結論としてはいつも通り、つまり深夜テンションです
いくつもの部屋を通り過ぎても一向に景色が変わらない。このまま進めば開けたところか行き止まりに辿り着けると考えていたが、それどころかより通路が伸びているかのような錯覚に襲われる。それ程までに広かった。まぁでも義姉《ロッサ》も少しは慣れてきたみたいだし、さっきの笑い声は聞こえなくなったしで、俺の腕は軽くなっていた。
「・・・・・思ってたより広いわね。地下があるから当たり前といえばその通りなんだけど」
「そうですね、俺もこんなに歩くことになるなんて思ってたなかったですよ」
「でっしょー?私頑張ったんだから。元々行き止まりだったのをどんどん広げて、でもバレないようにしないといけないから作りも道具も同じようなの調達したりで、忙しかったんだから!」
「あぁなんだ、そういうことだったの。それじゃ辿り着けないのも納得ね」
「結構凝ってるんだな。一人でここまでやるなんて」
「まぁ他にやることもなかったし、退屈と言えばそうなんだけど、でも話し相手が見つかったからなんとかなったわ!」
「あら社交性まで十分なんて将来有望ね」
「・・・・・・態々俺を見て言わないでくださいよ」
「えっへん!」
「それに未だに満足しないで継続してるんだから大したものよ、ね!」
「そうです・・・・・・ね?」
ふと気づいた。この教会に入ったのは義姉《ロッサ》と俺の二人だけだった筈だ。それなのに義姉《ロッサ》のでも俺のでもない第三の声が聞こえるのは何故だ?しかも気付いてないのか?ここははっきりさせるためにも試しに聞いてみるか。
「ちなみに義姉《ロッサ》さんは誰を褒めてるんですか?」
「えっ、そんなの決まってるじゃない。それは・・・・」
「一応言っておきますけど俺じゃないですよね」
「変な事言わないでよ。だってあなた、ずっと一緒にいたじゃないの!」
「じゃあ誰を?」
「当然!この・・・・・・子、を」
義姉《ロッサ》はゆっくりと声のする方を向く。それは俺の後方。そこにはまるで最初からいたと言わんばかりの表情で少女が歩いていた。
「いやぁお褒めいただき光栄です!それでね、特に拘ったのが 床の作りなんだけど・・・・・あっ、お邪魔してます!」
「キャアァァァァァアァァァァ!?」
地下故に義姉《ロッサ》の悲鳴が響く。やっぱり気付いてなかったのかこの人。
「・・・・・・うぅ」
「一応聞くけど知り合いですか?」
「そんなわけないでしょ!?」
「・・・・・ですよね」
「君、いつからいたの?」
「ついさっきよ!最初は二人の会話を聞いてるだけで楽しかったんだけど、途中から我慢できなくなって付いてきたの!」
あの笑い声の正体だったか。まったく驚かせ過ぎだ。会話に混ざりたいのはわかるけどさ、もう少し大人しく登場してくれると助かるんだよね。見てみなよ、義姉《ロッサ》なんて涙目になってへたり込んじゃったじゃん。まぁでも倒れなかっただけいいけど。でもまぁせっかくいつも通りの義姉《ロッサ》に戻って頼もしく思えてきたってのに、戻っちゃったよ。
「立てますか?」
「・・・・無理」
まぁ普通そうだよなぁ、仕方ない。
「じゃあちょっと
「いいけど、どうするの?」
「背負います。そのままだ歩けないでしょ?帯剣したままだとお互い当たって痛いから俺が持ちます」
「うぅ・・・・恥ずかしい」
「きゃあ格好いー」
「・・・・・誰のせいだと」
なんか変な組み合わせになっちゃったなぁ。
「いやぁ本当に広いんだけどさ、これ本当に最奥まで辿り着けるの?」
「大丈夫だよ、ちゃんと完成してるから・・・・・・多分」
おい隣を歩く少女、自信満々に答えておいて、なんで最後に保険かけた?そして視線を泳がせないてないでこっち見て喋ってくれる?
「うぅごめんね?もうそろそろ大丈夫だから降ろしてくれるかしら?」
「・・・・・そういうことは震えが収まってから言って下さいよ。まだ全然じゃないですか、だから駄目ですよ」
「・・・・」
俺は降ろしてもいいかと思ったんだけど、それだと過保護なアイツが後で騒ぎそうだからな。だから今のはそれを避けるために仕方なく、だ。
「お兄さん・・・・・不器用な人?」
「・・・・随分失礼なこと言ってくれるな君は。別に普通のことじゃないか」
だから残念なそうにこっちを見上げてくるな。
「そう、そうなの!この子照れ屋なのよ!恥ずかしくなるなら最初からやらなきゃいいのに、自分から提案してくるのよ!可愛いじゃない!?」
なんでアンタが賛同してんだ、否定してくれよ。もう本当に降ろして自分で歩いてもらおうか?そんでもって次に歩けなくなったとしても放置するぞ。
「・・・・・・」
ほら見てくれよ。今度は全てを悟った視線を送って来てるじゃないか。どうしてくれるんだよこれ。
「君、名前は?」
「わぁ、話題変えるの下手な人だ」
「それは自覚してるからもういいの。で、そろそろ教えてくれない?いちいち君って呼ぶの疲れるの」
偶然にも一際大きな部屋に出た。といっても特に目立つ物があるわけではなく、ただ広い、それだけの空間だった。
「あっ着いたのかしら?」
「そうみたいですね。もう平気ですか?」
「えぇ、ありがとう」
義姉《ロッサ》を降ろして
「・・・・・で教えてくれるの?」
「いいわ。あなた達の話が面白かったからそのお礼に教えてあげる。私の名前はルゥ」
なんだろう、前に何処かで聞いたような気がするんだけど勘違いかな。義姉《ロッサ》も知らないみたいだし、考えるのは後にするべきかな。
「じゃあいきなり聞くけど、ルゥはずっとこの修道院で今まで過ごしてきたの?」
「ううん違うよ。私いつもはお友達と旅してるんだけど、そのお友達が急なお仕事で遠くに行っちゃってて、だからここで待ってるの。ここを拡げてるのわ暇潰しなのよ、だってここ山の上でしょう?あまり人が近寄らないから丁度良かったの」
「・・・・・・そうか、知らないとはいえ邪魔しちゃってたんだな」
「うぅん、そんなことないの。丁度お友達も戻ってきてて、そろそろ私も離れようかなと思ってたから」
まったく気にしてないと、笑顔で答えるルゥだけどなんだろうこの感覚。信じられないとまでは言わないけどどこか心に引っかかる。
「お友達ってどんな方なの?もしよければ会ってみたいわ、ねぇハミア?」
「・・・・・・あっ、あぁそうだな。見ず知らずの人に自ら進んで道案内してくれる程優しいルゥの友達だ。ぜひ挨拶させてくれないかな?」
「わかった、呼んでくるからちょっと待っててねー!」
満面の笑みを浮かべて来た道を戻っていくルゥ。元気に駆けていくその後ろ姿を見ても、やはり何かが引っかかる。
「・・・・どうかした?」
「こんなに広いのに何もないのが不思議だなぁと思ってさ」
「これから置くつもりだったんじゃないの?見たところ完成してないみたいだし」
「他の部屋も?ちゃんと全部見た訳じゃないから、はっきりとは言えないけど、他の部屋や通路も似たような感じだったよ?」
「・・・・・ホントに?」
「うん」
事実だ。ここに来るまで見かけた部屋もここと同じで何も無かった。椅子や机、ベッドなんかも見当たらなくて、はっきり言って生活してる雰囲気が感じられなかった。
「それに、関係ないけど何か引っかかるんだよ。さっきも普通に会話に入ってきてたし、こっちが驚いても気にしてなかったじゃん?馴染むのが早かったっていう点が、個人的に・・・・ね」
「考え過ぎじゃないかしら?確かに最初は驚いたけどそれ以外は何も怪しいところなんてなかったわよ」
「それだよ。そもそも遭遇するのが早かったんだ」
「自分で開拓してたから、地形ぐらい把握してても不思議じゃないでしょう?」
「だとしても誰かが入ってきたことに気づくのって、多少は遅れるんじゃない?声を頼りに探し当てるにしたってズレがあるはずなのに、ピンポイントで来たんだよ?まるでこっちが入ってくることを最初から把握してたかのようなタイミングなの」
「偶々、勘が鋭かったとか・・・・うーん」
「そうなる、よね」
別に好きで疑ってる訳じゃないけど、素直に信じられないというのが本音だ。
まぁでも、すぐに結論づけるのもよくないとは思ってる。思い込みで動いて、違った場合は気不味くなるだろうから。ルゥもまだまだ戻ってこなそうだから、もうしばらく考えてみようかな。
「おっ待たせー。お友達連れてきたよ!お話したらみんなも二人に会いたかったんだって。だから沢山連れてきちゃった!」
「そっかぁ・・・・・・まぁでも、ちょっと多すぎかな」
結論から言えば、直感の方が正しかった。
「えー、そんなこと冷たいこと言わないでよ。皆も楽しみにしてたって言うんだから!そうだよね、ロッサさん!」
「いやでも、私もちょっと疲れてるから今の状態でこの数はキツイ、かな」
ルゥは少しむくれたようでロッサに同意を求めるも、それは得られなかった。
バサバサと羽ばたく音が、唸り声が通路から聞こえてくる。
振り向けばそこには沢山の
「もー、二人とも冷たいよ!さっきは会ってみたいとか言ってくれたから、張り切ったんだよ!それに、二人の思ってた見た目が違うかもだけど全然怖くもなんともないから。ただ少ーし
「出来れば今回は遠慮してくれると嬉しいんだけど、その辺どうかな?」
「私はそれでもいいんだけど、この子たちが限界みたいなの。だから・・・・諦めてもらうね?」
ルゥが首を傾げて断るのと同時に飛翔型のガーゴイルが、獅子の頭と山羊の胴に蛇の頭部がついた尾を持つ四足のキマイラが襲いかかる。幸いなことにディアボロスは見当たらないから多少は安心できるだろう。とはいえ数が多いから状況的にそうも言っていられない。
「・・・・ねぇハミア」
「ロッサさんどうかした?」
「この局面なんだけどさどっちだと思う?」
「どっちって・・・・あー、さっきの予想でアタリかハズレかどっちなのかって意味ね。どっちもどっちだと思うなぁ俺は」
くだらない会話をしてはいても、状況は一向に変わらない。
「そんなに逃げないでよー!?もう、この子たちは遊んで欲しいだけなんだって言ってるでしょっ!」
「そう言われても・・・・こんなに数がいるとは思ってなかったからなぁ」
「正直なところ私達、このまま外に出させてもらえれば他言しないから、ね!?」
「・・・・だーめ!そんなこと言って結局遊ばないつもりなんでしょ!?解った!そっちがその気なら私にも考えがあるんだからっ!」
拗ねたルゥはどこからか細長いもの物を取り出した。
「まさかっ!?」
それを見たロッサは慌てるが、俺にはどうもピンとこない。
「アレは
操れるとは穏やかじゃないな。自然と
「今更謝ったって遅いんだからね!」
最初から無事に脱出出来るとは思っていない。ルゥが甲高い音が鳴り響くと同時に、俺とロッサは機竜を召喚した。
「欲せよ。希望を望みし万物の長。内に秘めし色をその身に映せ、《ビフロスト》!」
「
「かつての記憶を胸に抱く愚者。迫り来る闇を打ち払わんと足掻け。いつか羽ばたかんと牙を磨き欲を貫け、《ラミア》」
「・・・・・
すぐに隣で
「あなたは参加しないのかしら?」
「私、楽しみは後にとっておく方なのよ。でも安心してよ、そんなに焦らなくてもちゃんと遊んであげるから!・・・・また今度だけどね」
それぞれ機竜牙剣《ブレード》を構えながら斬り込むタイミングを図る。ルゥは参加しないとは言っているが、あまり信用出来ない。
「それでも信じてくれないなんて、悲しいわ」
笑顔で泣き真似をしながら、ルゥは笛を口に近づける。
「こんな状況とはいえ、せっかくなんだし緊張感を持つ為にも競わない?」
「・・・・それ本気で言ってます?」
「ただ戦うだけじゃしんどいじゃない?ひょっとして余裕ない?」
「報酬次第ですかね」
「勝った方は・・・・そうね、ここを抜けた後に、次の目的地まで相手に乗せて貰う、でどうかしら?」
「乗った」
「・・・・・やけに返事が早いじゃない」
「まぁ負けないんでね。ちゃんと体力と精神力は残しといて下さいよ。運んでもらってる途中で落とされるなんてゴメンですから」
「・・・・・・あら生意気」
「じゃあ、いっくよー!」
広いようで狭い空間の中、甲高い音が鳴ると共に無数にも思える数の
久しぶりにルゥを出してみました。本当に久しぶり過ぎて前に出した時と比べて、話し方に違和感しかありませんが私は悪くありません。なのでキャラが固まってなくても仕方ないんですハイ(遠い目)
そんでもって、いつもお姉さんしてるロッサが、ちょっとビクビクしてるというギャップに挑戦してみました(まぁ結果は判りきってましたけど)
次回からは戦闘シーンから入るつもりでいます。
それではまた次回。