ぐぉぉぉぉ!
「うぅ……」
ぐぁぁぁぁぁ!
「ぬぅ……」
十千万の一室は猛獣のようないびきが漏れ出す魔の一室と化してしまった……
時刻はまだ午前3時30分なのであるが、二人の男は動物園の檻の中で眠るのと何ら変わらなかった。
ぐぉぉぉぉ!ぐぉぉぉぉ!
「だ、駄目だっ!俺はもう部屋を出るからな!」
「あ、何処へ!?」
「少し白咲町を走り回って来る!なぁに30週程だ!」
「……発情期を迎えたオス猫みたいですね」
襖がバタン!と思い切り閉まる。
じゃあ、僕も……と 残念も寝る事を諦め読書し勉強することにした。
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そして……二人は走ったり、勉強したりしながら4時間後
「いやぁ!素晴らしい睡眠だった!」
猛獣はぐっすり、ぐっっっっすり、8時間程眠り気持ちの良い日の出を見る。
ん~と背筋を真っ直ぐ伸ばす。
「おや?どうしたんだ、ボルボ、残念。目の下にクマが出来とるぞ?ははぁ~さては緊張して眠れなかったんだな?」
駄目だぞ~眠らないと!と言われボルボは誰のせいだ!誰の!と腹の底で思いながらあぁ……少し色々なと返事し対する残念は別の宿にしようかなと腹の底で思いながら勉強したくて……と虚偽の返事を互いにした。
「確か9時までに白咲署に行く筈だったぞ」
「うむ、そうなるとあと一時間半しか残されて無いな……急いで飯を済ませよう」
「おう!」「はい!」
一行は食堂へと急いだ。
…………
ガチャ
「実に旨い飯だったな!」
「あぁ……これなら寝不足でも何とかなるかも知れん」
食後の会話をしてる彼等にドタバタした高海家の日常が聞こえてきた。
「千歌ちゃん!バス来てるわよ!」
「今、行くぅ~!」
ガラガラ
「こらっ!裏口から出なさい!」
「ごめんなさ~い!」
ドタドタ、ドタドタ……
「申し訳ありません……うちの妹が……」
黒髪の女性はいそいそと頭を下げた。
「ははは!あの娘も結構御転婆な所があるんだな!」
「元気だけは人一倍あるんですが遅刻が多くて……」
「なぁに、勉強だけ出来て仕事一筋の堅物よりましだよ。そういう上司を一人知っとる。あれは駄目な人間の鑑だな」
「まぁ……」
「おまけに趣味が盆栽でな。自分が天然記念物になりたいのかと思っとるところだ」
「おい……両津……」
「その辺にしておきましょう……」
「おっと!そうだったな。わしらにはやらなきゃいけない事が有る」
「そうですよ」
「よし!ボルボ!残念!早速敵地に乗り込むぞ続けぇ!」
おりゃあああああ!
両津は一人で爆走して行ってしまった。
「全く……あの馬鹿」
「うふふ、ユニークな御巡りさん」
「悪い方面への発想力と原動力がズバ抜けてますからあの人は……」
「それじゃ我々も」
「失礼します若女将さん」
「気を付けて下さいね」
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登校、出勤時間真っ只中の白咲町では数々の人間が動いている。
パッ
信号機はその中でも種類を問わずに待機を強制させ人々の時間を削る代物だ。
この時ばかりはどんなに急いでいても足を止めざるを得ない。
ピタ
白咲中の生徒も無表情のまま歩行者信号機が青に変わるのを待っていた。
スッ
後ろに近付く2つの魔手に……気付かないまま。
(死ね!……彩菜!)
狂人の魔手が彩菜と呼ばれる生徒の身体を押そうとした時、突風が吹き対面している信号待ちの初老の女性が財布をビュン、ビュン車が走っている横断歩道の中に落としてしまった。
「あー……私の財布が~……」
チャリン
硬貨が地面に落ち甲高い音が鳴り響く。
その僅か2秒。
彩菜達の後ろの道路から砂煙を上げて全力疾走して来た男が居た。
「うぉぉぉぉ!金!金!金!金は何処だぁ!」
ドォン!
(…………え!?)
彩菜は何者かに手で押され横断歩道に出そうになったが
「どけぇ!お前ら!邪魔だ!」
ガァン!
「きゃあ!」
更に後ろから走って来た何者かにぶつかって車道には出ず真横に吹っ飛び結局歩道から出なかった。
「いたた……」
何事かと彩菜は車道を見ると落ちた財布から目を¥のマークに替えてお金を拾っている見るからにヤバそうな男の姿だった……。
(ヘ、変態だわ……)
「わしのお金ちゃ~ん……もう離さないからね」
「あんた!危ないぞ!」
「え?」
キキキキキ……ゴッ!
通行人が声を掛けたが時既に遅し、両津は車と激突した。
「あー、何と言う事だ……」
「でもあの人自分から轢かれにいったような……」
彩菜を押した生徒は両津に憎悪を募らせる。
(あのクソ親父じゃましやがって……!ちっ!このままじゃアイツに見つかる!)
押した犯人は別の道を辿る事にした。
「ぬぅぅ……!」
「おい生きてるぞ!」
これには白咲中の生徒二人だけでなく全員が思わず
「え!?」
と声を挙げた。
起き上がった両津はそのまま自分を牽いた運転手に掴み掛かる。
「おい貴様何処に目ん玉付けて運転してんだ!これが白咲町のわしらへの歓迎か!?わしじゃ無かったら死んでたかもしれんぞ!」
「だ、だって貴方がいきなり飛び出して……!」
「言い訳する気か貴様ぁ!」
わしが被害者兼証人だ~!とがくがくと運転手の襟を掴み揺さぶった。
彩菜は呆然となる。
(何なのあの人……車に跳ねられてぴんぴんしてるなんて……ん?)
彩菜の視界に自身の同級生に似たような人間が写った気がした。
(気のせい……か)
パチン!
「いて!」
「この泥棒猫!いや、泥棒ゴリラ!私の財布から出たお金だよそれは今すぐ返しな!」
「なに~!婆さんのだったのか……」
「そうだよ!全く卑しい男だね!」
女性は財布を奪うと早歩きで立ち去っていった。
「くぅ……わしのお金が……」
「あの……貴方を牽いてしまったのは事実ですから……警察署に行きましょう」
「あぁ……そうだな……ちょうどわしも警察署に用が有るしな」
「じゃ、僕の車の後ろに乗ってください」
「ちょっと待ってくれ。おい!そこのお嬢ちゃん!」
両津は彩菜に声を掛けた。
「な、何ですか?」
「あんたわしが走って来た時一番前に居ただろ?」
「ええ、まぁ」
「なら良く事故の瞬間が分かる筈だ。すまんがわしと一緒に白咲署に来てくれんか?」
藤沢彩菜は考えた
『どうせ学校に行っても屑共の玩具にされるだけだ』
「……構いませんが」
「よし!決まり!嬢ちゃん乗りな!」
バタン……ブルルル……
前方がひしゃげた車は白咲署ヘ、向かい動き出した。
一方……その頃……
「両津~!何処に行ったんだよぉ!」
「せんぱ~い!遊んで居る時間は無いんですよ~!」
二人は急にダッシュで視界から消えた両津を探し回っていた。