さて、なんとなくお察しかもですが、二人がリエス島に来た時点ルクスたちはいません。既に去った後の出来事になりますので、そこのところ宜しくお願いします。
「あー、癒やされるわね。うんうん、ご苦労ご苦労!!」
木陰で涼みながら言われても、なんか素直に労われた気がしないのはきっと気の所為なんかじゃないだろう。
「・・・そう思うなら、少しでも手伝う振りをしてくれてもいい思うんですけどね」
「それだとあなたの為にならないじゃないのよ。自分から言い出したことなんだから、そこは最後まで貫き通さないと格好悪いわよ?」
「・・・・・何も言えない」
「ほらほら、早く行きましょ」
「行くって、どこにさ?」
「ん!」
義姉《ロッサ》さんは山を、正確にはその上に立っている修道院を示した。
確かに気にならないといえば嘘になるが、何も今すぐでなくてもいいと思うんだ。
「いやあの、行くのはいいと思うんですけど・・・・・・・・あの距離を歩いて登るつもりで?たった今《ビフロスト》と《ラミア》格納庫に置いたばっかりなんですよ?それだと結構な時間がかかると思うんですけど」
「・・・・・」
「・・・・・・」
突如として謎の間が生まれる。ほんの一瞬の出来事たったが、その間に聞こえたのは波の押し寄せる音だけだった。
「もちろん!」
「ねぇ待って、本当に大丈夫!?今の無言はどういうこと!?ひょっとして今、登山するって気づいたとかじゃないですよね!!」
そして何事もなかったかのように、爽やかに答える彼女に問いたださずにはいられない。
「当たりまえ、じゃな・・・・い?」
「疑問形で答えるのヤメテ!?いいじゃないですか、素直に『忘れてた』って言えば!!意地張って無理に押し通そうとしなくても、からかったりなんてしませんから!」
「登るんだ・・・・もん」
「幼児退行してまで意地張らないでくださいよ!わかりましたわかりましたから!!僕は何も聞いてませんから確かに気にはなりますけどそれは明日にしましょうよ、ね?別に今から急ぐ必要もないんですから」
「・・・・・むぅ」
「登りたいのか登りたくないのかどっちですかあなたは!?」
こんなやり取りをしているうちに辺りは暗くなっていく。これだけで夜を迎えるとかもう、なんて言ったらいいかわからない。疲れのあまり、すぐに寝付いてしまったのは言うまでもないだろう。
「・・・・久しぶり」
『そんな大して時間経ってねぇだろうが』
3度目となる、
「僕から話しかけるのは、初めてだね」
『・・・・そうだな』
ずっと背を向けたまま、
「・・・・・」
言葉に詰まる。聞かないといけないことがいくつもあったはずなのに、いざとなると声にならなくなる。
『・・・・今までお前を通して外の世界を見てきたけど、一応聞いてやる。何を見てきた?』
「それ、は・・・」
『優柔不断で情けない
伝えるのは、
『そうか。・・・・・この世界はお前にとって大切か?』
「それは・・・・わからない。でも、無くなってほしくないとは思うんだ。自分がいなくなるのも嫌だけど、身近な人がいなくなるのも嫌なんだ」
『大切なんじゃないか。この世界から消えたくないし、知り合った人たちに消えてほしくもないって、つまりそういうことだろう?』
「うん」
『なら最初からそう言えってんだよ。回りくどい奴だな』
「でも、それだと君が・・・・」
『今は俺が聞いてんだよ!!お前はただ、聞かれたことを答えるだけでいいっつってんのに、口開いてんじゃねぇよ!』
「だって、それを認めたら君が、消えるじゃないか。君も
『お人好しなんだな・・・・・いや、自分に対してそれを言うのもどうかと思うけど、もうちょい
「でもそれじゃあ・・・・・」
『でもでも喧しいんだよ、それしか言えねぇのか!?いいか、お前自身が優柔不断で決められないって言うから、俺が消えてやるっつってんだ!!自分で決められない奴が、他の奴の意見に口出してんじゃねぇ!!』
「・・・・・」
その叫びに言葉が出なくなる。そしてほんの一瞬だけ、彼がハッとしたように見えた気がした。
「それだと君は、外の世界を直接見ないまま消えることになるじゃないか。そんなんで満足したって堂々と言えるのか?」
『なら、一個だけ頼ませろ。俺に、・・・・・・『
「うん、それがいい。きっと君の方が
『いいや、決めたことを変えるつもりはない。言ったよな、お前が言うから仕方なくって。お前に言い負かされたのが悔しかっただけだ』
「・・・・・・・本当に?」
『後は、そうだな。お前にとって大切な世界なら、俺にとっても大切なのかも・・・・・なんて思ってしまったからかもしれねぇな。どうせ嫌でも、そのうち本物になったときに見る世界なら、一足先に見ておいてもいいかもしれねぇだろうが』
『あぁもう!くっそ素直になんてなるんじゃなかった。お前の言ってることの方が正しいのに、図星突かれたからってムキになって怒鳴るんじゃなかった。そもそも怒鳴らなきゃ、申し訳なく思うことも、詫びとして素直になることもなかったってのによ!』
「素直なんだね。そんなこと態々気にする必要ないのに。だってさっきは僕が言い過ぎたから君が怒った訳なんだし」
『・・・・・・・うっせ』
さっきまで赤かった彼の顔が、更に赤くなる。
『だぁーもう、ほら早くしろっての!?それともアレか、俺にだけ恥かかせておいて自分だけサヨナラするつもりか!?』
「わかったって。じゃあ・・・・・・楽しんで来てね」
「・・・・うぅ」
それは、アイツを通して何度も見てきたが、直接この目で見るのは初めての世界。別に羨ましいとか、そんなのを抱いたとこは一度もないけど、そうなりかけるのもわからないでもない・・・そんな感じだ。初めての実体なのに違和感を一切感じないのは、
「よっ・・・・・あ?」
体を起こそうとしたのだが、何故かそれができなかった。別に感覚がズレてたとか、怪我してたとかではない。寧ろ原因は解り切っている。アイツを通して何度も見てきたからな。
「・・・・・一応聞きますけど、何やってんですか?」
隣でがっちりと腕をつかんで寝ている
「嬉しいかなと思って。ドキドキした?」
「あーはいはい。ウレシイウレシイ、ドキドキシマシター」
そう答えると、
「・・・・」
「そんな目で見てもダメですよ。ほらあの修道院に行くんでしょ?さっさと起きましょうよ」
なんつーか、お前も苦労してんだな。一方的に振り回されやがってとか、色々と勝手に思い込んでて、なんか悪かったな。
日々、散々彼女に困らされていた
「・・・・・まぁいいわ。じゃあ早く準備しましょ?」
準備中も朝食の時も、幸いなことに特に怪しまれることもバレることもなかった。どうせ入れ替わるのだって一日だけだ。恐らくそれまでにバレることもないだろうと安心し、
「それで、アナタはどっちのハミアなのかしら?」
隣で同じように
その言葉に思わず
「・・・・な、なんのことですか一体?それに『どっちの』って、何を聞かれてるのかさっぱりなんですけど。・・・・・・・よっと」
動揺を仕舞い込み、冷静を装って
「ふーん、そういうことするんだぁ」
どうにかして表情を隠そうと顔を伏せたのに、彼女もしゃがんで、真っ直ぐ視線を合わせてくる。
「ねぇ、ちょっと訓練に付き合ってくれない?」
そう言いながら
「いつにも増して突然ですね。どうして今なんですか?山を登るのにそれより前に余計な体力を使うのは、“らしくない”ですけど」
差し出された
「ふふっ、確かにそうかもしれないわねぇ。でも、“らしくない”のはアナタも一緒じゃないの?」
「なんのことか解りませんけど、付き合えと言うなら従いますよ。その代わり手加減は、出来ないかもですけど」
「あらあら、いつも以上に余裕のない顔ね。何か気に障ったかしら?」
「・・・・・別に。ただ、よくわからない疑われ方のままで、一緒にいたくないだけですよ」
漸く彼女が
「欲せよ。希望を望みし万物の長。内に秘めし色をその身に映せ、《ビフロスト》!」
「
現れた純白の機竜をその身に纏う。
「かつての記憶を胸に抱く愚者。迫り来る闇を打ち払わんと足掻け。いつか羽ばたかんと牙を磨き欲を貫け、《ラミア》」
「・・・・・
少し離れたその先で
そして時間の経過を待つわけでもなく、ほぼ同時に接近した。
目の前に迫りくるのは
《ビフロスト》の腕が摑まれ、そのまま引き込まれる。抵抗すれば斬撃が迫るため、特に力は入れない。無抵抗のまま引っ張られ、振り向くと《ラミア》が見当たらない。
「・・・・・・・こっちよ」
「ッ!?」
声のする方に従って顔を動かすと、そこには
「・・・・いつにも増して荒っぽいですね」
「だって避けられるでしょう、アナタなら?」
「ちょっと意味がわかりかねますね。どうしたんですか、さっきからまるで別人のように扱われてる気分なんですけど?」
こっそりと《
「気の所為なんかじゃないから安心して。だってアナタ、昨日までの“ハミア”じゃないでしょう?」
・・・・アイツと交代したことがバレてたのか。直に対面すると本当に厄介なんだなこの人。今までアイツの陰から見てたからアレな人なのかと思ってたけど、どうやら認識を改める必要があるな。
「僕は僕のままですけど、辞めてくださいよ勝手に偽物って決めつけるの。それとも、もしかしてアレですか?機竜を操縦すると性格変わったりするんですか?」
さっきまでの攻防である程度は解った。予想した通り、《ビフロスト》の操縦に関してはアイツよりも俺の方がやりやすい様だ。神装も発揮できるだろうが、恐らく義姉《ロッサ》もそれに気づいてる。タダでさえ疑われてる今なんだ、余計なことして結論付けられたくはない。
「そう、あくまでも違うと言い張るのね?残念ね、素直に認めてくれたなら対応も戻してあげようと思ってたの、に!」
《ラミア》が
「なっ!?」
「はい隙ありー」
慌てて正面に機竜牙剣《ブレード》を構える《ラミア》の、防ぐ手段を失った側面に向かって、引き抜いたばかりの
これで勝った・・・・・・・そう確信したその瞬間、俺は自分の目と耳を疑った。
「・・・・
その一言と共に《ラミア》の全身が光に包まれた。そう、ずっと神装を使えないと思っていた義姉《ロッサ》が、鈍い赤色の機竜が初めて神装を発動させたのだ。
「まだまだ終わりじゃないわ。もう少し付き合ってもらうわよ、私の気が済むまで、ね!!」
今回は、ハミア(表)よりもハミア(裏)の視点で書いてみました(ややこしいなコイツ)
更に戦闘描写の方もちょこっと入れてみました。伝わりにくかったらスンマセン。今回の最後ら辺で《ラミア》の神装を発動させてみました。具体的な内容は次回までお待ち下さると嬉しいです(実は作者の思考が間に合わなかっただけだったりします)
なんかアレですね、ハミアと《ラミア》って字面的に似てますね。一体何故でしょう(すっとぼけ)・・・・・ハッ!?そ、それではまた次回!!