色を持たない機竜   作:怠惰ご都合

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前回同様三ヶ月以内での投稿・・・・・・はい、嘘です。ギリ間に合いませんでした。



あなたの後押しがあるから

朝日が昇って、少し経った頃。

ハミアは少女との約束通り、例の場所に来ていた。

明確な時間に待ち合わていた訳ではない。

ただ、なんとなく会えそうな気がしただけだ。

・・・・・・決してロッサと顔を合わせるのが、恥ずかしい等ではないのだ。

ただ、知り合いに姉と妹に挟まれて、あれをやれ、これをやれと扱き使われる日々に泣いているのを見た事があって、自身もそうなるかもしれないのが怖かった。

それだけだ。

今思えば、それを聞いても笑って『大変だなぁ』の一言で済ませていた自分に小一時間ばかり説教したくなる。

後は、少し考える時間が欲しくなった。

最近、戦闘というより、神装を発動する度に自分の中で何かしらを失っている気がする。

それは色々だけど、問題視しているのは大きく分けて二つ。

一つ目は記憶。

それもほとんどがラナについてだ。

名前と顔が一致しないとか、顔がすぐに思い出せなかったり。

大抵は数分後に思い出せるから、その場その場で返事をしてやり過ごしてる。

でもここ最近は、その頻度が多くて、思い出すのにも一日経過してからだったりする。

二つ目は感情。

これについては少しだが解る。

多分、神装発動の際に表出した色と関係している。

これは少し前に知った事だが、色と感情には関係性があるようだ。

感情は色で表せる、そう何かの文献で読んだから。

だから、消えてる感情は、その時に出た色で表せるモノ。

「なーに考え込んでるのよ。そんな柄でもないでしょうに」

 

「うわぁ傷つくなぁ・・・・あ、久しぶり」

 

とりあえず、彼女が来たから考えるのは中止。

これに関しては自分1人だけで片付けないといけないから。

周りに負担かけてまで処理するのは、違う気がするから。

 

「それで?今日はどこを案内すればいいの?」

 

「そうねぇ・・・・・・あなたに関係する場所の全部」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、いつまでそうしてんの?」

 

「・・・・うぅ」

 

あれから数時間が経って、体内時計が昼食を告げ始めた頃。

歩き疲れたハミアはベンチでぐったりしていた。

彼女は隣に座って不満げな雰囲気を醸し出していた。

お昼どうしよう、なんて考えていると、少し離れたところで、クルルシファー・ルクス・リーシャの三人が、馬車から降りて高級感のあるレストランに入ってくのを目撃した。

だが、リーシャはすぐに出てきた・・・・と思ったら窓の外から二人を監視している。

リーシャの頭で大部分は見えないが、なんかクルルシファーがルクスにくっついてるように見える。

何をしてるのか解った時には、自分の顔が熱くなっていた。

 

「ねぇ~ってば。お腹空いた~」

 

隣から空腹を告げる音が聞こえた。

音のする方を見ると、顔を赤くした少女が恨めしそうにこっちを睨んでいた。

そして突然、頭痛がした・・・・気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~、満足」

 

「いやいやあれは信じられないって」

 

さっきのルクスたちが入っていったレストランとは、反対の方向に少し歩いたところで、飲食店を見つけたハミアは少女と一緒にそこで昼食を摂った。

店内では終始、兄妹みたいに見られてた気がするが、それは本人に伝えない方がいいだろう・・・・自分の身の為にも。

それよりも驚いたのは、目の前の少女が凄い量を食べていた事だ。

本人は普通と言っていたが、あれは自分の知ってる普通とは遥かにかけ離れていた。

再びの頭痛。

今度はさっきよりも少し長い。

気のせいだと自分に言い聞かせて、僕は歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も二人は歩き回った。

ごく普通の街道から学園の前まで。

人がいるところは全て。

それはまるで、何かの下見のように感じられた。

ふと気づけば、太陽が沈みかけているところだった。

 

「あ~、楽しかった‼」

 

「・・・・そう」

 

あれからずっと、頭痛が止まらない。

治るどころか悪化してる気がする。

 

「・・・・・・ねぇ」

 

それはズキズキと、周囲の音が拾えなくなるほど。

ゆっくりと隣の彼女を見ても、何か言っているのだろうが、聞こえない。

口が動いていることしか理解できなかった。

 

「随分と苦しそうね。まぁ、私には関係ないけど」

 

それでも彼女は笑顔で話しかけてくる。

何か言わなければ、そう思っても口が動かない。

 

「今日は楽しかったわ。ありがとう、お兄さん」

 

視界が定まらない。

自分の体がスローモーションで倒れた。

彼女はそれには構わず、近くの路地に向かって歩き出そうとする。

 

「折角だから、教えてあげる。私の名前は・・・・ルゥ。またね、お兄さん」

 

彼女が、ルゥが路地に消えていくのと同時に、ハミアの意識は、深く沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして、僕はここにいるんだろうか。

いや、それ以前に僕は誰で、ここはどこなのか。

いつまで待っても、自分の求める答えは帰ってこない。

わからない。

周囲はただ暗いだけで、自分以外には誰もいない。

時間が経過するにつれて、考える事が無駄に思えてきた。

もう考えるのをやめようか、そう思い始めた頃。

 

『そう思うなら、考えなきゃいい』

 

声が聞こえた。

 

『ただいればいい』

 

ああ、そうかもしれない。

ここは居心地がいい。

 

『そう、それでいいんだ』

 

でも、足りない。

何かが。

大切な何かが。

 

『それは気のせいだ』

 

そうなのか。

 

『ああ、気のせいだとも』

 

じゃあ、この喪失感は何だ?

この心に、ぽっかりと空いた穴には何があった?

かつて、あったはずのそれは?

 

『何、言ってるんだい?そこには最初から何も無かったじゃないか』

 

本当に?

 

『ああ、本当だとも』

 

なんで解るんだ?

名前も知らない君がどうして?

 

『・・・・酷いな、自分の事だろうに。俺はお前だよ』

 

言ってる意味が、わからない。

僕はここにいる僕だけだろう。

 

『・・・・そうかい。だったら、自分の名前ぐらいは言えるんだろうな?』

 

当たり前だ。

 

『だったら、言えよ』

 

僕は・・・・・・。

なんで?

思い出せない。

 

『ほら、やっぱり言えないじゃないか』

 

そんな・・・・事が。

 

『あるはずないって?でも現に言えてないのがその証拠さ。だけど俺は違う。ちゃんと言えるんだぜ?』

 

嘘だ。

 

『嘘なんかじゃないさ』

 

あり得ない。

そう考えたら、目の前にの空間に歪みが生じて それが形に成りだして。

そいつ(・・・)は現れた。

 

『俺はハミア。ハミア・レン・ヴァンフリークだ。マギアルカさんの養子で、ラナの義理の兄。これで満足か?』

 

僕と全く同じ姿で、同じ声で、同じ顔をしている。

でも、信じない。

 

『確かにそれはお前の自由さ。でも現実を受け入れないってのはな、愚か以外の何者でもないんだぜ?』

 

・・・・・・。

 

『おいおい悲しいなぁ。自分に無視されるなんて思ってもみなかったぜ』

 

そいつはニヤリと笑った。

 

『まぁいいさ、お前も俺だしな』

 

「・・・・ねぇ・・・・くん。・・・・返事ぐらいしなさいよ・・・・くん」

 

どこからだろう。

また声が聞こえてきた。

それは自分を呼ぶ声。

優しく包み込んでくれる、どこか懐かしさを感じる声だ。

でも、誰だっけ(・・・・・)

 

『さぁ、そろそろお目覚めの時間だぜ』

 

そう言うと同時に、そいつの姿が、色が、徐々に薄くなり始めた。

それと同時に、周囲も段々と白くなっていく。

 

『ただ、これは忘れるな。お前と俺は《ハミア》だ。どっちも本物さ。またなハミア()

 

最後にそいつ・・・・もう1人の(ハミア)は、いたずらっぽい笑顔でそう告げた。

 

周囲が眩い光に包まれ、僕は目を瞑るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ハミアくん‼」

 

「・・・・・・ん、んぅ」

 

再び目を開くと、そこにアイツはいなかった。

代わりにいたのは、自分と同年ぐらいの白髪の少年と、黒髪の少年、そして少女の三人だった。

初めて会った気はしないが、名前を知らない。

 

「えーっと・・・・君たち、誰?」

 

僕はそう口にした。

その一言に三人は、最初こそ唖然としたものの、すぐに笑い出した。

 

「おいおいハミア、誰はないだろう」

 

黒髪の少年が、呆れたように告げる。

 

「そうだよ。ねぇハミア、急にどうしたの?」

 

白髪の少年が困ったように笑った。

 

「もう、ハミアくんったら。いきなりどうしちゃったのよ?頭でも打ったの?」

 

少女が、心配そうに言った。

 

「びっくりしたんだから。学園の門前で倒れてて、3日間も寝てたのよ。全く、今はただでさえ別件で忙しいって言うの・・・・・・」

 

「えーと、折角のいい雰囲気で悪いんだけど・・・・・・“ハミア”って誰の事?」

 

それまでの安穏とした雰囲気が、時間が、僕の一言で

消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・つまり、何も覚えてない、とそう言うのじゃな?」

 

しばらくして、マギアルカと名乗る人が訪ねてきた。

僕の母親だと言い張るこの人は、子供っぽく見えるのに僕よりも年上なんだとか。

 

「それは・・・・記憶喪失という事なのでしょうか、お義母さん?」

 

マギアルカの背後に控える、ロッサという名の姉がマギアルカに近寄った。

 

「うぅむ、そういう事になるかの。恐らく、精神に起因するじゃろうから、外部からは手出しができない状態にある」

 

「私たちは、ハミアが自身で快復するのを祈るしかない・・・・というのでしょうか」

 

「・・・・」

 

マギアルカは無言で頷いた。

そしてロッサは静かに部屋を出た。

 

「僕は・・・・あなた方のいう“ハミア”はどんな存在なんですか?」

 

それは、この静まり帰った空気が嫌だったからか。

あるいは、マギアルカの悲しそうな表情に対して申し訳ないと感じたからか。

それに気づくよりも先に、僕の口は動いていた。

 

「素直になれない・可愛げない・人を頼らない・・・・この三要素が強い奴じゃな。でも、根は優しくて少し面倒くさがり」

 

「変なやつ・・・・なんですね」

 

「まぁ、一言で言うならそうなるのぅ。じゃが、わしはそんな変な奴が、親として自慢で仕方ない」

 

「血が繋がってなくても・・・・ですか?」

 

「端から見ればおかしいのは解っておるよ。それでも、絆や愛情があればそれはもう“家族”じゃとわしは信じておる・・・・・・勝手にな」

 

「もしお主が、もっと詳しい事が知りたいなら、ラナたちに聞くと良いぞ。それではな、安静にしておれよ」

 

話し終えたマギアルカは、静かに退室した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マギアルカの話が僕に与えた印象は、羨望だった。

自分から聞いといて勝手な感想だが、そう思わずにはいられない。

だって、マギアルカやラナたちのいう“ハミア”は、僕であって僕ではない、完全に異なる存在だから。

自分に嫉妬するという奇妙な事を考えていた僕は、目覚めてから一度として手を離さなかった、真っ白な剣・・・機攻殻剣(ソード・デバイス)を見つめる。

そして静かに立ち上がり、そのまま部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大勢の人混みに紛れながら、やっとの思いで都市の外に出た。

特に行き先を決めている訳でもなかった。

だけど、ずっとあそこに居続けるのは違う気がした。

 

「・・・・どうするつもり?」

 

とにかく歩き出そうと、足を動かした時だった。

少し離れたところから声が聞こえた。

声のする方を向くと、そこにはロッサが立っていた。

 

「こんな事だろうと思ったわ」

 

「・・・・」

 

「『居場所がない』・・・・そう思ったんじゃないの?」

 

「なんで、わかったんです・・・・か?」

 

「私も、そうだったから」

 

そう告げたロッサの顔は、少し照れていた。

 

「実は私も、一度は居場所をなくしたの」

 

「・・・・・・」

 

「でもそんな私が、もう一度居場所を手に入れた。手に入れる事ができたの」

 

「・・・・・・」

 

「それは、一人で死のうと考えてた時よ。誰でもない、あなた(ハミア)に教えてもらったのよ?」

 

「・・・・でも、僕は」

 

「皆の知ってる“ハミア”じゃない・・・・かしら?」

 

「・・・はい」

 

「なら、見つければいいよ」

 

その言葉を聞いて、今まで俯いていた僕は顔を上げた。

 

「名前だって、居場所だって、いつだって見つけるのは自分自身。こればっかりは第三者には不可能なのよ。厄介な話よねぇ」

 

困ったように話しながらも、彼女は嬉しそうだった。

 

「僕は・・・・」

 

「うん」

 

「自分で探しに行きます‼僕だけの大切なモノを」

 

「うん、頑張れ。楽しみにしてるよ、姉として」

 

姉の笑顔を背に、僕は今度こそ歩き出した。

 




原作の2巻終了部分と3巻の開始部分を無理矢理繋げたら、“読みづらいのでは”と思いました。
・・・・思っただけです。変える気はありませんでした。
それでは、また次回‼
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