色を持たない機竜   作:怠惰ご都合

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前回から半年以上が経過しての投稿。
楽しみにしていて下さった方々には、お待たせして申し訳ないです。
今回で、原作2巻の半分まで進みます。


絆の在り方

依頼を受けた日の翌日。

呼び出されたのは昼食のタイミングだった。

依頼だから、まぁ多少の事は許容できる。

初日という事で、要求は軽い内容だろう。

・・・・・・そう思っていた自分が甘かった。

 

「さぁハミア、次は膝枕じゃ‼早く横になれ‼」

 

「・・・・・・」

 

前言撤回、我が母上は初日から飛ばしていました。

 

「そう恥ずかしがるでない。ラナを見よ」

 

「・・・・や、やったー」

 

言われた通りに見てみれば、顔を真っ赤にしながら、見事な棒読みをしているラナ。

・・・・うん、しっかり恥ずかしがってますよ、お母様?

 

「おお、よしよし」

 

「・・・・ぅ、ぅぅ」

 

今度は泣きそうな顔をしている。

このまま放置してれば、何かの切り札(ネタ)として使いえるんじゃ・・・・・・

 

「お母さんお母さん、ハミアくんも早くやってもらいたいって」

 

なんか凄い事言い出しちゃったよ、ラナさん。

嗚呼、今すぐにでも抜け出したい。

 

「安心するがいい、ハミア。気持ちは確と伝わっているぞ。恥ずかしいなら、いい子いい子してやろう‼」

 

まずい。

難易度が一気に上がっていく。

というか、凄いやお母さん‼

・・・・・・僕の気持ち、全然通じてないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日目、初日と同様に昼食をとり、午後の授業。

内容は校内対抗戦に向けての実技訓練。

経験を積むにはもってこいだろう。

・・・・が、それは、通常通りでの場合に限った話。

今回の異なる点を上げるなら、王都の軍より三人の機竜使い(ドラグナイト)が臨時講師として派遣されてきている事だろう。

何故なら、急に入った話だから。

確かに、戦い方を知るには現役の意見が必要だ。

そこは理解できる。

・・・・しかし、女生徒たちを見るあの“目”が気に入らない。

 

「・・・・・・どうやら、二週間程前に王都で行われた軍事演習で、三年生に色々と教えられたらしいよ」

 

隣にいるルクスがこっそり教えてくれた。

 

「・・・・でも、更正するどころか悪化してるように見えるよアレ」

 

言いながら、ルクスに訓練風景を見るように促す。

荒い絡み、罵声、怒号・・・・それらは自分のストレスを発散させる為だけに行われているのだろう。

 

「・・・・ゴメン、もう限界」

 

「ん。やり過ぎないでよ。年上は労ってやらないとな」

 

ルクスは三人の所へと歩いていく。

流石のルクスも限界みたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・やり過ぎだよ、ルクス」

 

「うーん、ゴメン」

 

結果、ルクスは三人組を見事に叩き潰した。

重量超過というハンデを物ともせずに、僅か数分で。

そんな話をしていると・・・・。

 

パァアン‼

 

「キャアアッ‼」

 

ライフルの発砲音と、女子生徒の悲鳴が響いた。

観客席に障壁を張っていたティルファーが直撃を受けた。

 

『おい没落皇子。今の意味が解るな?もう一度、俺たちと勝負してもらおうか。ただし、お前の攻撃は禁止だ』

 

ルクスの竜声から男の声が聞こえてくる。

彼らは“仕切り直し”をお求めのようだ。

 

「・・・・・・はぁ」

 

「ゴメン、ルクス。僕も我慢の限界だよ」

 

「・・・・じゃあ、交代だね。“気をつけて”ね」

 

「あー、善処する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだお前はっ!?」

 

歓迎は・・・・されなかった。

まぁ、されても嫌だけどね。

 

「えーっと・・・・・・おかわり要員?」

 

「ふざけるなぁっ‼」

 

「まーまー、そんなにカリカリしないでよオッサンたち」

 

 「あぁっ!?」

 

「皇子様の代わりですよ。僕はここから動かないから好きなだけ攻撃してどうぞ?」

 

「・・・・本当か?」

 

「はい、至って本気ですよ」

 

試しに一人が発砲。

僕の足元まで数センチの所へと着弾。

・・・・・・うーん、ちょっと冷や汗。

 

「動かないなら・・・・・・そこでお友達が倒れる様を大人しく見ていろ‼」

 

彼らは三人揃って観客席に発砲。

・・・・・・全然、懲りてないね。

 

 

 

 

 

しかし、いくら待っても女生徒の悲鳴が聞こえる事はなかった。

それもそのはず。

ビフロストの《空挺要塞(レギオン)》が弾を全て防いだのだから。

 

「貴様ァ!?」

 

「あっれぇ、どうして怒ってるんです?」

 

「動かないと言ったではないかぁ‼」

 

「勿論‼動いてないですよ・・・・“僕”は」

 

「屁理屈を抜かすなぁっ!?なら何故《空挺要塞(レギオン)》が起動している!?」

 

「・・・・・・暴走、とか?」

 

「愚弄するかぁ‼」

 

「そもそもの話、僕を狙わなかったじゃないですか」

 

「貴様ごときの話を鵜呑みにするつもりなど、端からないわ!」

 

「じゃ、あなた方の要望を聞く必要なんて、ないですよね」

 

何やら怒りっぽい三人組。

笑顔で答えてあげました。

・・・・うーん、今日もいい笑顔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論、僕もやり過ぎでした。

 

「・・・・僕よりも酷いと思うなぁ」

 

「善処はしたよ?」

 

そう僕としても精一杯手加減した。

なんたって、一歩も動かなかったからね。

僕自身は動かず、《空挺要塞(レギオン)》だけで制圧・・・・解決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ねぇルクス、お忙しい『王国の覇者』様がなんでここにいるのさ?」

 

「・・・・・・実はかくかくしかじか」

 

「あぁ、面倒くさいね。納得」

 

一週間の依頼が開始してから六日目。

ハミアとルクスは『騎士団(シヴァレス)』の団員(メンバー)と共に演習場の控え室へと集まっていた。

目標は第六遺跡『箱庭(ガーデン)』の調査、及び

遺跡(ルイン)付近に存在する大型の幻神獣(アビス)ゴーレムの討伐。

なお、ハミアは外の警備、ルクスは調査と役割が決まっている為、現地では別行動である。

普通であれば何も問題はない・・・・のだが、今日は今回は違った。

 

「今回の変更点は、このオレ『王国の覇者』ことバルゼリッド・クロイツァーが諸君らの手助けをするという事である」

 

なんか勝手に語り出したぞ。

ホントに偉そうだよ。

リーシャがやたらと不機嫌そうに声をかけている。

説明がいちいち気に入らないから簡潔にまとめてみた。

1.王都のトーナメントで前年三位だから自信大有り。

2.誓約書を書いたから自己責任で構わない。

3.近い将来、妻となる予定のクルルシファーが参加するから心配。

 

・・・・うーん、あんまり変わんないや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機竜を纏って出発する事、十数分。

巨大な白亜の立方体、第六遺跡『箱庭(ガーデン)』に到着した。

その巨大さに圧されるのもつかの間、すぐにゴーレムを確認した。

皆が作戦通りに行動しようとするが・・・・

 

「作戦通りというのも面倒ね。私と《ファフニール》だけで処理するわ」

 

クルルシファーは一人で戦闘を始めてしまった。

当初こそ危ないと思ったが、それは訂正した。

彼女は正確にライフルの光弾をヒットさせていく。

そして、弾がヒットする程、ゴーレムの動きが鈍くなっていく。

凍息投射(フリージング・カノン)という《ファフニール》の特殊武装なんだそうだ。

その名の通り、凄まじい速度で着弾箇所を凍結させていく。

確か神装は・・・・

 

「ちなみに《ファフニール》の神装は財禍の叡智(ワイズ・ブラッド)という、未来予知の能力らしい」

 

リーシャが説明してたからいいや。

 

その戦いぶりを見ていると、ゴーレムが咆哮を上げ、轟音と共に一閃の閃光を放った。

 

「クルルシファーさん‼」

 

ルクスが《ワイバーン》で駆け寄る。

しかし、当の本人は無傷で佇んでいた。

 

「あれは、もうひとつの特殊武装、竜鱗装盾(オート・シェルド)だ。敵の攻撃に反応して勝手に守ってくれる。その上、普通の障壁の何倍も頑丈なんだとさ」

 

まともやリーシャの解説。

うーん、楽ができていいね。

 

そしてリーシャの解説が終わるのと同時に、ゴーレムが核を撃ち抜かれ、その場に崩れた。

ゴーレムが倒された事で皆に安堵の表情が見て取れる。

 

『レーダーに敵影を確認。数は二つ!?皆さん、気をつけて‼』

 

そんな中、ノクトの報告が聞こえた。

報告通り、数は二。

幻神獣(アビス)はディアボロス。

もう一つは・・・・機竜?

確認した途端、ハミアは凄まじい速度で何かに弾き飛ばされた。

 

「・・・・・・っ!?」

 

「久しぶりですね、お元気そうで何よりです。ハミアさん」

 

「・・・・また君か、ロッサ」

 

さっきの衝撃の正体は鈍い赤色の飛翔型。

操縦者はロッサ。

さっきのディアボロスは、たった一体で小都市を滅ぼすと言われる程に狂暴。

同じ飛行系のガーゴイルよりも、危険。

 

「せっかく異性と会話しているのに、別の事を考えているなんて・・・・失礼では?」

 

「・・・・別に嬉しくないからなぁ」

 

「あら、残念」

 

ロッサは、コホンと咳払いを一つ。

 

「改めて自己紹介させて頂きます。私はロッサ、ネレク様に忠誠を誓う者です。この子はラミア、ネレク様より頂戴した私の神装機竜です」

 

「・・・・ねぇ、どうしてネレクなの?」

 

「簡単な事ですよ。ネレク様だけが、私に光を与えてくれた。私に『世界』という素晴らしい物を見せてくれた。救って頂いた恩返し・・・・ね、簡単でしょう?」

 

「つまり、僕と戦うのも“ネレク様”が仰ったからだと?」

 

「えぇ‼勿論お付き合いして頂けますよね」

 

言い終えると同時に、目の前にラミアが迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはっ・・・・・・あははははははは!凄い、凄いですよネレク様!?これさえ・・・・この力さえあれば、あなたをお手伝いする事ができる‼」

 

「・・・・っ!?」

 

戦闘開始から数分後。

ハミアは防戦一方だった。

理由としては神装を発動していないのもあるが、何より、相手の動きが速い。

武装は機竜息銃(ブレスガン)と一本の機竜牙剣(ブレード)だけだから、対応しきれない。

四つの《空挺要塞(レギオン)》も軌道を読まれ、簡単に弾かれてしまう。

 

「・・・・・無限の悪意(ランダム・マリス)‼」

 

ハミアは仕方なく、神装を発動。

あまり使いたくはなかったが、出し惜しみしている場合じゃないのは確かだ。

後は、どんな変化が起きるかが問題なだけ。

 

今回は薄緑色。

追加武装は、両肩への機竜息砲(キャノン)

今回は火力の増幅が発現。

しかし、今は接近されている為、発射すれば自分も巻き込んでしまう。

やむなく二機の《空挺要塞(レギオン)》で応戦。

もう二機は互いに融合させ短剣の形状にして、浮遊させる。

機竜息銃(ブレスガン)で牽制をしながら、斬撃を短剣と機竜牙剣(ブレード)で受け流す。

 

「っ・・・・はぁ・・・・はぁ」

 

正直なところ、かなり苦しい。

《ビフロスト》も、いつ暴走してもおかしくない。

 

「・・・・しつこいですね。でも、これで終わりですよ。希望の忠節(ロイヤル・ホープ)‼」

攻めきれない事に焦りを感じたロッサは、神装を発動させようとした。

・・・・・だが、それが発動する事はなかった。

代わりに起きたのはラミアの活動停止。

つまり、飛行型であるラミアは落下を始めた。

 

「・・・・・・そ、そんな、どうして!?」

 

「・・・・」

 

彼女にも使命があるように、ハミアにも役割がある。

だから、両肩の機竜息砲(キャノン)を発射。

目標は、彼女の落ちる先。

つまりは地面。

狙いは、爆風による落下速度の緩和。

何も起きなければ、彼女は助かる。

無傷とはいかないだろうが、それでもそのまま落ちるよりはマシなはず。

そう、“何も起きなければ”だ。

 

突如現れた灰色の機竜によって、機竜息砲(キャノン)が受け止められた。

 

「・・・・・・かはっ!?」

 

爆風も起きず、ロッサは地面に叩きつけられる。

 

「・・・・ネレク」

 

「やあ、また会えて嬉しいよ・・・・ハミア」

 

「どうして、受け止めた?あのまま着弾していれば、彼女は助かったはずだろうが‼」

 

「その必要はないからさ」

 

「・・・・どういう事だ?」

 

「・・・・ネ、ネレク様」

 

ふらふらになりながらも、ロッサはネレクに歩み寄る。

落ちた衝撃で重症を負ったはずだが、関係ないように振る舞っている。

 

「・・・・もう少し、お時間を。あと少しで・・奴を倒せます・・・・ので」

 

「あぁ、もうその必要はないよ、ロッサ」

 

「・・・ですが」

 

「今日は引き上げる」

 

「し、しかし!?」

 

「・・・・聞こえなかったのか?」

 

「あなたの役に立つ為にも、今を逃す訳には」

 

「ふん・・・・お前ごときの手伝いなんて、必要(いる)かよ」

 

突如として、ネレクの口調が変わる。

 

「そ、そんな!?ネレク様、何故です!?私はこんなにもあなた様を!?」

 

「・・・・あぁ、知ってるよ」

 

「でしたら!?」

 

「・・・・迷惑なんだよねぇ。正直さ、そんな感情は求めてないんだぁ」

 

「・・・・・・ぁ」

 

その言葉が、ロッサの心を折った。

 

「だから・・・・・・さようなら」

 

そして、鞘から引き抜かれた機攻殻剣(ソード・デバイス)がロッサの体を貫いた。

 

ドサッという音と共に、ロッサは倒れた。

 

「解ったかい、ハミア?これが、さっきの質問の答えさ」

 

「・・・・つまり“用済み”って訳か」

 

「あぁそうさ。やはりお前は賢いね」

 

「ろくでなしが」

 

「・・・・さて、そろそろ失礼させてもらおう」

 

灰色の機竜は、その場を離れていった。

 

遠ざかるネレクを見ながら、ロッサは声を出そうとする。

 

(何故なんですかネレク様。わ、私は・・・・・・・・あなたが)

 

そこでロッサの意識は暗闇へと沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぁ、なんだお前?」

 

気紛れで寄った町の細い路地。

所謂、貧困街という所で俺はそいつと会った。

歩いていたら、目の前で倒れただけ。

特に深い理由なんてなかった。

ただ、自分と同じ孤独な気がしただけ。

 

「・・ったく、何やってんだか」

 

それなのに、気付けば介抱していた。

 

「・・・・・・」

 

「お前、名前は?」

 

「・・・・」

 

「ちっ、黙りかよ」

 

「・・・・」

 

「親は?」

 

少女の体がビクッと跳ねた。

 

親の事を聞いただけで少女は反応した。

今まで何を聞いても、黙りこくっていた子が、だ。

ネレクには、その反応が面白くなかった。

 

「・・・・・・ません」

 

少しの沈黙を経て、少女は突然口を開いた。

 

「あ?」

 

「・・・・親は・・・・・・いません」

 

「・・そうかよ」

 

すぐに嘘だと気付く。

本当にいなければ、さっきの反応の意味が解らない。

 

「お前・・・・これからどうすんだ?」

 

「・・・・」

 

「俺は気紛れでこの町に来て、気紛れでお前を介抱した。・・・・で、これまた気紛れですぐにこの町を出る事にした」

 

「そう・・・・ですか」

 

「それでもお前は、また倒れるまであそこにいるつもりなのかよ?」

 

「・・・・運命ですから」

 

「・・・・・・そうかよ」

 

ネレクは呆れた。

この少女は何もしようとしない。

ただ、心を閉ざして“今”が過ぎ去るのを待つばかり。

自分から行動しようと思っていないのだ。

いつでも逃げられる状況なのに、それをしようとすらしない。

それがとても、もどかしく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・どうしてなんですか」

 

「ホント・・・・・なんでかな」

 

気付けば、少女を連れて町を出ていた。

親は・・・・対価を与えればすぐに解決した。

 

「何も見てないのに決めつけるのは、もったいない気がして・・・・じゃ、納得できないか?」

 

「私に一体何を見ろと言うんですか?」

 

「“外“だ。自分が生きてるこの広い世界を見てこい。あいつらの下へ戻るか、決めるのはそれからにすればいい。じゃあな」

 

ネレクは次の町を目指して歩き出した。

小さな影が後をついてくる。

仕方なく、振り返る。

 

「なんでついてくる?」

 

「他に知らないから」

 

「気の向くままに歩けばいいだろう」

 

「私を連れ出したのは・・・・あなた」

 

「つまり、責任を取れと」

 

少女はコクンと頷いた。

 

「仕方ない、じゃあついてこい。それもお前の自由だ」

 

「『お前』じゃないです。私はロッサ、です」

 

「・・・・そうかよ。だったら、隣にこいよロッサ。後ろでうろちょろされても迷惑だ」

 

少女の影が、ネレクの影と重なる。

 

「あなたの名前は?」

 

「ネレクだ」

 

「じゃあ、ネレク様?」

 

「・・・・好きにしろ」

 

「はい‼」

 

こいつが笑ったのを初めて見た。

まったく、何が嬉しいんだか。

 

「行くぞロッサ。お前に世界を見せてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネレク様と旅をして、私はいろんな物を知った。

食べ物には多くの味や温度があること。

この世界には様々な娯楽や不条理があること。

そして・・・・装甲機竜(ドラグライド)という、戦う為の兵器があるということ。

目に映る全てが、新しくて眩しかった。

 

「・・・・ネレク様」

 

「なんだロッサ?」

 

「世界って綺麗ですね」

 

「・・・・何を今更」

 

「私を連れ出して頂いて、ありがとうございます」

 

「・・・・・さっさと行くぞ」

 

ネレク様の頬が紅くなっていく。

この方も照れるのか。

それが少し意外に感じて、笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒に旅をしてしばらく経った頃、ネレク様が人と会うようになった。

相手の顔と性別は解らない。

知ってるのは、そいつはいつもフード付きのマントで全身を覆っているという事だけ。

ただ、いつも話しているネレク様は愉しそう。

 

(違う。そこに、あなたの隣にいるのは私だ。顔も名前も知らないお前なんかじゃない)

 

何故だろう。最近、ネレク様が他の奴と愉しそうなのを見ると、胸が苦しくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嗚呼、ハミアとラナが生きていた。俺の思惑通りに」

 

ネレク様、あなたはどうして、そんなに愉しそうなのですか。

 

(また、胸が苦しくなる。この気持ちは何なの?)

 

ロッサには、その答えが判らない。

聞ける相手もいない。

(今は、そんな事はどうでもいい。私は、ネレク様の役に立てばそれで)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・うぅ」

 

「あぁ、起きた?」

 

目覚めてから真っ先に聞こえたのは、どこか呑気そうな声。

声のする方へと顔を動かせば、さっきまで戦っていたハミアが椅子に座っていた。

 

なんで、こいつが目の前にいる?

いや、それ以前に、私はどうして生きている?

 

「・・・・ここは?」

 

王立士官学園(アカデミー)の医務室だよ」

 

「・・・・どうして、助けたんですか?」

 

目の前の奴は少し黙って、答えた。

 

「なんとなく」

 

「・・・・・・正気ですか?」

 

「うん」

 

「・・・・・ふふっ」

 

「な、何さっ?」

 

驚いた、本気で言ってる。

少し、恥ずかしそうにしている。

 

「いえ、なんでもないです」

 

「・・・・・・ネレクは、君にとってどんな奴?」

 

名前を聞いただけで、胸の辺りが苦しくなる。

この人なら答えてくれるだろうか。

 

「・・・・」

 

「あぁ、話したくなければ別に・・・・」

 

「大丈夫・・・・です」

 

「ネレク様は、私の光。あの方だけが私を救い出してくれたんです」

 

そして私は、過去の事を、ネレク様に初めて会った時の事を、彼に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・そっか」

 

「はい」

 

「それで、これからどうするの?」

 

「どうしましょうね。正直、自分でもまだ決めてないんです」

 

「んじゃ、決まるまでここにいれば?」

 

「・・・・ですが」

 

「何か不都合でも?」

 

「いえ、置いていただけるのは・・・・ありがたいですが」

 

「負い目を感じてるの?」

 

「・・・・・・ん」

 

散々敵対しておいて、困ったらお世話になります・・・・・・なんて虫のいい話、周りが許してくれても、自分が許せない。

 

「・・・・ルクスを見てみなよ。自分が直接指示してそうなった訳でもないのに、帝国に困らされた皆の為に、革命を起こした。しかも、革命後は新王国の為に国民全員の雑用をこなしてる。“没落皇子”なんて呼ばれながらも笑顔で、だ」

 

「それ・・・・は」

 

「本人の言い分は“やろうと思えばできたはずなのに、止められなかったから”だって」

 

「・・・・」

 

「君とルクスの違いは直接か間接か。責任の大きさには、はっきりと差がある。でも、今はそんな似た境遇の二人が同じ場所にいる」

 

「でも・・・・彼は受け入れられている」

 

「だから君も受け入れてもらえる」

 

「そんな簡単にはっ‼」

 

「まぁまぁ、決めるのは試してみれば解るよ」

 

彼は椅子から立ち上がり、扉へと歩き出す。

 

「・・・・あのっ‼」

 

「そうそう、これ忘れ物」

 

振り返った彼は、細長い物を放ってきた。

 

「・・・・・・あっ」

 

それは、鈍い赤色の機攻殻剣(ソード・デバイス)

私の初めての所有物だ。

 

「またね」

 

バタン、というドアの閉まる音がして、医務室には私だけとなった。

 

「・・・・・・・・ネレク様」

 

私は・・・どうすればいいのでしょうか、教えて下さいネレク様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハミア君、良かったの?」

 

医務室を出た僕を迎えてくれたのは、ラナだった。

ラナは心配そうに見上げてくる。

 

「彼女はきっと、答えを見つけるよ」

 

「・・・・うん」

 

「ルクス達は戻ってきた?」

 

「いえ、まだみたいです」

 

「・・・そっか」

 

「ハミア君、まだまだ依頼すること沢山あるって、お母さんが」

 

「・・・・ん、解ってるよ」

 

「そう。じゃあ、またね」

 

ラナが離れていく。

遠くなる前に一つ言っておかないと。

 

「・・・・ラナ」

 

「どうしたの?」

 

「“娘が増えるかも”って、母さんに宜しく」

 

「・・・・ん、解った」

 

それだけ伝えて、僕は外へと向かう。

行き先は第六遺跡『箱庭(ガーデン)』。

未だに帰ってこないルクス達を迎えに行く。

外に出て、機攻殻剣(ソード・デバイス)を引き抜いて詠唱符(パスコード)を唱える。

 

 「欲せよ。希望を望みし万物の長。内に秘めし色をその身に映せ、《ビフロスト》」

 

一度、神装を解除したから色は純白に戻っている。

 

 「接続(コネクト)開始(オン)

 

機竜を装着して、僕はルクス達の下へと向かう。




今回は、ハミアの精神的な戦闘シーンと、ロッサの心境について書きました。
次の投稿はいつになるか判りませんが、待っていて頂けたら幸いです。
それではまた次回。
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