レミリア と ボボボーボ・ボーボボ   作:にゃもし。

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空しい勝利

 

 

吸血鬼である私の動きに阻害をかけていた特注の十字架。

空から紅魔館の周辺に落とされたそれは────屈強な肉体を持つ怪老人・バレンタインの言葉が正しければ────その数は億を超えていたと言う。

それも今は……全てではないが、ボーボボたちが召喚した巨大ロボが放った熱線によって大半が燃えて灰と化し、そのお陰で私は身動きが取れるようになった。

 

 

「…とはいえ、完全に自由を取り戻していたわけじゃあるまいて?

 その前に打ち倒して無力化し、目的を達すれば済むことよ」

 

 

体格の差では勝っていても、数の上では四対一と不利にも関わらず強気なバレンタイン。

ただの人間が私たちを相手にここまで裏打ちされた自信があるのは、一重に魔法道具(マジック・アイテム)をまだ隠し持っているから────と憶測を立てるが……いくら注意深く観察しても、持っているような気配は感じられない…

 

 

「行くぞ!」

 

 

両足に力を込めるバレンタイン。

どんな攻撃が来ようとも対応できるように身構える私たち。

 

しかし、爺さんが私たちに仕掛けることはなく……()()に跳んだ。

 

 

「「 ……えっ? 」」

 

 

予期せぬ行動に思わず間の抜けた声がそこかしこ漏れては重なる。

その間にもバレンタインは跳躍を繰り返して──さらに距離を広げていく。

 

 

「──んにゃろう、このまま逃げるつもりだな!?」

 

 

いち早く首領パッチが我に返り、手に持ったネギを頭上でぐるぐると振り回しながら跡を追い掛ける。

だがその途中、足下から火柱が立ち上がり、炎に飲み込まれてしまった。

 

 

「気を付けた方がいいぞ。この周辺には大量の地雷も埋まっているからのぅ~?

 ロボットのビームでダメになったかと思っておったが、問題なく作動するようじゃ」

 

 

いったい、いつの間に…?

顔に出ていたのか、私の疑問にバレンタインが答えた。

 

 

「不思議そうな顔をしているが別に難しいことはしておらんぞ。

 十字架と一緒に特製の地雷を空から落としただけだしのぅ…」

 

 

地雷が埋まっている場所を探知する術があるのだろう。

焔が沸き上がることなく、爺さんはヒョイヒョイ跳びながら移動する。

 

 

「あんたみたいな物騒な奴を、ここで逃すわけないでしょ!」

 

 

右手の掌に紅い塊を生み出し……そのまま握り潰す。

握った拳の隙間から漏れ出た紅い力が水流の如く勢いよく飛び出し、瞬く間に私の背を超す巨大な刃を持つ長槍を形作る。

 

バレンタインが地面を蹴った瞬間を狙って投擲、重さを微塵に感じさせずに一直線に飛んでいく。

 

 

──獲った!

 

 

人外・妖魔の類いなら兎も角、宙にいるバレンタインにこれを避ける術はない。

だが、あろうことかバレンタインは迫り来る紅い槍を()()()()()()

 

 

「……なっ!?」

 

 

必殺必中の威力を持つ紅い投槍。

そんなものを手で払おうとすれば無事には済まされるハズもなく……槍を霧散させて直撃を避けたものの左腕を失う。

死ぬよりはマシとはいえ、思い切った行動をする。

 

 

──今ならまだ間に合う。高速で飛行して追い掛けるべきか…?

 

 

「ちょっと天の助を借りますね」

 

 

逡巡しているとボーボボが天の助の頭を鷲掴みにし、遠ざかるバレンタインに向かって投げる。

さらに「ぴよっ!」と妙な掛け声を言いつつ投げた天の助の背の上に飛び乗り、腰をやや落として後ろ手で組み前方を見据えた。

 

 

桃白白(タオパイパイ)か!?

 

 

飛んでいく傍ら、私の声に気がついたようで、ボーボボが顔を横に向けて真顔で答える。

 

 

「いえ、キン肉マン・ゼブラの『マッスル・インフィルノ』です」

 

 

そっち!? じゃあ、さっきのやり取りの意味は!?

 

 

「悪いがレミリア、今はそれに答える暇はない!」

 

 

何でよ!?

 

 

「このまま奴にぶつかるぞ、天の助! いくぞ! 俺たちの友情ツープラトン技を!」

 

 

地面すれすれを平行に滑空するボーボボと天の助。

バレンタインは二人を確認すると、その場でしゃがんで地面から何やら大きな筒状の物を引っこ抜く。

 

 

「残念じゃが、こんなこともあろうかと対空兵器を用意しておるんじゃよ?」

 

 

地面に埋まっていたそれは携帯用のロケットランチャー。

それを肩に担ぐと何の躊躇いもなく引き金を引く。

弾丸が発射され、ボーボボたちに着弾。爆炎を撒き散らす。

爆炎と爆風がおさまり、あとに残ったのは…

 

 

「ふぅ、危ないとこだったぜ」

 

 

天の助を盾にしたボーボボの姿だった。

 

 

友情の欠片もねぇ────!!

 

 

「派手な攻撃で敵の注意をこちらに惹き付け……本命の一撃を死角からおみまいする。

 よそ見をしてていいのか? バレンタイン?」

 

 

バレンタインの後頭部には小さなボールに変化した首領パッチがくっついていた。

どうやら爆風で飛ばされた首領パッチが縮小・変形しつつ移動していたでようである。

「トランスフォーム、解除!」の掛け声とともに元の姿に戻ると…

 

 

「首領パッチ・エキス注入!!!!

 

 

頭に生えているトゲを一つ抜いて、それをバレンタインの首筋に突き刺した。

 

 

「くっくっく……。いいことを教えてやるぜジジイ。

 首領パッチ・エキスを注入された者は 俺と同じ思考レベルになる!!

 

「なんじゃと!?」

 

 

さりげなく、とんでもないことをぬかす首領パッチ。

それが本当ならある意味、最凶最悪の兵器の一つと言えよう。

どんな天才でも首領パッチ並のバカになるのだから…

 

 

ぬぅぉぉぉ~~~っ…

 

 

そうはさせんと抵抗を試みるバレンタイン。

首領パッチのトゲに入ってる液体が逆流して水嵩が増していく…

どんな方法でやっているのか知らないけどスゴいなこの爺さん。

 

 

「ほんじゃ、もう一本いっとく?」

 

 

体のトゲを外して、空いている箇所に突き刺す。

さしもののバレンタインもこれには耐えられなかったのか、トゲの中に入っているエキスがみるみるうちに減っていき……最後には一滴残らず空になった。

 

やがてバレンタインの全身がうっすらと発光し、時間が経つに連れて強くなっていく。

 

 

「…う、うた…歌○師匠~~~っ!!!?」

 

 

最後にはおかしな断末魔染みた声を残して視界を覆う閃光を放つ。

 

 

そして…

 

 

「婆さんや、メシはまだかのぅ~?」

 

 

視力が回復する頃には、どこから調達したのか地面の上に布団を敷き、布団から上体を起こしたバレンタインがこちらに尋ねる姿が…

筋骨隆々だった上半身は痩せ細っていて、もはや見る影がない。

 

 

「あれ? 何かボケてるんですけど?

 首領パッチ・エキスってこういう効果なの?」

 

 

結果的にはバレンタインを無力化させたから良いんだけど…

それを行った当の首領パッチは口に手を当てつつ「あわわわ…」と困惑していた。

 

 

お前も知らなかったのか…

 

 

「戦いは終わった。

 今はそれで十分ではありませんか?

 それに負傷した皆さんの応急措置をした方がいいでしょう」

 

 

ロケットランチャーの盾にされたハズの天の助が私の隣でそう促す。

パチェと美鈴。能力者の少女。

 

他に片付けるべき問題として大量のモヒカン。元凶であるバレンタイン爺さん。

不利な状況を覆すためとはいえ味方に破壊された紅魔館…

 

 

「『家なき子レミィ』…」

 

 

首領パッチがボソッとそう呟くと、それを聞いたボーボボと天の助が何がおかしいのか「ぶひゃひゃひゃ!」と腹を抱えて笑い転げる。

 

 

ああ、殴りたい。あの笑顔を…

 

 




(´・ω・)にゃもし。

思ったより長くなった。
次回はそれぞれの処遇かな…?
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