたために、いぬさくや人形による睡眠攻撃を免れたのだろう。
「感謝しろ。なんかこれのせいでうなされていたみたいだからな、王様に頼んで外してもらったZE☆」
「 お前、喋れるんかい 」
得意気に語る小さな妖怪。正直コイツらが喋れることに驚いたが、彼女(……でいいのか?)が呼ぶ「王様」という人物に関心が引く。おそらく夢の中でボーボボが呼ぼうとしたあの人物のことだろう。彼の姿が見えないのが気がかりだが……
「なんか急用があるみたいだから、とっととボーボボのアフロに入っていって帰ったぞ?」
「……あ、そう」
思ったことが顔にでも出ていたのか、足元にいるゆっくり妖怪がそう答える。王様がボーボボのアフロに乗り込む姿を思い浮かべつつ、まずは現状を確認することが先決だろうと考える。幸いなことに両脇にいる二人に加え他の面子──後ろの座席にいるであろう三人が目覚める気配を感じ取った。
「人避けの結界でも張ったのかしら?」
「機内に人の気配が感じられませんね。消していたら分かりませんが…」
「組織は人の目に触れるのを大変嫌がってましたから、おそらく今回もそういった工作をしているのでは…」
私が座っている座席の後ろから三者三様の意見を述べる。
「どっちみち、ここにいても仕方がない。それならとっとと出ていった方がいいだろう」
「その意見は大いに賛成だけど、その格好はどうにかならないの?」
相も変わらず寝間着姿のボーボボ。彼は抱えた大きな熊のぬいぐるみを通路側に、それも自分と向かい合うように置くと……
「それじゃあボーボボさん、自分はこれで帰りますので」
「ああ、おかげでぐっすり眠れたよ。マタギに気をつけな」
「え? それ人形じゃないの?」
傍目からではただのぬいぐるみにしか見えない、つぶらな瞳をした熊が急にすくっと立ち上がってボーボボに対して深々と一礼すると、そのまま出口へと向かったのである。
パァ────────ン!!!
「 ぎゃぁ────────っ!!? 」
熊が飛行機の扉から出ていって、さして時間も経たずに銃声らしき音と熊の断末魔とおぼしき悲鳴が聞こえた。その音と声を聞いて、しんと静まり返る機内。そして何事もなかったかのようにボーボボは言った。
「よし行くか」
「「よし行くか」って、今の銃声が聞こえなかったの!?」
「おいおいレミリアここは日本だぜ? 人様を銃で撃つような物騒な人間がいるわけがない。さっきのは熊だから撃たれたんだろ」
「大丈夫だ問題ない。俺を信じろ」と、自信満々に機内通路へと足を踏み入れた瞬間。
「ぐわぁぁぁ────────っ!!?」
「ほら、言わんこっちゃない!」
突如、ボーボボに向かって放たれた銃弾の嵐。避ける間もなく全身に受け、銃弾が止んだ後、そのまま仰け反るようにして後ろに倒れてしまう。
「あら、ごめんなさい。急に飛び出すから反射的に引き金を引いてしまったわ」
自分がした残虐行為を何の悪びれもせずにそう言って私たちの目の前に現れたのは人形めいた容姿と表情をした金髪の少女。ただし両手に
「そんな、ボーボボが死ぬなんて……」
よほどショックだったのか、口に両手を当てて涙ぐむフラン。倒れたボーボボを見てみたら、顔面はもとより、全身に銃創の跡があり、到底お子さまには見せられない状態になっていた。確かにこれを見たら普通は死んでいると思うのが常人である。
「な────んちゃって!」
しかしそこはボーボボ。突然、飛び上がって起きたかと思えば、両手を頭の上に、両腕で輪っかを作ってそんなことを陽気に宣う。
「じゃ~~~~ん! こんなこともあろうかと防弾チョッキを着てました!」
ガバッとシャツの前を開けると防弾チョッキらしきベストが見える。もっともに顔面の銃創から血がだらだら流れていて防弾チョッキが役に立ったとは言えない。そんな状態にも関わらずボーボボは件の少女に対して至極真面目な顔で話し掛ける。
「久しぶりだな、アリス。ゾナハ病を撒き散らす
「──自動人形とか、しろがねとか……って
うちと世界観が違うんですけど!?
こっちが相手してるの モヒカン なんですけど!? 何この差!?」
「彼女の名はアリス・マーガトロイド。見た目で分かると思うが人形遣いだ」
「
「これから説明をするわ。ダイジェスト で……」
「 ダイジェスト で!?」
そしてファンファーレを合図に機内に設けられている大型スクリーンに映像が投影される。その名もボーボボ劇場。
少女鑑賞中 NowLoading…
機内はモヒカンたちが仕掛けたぬいぐるみ──いぬさくやによる催眠で全員が寝静まっている。そこへ夢の世界で会ったデュエリスト・モヒカンが現れ、私たちの頭にサークレットを慎重にそっと嵌め込んでいく。
よほど緊張していたのか、作業を終えたモヒカンは「ふぅ…」と額についた汗を手で拭いつつ息を吐く。
「「 そこまでだ 」」
逆行を背に現れたのは首領パッチと天の助。普段のふざけた態度はどこへやら、キリッと表情を引き締めて厳しい目でモヒカンを見据えている。
「機内に人間に扮した
「それも全てはこのためだったとはな……」
天の助と首領パッチが重々しく言う。私たちが乗ってたこの飛行機は予想以上に大変な事態に陥ってた模様である。
しかしモヒカンはこのことを予測していたのか懐からモンスターボールっぽい物を取り出し、投げ放つ。
「バルムンク=フェザリオン、見参」
一体何が出てくるのか思えば、長髪の漆黒の鎧を纏った一目で只者ではないと分かる男だった。ついで始まる両者の戦い。どんな戦いが行われるのやらと固唾を呑んで見守っていると、彼らは真剣な表情で「牛乳の早飲み」から始まり……「逆立ちしながらの格闘対戦ゲーム」「ベイブレード」「ミニ四駆」等々をやっていた。
それから勝負すること10戦目か過ぎた頃、一応の決着が着いたらしく両肘両膝を床に付ける首領パッチと天の助。対して不敵な笑みを浮かべて二人を見下ろすバルムンク=フェザリオン。
「くっ、このバルムンク=フェザリオンが負けるとは!」
お前が負けたのか……
「ただでは死なん! キサマらを道連れだ!」
おいっ!?
自らの体を風船のように大きく膨らませるバルムンク=フェザリオン。無関係な乗客もろとも自爆するつもりだろう。
「「 バイバイ、みんな… 」」
短い別れの言葉を告げた後、未だ膨らみ続けるバルムンク=フェザリオンに掌を当てて、敵と一緒に消える首領パッチと天の助。そして遥か遠くで爆発音が聞こえ、この機内で各々の敵と戦っていたらしい人物たちが首領パッチと天の助を称え、あるいは二人のために涙を流していた。……と、そこで映像が終え、しばらく無言が続く。
「えーっと、この後どうやって幻想郷へ行くの?」
見せられたボーボボ劇場にどう反応すればいいのか分からず、とりあえず目的地である幻想郷への道順をボーボボに尋ねるのは私でなくてもそうしたはず。
「まずは電車で アッガイ村 だな」
「 アッガイ村!? 」
( ´・ω・)にゃもし。
●クリスマスなので以前書いてたネタを…