色を持たない機竜   作:怠惰ご都合

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前回よりも文字数多い割には、物語はそんなに進んでないです。
申し訳ないです。


家族の絆は仲直りと共に

「じゃあ、僕は一旦別行動するね。後で合流するから、二人ともそれまで無事でね」

 

「ああ!」

 

「またね、ハミア!」

 

無事に地上へ出たハミアは二人と別れて行動する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と。まぁ、巻き込まれるだけってのも面白くないし勝手に動いてみようかなぁ」

 

二人と別れたハミアは突然、そんな事を言い始めた。

ルクスか悠が見ていれば、『悪い顔』と言いそうな顔をしていた。

 

「お、丁度いいのが来たねぇ」

 

そうとは知らず、数十人の女生徒が近づいて来た。

 

「見つけましたわよ!」

 

「大人しくしててね!」

 

本当に一週間依頼を叶えるだけなのか。

ひょっとしたら、それ以上の事を言われるかもしれない。

そんな事を考えざるを得ない程の気迫を感じる。

 

「はいはーい。折角意気込んでるところ、申し訳ないんだけれどもちょっと話聞いてもらえないです?」

 

「・・・・・な、なんです?」

 

突然の事に女生徒達は戸惑いつつも、一応止まってくれた。

 

「えっとね、ただ鬼ごっこ・・・っていうのもつまらないでしょ?そこで提案!貴女達の中に僕を入れてもらいたいんだ。そんで、悠とルクスを捕まえるまで僕に手助けをさせて欲しい」

 

「・・・・・・」

 

「勿論、途中で逃げ出すなんてしない。で、二人にバレた瞬間、皆は僕を捕まえようとすればいい。僕は一番真ん中にいるから、ただ追いかけるよりも成功しやすいと思うんだ!」

 

「・・・・・・・」

 

この提案に、目の前の集団は相談を始める。

当然、バレた瞬間に逃げ出す事は可能だが、成功率は低くなる。

彼女たちからすれば、難易度は低くやりやすくなるだろう。

僕としても、二人にバレなければその間は安全なのである。

 

「・・・・いいでしょう。その申し出を受けましょう。ですが、あくまでも『休戦』ですよ‼」

 

「解ってるって‼」

 

交渉は成功。

これで少しの間、僕が危険に晒される事はないだろう。

その分、悠とルクスへの危険度は増すだろうが、まぁ問題はないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠、ハミアいた!?」

 

「いや、見てない‼」

 

「・・・・まさかもう捕まって!?」

 

ハミアが交渉により、自身の安全を確保した頃、そんな事は知らないルクスと悠は、困惑していた。

 

「落ち着けルクス、 あの(・・)ハミアの事だ。まだ無事だろう。それよりも今は・・・・・・っ‼」

 

「また来たんだけどっ‼」

 

ハミアと合流できない事に慌てつつ、隠れては逃げるを繰り返していた。

 

「・・・・おいルクス、あれって」

 

「・・・・・・うん。ひょっとしなくてもハミアだよね?」

 

「・・・・・だよな。女装までして何やってんだ?」

 

そんな時、目前に迫った集団の中に女装したハミアを見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してんのハミア!?」

 

ルクスの叫びが聞こえるや否や、ハミアは再び逃げる立場に戻る。

 

「待って待って‼こんなに早くバレるなんて予想外だよ!?」

 

その言葉の通り、ハミアは再び集団に囲まれる。

だが、ここから逃げる事も不可能ではない。

何しろ、この状況から『逃げない』なんて一言も言っていないのだから。

何しろ手紙を取られなければいいのだから、方法はいくらでもある。

だから大丈夫・・・・・なはず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・あぁ~、疲れた」

 

なんとか抜け出せたハミアは、二人との合流を果たした。

 

「あははは・・・」

 

「ったく‼自分だけ助かるために交渉するなんてな」

 

「別にルール違反じゃないからいいでじゃんか。・・あぁ、苦しい」

 

そして三人は男子寮に戻っていた。

下手に外で走り回るよりも、元の場所に戻る方が安全だと考えた為である。

 

「でもさ悠、似合ってたよねハミアの女装」

 

「そうだなぁ。一瞬見間違えたぞハミアちゃん(・・)?」

 

女装道具を片付けているハミアを見て、二人はニヤニヤと笑う。

 

「くそぅ、勝手な事しないでよね。あまり楽できなかったじゃん」

 

「おい!?先に勝手な行動したのはハミアだろ!?今回に関しては俺たちは悪くないと思うんだが!?」

 

「ちょっと二人とも!?静かにしてないとバレるよ!?」

 

軽いからかいが言い争いに変わりかけたところでルクスが止めに入ると。

 

「ハミア~?どこじゃ~?」

 

廊下からマギアルカの声が聞こえた。

 

「えっ!?あの人なんで参加してんの!?つかどうやった!?」

 

声が聞こえた瞬間、ハミアは身構えて扉の外を確認する。

 

「・・・・」

 

「・・・・・よし、行ったか」

 

声が遠ざかったのを確認したハミアは静かに呟いた。

 

「・・・・む、そこかぁ!?」

 

しかし、安心したのも束の間。

遠ざかったはずの声と共に、勢い良く扉が開かれる。

狭い部屋には、呆然とする三人と、高らかに笑うマギアルカ。

端から見れば笑えるが、当事者からしたら今すぐに逃げ出したい、そんな場面だった。

 

「・・・・な、ここ男子寮だぞ!?」

 

我に返ったハミアがそう尋ねる。

 

「安心しろ、わしは気にしない‼」

 

「こっちが気にするよ‼そもそも、なんで判った!?あんた実は透視できんのか!?」

 

「馬鹿な事を申すな。わしにそんな器用な事ができるとでも?」

 

「・・・・うん」

 

「・・やりかねないな」

 

ルクスと悠は納得している。

確かにこの人なら当然のようにやってのける気もする。

僕もそれには同感だ。

しかし、まったく予想していなかった答えが僕を襲った。

 

「わし程のレベルになれば、ハミアとラナの事は“匂い”で判断できるわ‼」

 

僕はその一言に、今度こそ言葉を失った。

人間のはずなのに犬並みの嗅覚とか、最早親バカとか子煩悩を通り越して変態じゃないか。

 

「くそぅ、このなったら仕方ない。二人は早く脱出して‼」

 

その一言だけで悠は全てを察してくれた。

やはり、こんな時に頼りになるのは悠。

彼は自分の立場をよく理解している。

 

「・・・・行くぞルクス、走れっ‼」

 

「でもっ!?それじゃハミアがっ‼」

 

勿論、ルクスにもいいところはある。

だが、今はそのタイミングではないのだ。

 

「いいから急げっ‼」

 

「ハミアぁぁぁぁっ‼」

 

ルクスの叫びが廊下に響き渡る。

 

「さてハミアよ、聡いお主なら覚悟はできておるな?」

 

「・・・・出来ることなら、したくなかったけどね‼」

 

残された二人に待つのは過酷な攻防戦。

正直、どこまでできるか解らないが、素直に捕まるのはゴメンだ。

精一杯抵抗するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・うんまぁ、そんな気はしてた。

あの狭い空間でこの人から逃げられないぐらい把握していた。

結論としては・・・・・捕まった。

それはもう、呆気なく。

獲物を狩る目をしていた。

何より、機竜に乗ってる時よりも、動きが速かったような気がする。

まぁ、今更文句を言ったところで手遅れなんだ。

とにかく今は、変な依頼が来ない事を祈ろう。

 

「さぁ、それで?どんな依頼なの?命令書を取られたんだ。一週間、何でもやるよ」

 

「・・・・なんじゃ潔いのぅ。少しつまらんわ」

 

「何か言った?」

 

「いや別に。気のせいじゃろう」

 

いやいや、どう考えても気のせいじゃないだろう。

はっきり言ったぞこの人。

しかし確かめてもしらを切るばかり。

こうなったら、もうほっといた方がいい。

 

「ところでさぁ、なんで制服着てんの?」

 

ここで僕は、さっきからずっと気になっていた事に触れる。

 

「うむ、実は『参加したければ着用しろ』とレリィに言われたのでな‼」

 

・・・・うーん、さらっと凄い事言うな。

いや確かに若いが、制服着るのは少し無理がある気がする。

まぁ、第一印象で『保護者は?』なんて聞かれた事もあるくらいだし。

多分大丈夫・・・・だと信じたい。

 

「・・・・ハァ。で、決まった?」

 

「うむ!『家族三人で水入らず』やはり、これに限るな‼」

 

「えっ!?」

 

「いつもは仕事や雑用で三人揃う事がないであろう。その事で悩んでおったタイミングで、レリィとシャルが男子争奪戦を行うと知ったのでな‼」

 

レリィは簡単に想像できる。

だが、『シャルさん』は会ったことがないからわからない。

・・・・・・いや、思い出した。

確か悠たち“D”がいるミッドガル学園の学園長で、シャルロット・B・ロード。

マギアルカ、レリィとも仲が良く、ここ王立士官学園(アカデミー)の真横に学園まで建てた変人・・・・もとい奇特な人。

背丈もマギアルカさんと同じぐらいだった気がする。

まぁ、三人揃って似たような性格をしてる為に、昔から様々な事をやらかしている・・・・というのは秘密の話。

 

「じゃからロロットに『七竜騎聖』の代理を一週間程頼んできたわ‼」

 

ロロットさん、そのうち窶れて倒れるんじゃなかろうか。

因みにロロットさんとは、マギアルカさんの秘書だ。騎竜適正こそないものの、マギアルカさんを支えている苦労人。

また、さらっと会話に出てきた『七竜騎聖』は、幻神獣(アビス)や七つの遺跡(ルイン)に対抗するために、各国から選ばれた七名の装甲機竜(ドラグナイト)の代表だ。

加えて、独自の権限で遺跡(ルイン)の調査を行い、有事の際にはその脅威への対抗戦略として活動する精鋭部隊なのだ。

隊長の名前は・・・・・マギアルカ・ゼン・ヴァンクリーフ。

そう、今まさに目の前でしゃべっている人だ。

言わずと知れた大財閥、ヴァンクリーフ商会の当主で世界等級順位(ワールドランク)一位。

武芸にも精通していて、フィルフィの武術の師匠だったりする。

とにかく凄い人なのに・・・・本当になんでここにいるのか不思議でならない。

 

「いやいや、強引にも限度ってもんがあるでしょ!?マルカフィル王国の人達、なんか言ってなかった?」

 

「確かに色々と言っておったが、承諾しなければ『七竜騎聖』を止める上に、様々な契約・貿易を打ち切ると言っておいたぞっ‼」

 

「脅迫までしたんだ!?」

 

「ロロットの奴も、なにやら疲れた顔をしておったな。疲れておるなら休めばよいのになぁ」

 

「疲れさせてる当の本人が何言ってんのさ!?」

 

「まぁ、それはいいとして。ラナにも話したら楽しみにしていたぞ」

 

こっちの気持ちも知らず、嬉しそうに話し続ける。

 

「・・・・とはいえ。命令書を取られたし、ラナも乗り気かぁ。やらない訳にはいかないよねぇ」

 

「嬉しい事を言ってくれるではないか‼ならば休暇中、わしの事を“お母さん”と呼ぶのだぞ?ラナも納得しているからのう」

 

・・・・まずい、凄い勢いで難易度が上がっていく。

このままではどこまで行くか判らない。

いっそのこと、今から取り返した方がいいかもしれない。

そんな事を考えていると、非情にも争奪戦の終了を告げるチャイムが鳴り響く。

 

「さぁ、諦めよ」

 

「・・・・お母さん、かぁ」

 

うっかり呟いてしまった。

当然、マギアルカ(この人)が聞き漏らしてくれるはずがなかった。

気づいた時には手遅れだった。

 

「ついに言ってくれたな‼嗚呼、この瞬間をどれ程待ちわびた事か!?」

 

「・・・・・な、何の事?」

 

一応とぼけてみるが、それは意味を成さなかった。

今までに見た事がない程、目が輝いていた。

 

「誤魔化しても無駄じゃ‼さぁ、もう一度言うのだ‼」

 

「・・・・は、恥ずかしいんだけど」

 

顔が赤くなっているのが自分でも解る。

それでもお構い無しに、この人は止まらない。

 

「何を言うか。今まで『さん付け』と他人行儀な呼び方をされても我慢してきたのは、全てはこの日の為!」

 

「・・・・それでも呼べない。だって僕は、貴女を怪我させたんだよ?五年も前の事だけど、僕はまだ!」

 

「その事ならばとっくに話したであろう。怪我なら治ったし気にしておらん、と」

 

本人はこう言ってくれるけど、僕自身、未だに悔やんでる。

そう、全て真実だ。

引き取られて暫く経った頃、僕はマギアルカさんを傷つけた。

認められたい、たったそれだけだったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「珍しいのう、どうかしたのか?」

 

「・・・・別に」

 

最初は単なる気紛れだった。

見てるだけのつもりだったのに、気づいた時には何か手伝いたいと考えてしまった。

 

「ここにいても構わんが、大人しくしているのじゃぞ」

 

書斎で書類と向き合いながらそんな事を言われた。

 

「・・・・・」

 

やることもなく黙りこくっていたが退屈だった。

丁度そんな時だ。

マギアルカさんが少し困っている素振りを見せたのは。

 

「・・・・どうしたの?」

 

「うーむ、ちと本を探しておっての」

 

「・・・・どんな本?」

 

「うむ、装甲機竜(ドラグライド)に関する古文書じゃ。いざ必要な時程、見つからなくてのう」

 

「・・・・ふーん」

 

マギアルカさんに見習って、僕も書斎を見渡してみる。

すると、本棚と本棚の間に挟まっているのを確認した。

 

「・・・・ん」

 

回収してすぐに手渡した。

 

「なんじゃ、手伝ってくれたのか。助かったぞ」

 

「・・・・」

 

感謝された事が恥ずかしくて、僕はすぐにその場を離れようとした。

そのタイミングで、足元に置いてあった本に躓いてバランスを崩してしまった。

 

「・・・・あっ」

 

「ハミアっ!?」

 

しかし、そこに床の硬い感触はなかった。

代わりに感じたのは、マギアカの体温だった。

そう、彼女が下敷きとなり、僕を受け止めてくれたんだ。

 

「怪我は・・・ないか?」

 

「・・・・うん」

 

その時はどうすればいいか判らなかった。

突然の事で、気が動転してしまった。

 

「ならよい・・・・・くっ!」

 

「・・・・どう、したの」

 

「何、背中を打っただけじゃ。大したことではない・・・・・っ!」

 

「・・・・ごめんなさい」

 

「もう一度言うぞ。お主が怪我をしていなければそれでよいのだ」

 

マギアルカさんは僕の頭をやさしく撫でて、そう言ってくれる。

 

「・・・・ロロットさん、呼んでくる‼」

 

いても立ってもいられなくて、僕はロロットさん呼びに書斎を後にした。

 

怪我自体は大したことなく、打ち身だけですんだ。

僕はその後の事は覚えていない。

ひたすら泣いて、泣き疲れて寝ていたそうだ。

 

「貴女はそう言ってくれるけど、それでも僕は自分が許せない。許せない間は、僕に貴女を“お母さん”って呼ぶ資格はないんだっ!」

 

僕はマギアルカさんに背を向け走り出す。

後に残ったのは、ただ立っているマギアルカと、授業開始を知らせるチャイムだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元々ラナは僕の従妹で、兄が一人いた。

その名前はネレク。

あの時、現れた男だ。

僕たち三人は仲良しで、いつも一緒に遊んでいた。

それがずっと続くと思っていた。

でも、楽しかった日々は呆気なく終わりを迎えた。

 

僕と僕の両親、ラナ、ネレク、二人の両親の七人で当教会に祈りを捧げ、帰路についた時のこと。

突如、アーカディア帝国の機竜使い(ドラグナイト)が現れ、当時まだ子供だった僕たち三人を拉致しようとした。

四人の大人が懇願するも、機竜使い(ドラグナイト)たちは嗤うだけで相手にしなかった。

そして、懇願している両親たちの命は、いとも容易く奪われた。

僕の目には、大量の血を流して倒れたままの両親が映った。

ラナが必死に呼び掛けても返事をしない両親たち。

後に残ったのは、泣き叫ぶラナと茫然と立ち尽くす僕、そして黙ったままのネレクと機竜使い(ドラグナイト)たちだった。

機竜使い(ドラグナイト)たちの笑い声が響く中で一人だけが現実を受け入れていた。

彼は、いつも『御守り』だと言って肌身離さず持っていた灰色の機攻殻剣(ソード・デバイス)を抜いて、黙ったまま男たちの息の根を止めた。

 

「・・・・・お前たちはさっきの教会に戻れ。この出来事を神父に伝えるんだ。この手紙を見せればすぐに匿ってもらえるだろう」

 

彼はそう言って一通の紙を差し出してきた。

僕は受け取る事しかできなかった。

 

「・・・・・・・お兄ちゃんは?」

 

ラナは顔を上げて尋ねる。

 

「俺は・・・・・行かない。俺には、お前たちと共に行く資格がないから」

 

ネレクの答えにラナは再び顔を伏せた。

そこから先はこの前の夢と同じ。

彼の姿が見えなくなった後、僕は泣き続けるとラナと共に教会に戻った。

手紙を見た神父はすぐに対応した。

まるで、こうなる事が解っていたかのような。

その後、偶々教会に来ていたマギアルカさんに拾われ、ラナと一緒に彼女の養子になった。

そしてルクスたちと共に革命を起こしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業中も五年前の事を思い出していた。

教官が何か言っていた気がするが覚えていない。

 

「やぁハミア」

 

「遅かったな」

 

気づけば男子寮に戻っていた。

 

「ん、まぁね」

 

「そういや、ハミアは誰にやられたんだ?」

 

「・・・・・やられた?」

 

その一言に違和感を覚える。

 

「それがさぁ、ルクスなんだけど・・・・・・・」

 

そう言って悠は、今回の争奪戦でのルクスがやった事を語り出した。

曰く、一緒に行動していては危険だと感じて別行動したらしい。

まず、リーシャにルール違反すれすれで捕まりそうになった。

次に、ケーキ目当てのフィルフィに体術で負け。

最後に、隠れた場所が女子の更衣室『騎士団(シヴァレス)だと知らず、覗いた上にクルルシファーに一杯食わされた・・・・とのこと。

 

「ちょっと悠!?」

 

「ハハハハ、本当かルクス!?また覗いたのかよ、全然懲りてないんだな。しかも簡単な仕掛けに騙されるとか!あー、腹痛い」

 

ルクスは慌てて止めに入るが、時すでに遅し。

僕はお腹を抱えて笑っていた。

 

「悠だって、簡単に捕まったんじゃないか!?」

 

仕返しとばかりに、今度はルクスが話し始めた。

どうやら、今度は悠についてのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ふぅ、一体どこにあれだけの人数がいたっていうんだ。普段は見かけなかったぞ」

 

ルクスと別た後、悠は茂みの影に隠れて女生徒たちをやり過ごしていた。

そんな時は背中に、どんっ・・・・と何かとぶつかったような衝撃を感じた。

恐る恐る振り替えると、そこには桃色の神をツインテールに結んだ十歳ぐらいの女の子が立っていた。

 

「・・・・えっと、君は?」

 

驚いたあまり、そんな事しか聞けなかった。

 

「やった・・・・やっと見つけたの!ねぇ、あなたの名前は?」

 

「物部悠・・・・だけど」

 

「モノノベ、ユウ・・・・ユウ!覚えたの!ティアの、ティアの旦那さま!」

 

「はぁっ!?」

 

呆気に取られていると、ティアと名乗った少女は勢いよく抱き付いてきた。

その衝撃で、胸ポケットに入っていた権利がはらり・・・・と宙を舞って、そしてゆっくりと着地した。

 

「ユウ、これは何なの?」

 

ティアが拾ってしまった。

 

「ティア!悪いがすぐに、それ返してくれ!?」

 

命令書を返してもらおうと手を伸ばすが、残酷にも争奪戦は終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だよそれ!?人の事言えないじゃなか‼てか悠、もうロリコン‼犯罪でしょ‼・・・・・・はぁ、笑い過ぎて死ぬかと思った」

 

「・・・・くぅ、油断した」

 

「ていうかさ、二人は何でお互いの事知ってんの?確か、別行動してたんだよね?」

 

そこで僕は、さっきから気になっていた事を口にする。

 

「「三和音(トライアド)‼」」

 

二人の答えは奇しくも同じだった。

 

「・・・・・成る程。じゃあ、僕はちょっと出てくるねぇ」

 

悔しそうな二人を尻目に僕は部屋を出た。

出てすぐに、ラナと会った。

どうやら廊下で待っていたようだ。

 

「ハミア君、依頼受けないの?捕まったんでしょ?」

 

「・・・・うん、マギアルカさんにね」

 

「知ってるわ。本人に聞いたもの」

 

「な~んだ、意地悪だなぁ」

 

「・・・・まだ、あの事を気にしてるの?もういいじゃない、本人だって気にしてなかったわよ?」

 

ラナも知ってたのか。

恐らく、マギアルカさんから聞いたのだろう。

 

「でも・・・・・・」

「ハミア君、資格なんていらないと思うの。あの人はもう気にしてない。それどころか、手伝ってくれて嬉しかったそうよ」

 

「・・・・」

 

「どうせ一週間だけなんだから、試しに呼んでみたらいいじゃない。何もしないでいるよりも、やって後悔する方が諦めもつくんじゃない?お母さんなら、今は食堂にいるはずよ」

 

・・・・決めた。

せっかくラナがここまで言ってくれたんだ。

 

「・・・・そうだね。ありがとう、伝えてくるよ」

 

「うん‼」

 

ラナに・・・・妹に励まされてしまった。

まぁ、普段マギアルカさんに迷惑かけている訳だし、親孝行するにはいい機会だ。

僕はマギアルカさんのいるところへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂にはマギアルカさんしかいなかった。

このタイミングなら、伝える事ができるだろう。

 

「・・・・・ハミア」

 

「・・・その、さっきはごめん」

 

「いいんじゃ。わしの方こそ強制して悪かったの。依頼とはいえ、拒否する事もできたのに」

 

「マギアルカさん・・・・・いや、母さん。依頼受けるよ。一週間よろしくね」

 

「・・・・・そうか」

 

そう言って母さんは、嬉しそうに笑った。

せっかくの一週間。

楽しまなければ損というものだ。

この期間だけでも、少しは恩返しをしようと決めた。




次回は戦闘シーンがあるか判りませんが、まぁ進めてみます。
それでは、また‼

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