不用意な発言のせいで顔を赤く大きく腫らしたボーボボ達三人。
彼らは現在、ボーボボが召喚したゆっくり達と一緒にモヒカン達(気絶している間に縄で簀巻きにした)を寝たきりの老人と化したバレンタインの下へせっせと運んでいる。
激戦に次ぐ激戦により、敷地内には破壊された紅魔館の壁が折り重なっている。
焦げた土が剥き出しになった平原にはほのかに湯気が立ち上っている。
頭上では満月に近い月が、足下にはパチェが構築した巨大な円い魔方陣が輝いている。
それだけなら、さぞかし幻想的な光景だった事だろう。
魔方陣のすぐ外側に山積みになったモヒカン達と寝たきりの老人さえ居なければ…
「奈落の底に捨てるわ」
よほどご立腹だったのか、にべもなく実行するパチェ。
それも高所からわざわざ一人ずつ蹴落としていく。
落ちていくモヒカン達の絶望に染まった表情と、それを終始無言無表情で淡々とこなす魔女の顔は忘れられそうにない。
程なくして全てのモヒカンとバレンタインを奈落の底へ落とし終えると、パチェは最後に残った銀髪の少女に目を向ける。
「問題は彼女なんだけど…」
作業の途中で気が付き目覚めた彼女だが……逃げる素振りは一切見せず、紅魔館の敷地内の隅っこで膝を抱えて座り込んでいた。
その表情は死人のように青白く、目も焦点が定まっておらず淀んでいた。
「能力を使用した代償ね。
肉体年齢は10代後半。でも実年齢は10才以下ってことが解ったわ」
それを聞いたボーボボ達が押し黙り、辺りは不気味なまでに静かになった。
どうやら彼女は時を止めている間は自分の肉体の時間まで止める事は出来ないようだ。
「それにしたって些か成長し過ぎているような気がするんだけど…?」
「大方、無理強いにでも使用させたんでしょ。
或いはこの娘がそれを望んでいたのかもね?」
老化による死。
この娘が何を思い、何を考えているのか知らないが…
「…で、貴女の名は?」
しかし返ってきた返答は首を左右に振った否定の意。
元から無いのか、答えたくないのか────判断がつかないところだが呼び名がないのは不便極まりない。
どうしたものかと、ふと夜空を見上げると……そこには満月よりも少し欠けた月が浮かんでいた。
今宵は確か十六夜だったか…?
アゴに手を当てて暫し思案に耽る。その間、件の少女はじっと見つめていた。
やがて、思い付いた事を口にする。
────
今より貴女の名は『
見上げてこちらを見つめる彼女の顔はさっきよりも生気を取り戻したように感じたのは気のせいか?
「貴女が連れて来た愚者達のせいで紅魔館はこの通り無惨な姿になったわ」
もっとも、彼女は命令を従ったにしか過ぎず、しかも破壊したのはボーボボ達だけど。
「補償金代わりに貴女がメイドとして働きなさい。
給料無しのタダ働きになるから覚悟しなさい」
我ながら酷いことを言う。
…かといって、このまま帰したところで能力を酷使されて早死になる未来が目に見える。
暫く無言で視線を交わしていると天の助が間に入ってきた。
「少女よ。いえ、十六夜咲夜さん。
うちのお嬢はこう言っているんですよ?
『行く宛がないなら、うちに来なさい』……とね?」
穏やかな笑顔で何故か天の助が締めた。
「大して役に立ってない奴が仕切るんじゃねぇ~~~っ!!」
そこにボーボボの伸びた脚が天の助の腹に炸裂し、吹き飛ばされた。
味方の盾にされたのに酷い扱い…
「あのさぁ、さっきのセリフなんだけどよ。俺が言ったことにしてくれね?」
一方で首領パッチがこそこそと咲夜に耳打ちをしている。
コイツはコイツで何を言っているんだか…
「お嬢様~、図書館への入り口を確保しましたー。
何とか野宿をせずに済みそうですよー」
数体のゆっくりを引き連れて美鈴が現れる。
そのゆっくり達は横に倒した冷蔵庫を頭の上に乗っけて運んでいた。
端から見たら冷蔵庫が独りで宙に浮いているように見えて軽くホラー。
よほどお腹を空かしていたのか嬉々として冷蔵庫を開けるも中に入ってあったのはサンマが三尾。それを見て落胆するゆっくり達。そして…
「「 …………………… 」」
誰彼となく首領パッチに視線が集中する。
針のむしろに座された首領パッチはこれに憤慨。
「テメェら、もしかして俺を疑ってんのか!? 命を懸けて戦った仲間の俺を!!」
拳を作って抗議する首領パッチ。
目を吊り上げ、額に青筋を立てていることから本気で怒っているのが分かる。
毛の化身説得中 NowLoding...
十字架に磔にされた首領パッチがいる。顔面がアザだらけで歯が欠けており、全身のトゲが力なく萎れている。
その傍らには手に入れたものを確認しているボーボボがいる。
「炭酸飲料水が入ったペットボトル3本とスナック菓子が3袋…
2017円、カブトムシ、デュエルディスクと……こんなもんか」
「チッ、しけてやがるぜ」地面にペッと唾を吐いて悪態を吐くボーボボ。
仲間に向ける態度じゃない。
それに所持しているモノの中にはデュエリストが腕に填めるものがあるんだけど……何で持ってるの? 決闘者なの? デュエリストなの?
「あ、あなた達って普段からこんなことやっているの?」
恐る恐る尋ねる咲夜。
味方を平気でいたぶるボーボボを見たせいか若干震えている気がしなくもない。
「安心しなさい。あの三人は自分達以外にああいうことはしないわ。
もしもしていたら紅魔館から追い出しているわよ。
彼らの間で行われる一種のコミュニケーションみたいなものかしら?」
「何それ…」
そうこうしている間に今度は天の助が犠牲になっていた。
同じようにぼこぼこにされて十字架に磔にされる。
「私達は準備が整い次第、幻想郷へ行くわ。
幻想郷は全てを受け入れる場所。
そこになら咲夜、貴女を受け入れる場所があるんじゃないかしら?
メイド云々なんて言ったけど、ここが嫌ならば知り合いに頼んで貴女をそこに送るけど?」
私達二人を余所に隠しカメラから撮った映像を食い入れるように見つめるボーボボ、美鈴とゆっくり達。
何とそこに映っていたのはモヒカン達だった。
それが画面に映った瞬間、ボーボボ達の間に気まずい空気が流れる。
「さあ皆ぁ~、お腹がペコペコになったことだし食事の準備をするよー」
何事もなかったかのように振る舞うボーボボ。エプロンを身に付けて台所に立つ。
まな板の上にはサンマが三尾。それでどうするつもりなのだろうか…?
「冷蔵庫にはサンマが三尾しかありませんでしたが、この素材を余すことなく使用できれば……ここにいる全員のお腹を満たすことができるでしょう」
イヤイヤ、無理でしょ。
自信満々のボーボボに対して口を揃えて答える私達。
ボーボボがサンマの身に包丁を入れた瞬間、彼の手元が閃光に包まれる。
そして光が収まった頃には…
「ふう、何とか人数分のハンバーグ定食とゆっくりのためのキャットフードが完成したぜ…」
額に汗を足らして満足気の表情をするボーボボ。
テーブルの上には人数分のハンバーグが盛り付けられ、足下の地面には大量のペットフードが用意されていた。
確かボーボボのアフロに潜んでいるゆっくりの数は100を超えていた気がする。
「イヤイヤ、おかしいでしょ!? 何でサンマ三匹でこれだけ作れるのよ!?
あとゆっくりのご飯ってペットフードだったの!?」
「安心しろレミリア、お前のはちゃんとニンジンとピーマンを抜いておいたぞ」
「食べれますけど!? ニンジンとピーマンぐらい食べれますけど!?」
「お腹が空いてたらマトモな思考が出来なくなる。
咲夜、せっかくだからお前も食っていけ。考えるのはそれからでも遅くないだろ?」
テーブルの席には既に紅魔館の面々が着いていた。
いや、一人空席がある。
(妹の分なら既に美鈴が運んだから心配するな)
突如、頭にボーボボの声が響く。
彼の方へ振り向くと親指を立てていた。
コイツ、直接脳内に…
(パチュリーに頼んで脳内に声が届けられるようにしてもらった)
脳内って、何か危なそうなんだけど…
(大丈夫だ。時間が経つと幼児退行するだけだから)
今すぐヤメロぉぉぉ~~~~~っ!!!!
十六夜の月が咲く夜の下、私の絶叫が闇夜に響いた。
(´・ω・)にゃもし。
やっとこさ、じいさん終わった。