両津達は彩菜から7ヶ月間悲痛と苦痛に彩られた日々の話を聞いた。
「……そうか、クラスのほとんどの奴に君はいじめられたのか……」
「酷すぎます!。先輩!ボルボさん!即刻彩菜さんを我々で保護し第三者機関に連絡しましょう!」
ボルボと残念は憤慨した。
「やっ…と、大人に言えた……怖かった……凄く怖かった……!」
涙を流す彩菜の背中を花丸とルビィは優しく擦る。
「う~む、しかし……ぶつぶつ」
何故か両津は宙を睨み付けていた。
「両津、残念の言う通り教育委員会などに報告した方が良いんじゃないか?」
「うむ、わしもその方法は考えた。だが恐らく教育委員会を介入させようとしてもこの町の警察の邪魔が入るだろうな」
「「あ……!」」
「昨日わしが中学生に話しかけようとしただけで邪魔が入った。どこが手を牽いてるか分からんが同業者にも隠蔽しようとする連中だ。教育委員会ぐらいなんてことないんじゃないか?」
両津の言葉に一同絶望の雰囲気が走る。
「だが、裏を返せば奴等はある程度の学生達のイザコザには目を瞑るってわけだ。わしらはここを利用してやればいい。冗談じゃねぇぞ!白咲署の連中め!わしらはこの町のガキ共の補導と犯罪抑止の為に来たんだ!てめぇら本山が動かねぇならわしらがわしらのやり方で動いてやる!葛飾署のやり方でな!」
「両津!」
「先輩……!」
「泣くな彩菜、わしらはお前を見捨てる気も無いしお前に悪さした奴等を許す気もない。やり返してやればいいんだ!人間黙って受け身になるのだけが全てじゃない、ちゃんと自分の意志を発して相手に伝えることも大切なんだぞ」
「はい……両津さん……私逃げてた……いじめにあってもやり返せないで自分の人生から逃げてた……また戻れるのかな?」
「あぁ、大丈夫だ。今のお前は一人じゃない。そうだなお前ら」
両津の言葉に彩菜の後ろに居る外白咲の生徒達は「おう!」と掛け声をあげた。
「手伝うぜ彩菜の復讐。お前を虐めてきた連中に偉い目見せてやれ」
「フフフ、安心なさいリトルデーモン。このヨハネが悪しき者達に天罰を与えるわ!ゲヘナの焔を持って!」
「俺達が解放するんだ藤沢を!」
「白咲の奴等の鼻毛でもライターで炙ってやりたいなぁ」
「こんな愉快な奴等がお前の味方なんだ。だから今日はもう休め」
「うん。でも家に帰らなきゃ……」
「もう日が暗いわよそれに彩菜ちゃんの家は反対の区だから遠いんでしょ。泊まっていった方が良いわよ。彩菜ちゃんが泊まれるくらいの空きはあるから」
配膳に魚料理やら肉団子の汁などを載せた志満が部屋へやってきた。
その後ろに千歌も同じ組み合わせの配膳を持ってきている。
男子からは、おぉ!、俺腹ペコだったぜ~と歓喜の声があがった。
「悪い君達に美味しいプレゼント!食べていっぱい頭働かせてね~!」
「あざっす!千歌先輩!」
「志満さんもありがとうございます!」
「良いのよ。英気をつけて頑張ってね」
「あー、でも俺プレゼントだったら千歌先輩が良かったな~」
クラスで一番背が小さくお調子者の宇野がそんなことを言った。
「馬鹿なこと言わないの!。もう!宇野君にはあげないよ」
「冗談です先輩!」
ぎゃはははは!と笑い声が響き渡る。
「千歌先輩宇野の分俺にください!もう腹が減ってしょうがない」
「日比野、お前はデブなんだから食事の量をちょっと減らせ!そんなんじゃ彼女も出来ねぇぞ」
「なんだと天野」
将来レスリングの解説役を目指す天野の一言にまたも部屋に笑いが走る。
いつの間にか彩菜もその輪にまざり笑っていた。
「楽しい?私達のクラス?」
髪をツーサイドアップに結んだ女子が彩菜に尋ねてきた。
名前は確かルビィだった筈。
「うん……面白いね。ルビィちゃん達のクラスは。こんなに笑ったの本当に久しぶりだよ」
「本当に……。良かったぁ、彩菜ちゃんが楽しそうで」
「気遣ってくれてありがとう」
「うんうん!ルビィもやっぱり笑ってる人の顔を見るのが好きだから元気になって本当に良かったよ!」
「盛り上がってるね~。ルビィと彩菜ちゃん」
「あ、久美子ちゃん」
先程、鼻毛をライターで炙ってやりたいと言ってた女子だ。
「どう?彩菜ちゃん。親睦を深める為にも一緒にお風呂に入らない?千歌先輩の家旅館だし」
「構わないけれど……」
「よしっ!じゃあ決まりね。私ご飯食べたから先に行ってるね」
随分早い食事だな。と思いながら彩菜も食事を済ませ千歌に場所を聞いて風呂場へ向かった。
「待ってたよ彩菜ちゃん」
脱衣室には笑顔を浮かべた久美子が待っていた。
「つか、私ら同年代だし呼び捨てでよくない?彩菜って呼んでいい?私のことも久美子って呼んでいいからさ」
「うん、じゃあ久美子」
「なに彩菜?」
「外白咲の人達って面白い人ばかりだね」
「まぁね、相原君や英治君達がいると私らも飽きないよ。みんなあんな調子だしさ」
「そうなの」
「彩菜の白咲中にも面白い奴とか居ないの?。自分が在籍してる以外の他のクラ……」
途中で言葉が止まった。
彩菜の露になった背中の凄惨な傷の跡を見て。
「……ごめん変なの見せて」
「奴等がやったのねその傷も……」
「うん……。初めは泣いたりして抵抗してたんだけど途中からどうでも良くなって来ちゃって……」
「おかしい……そんなのおかしいわよ!。なんだって彩菜にこんな傷を!……イカれ過ぎてるわそいつら!」
久美子は自分の為に自分のクラスメイトに怒ってくれている。
長らく虐められる自分がおかしいと今日まで考えていたがはじめて公平な判断を聞いた。
風呂に入り二人は色々な話をした。
彩菜の父親が社長で、娘である彩菜に愛情を全く見せないこと。
久美子の父親は議員で、いつも票しか考えず家を疎かにすること。
性格は全く違うが似たような境遇だ。
「全く。ダメ親父を持つと苦労するね。子供はさ。あいつら私達より仕事が大事なんだよ。仕事と結婚すればいいのに」
「ふふ、そうだね。私も久美子みたいに強気な性格だったらいじめ受けてもやり返したり出来たのかな?」
「あはは、私なんて馬鹿親父にただグレてる反抗期の不良娘だって。彩菜がなっちゃ駄目だよ」
屈託のない笑みで久美子は告げた。
「それで、一人目の復讐相手は誰にするの?」
真面目な顔つきで聞いてきた。
彩菜の中ではもう一人目は決まっていた。
「うん、一人目は……」
『瀬尾優斗かな』
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「あら、久美子ちゃんと彩菜ちゃんお風呂からあがったのね」
「いい湯加減でした流石十千万のお湯ですね!」
「初めて入りましたがいいお湯で疲れが取れました。ありがとうございます」
「いいのよ。あ、それと彩菜ちゃんのお家に連絡いれようと思うんだけど電話番号教えてくださらない?」
「大丈夫です自分で--
ポンと久美子が肩を叩いた。
「彩菜、大人に任せた方がいいって。子供の彩菜が変に泊まるって言ったら彩菜のお母さんがヒス起こすかもしれないし」
絵面を想像した彩菜は吹き出しそうになった。
やっぱり久美子は面白い。
「分かりました。志満さんに連絡してもらいます電話番号はこれです」
自分のスマートフォンを取り出し自宅の電話番号を志満に見せた。
「はい、分かったわ。ちゃんと理由つけておくから安心してね。親御さんが混乱しないような理由にしておくから」
ウインクし、志満は去っていった。
「く~。志満さんも悪い人だな。あぁいう大人本当あこがれるわ」
「出来る女的な」
「そんな感じ!。もう女子のなるべき姿だよあれ」
「なんか大げさね……」
「やっぱ出来る女が一番カッコいいじゃない!そしてあわよくばイケメン捕まえて玉の輿的な!。あ~これからはグレんのもいいけど女も磨かなきゃ!」
上昇志向が色んな方向に分散してるようだ。
しかしこのメンタルの強さは是非彩菜も見習いたいと思った。
ほどなくし居間に布団がしかれた。
途中男子達が枕投げをして遊んだが千歌の迷惑掛けちゃ駄目の一言でぴたりと止まった。
そろそろ消灯のようだ。
「じゃ、一人目の瀬尾優斗への作戦会議は後日練るとして今日はもう休みましょうか。相原君には明日いのいちで伝えるから」
「ありがとう久美子」
「あと、思ったんだけどさ、彩菜どうせ白咲行っていじめられんならウチ(外白咲)にこない?。なんとか言って理由つければ出来ると思うの」
「私が外白咲中に……大丈夫なのかな?」
確かに白咲中には行きたくないが……。
「考えたってしょうがないし私らが掛け合ってみるから今日はもうこの幸せが続くうちに寝よ」
「うん……」
不安は確かにあるがそれ以上に希望の方が今の彩菜には多い。
徹や久美子、英治、純子。
外白咲の生徒は皆優しくて心強い人達ばかりだ。
意識が遠のき彼女はひっそり眠りについた。
復讐回はぼくらシリーズとこち亀調のギャグ、要素をふんだんにぶち混んだものにしたいです。