フードを被った青年の言葉は少年二人の胸に響いた。
「なあ、この国を滅ぼしたくはないか?」
一人の少年は、自分の幼馴染の性別が女と言うだけで虐げられるのが気に入らなかった。
一人の少年は、従妹を守りたかった。
だから少年たちは青年の意見に賛成した。
二人の少年が青年について行くと、そこは薄暗く、自分と同じぐらいの年の少年がいた。
「フギル兄さん、その二人は?」
どうやら、青年の弟らしい。
「安心しろルクス、彼らは協力者だ」
フギルはルクスに言う。
「そうでしたか。僕はルクス。ルクス・アーカディアです」
「俺は物部悠。よろしく、ルクスさん」
「ルクスって呼んでくれないかな?恥ずかしいんだ」
「じゃあ、俺も悠で頼む」
「わかった。よろしくね悠」
「ああ、よろしくな。ルクス」
悠とルクスは自己紹介を終えると互いに握手をする。
ルクスはもう一人の少年に歩み寄るが、少年の反応はない。
「えっと、よろしくね」
「・・・・・・」
「あの」
「ああ、すいません。ハミアです。よろしくお願いします」
「よろしくね。敬語は遠慮してほしいな」
「わかった。僕もルクスって呼ばせてもらうよ」
「うん。よろしく、ハミア」
ルクスは最初の反応が気になるが、今はその疑問はいらない。
革命を、成功させるために。
「よし、悠にはルクスと共に行動してもらう」
ルクスは尋ねる。
「フギル兄さん、ハミアは?」
「ハミアにも参加してもらう」
「それだけ?」
ハミアは自分の役割について詳しく聞きたかった。
「いや、整備もしてもらいたい」
「分かった」
フギルの言葉はハミアを動かすには十分だった。
数日後、革命は成功した。
アーカディア帝国は滅び、アティスマータ新王国が誕生した。
それから五年後
「ルクス、ハミアはどうしたんだ?」
「ああ、ハミアなら僕と入れ違いで女王陛下に呼ばれてたよ。先に行ってていいみたい」
「そうか。じゃあ、行こうぜ」
悠がそう言い終え、目的地に向かって歩こうとすると、ポシェットが風に運ばれていくのが目に映った。
「ごめん、悠。先に行って」
「何言ってんだ。俺も手伝うよ」
「ありがとう」
二人はポシェットを取り返そうと、ポシェットを追いかけ始めた。
「では頼みましたよ、ハミア」
「はい、女王陛下。失礼致します」
話が終わった為、女王であるラフィに挨拶をしてハミアは退室した。
ハミアは城を出て、目的地に向かう。
「ハミアさーん」
歩いて行くと少女に声を掛けられる。
「どうしましたか?」
「ルクスさんと悠さんなら、先程ポシェットを追いかけて行きましたよ」
「そうですか。ところで、どうして?」
「実は私のポシェットが風で飛ばされてしまって。あっちに行ったのは分かるんですけど」
「そうでしたか。ありがとうございます」
ハミアはお礼を言うと、少女が指を差した方向へ走って行った。
建物の陰に隠れ、周りを確認してから建物の屋根に上がる。
すると、遠くに知り合いの二人が走っているのを見つけた。
それと同時に、自分に対する無遠慮な視線にも気づいた。
ただ、特に困ることでもない上に、関われば面倒な事になりそうだったから放置することに。
とにかく、今は合流するのが先。
だからハミアは、二人に向かって走し出した。
「ルクス、ハミアが。俺は回りこむから、そのまま追ってくれ」
「分かった」
ハミアの姿を確認した悠はルクスに告げ、別の方向から追う事にした。
一時間後、日が落ちかける頃。
悠はようやくポシェットを手に捉えることができた。
「やっとか。さっきまでの視線もないし、これで終わ・・・・り?」
そこでハミアは違和感に気付き、考える。
今まで三人は一緒に行動してきた。
当然、良い事もあったが、どちらかと言えば、悪い事の方が多かった気がする。
さっきの猫騒動が良い結果に終わったとするなら、今度は悪い結果が待っているのではないだろうか。
「やった!」
そんな中、ルクスの声が聞こえ、ハミアは確信した。
「二人とも!」
「ハミア?」
「どうしたんだ?」
安堵している二人の顔が見えた。
「早くそこから離れろ!その位置は・・・・・」
慌てて声を掛けるが遅かった。
「えっ?」
ルクスはハミアが言ったことが理解できなかった。
その時、足元に亀裂が入り、悠と共に落ちてしまう。
「うわぁぁぁあっっ?」
悠も何か叫んでいるが、ハミアが悲鳴を聞き終える前に二人は落ちた。
バシャァァァァアアッ・・・・!!
一秒後、ルクスは着水する。
「わぷっ!」
どうやら、下は水のようだ。
ほっとしたが、すぐに違和感に気付く。
「お湯?」
ルクスはそこで気付いた。
目の前には肌色ばかり。
加えて、湯気がそれを覆っていることに。
「おい変態。死ぬ前に、何か言い残すことはないか?」
下から声が聞こえてくる。
かなり怒っていることが分かる。
当然だ。
ルクスが、見てしまっているから。
広い浴槽の中で、彼女の体を包んでいたタオルがはだけて、艶めかしい裸身を。
お湯を弾いてふるふると震える、かわいらしい膨らみかけの胸。
浮き出た鎖骨ときゅっと引き締まった腰のくびれ。
そして、つるつるしたお腹の下まで、くっきりと。
ルクスは混乱した頭で、慎重に言葉を選ぶ。
「・・・・・えっと、その。可愛いですよ。全体的に子供・・・いえ、幼い感じなのに、胸は結構あってですね・・・・エロいです!」
自分の言っていることが理解できないまま、ルクスは固まってしまう。
「いつまでわたしの上に乗っているつもりだこの痴れ者があぁぁぁあっ!」
全裸の女の子は怒声を上げた。
「キャアアアァァァァア!?」
同時に、浴槽の全体から、黄色い悲鳴が上がる。
裸身の少女たちが、次々とその場にあるものを、全力で投げてくる。
「ご、ごめんなさいいいいいっ!」
「なんであそこから落ちるんだよっ!?」
逃走を開始すると、隣に悠が走って来た。
彼も同じ目にあったらしい。
風呂桶、椅子、石けん。様々なものを投げつけられ、ルクスと悠は洗い場の方へ撤退する。
さらに、ポシェットが開いてしまい、中から白い上下の下着が二枚出てきた。
「キャアアアッ!下着ドロっ!覗きの上に下着ドロよっ!」
「衛兵を、誰か衛兵を早く呼んでッ!」
「剣を取ってきて!今なら正当防衛が成立するわ!」
二人は急いで脱衣所を抜ける。
罪が増えているような気もするが、今はそれどころではない。
「誰か捕まえてッ!逃がしちゃダメよ!」
なんとか危険地帯を抜けるが、今度は正面から鉢合わせとなってしまった。
「いたわよ!うちの子の胸を触った痴漢はこっちよ!槍を持ってきて!」
「おいルクス、何で話が大きくなってんだよっ?」
「僕が知りたいよっ!」
建物のエントランスまで辿り着いたが、目の前には三人の帯剣した少女が立っていた。
「
静かな声が、その三人の一人である凛々しい顔の蒼髪の少女から、発せられる。
容姿も雰囲気もまったく異なる、三人の少女。
共通しているのは、制服と剣帯を身に纏っている事。
「学園の内外に問わず、上官の許可なく
広いエントランスによく通る声で、少女は微笑む。
ルクスと悠は混乱した。
だが、少女の話は続く。
「ふぅむ。変態にしては今までで一番いい顔つきをしている。私の見合い候補に加えたいものだ。しかし、残念だったな。この女子寮へ忍び込んで、私たち、
「は!?女子寮?」
悠はますます混乱した。
「やるぞ。ティルファー!ノクト!」
「おっけー!」
「Yes,mylord.ですが、一応気をつけてください。シャリス」
シャリスと呼ばれた蒼髪の少女と、その両脇に佇んでいた、二人の少女。
その三人が、一斉に件の鞘を払った。
鈍色の刀身に、輝く銀線が浮かんだ剣、
「まずいっ!」
悠が驚愕した時、シャリスの声が響いた。
「来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》!」
シャリスが振るった剣先が歪み、光の粒が集まる。
うねりを帯びて、一つの実体を形成する。
現れたのは、人を二周りほど大きくしたような、機会の竜。
鋭角な金属が連結され、無数に折り重なった、流線型のフォルム。
「やっぱりか!」
悠はこの建物が何なのかを理解した。
それは、対となる
世界に七つしか発見されていない
そこから発掘されたその兵器は、過去数百年で培ってきた戦争概念を、一瞬にして覆すほどの威力を持つ。
その機竜を身に纏い、使いこなせる人間を
「
シャリスが呟くと、蒼い流線型の機会が内側から開き、無数の
シャリスの両腕、両脚、胴、頭へと部品が向かい、高速で連結、装着される。
機竜は淀みない動作で、瞬時にその身を覆う装甲と化した。
「ルクス、ここは
「えっ?」
「そして俺たちの立場は非常にまずい」
「う、うん」
「だから、お前だけでもここを離れろ」
「で、でも」
「後で合流するんだ」
「分かった」
「熱い友情は好ましいが、この場では意味はないよ」
「うんうん。覗きまでされちゃあねー」
「Yes.いずれにしろ、処罰します」
リーダー格らしいシャリスの言葉に、軽い調子の少女、ティルファーと、冷静な雰囲気の少女、ノクトが同意する。
その二人も別種の機竜を身にまとい、同様に戦闘の構えを取っている。
「はっ!」
《ワイバーン》を身に纏ったシャリスが、床を蹴って、飛翔した。
そのまま、手刀を叩きつけるがルクスはなんとか回避する。
「パワー出し過ぎ!死んだらどうするんですかっ!?」
「安心したまえ。大丈夫だろうから」
「余計に不安だ!」
ルクスは突っ込みながらも部屋を脱出した。
「シャリス」
「構わない。ノクトが追跡している」
オレンジ色の《ワイアーム》を装着したティルファーにそう告げると、悠を見据える。
「君はいいのかい?」
「なにが?」
「ここから逃げなくて」
「別にいいさ。俺には「これ」があるしな」
悠は空間に出した
「君は”D”か!?」
「ああ。さあ、通してもらおうか」
悠が銃を構えた瞬間、目の前に知り合いが立ち止まった。
落下に巻き込まれなかったはずのハミアがそこにいた。
「君、何してるのー?」
ティルファーに話しかけられている。しかも男だと思われていない。
「悠、ルクスは?」
しかし、ハミアは呼びかけには答えず、ルクスの居場所を聞いてきた。
「ルクスならそこを走って行ったぞ」
「そう」
「しかし、何でここにいるんだ?お前は落ちていなかっただろう?」
「いや、それがさ・・・」
こんな状況でハミアはいきさつを話し始めた。
「二人とも落ちたし。しかも追いかけられてったし。僕も行こうかな」
ハミアはルクスと悠が追いかけられ、誰もいないことを確認して上から侵入した。
だが、間違っていた。誰もいないと思いこんでいたのだ。
「誰っ!?」
脱衣所から出ようとした時、見つかってしまった。
ルクスたちみたいに物を投げられるのかと思ったが、そうはならなかった。
「ん?ラナ?」
そこに立っていたのは従妹であるラナ。例によって裸である。
「・・・・・れ・・・た」
しかも、何か呟いている。
「?」
「見られた」
「・・えっと、ラナさん?」
その顔には表情が無かった。
代わりにあったのは、冷たく、光のない瞳。
「・・・・・消えて消えて早く早く。さっさと消えちゃえ!」
近づくと、風呂桶を振り降ろしてきた。
「ごめん!」
一言だけ告げ、脱衣所の方に走って行く。
「・・・・・バカ」
ラナの言葉はハミアには聞こえなかった。
「っていうことなんだよ」
「お前もじゃないか!」
「別に追いかけられてないし」
「そうじゃない!」
「つまり君も、覗いた訳だ」
話を聞いていたシャリスは一言告げる。
「まあ、そうだね」
「なら、同罪だ!」
シャリスはそう言うとティルファーと共に、目の前の少年を捕まえることにした。
ハミアが悠と合流している時、ルクスは一人の少女と対峙していた。
なんとか、緑色の
だが、待ち伏せされていたのだ。
「随分可愛らしい覗き魔で、痴漢の下着ドロなのね。まだ子供じゃない」
「違うよ!それに僕は十七歳なんだけど?」
「・・・・・そう。でもごめんなさい。悪いけど、子供相手でも、犯罪者を見逃すわけにはいかないのよ」
気にしていることを何度も言われ、ルクスの心は抉られる。
だが、今はここから逃げることを優先せざるを得ない。
「はっ!」
気合いを込めて、ルクスは勝負を仕掛ける。
目の前の少女を交わす為、フェイントを左にかけ、ターンして右へ。
少女が反応できていないことを確認したルクスはそのまま走り去ろうとする。
「・・・・甘いわね」
少女の声が聞こえると同時に、天地が逆転した。
「なっ!?」
一瞬の疑問の後に、全身に衝撃が走り、ルクスの視界が暗転したのだった。
いかがでしたか?
話がまとまり次第、投稿しようと思っています。
盗作はしていないので安心してください。