英治達が見ているのを知るのか知らぬのか髪をサイドに結んだ生徒は鬼のような形相でもう一人の同じ白咲中の女子生徒に掴みかかって攻撃してる真っ最中だ。
襲われてる彩菜と呼ばれた生徒は反撃もせずただ襲われるがままだ。
何故、反撃しないのか英治は疑問に思う。
(にしても徹の奴、どうやって止めようってんだ)
ちらりと自分と並走して走る徹を見つめた。
「おい。お前ら白咲中の生徒だな」
会話に支障が無い距離まで近づいた彼は先ずそう言った。
「……だったらなに?……外白咲の生徒が何のようかしら?」
いじめを行っている女子生徒が睨みながら返事をするが彼は全く動じない。
「良いのか?こんな町人憩いの場でそんな事して。この町の非行少年や少女の事はニュースになって全国に流れるぐらいなんだぜ。ちょっと悪ふざけが過ぎるんじゃねぇか?」
すると徹の言葉が届いたのか、襲っていた生徒はもう一方の生徒から手を離した。
「はぁ……分かったわ。一先ず外白咲のイケメン君の忠告を聞いてこの場は去ろうかしら……あんた名前は?」
「相原徹だ。そっちは?」
「結城真莉よ……相原君一つ言っておくわ……」
『ウチラ(白咲中)の事に首突っ込んだらどうなるか分からないからね』
「それだけよ。じゃあね」
真莉は鞄を片手に公園から出て行った。
「ふ、どうなるか分からねぇ……か。上等だぜ。この町を暮らしやすい町にしてみせる……で、君は大丈夫か?」
徹は倒れている彩菜に手を延ばした。
彩菜は少し戸惑った表情をしながらもありがとう。と徹の手を取った。
「先ずこの子から話を聞いた方が良いんじゃないかな?」
「あぁ、純子の意見に賛成だ」
英治と健二も続く。
「じゃあ話を聞く前に俺らの自己紹介からやっとくか。何にも知らねぇ赤の他人同士で話すとなると気不味いだろうしな」
「さっき、言ったけどまた改めて言うぜ。俺の名前は相原徹。外白咲中3年2組の生徒だ」
「俺は菊地英治。悪戯や皆で楽しい事をやるのが好きだ俺も徹と同じクラス」
「小黒健二。パソコンや電化製品売り場に入り浸るのが趣味だな俺も同じく」
「橋口純子です。実家はラーメン屋なの是非食べに来てね。皆に続いて私も3年2組」
「……藤沢彩菜よ。白咲中の3年3組」
「藤沢って言うのか」
3人は相原徹がどの様に彩菜に対して切り出すのか見守った。
「お前と結城って奴の争い見てたんだが……あれは明らかに常識を越えてるよな、単刀直入に聞くぜ。彩菜。お前はあいつから虐めでも受けているのか?」
「………………まぁ、そんな感じかしら」
「えぇ!?それは不味いわよ!早く教師とかに相談した方が……」
純子の発言に彩菜は一旦目を大きく見開いた後
「……ごめん、虐めてくるのはあいつ……真莉だけじゃ無いの。他にも教師とかに相談したら『秘密』をバラすって脅迫して来てる奴等が居てね」
「『秘密』って何なの?……」
「ちょっと言えないわ」
「そう……」
「相原君達。助けてくれてありがとう。でももう本当に関わら無い方が良いよ……あいつらの矛先があなた達外白咲の生徒達にも向いちゃうかもしれないし」
「心配はいらねぇぜ。俺らのクラスは馬鹿ばっかりだが友情や団結力ならどこにも負けねぇ自信がある。だから虐めなんかに屈しねぇさ」
「素敵なクラスだねあなた達」
「だからこそ救いたい目標もある」
英治が語る。
「俺らは俺らと『同じ町の同級生』がいじめを受けていると言う事実に我慢出来ない。だから藤沢。君を解放させたい。そのいじめから」
英治の目は小さな子どもが悪戯を考えた時のように輝いていた。
その目に彩菜は不思議と惹かれる。
「……どうやって?」
「ギャフンと言わせれば良いんだよ。悪人どもに!」
「はは、流石相棒。一泡いや百泡ぐらい吹かせてやろうぜ」
彩菜は彼らが何故こんなに楽しそうで自信を持てているか分からなかったがその光景は……彩菜の目に……楽しさと希望の2つとなって映し出されていた。
「ふふ、本当に面白い」
「おー、意外と笑った顔可愛いのな」
「からかわ無いで相原君」
「元気が出るのは良いことだ」
「じゃ、彩菜。そんな君に是非ついて来て欲しい所があるんだ」
「何処?」
「来りゃ、分かるさ」
彩菜は徹達に付いていく。
一体何処に行こうと言うのか……。
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「ほい、着いた」
20分程歩いたところで徹が声を挙げた。
「此処は……旅館、十千万……?」
「なんだ?彩菜はあんまりこっちの方には来ねぇのか?」
「うん、あまり……外白咲の方には行く予定と言うか……特に知り合いも居ないしね」
「だよね~……やっぱ同じ白咲町内でも遊んでる地区とか違うもんね……私達のところは子供の数も少ないし」
純子が自虐気味に語った。
「おい、英治。健二と一緒に他の奴等には連絡入れてくれたよな。十千万に集まれって」
「おう」
「皆俺らを待ってる筈だぜ」
「うっし。じゃあ俺達が襲われてた町の同級生を保護した事を皆に伝えるか」
一同は旅館の中に入って行く。
「あ、来たかな?」
玄関口の戸の開閉音にいち早く反応したのは久美子だった。ドタドタと女子生徒数人は玄関口の方へ走って行く。
「徹達遅いわよ!このヨハネを待たせるとは良い度胸ね!」
「ヨハネ……?」
彩菜は目の前の頭にシニヨンを作って如何にも厨二病的なポーズをしている少女に深い疑問を覚えた……。
小声で英治と純子が「あいつの趣味みてぇなもんだから」「気にしちゃ駄目」と告げる。
「そこ!聞こえているぞ!」
「無事で良かったずら~」
「純子ちゃん!何ともない?……」
「うん、何ともないよルビィちゃん」
(ルビィ?……まさか人の名前じゃ……無いわよね……)
「なんだぁ、ルビィ?俺達の心配は無しか?」
「ピギッ……勿論してたよ……だけど徹君や英治君達なら大丈夫かなと思って……」
人の名前だった……。
「ねぇ、橋口さん……」
「なに?、藤沢さん」
「外白咲の人達って個性派揃いね……」
「う~ん、まぁ、でも退屈しないよ」
確かに退屈しなさそうだ。
「よし、じゃあ皆が居る部屋に向かうぜ。んでそこから俺が話をさせてもらう。彩菜、君からも話してもらって良いか?」
「構わないわ。もうこうなったら言った方が楽かもね」
「おし。決まりだな」
全員部屋に入った後、徹はクラスメイト達が鎮座する正面に座り早速今日の出来事を話した。
「体調が悪くて居ねぇ奴やサボってる奴は居ねぇな?じゃあ話すぜ、今日俺達の班は西白咲公園で白咲中の女子生徒2名が争ってる、いや、一方的に一人の女子生徒がもう一人を襲って居る現場に遭遇した」
聞いてる生徒達から響動めきが漏れる。
「んで俺らが止めてその襲われていた生徒を連れてきた」
徹は彩菜の方に手を向けた。
「じゃあ後は彼女から話をしてもらいたいと思う。話してくれ彩菜」
彩菜は少し前に移動し皆の方を向いてまた座った。
「…相原君から紹介に預かった藤沢彩菜です。まず相原君には襲われてるところを助けてもらったから改めて例を言うねありがとう」
「気にすんなって」
笑顔でそう告げる徹を横に彩菜も真実を言う決心が付いた。
「私は今白咲中の同じクラスメイトから虐めを受けているの。暴行を受けたり、恐喝されたり……犯されたりもした……」
また響動めきが上がる。
中には「信じられねぇ、なんだそいつら!」と怒りを挙げる声もあった。
「けど私は今まで行為を受けてる内に……行為が気にならなくなってきた。どうせ後少しで学校は終わるし大人しくして居ればいいんだって……けれど、私は殺されかけた」
皆静かに彩菜の話に集中していた。
「ハッキリと押されたのよ。私が横断歩道で信号を待っていた時ウチの学校の制服を着た生徒にね」
「藤沢さん。それで良く君は車に轢かれず済んだね」
クラス一の秀才の中尾和人が聞いてきた。
「ちょうどその時後ろから猛ダッシュで走って来たおまわりさんにぶつかって真横に吹っ飛んだのよ。だから無事だった」
この時英治や善子いや……クラス全員の脳内にとある警察官の顔が浮かんできた。
「ヨハネも聞きたいんだけど……その後、そのおまわりさんって……どうなったのかしら?」
「生きてたのよ。しかも自分で自分を轢いた運転手に掴み掛かっていったの……あれは本当にビックリしたわ……」
「俺今の藤沢の一言でその警察官が誰だか分かった気がするぜ……」
「奇遇ね安永。私も」
安永隆と堀場久美子が声をあげた。
「ははは。確かに『あの人』なら轢かれても、いや宇宙に解き放たれたって死ななさそうだしな」
「相原君まで……あなた達その警察官を知ってるの?」
「あぁ、めっちゃ親しい仲になってな。な、英治」
「うん。あの人は俺らのいや、この町の希望だぜ……それで藤沢。そのままじゃ藤沢は理不尽に平伏す事になるけどどうしたい?」
英治は真っ直ぐな瞳を向けて来る。
「私は殺らなければ殺られるんだと気が付いた……だから私は奴等に復讐をしたい…!…命を懸けてでも……ね」
「成る程な、その心意気は立派だぜ彩菜。だけど人生ってのは一回きりだぜ俺らなんて地球から見ればちっぽけな存在に過ぎねぇ……なら、辛く取り組むよりも皆で楽しく取り組もうぜ!なぁ!お前ら!俺らの手で同じ町の同級生を助けてやろうぜ」
リーダーの問いかけにおう!と次々と声が挙がる。
同時に「皆うるさいよー!」と千歌の声が聞こえた。
「あなた達……なんで……」
彩菜の目には様々な感情から涙を浮かべていた。
「ふ、決まってるじゃない。この世から迷えるリトルデーモンを救い悪しき魔物を取り払うのが私達の務め!」
「かっこ良く聞こえるが要するに相原君の意見に背のりってわけか」
「そうずらね」
「うるさいわよ!和人!ずら丸!」
「テンションが上がるのも分かるが堕天使も中尾も花丸もそれぐらいにしておけ……そろそろ帰って来る頃だな」
「え?」
ガラガラガラ
「やれやれ全く融通の利かん奴ばかりだったな!」
「全くだ!。地理案内ぐらいしてほしいもんだ!子供でも出来る事を何故、大の大人がしないのか!」
「自力で覚えて行くしかないですよ……」
喧しい、しかし身に覚えがある声が彼女の耳に届いた。
「彩菜、帰ってきたみたいだぜ。お前を吹っ飛ばしたおまわりさんが」
「嘘、本当に……」
紛れもなく先日聞いた声だ。
彩菜の身を結果的に救った警察官であると同時に…彩菜は彼の問いから逃げだしてしまった……。
「さぁて、今日もあいつらと話さなくちゃな。お前ら居るか-!」
襖は開けられた。
そして……
「うん?、見たことが無いのが一人……あ、お前は!?」
「……お久し振りです。両津さん」
藤沢彩菜と両津勘吉は2度目の出会いを果たす。
次話までに一人目(優人)に入れるだろうか!?