両津ついに白咲署へ……
午前8時30分……白咲署署長室……
コン、コン、という合図と共に誰かが部屋に入ってきた。
「署長……」
「うん?」
頭が禿げ上がり小太りの男が息を少し切らしながら自分たちの親玉に声を掛けた。
「どうしたのだ、遠野。今日は特に朝礼等の雑事はなかった筈だが」
違いますと遠野はハゲ頭を横に振る。
「あれですよ。ほら、東京の葛飾署から応援が此方に送られると決まったじゃないですか。今日がその彼等が所属されると決まった日です」
「なに!?……今日だったか……何時頃私のところに訪れる?」
「はっ……ええとですねぇ……スケジュール通りに署内案内しますと午前11時15分頃でしょうか」
額の汗を拭いながら遠野は告げる。
若い頃は犯罪者を走ったりして汗を掻いたものだが課長となった今では雑務をこなしてる時でさえ汗が止まらない。
遠野の言葉に署長は分かったと返事する。
「それでは私はこれでーー
「待て、遠野……万が一にもお前が口に出すとは思わんが念を押しておく。『あの話題』を奴等が聞いてきたら我が署としては最善を尽くしているとだけ答えろ」
「勿論、心得ております。奴等がそれでもうだうだ言って来たら有無も言わさず内勤にする手筈も整い済みですでは、失礼致します」
「うむ」
遠野は一礼し署長室を後にした。
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ガチャ
「いやぁ、やはり車は早いなぁ~!歩くのが馬鹿らしくなってしまうよ」
白咲警察署の駐車場に両津の声が響いた。
「……全く驚かされましたよ。まさか警察の方だとはね」
両津を牽いた運転手……沢田 満は呆れながら語った。
背丈は180程あるまだ免許を取得して2年ほどしか経過していないらしい。
彼は両津と酒の話で気が合い様々な事を話した。
「とてもじゃないけど両津さんはおまわりには見えないよ」
「がはは、良く言われるぞ!お前も運が良い!わし以外の奴をドカン!……といったらどうなってたか死がないにしてもかなり入院する事になるだろうな」
「マジで肝に命じとくよ……で……彩菜ちゃんだっけ?」
「はいっ」
突然名前を呼ばれ少しびくっとしながら返事する。
「すまないね、今日学校なのに俺のせいで……」
「いえ、気にしなくて大丈夫です。この頃何かに付けて勉強ばかりで嫌気がさしていたから……なんか……解放されたみたいです、えへへ」
……なんて醜い嘘を吐くのだろうと自分自身に嫌気が差した
なんでこんな心にも無い事がすらすらと言えるのだろうと自分自身に怒りが沸いた
しかし彼女は悟られたり知られるわけには絶対にいかなかった……
自身がクラス内から虐めを受けていて……そのクラス全員に復讐をしようとしている事など……
沢田はそんな彼女にあぁ、そうなのかと引き下がる。
両津は何も言わずに彩菜の顔をただ見つめているだけだった。
程なくし彼等は白咲署に入った。
署内は中々広く署員もそれなりにいる。
両津達は早速人身事故を引き起こした事を交通課の署員達に告げ沢田はその場で事情聴取、両津と彩菜も事故の状況を話す事となった。
「成る程………状況は分かりました」
交通課の署員が話す。
「被害者も御無事のようですし、両津さんが被害届けをだされると言うのなら受理致しますが……」
「あぁ、構わん構わん。この通りわしは無事だ。こういう事故で如何に処理が面倒くさいかはわし自身が知ってるからな」
「そうですか、では沢田さんは今日はもうお引き取り頂き結構です。後日またお呼びするかもしれません」
「分かりました……あの、両津さん本当にすいませんでした!」
「はっはっは、気にするな」
「いえ、こんなんじゃ俺の気がすみません……そうだ!今度一緒に酒でも飲みましょう!暫く白咲町に滞在されるのでしょう?」
「おぉ!お前良いこと言うなぁ!わしは十千万と言う旅館に泊まってるから是非来てくれ!名酒じゃなきゃ受け付けんぞ!」
「はは、分かりました。では今度お伺いします」
「おう、またな」
沢田は手を振り両津と別れた。
「なんだ中々骨の有る奴も居るじゃないか」
ユニークな警察官だと場に居る全員が感じた。
復讐に心を奪われつつあった藤沢彩菜も例外ではなかった。
「さて……と彩菜」
両津は彩菜の方を向く。
「お前は白咲中の生徒だよな?」
「……はい」
「わしも問い詰める事はあまり好きじゃないんだが……お前、いじめとか受けていないか?」
「……っ!」
「おい、そこの貴様」
両津と彩菜の間にとある警官が割って入った。
「こんな中学生を相手にいきなり何を聞き出す?誘導尋問も甚だしい」
「なんだテメェは!わしは白咲町の子供達を犯罪に手を染めさせない為に来たんだ!此処の子供達に質問する事の何が悪い!?」
一度光にぐらついた振り子は急速に闇に引っ張り込まれる。
ダッ!
逃げるようにその場から離れた。
「あ、彩菜!!」
「ふん、娘さんもお前みたいな醜男の言う事なんざ聞きたく無いだろうな無理矢理立ち止まらせ話を聞かせる……噂通りの警察官だな。両津勘吉巡査長殿」
両津の肩にポンポンと腕を乗せその警官は場を立ち去った。
「ぬぅ~~~!何なんだあの野郎……!」
「あ!いました!」
「おい、両津全く一人で最初に乗り込むなんて!」
ボルボは声を荒げる。
両津を探し回っていた時に突如その本人から
『わしは先に行っとるよ~ん』
とメールが送られ猛ダッシュで白咲署に向けて二人は向かったのだ。
「なんの『インガ』でこんな目に……」
「気を落とすな残念……俺も同じ事を考えている……」
「すまなかったなお前ら後でなんか奢ってやる」
「「え?」」
唖然となった。
両津の事だから軽く「いやぁ、ごめんごめん!」等と心にも込もって無い謝罪の言葉を言うのだと思っていた。
二人は面食らう。
「せ、先輩……」
「何かあったのか?」
「まぁ……色々とな……だが益々仕事への意欲が沸いてきたところだ……お前ら!気圧されんじゃねぇぞ!わしらはわしらでこの町で出来る事を全力でやってくぞ!」
「勿論最初からそのつもりです」
「あぁ、何が待ち構えていようがやるしかないな」
「ふふ……それでこそ葛飾署の署員だ……じゃ先ずは敵地の見回りから行くか……敵を良く知らねばな……」
時計の針は午前8時55分を指していた。
ーーーー
同日……午前7時50分……
「何すんのよ!……あんた!」
「こっちの台詞だっつの!テメェ私達の顔見て表情変えたろ!」
「はっは!良いよ詩織!そんな生意気な女やっちゃいなよ」
「やめて久美子に手を出さないで!」
白咲中の生徒と外白咲中の生徒が争っていた。
きっかけは白咲中の生徒二人組が歩いて居るのを外白咲中の生徒が露骨に嫌な表情をしたと言う事らしい……
「あんたみたいな他校の奴が白咲中の通学路歩いてんじゃねぇよ!」
「はぁ!?家が近くに有るからしょうがないじゃない!!この暴力女!!」
取っ組み合いながら二人は喧嘩し続ける。
そしてそれをもう一人の白咲の生徒は笑いながら見つめている。
何か手は……と残された一人の生徒は考える。
その時
「こら!お前ら!何しとるかぁ!」
とある老人の声が響いた。
「喧嘩するならこの隠居爺が相手してやろう、わしと喧嘩したい奴はどっちだ」
老人は棒を持って威圧する。
「はぁはぁ……くそ!邪魔が入ったか!」
詩織は久美子から手を離した。
「行きましょ真央……あんたも運が良かったわね。次は殺すから」
差って行く詩織と真央に久美子はべーっと舌を出した。
「ありがとうお爺ちゃん助かったわ。あと純子も逃げれば良かったのに」
「何言ってるの!友達置いて逃げられるわけ無いじゃん!」
笑いながら二人は見つめ合う。
「聞くがどっちが先に手を出したんじゃ?あの短髪の女か……それともお前か?」
「あっち……自分達が悪い噂いっぱいだからって嫌な顔したら気に食わないんだって」
久美子はオーバーな身振りで語る。
「そうかあいつらがお前らに手を出したのか」
「そっ、今度からカバンに鉄板と画鋲でも入れとこうかな……ね、純子?」
「久美子……流石にそれは……」
「え~。いい案だと思うんだけどなぁ」
「てか、遅れちゃうよ!ルビィちゃんや花丸ちゃんとかもう学校着いてるって!」
慌てて久美子は自身のスマホで時刻を見た。
「ゲッ!8時03分……やっばー!いつもならルビィ達の家の前通ってる時刻じゃない!!」
「遅刻はよくないぞ。早く行った方が良いな」
「うんそうさせてもらう!ありがとね!お爺ちゃん!」
「本当にありがとうございました!」
久美子と純子は例を言い通学路を走った。
久美子はぼくらシリーズの中でも気が強いキャラなので詩織(復讐の唄シリーズ)と引けず劣らずの戦いが出来ると思い最後の喧嘩を書きました。