色を持たない機竜   作:怠惰ご都合

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お久しぶりの投稿です。
なんとか今年中には間に合ったとはいえ、前回から半年以上お待たせして申し訳ないです。いやホントに。


君と僕の違いは一体

 目の前では、パチパチと火花が散っている。

 少し顔を上げると、義姉(ロッサ)さんが微笑んでいる。

 

 「さっきの話の続き、してもいいかしら?」

 

 「・・・・・うん」

 

 「『必要(いら)ない』って言われた時は、当然ショックだったわ。何も信じられなくなったもの。でもね、その時にあなた(ハミア)が言ったの。“王立士官学園(アカデミー)にいればいい。受け入れてもらえるか、試してみればいい”って」

 

 「・・・・・・」

 

 「私、人を疑うのが下手なのね、きっと。だからいつも見捨てられるんだと思う」

 

 「それは・・・・」

 

 「でも、それで救われたのもホントの事。だから、今度はあなたを手伝うって決めて今こうしているの」

 

 「そう、だったんですか」

 

 僕はどうやって決めたらいいんだろうか。

 ただ、なんとなく思いついただけで行動して、目的が不明確なばかりに義姉(ロッサ)さんに迷惑かけて。

 いつ終わるかもわからないまま振り回して。

 

 「もう一度言うわ。いつだって見つけるのは自分自身よ。『早いから、もう安心』とか『遅いから周りに迷惑』じゃないの」

 

 それは確かにそうかもしれない。

 でも、それでも僕は考えてしまう。

 

 「まぁでも?だからって考える事を辞めたら、それは諦めるのと同じ。どうしても考えちゃうのは、あなたの心が素直だから・・・・私はそう思うわ」

 

 (ハミア)だったら、どう考えるんだろうか。

 ひょっとしたら、別の道を見つけるんじゃないだろうか。

 

 「さぁ、今日はもう寝る事を提案するわ」

 

 悩んでも終わらない気がしたから、素直にその提案を受ける事にしよう。

 もしかしたら、明日にはまた違う方法が見つかるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さぁ今日はどうするの?」

 

 起きて暫く経ってから聞かれたけど、未だに僕は決めれていない。

 

 「まだ、決まってない・・・です」

 

 「わかったわ」

 

 そう言って義姉(ロッサ)は突然、鈍い赤色の装甲機竜(ドラグライド)を纏った。

 

 「えっと・・・・?」

 

 「まぁ、歩くのもいいんだけど、たまには楽をしたくなるのも人間って事で、今日はコレで行こうと思うの」

 

 「えっと・・わかりまし・・・・た?」

 

 「この子は神装機竜の《ラミア》。乗り心地はそんなに悪くないはずよ」

 

 指示されるまま、差し出された機竜の手に乗る。

 

 「じゃあ、出発しましょ」

 

 彼女が言い切ると共にラミアがゆっくりと動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、自分が持つ白い機攻殻剣(ソード・デバイス)を見つめる。

 これも、使うことができるのだろうか。

 彼女のように、僕も飛んで移動する事ができるのだろうか。

 

 「使いたいというなら止めないわ」

 

 「でも・・・・・・」

 

 「不安は、当然よ。失敗もあるでしょうね。だってあなた(・・・)自身は初めてなんだから。体が覚えている・・・・とはいえ、自分自身の“慣れ”があった方が確実だもの」

 「・・・・・」

 

 「でも、だからって焦りは逆効果よ。目標もないまま、無理に挑んだところで良い結果なんて得られないと思うの」

 

 今はただ、もどかしくて、機攻殻剣(ソード・デバイス)の柄を握りしめているしかないのだろうか。

 

 「・・・・約束するわ、絶対にあなたの練習に付き合うと。だから今は、自分と向き合って欲しいな。これはあなたの旅。時間はあるんだから、焦らないで」

 

 「・・・・うん」

 

 差し出された《ラミア》の手に乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 乗っている間の風は、思っていたよりも心地良くて、空からの景色は輝いて見えた。

 

 「・・・・・・うわぁ!」

 

 その美しさに自分の口から、思わず感嘆の声が漏れた。

 

 「良い眺め・・・・よねぇ」

 

 義姉(ロッサ)の同意も聞こえる。

 

 「こうして、ただ飛んでいるだけで、気持ちいいんだもの。戦いの道具だなんて思えなくなるわよねぇ。」

 

 「・・・・」

 

 「さっきも言ったけど、焦ってはダメよ。焦る程、人は冷静さを欠くの」

 

 「・・・・・うん」

 

 「まぁでも、手探りで誰の手助けも無い旅なら、それは焦ってもしょうがない・・・・のよね」

 

 「・・・・・」

 

 「“冷静に”・・・そう言葉にするのは簡単よ。だけど、いざ行動しようとしても考えなんてそう簡単にまとまってくれない。考えがまとまらなくて、気持ちだけが先行して、まともな判断ができなくなる。それは絶対にやってはいけないの」

 

 「・・・・・・・」

 

 「だから今はゆっくり考えればいいのよ。目標なんて、そのうち勝手に出来るんだから」

 

 それは誰に向けた言葉なのだろう。

 今この場にいる僕にか?

 顔を知らないハミア()になのか?

 それとも、かつての彼女自身にだろうか。

 

 「あっ、ねえちょっと見て。あそこ!」

 

 そんな時、突然義姉(ロッサ)さんが、ある方向を指し示した。

 言われるまま、そこに顔を向けると・・・・そこには晴れた空を反射している湖があった。

 

 「う・・・・わぁ!」

 

 もっと近くで見たい・・・・そう思っているのが伝わったのか、義姉(ロッサ)さんは《ラミア》を湖の方向に向けた。

 

 「お義姉さんに任せなさーい!」

 

 その言葉を聞いた途端、

 ゴウッという風を切る音がしたかと思うと、目の前には地面が物凄い勢いで迫っていた。

 

 「・・・っと!はーい、到着っ!」

 

 もう少しでぶつかる、そんな距離まで来たと思ったらピタッと止まった。

 

 「あだっ!?」

 

 そして、急接近も急停止も予想していなかった僕は、《ラミア》の手から落ちて、そのままの勢いで地面を一回転した。

 

 「えっと、その・・・大丈夫?」

 

 流石にマズイと思ったのか、義姉(ロッサ)さんはそう聞いてきた。

 

 「ハ、アハハハハ、アッハハハハッ!」

 

 不思議と笑いがこみ上げてきた。

 なんでだろう、少し驚いた筈なのに、ぶつかりそうだったのに、この体験が心地良かった。

 

 「フ、フフッ!」

 

 それは義姉(ロッサ)さんも同じみたいで、僕ら二人はそのまま笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キラキラと太陽の光を反射する湖に見惚れて、どれ位経っただろうか。

 ふと、くうぅ・・・とお腹が鳴った。

 

 「いいわ、ちょっと早いけどお昼にしましょ!」

 

 義姉(ロッサ)さんがそう言って《ラミア》を解除しようとした時だった。

 

 「ったく、んな所に居るはずねぇだろうが、人なんてよぉ」

 

 「いやいや、ホントに見たんですって隊長!?」

 

 「そうは言っても信じられんなぁ。お前は毎度サボるための言い訳作りやがるからよぉ」

 

 「いやいや、今回はホントにホントなんですって!」

 

 「・・・・やっぱ、いつもサボってるだけじゃねぇかよぉ」

 

 そんな会話をしながら、ガサガサと草木を掻き分けて、二人の男が現れた。

 

 「相変わらず、ホラばっかり吹きやがって・・・・・・あ?」

 

 「ほら、ほらぁ!嘘ついてないっすよねぇ!ね、ね!?」

 

 「わぁーった、わぁーったっての!」

 

 「隊長、しかもアレ神装機竜じゃあないっすか!?すげえ、俺この目で見んの初めてっすよ!それが2つも!?」

 

 「仕方ねぇな。今日のサボりは見逃してやっから、アレ奪うの手伝え。片方くれてやる」

 

 その言葉に、若い男は更に目を輝かせた。

 

 「うおぉっ!?ホントですか隊長!かぁあッ、やる気出てきたぁ!」

 

 そして二人の男は、それぞれ装甲機竜(ドラグライド)を召喚した。

 

 

 

 

 




ハミアの自分探しはもう暫く続きます。
とはいえ次の投稿はいつになるか、まだ決めてません。
はい、また待っててもらえると助かります。

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