どうやらオレは巻き込まれ体質らしい 作:どらい
なのはがボランティアでしばらく学校を休むことが告げられた今日。オレは学校で自分の机に突っ伏していた。
「おい、カイ。お前大丈夫か?」
「・・・・・」
前田に声をかけられ顔をあげる。
「!?・・・カイ」
「・・・なんだい?」
「お前、仏みたいな顔になってるぞ」
クラスメイトである前田に心配された。だけど、ごめん前田。オレは今日、死ぬであろう。
昨日の夜、オレ宛に電話がかかってきた。母さんに呼ばれるがまま受話器を取り、その電話主に愕然とした。
「もしもし、お電話変わりました」
「ああ、カイか?」
この声・・・恭也さんか!?一気に心音が早まる。今日なのはに処刑準備が整っていることを聞いたばかりだというのに・・・。剣道関係のことではないことを祈って内容を聞く。
「はい、そうです。それで恭也さんどうしたんですか?」
「この前剣道教える約束をしたろ?父さんと考えてた修行メニューが完成したから、明日からオレの家に来てくれないか?」
「・・・・・」
神は死んだ。
「どうした、カイ?」
「アッハイ。でも恭也さんたちも忙しいと思いますのでオレの稽古はいつでも・・・」
何とかして逃れないと。最低でも頻度を減らしたい。
「それは大丈夫だ。オレも父さんもカイを鍛える準備はできている」
「あ、どうも」
無理だった。完全にやる気になってしまっている。これは逃げられない!
「じゃあ、明日の16時に家に来てくれ。また明日」
「ちょっ・・・」
ツー、ツーという音が受話器から聞こえてくる。何もできずに電話を切られてしまった。恐れていたことが現実に起こってしまった。なのはの話を聞く限り、当分先のことだと思っていたんだけど・・・。士郎さんと恭也さん張り切りすぎ!
そんなことが昨日の夜にあってオレは、今日の朝から表情が死んでいるらしい。道行く人に二度見された。アリサたちにもガチで心配されるレベル。もう自分のこの後のことを考えて達観してしまっているまである。これが・・・無我の境地ってやつかッ。
「あ!・・・まあ強く生きろ」
そう言ってオレの席から離れていく前田。おい待て、お前今何を察したんだ。
ちょうどそこで帰りのHRの時間を知らせるチャイムが鳴り、奴に追求することは叶わなかった。先生がドアを開けて教室に入ってくる。
「み、皆さん気を付けて帰りま・・・ヒッ!?」
担任の先生も朝からこれである。全く・・・ひどいものだ。
オレは何も悪いことをしてないのに!!酷いよ神様、助けてよ!!・・・あ、そう言えば昨日神は死んだって言ったばかりだった。
帰りのHRが終わり、習い事があるアリサたちと別れオレは1人帰り道を歩いていた。どうすれば高町家から逃げられるのだろうか。とりあえず何パターンかに分けて考えてみよう。
パターン1
「すみません、実はオレ全くやる気がないんです」
「何だと!?その軟弱な根性をオレが叩き直してやる」
これはダメだ。100パーセント殺される。
パターン2
「実はオレ剣を持つと持病が・・・」
「カイは健康だってカイの母親に聞いてるぞ。じゃあ、行こうか」
コレもあかん。
パターン3
「オレ、習う必要もないほど剣道強いっすよ!」
「ほう、じゃあ手合わせ願おうか。道場に行くぞ、カイ」
論外。自分から死亡フラグ踏みに行ってどうするんだ。
「いい考えが思いつかない」
オレの脳みそでは名案が浮かばないようだ。頑張れよ!オレの脳細胞!お前ならいけるぞ。
「はっ!?」
その時オレは閃いた。たまにはオレの脳もいい仕事をするらしい。流石です!
伝家の宝刀・・・
しばらく意気揚々と歩いているとオレの家が見えてきた。母さんに腹痛を訴えて、今日は休もう!
「・・・待て」
オレの家の玄関先に人が立っているのが見えた。大佐ァ!こちら羽島!我が家の玄関先に人影を発見しました。指示をッ!!
いや、オレの考えすぎだろう。現在時刻は14時ちょっとすぎである。おそらく宅配便か何かだろうと考え、家に近づいていく。・・・あれ、おかしいな。見慣れている黒髪と顔が見えるぞ?とうとうオレの視力も低下してしまったらしい。あれが恭也さんに見えるなんて。ハハッ。
「・・・・・」
何回も目を擦る。そして目を凝らして玄関先に立っている人を見る。何回見ても現実は変わらない。そんなはずはないッ!そんなはずはないんだッ!そしてその場に立ち止まること数分、オレはある結論に達した。
・・・あのひと、きょうやさんだぁ。わあい!
「お!カイじゃないか。早かったな」
「いや、早いのは恭也さんですよ。今日は大学じゃなかったんですか?」
「お前と稽古できるのが嬉しくてな。今日は大学を休んで、さっきまで山で鍛錬してたんだ」
「・・・・・」
おい、大学生。それでいいのか。オレ、過大評価されすぎじゃない?
時刻は15時。オレは高町家の道場にいる。・・・木刀を持って。おかしい・・・何で約束の時間よりも1時間も早くここにいるのだろうか。
いやそもそも恭也さんに伝家の宝刀の
オレは道場で1人寂しく木刀を振っている。恭也さんは準備をしているんだと。一体何の準備なのだろうか、怖くて聞くことができない。
「フンッ!!・・・フンッ!!・・・」≪ブンッ・・・ブンッ・・・≫
悲しみの気落ちを載せて木刀を振るうオレ。聞いてください、羽島カイ作詞作曲『高町家からは逃げられない』。
「フンッ!!・・・フンッ!!・・・」≪ビュンッ・・・ビュンッ・・・≫
悲しみの果て。腕が疲れてきたよ。もう疲れたよパトラッシュ・・・もう休んでもいいかい?せめて士郎さんが帰ってくるまでには帰りたいなあ(遠い目)。
「お、カイ!1時間近くずっと木刀を振っていたのか?凄いな・・・しかも型も教えた通りで完璧だ」
いつの間にか恭也さんが近くにいた。しかも気が付かないうちに16時を過ぎていたでござる。やめてえ!!無心で木刀を振っていただけなのにどんどん評価が上がっていくんですけど。
周りを見渡してみると、まだ士郎さんと美由希さんが来ていないことがわかった。しめたッ!!腕が疲れたとか言って帰らせてもらおう。
「恭也さん・・・言いたいことがあるんですけど・・・」
「ん?どうしたんだ、カイ?」
オレは恭也さんの目を見て口を開き・・・
「おう、やってるみたいだな。では稽古を始めようか」
「剣道って・・・楽しいですねッ・・・」
「カイも楽しさがわかってきたか!良かったよ」
士郎さんが美由希さんと共に道場に入ってきたのを見て、口を思っていることとは違う形に動かしていた。オレ・・・弱すぎんよ。
「では、まず初めにカイ君の動きを見るために恭也と模擬戦を行ってもらう」
「ファッ!?」
はい、死亡宣告いただきました。初日からフラグ回収とはこれまたいかに。
「確かに・・・カイの動きを確認することは大切だし・・・やるか!」
しかも相手は準備万端ときた。オレの体はボドボドなんです、助けてください。オレは唯一の希望である美由希さんを見上げる。美由希さんもいたいけな小学生が、実の兄にボコボコにされる姿なんて見たくないですよね?オレは期待の眼差しで美由希さんを見る。
喰らえッ!!
「どうしたのカイ君?・・・ああ、大丈夫だよ。私もちゃんと見てるから!」
「・・・・・」
違うんだよッ!!
「では、これより模擬戦を始める。両者礼を」
士郎さんの掛け声で礼をするオレと恭也さん。もうどうにでもな~れ。お互いに木刀を構える。士郎さんと美由希さんは緊張の面持ちでオレたちを見ている。うん、緊張感がどう考えてもおかしいよね。この模擬戦はオレの動きを見るものではなかったのか。最早諦めの境地である。顔から一切の表情が消える。
「真剣な顔になった・・・。それほどの気持ちで臨んでいるのか」
「・・・・・」
「それならばオレも全力を出さないとカイに失礼だな。オレも全力で行かせてもらうぞッ!!」
やめてください、死んでしまいます。・・・さっきから勘違いが加速しすぎているような気がする。おい、誰だブレーキ壊したやつ。そのせいで大変なことになってるんだが。オレの平穏は何処へ。
いや、もう逆に考えることにしよう。
「では、始め!!」
別に恭也さんを倒してしまっても構わんのだろう?
「その構えはっ!?」
「行きます!!」
オレは木刀を両手で握り、切っ先を恭也さんの方に向けたまま右側へと移動させる。木刀は寝かせた状態だ。オレは今から父さんが見ていたアニメに出てきた青い髪を持つ侍の構えを真似していた。あの技を見た時から一度やってみたかったんだ。そこ!中二病とか言わない!
恭也さんたちが驚いているが、むしろ何故驚いているのか知りたい。子供がアニメの技を真似しようとしているだけですよ?微笑ましい感じじゃないの?
「こいっ!!」
オレは恭也さんに向かってその技を再現する。
秘剣・・・燕返しッ!!
ごめん、アサシン。駄目だったよ・・・。普通に失敗したでござる。一遍に3回切るとか普通に考えてもできないよね。唯々突きをしたような形になっちまったよ。その突きを交わした恭也さんに背後に回られて、ボコボコにされたよ。一応抵抗はしてみたけれど無駄だった。幻滅されたかと思っていたのに動きが良いとか言われて褒められた。もうわけわからん。
オレは今道場に寝っ転がっている。普通に動けなくなったのだ。ああ、癒しが欲しい。
「カイ君、大丈夫?」
するとそこに美由希さんから声がかけられる。
「大丈夫だと・・・思います」
息を整えながら返事をする。顔をあげると美由希さんの手に料理が載っているのが見えた。これはまさか・・・。
「カイ君頑張ったからシュークリームはどうかと思って持ってきたんだけど」
「ありがとうございます!助かります!」
「そう?良かった。恭ちゃんたちは食べてくれないから心配だったんだ」
オレは美由希さんからシュークリームをひったくるように受け取る。こんなに美味しそうなのに、食べないとは勿体ない。では、さっそく一口・・・
「カイ、それは・・・!?」
士郎さんとの稽古が休憩になったらしい恭也さんが慌てた様子で、オレを止めに来る。何だ、恭也さんも食べたかったんじゃないか。だけどごめんなさい、これを貰ったのはこのオレだッ!!今まで美由希さんの料理を食べなかったことを後悔するといい!!
「ん・・・ん?」
シューは変な柔らかさで、クリームは辛い味付けと渋い味付けが何とも・・・・・ゴパァッ!!
「カイー!!」
オレは道場の床に再び倒れる。恭也さんの叫びが遠く聞こえるよ。まさか美由希さんの料理にこんな秘密があったなんて・・・。流石高町家、とどめを刺しに来るとは。アフターケアもばっちりだね(白目)!
「カイ君、どうだった?私頑張って作ったんだけど・・・」
しかし、ここで倒れては男が廃る。オレは震える腕を美由希さんの前まで上げてサムズアップ。そして精いっぱいの笑顔でこう言った。
「愛が詰まっていて・・・良かったッ!!」
しばらくの間オレの意識は途絶えた。
高町家の勘違いは加速する。
アフターケアもばっちり(遠い目)!皆さんも高町家の道場に足を運んでみては?
え?僕はやめておきます。だってあんなとこ・・・おっと誰か来たようだ。え!?ちょっと恭也さん、やめ・・・(後書きはここで途切れている)