次々と友が消えていくある少女の嘆き。
「全く厄介なコトになったもんだ」
白咲中校長小俣は、忌々しそうに葉巻を咥え校長室から校庭を見下ろした。
『ある生徒が連絡もなく2、3日も学校を休んでいる』
そう告げられた時、頭が痛くなったのを覚えている。
最初、いじめの線を疑い全校生にアンケートを取ったりもしたが来なくなった生徒の瀬尾優人という者はいじめられるタイプじゃなくむしろ女子に人気が高い生徒だと判明した。
では、何故来ないのか?。
3年3組の担任、纓田が両親に連絡したところ『あの子は今、警察の方に保護されていて学校にいけない』と言ったのだ。
警察に保護されてる、と纓田から聞いた時は後々捜査で警察が来るのでは……と身構えたがココの警察に限ってそれはない。
ともあれ無事が確認出来れば学校側としてはどうでもいい。
「クソガキ共、学校内では問題を起こすなよ。俺のクビに関わるのだからな」
それにしても纓田には教師のセンスがない。
直近にも白咲中に籍だけ残し学びの場を外白咲に移した生徒がいる。
ただ単に奴が無能なのか……聞き分けがない生徒が多いのか……。
「ふっ、どちらだろうな」
笑いながら、煙を吐いた。
安定した老後を過ごすためにも不穏分子は教師、生徒関わらず注意しなければならない。
この町ではほぼ有り得ないが……マスコミに嗅ぎ付けられたら面倒なことになるのだから。
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「ねぇ、結子。優人ったら結局今日も来なかったね」
「そうね……」
暗くなった白咲中3年3組の教室で、学級委員長の滝島結子と窪田恵美は突然来なくなった同級生、瀬尾優人について話をしていた。
優人が登校しなくなってから早4日だ。
あの女好きの優人が、自分を待つ娘が多い学校を4日も休むなんて……どんな問題が起きたのだろう。
結子にとっては至極どうでもいいが、風の噂では学年問わず泣いてる女子もすくなくないらしい。
(あんなキザでナルシストでも待ってくれてる人はいるってわけね……あの子にはいないのに)
「なんかさ、誰かがウチらの担任に優人のことについて聞いたら詳しく言えないって言い返されたんだって」
「ハッ、なによそれ」
馬鹿にしたような調子で結子は言う。
「どう見ても何か知ってるわよねそれ。生徒である私達に言えないような大事に巻き込まれて戒厳令でも出てるのかしら?」
駄目だ関係ないのに自分の両親の姿が頭に浮かんでしまう。
外様にはヘラヘラ笑い、内では結子が規律を守らないと折檻する両親と優人が学校に来なくなった理由を言わない教師の姿が結子の中で繋がった。
体面を保つ為に大人は嘘を吐く。
なんて醜いんだろう。
「流石にそこまでは私も分からないけど……結子どうしたの?ちょっと怖いよ……」
「ごめんなさい怖がらせて。教師の対応聞いたらウチの親思いだしちゃってさ。……あの人達も言ってることやってることが違うから」
「親のことね……」
いつもの調子に戻ったのを見て、恵美は胸を撫で下ろした。
「今日もクラブに行くの?」
「うん。行かなきゃ―――
私が……壊れちゃうよ」
(ゆ、う……こ……)
…………戦慄した。
結子の顔は笑ってるのに目は淀み全く生気を感じられない。
確実に彼女の精神は両親に蝕まれている……もし、もしも……ここで何か不吉な事が起き彼女の背中を悪い意味で押してしまったら……結子は……。
「やだ、何で泣いてるの恵美?」
「ごめん……!。ちょっと目に塵が……」
自分でも分からないうちに泣いてたようだ。
誤魔化すようにゴシゴシと目を擦る。
「そう。じゃあまた明日学校でね」
「うん」
戸を開け、結子は出ていく……。
「うぅぅぅ……!」
誰も居なくなった教室で恵美は一人涙した。
結子の今の状態は限りなく危うい……救いたいけど自分にそんな力はない。
そもそも彩菜すら、恵美は救うことが出来なかった。
結子と彩菜が決裂した際に……恵美もまた彼女と疎遠となったのだ。
いや、彩菜の他に疎遠となった人物はもう一人いた。
「どうすればいいの!?。私には……誰も救えないの?……また皆と仲良く笑うことは出来ないの!?」
少女の悲しみの叫びが黄昏の教室に響き渡った……。
更新はのんびり待っていただければ幸いです。