「おはよ、寝坊助な
目を覚まして真っ先に判ったのは、上から覗き込んでもいる
「まぁまぁだね。だけど不思議と悪い気はしない、かな」
言葉の通り、不思議と嫌では無かった。寧ろ清々しいと言った方がしっくり来るかも知れない。
「驚いちゃった、全部倒しちゃうんだもの。私てっきり半分くらいで力尽きるんじゃないかって心配してたのよ!?」
少し離れたところからルゥの不満そうな声が響いてくる。
「でもその心配ってアレでしょ?自分の楽しみが無くなるかもしれないってヤツでしょ」
「なぁんだ、バレてたの?」
義姉《ロッサ》さんの雰囲気が冷たくなった。表情こそ変わってはいないが、口調と表情が一致していない。
「あーあ、つまんないの。みーんなすんなりと倒しちゃうんだもの。もう少し苦労してくれても良かったのに!」
ルゥが静かに立ち上がり、通路から出ようとしていた。飽きてしまったのだろう、どうやり彼女は他者と協力して敵を倒すのを好んではいないらしい。どちらかというと競い合った末に残った敵を倒すという状況を、望んでいたようだった。
「もう今日は止めよ止め!これ以上やっても面白くないんだもの!じゃあねバイバイ!」
そう言い切るや否やルゥは去っていった。自分の思った通りの結果にならなかったのが余程気に入らなかったのだろうが、こっちもこっちでそれに気付ける余裕は無かった。
ただ広いだけの空間にはロッサさんと僕だけが残り、辺りも静かだった。
「思ってたより、いいヤツだったのねアイツ」
「いや、あれは良し悪し以前に、飽きてただけだったような気がしてます」
沈黙に耐えられなくなったのか、さっきまで悲しそうな顔をしていたハズのロッサさんは、しんみりしている空気をどこか他人事のように打ち消した。
《アイツ》を通して一部始終を見ていて俺は焦っていた。
やっば、どうしよ。なんでか意識消えてないし、こんなんじゃただの恥ずかしいやつになっちゃうじゃんか。ホントは
そんな中、
「えっと、あのですね・・・・・」
オイ待て何を言おうとしている、止まれ止まって止まってください!?頼むからちょっと考え直せって。どうしよう、嫌な予感が次々と溢れてくる。お願いしますから辞めてくださいって!?
「・・・・・・・・・うぅん、大丈夫よ。悲しいなんて思ってないわ。あの子が自分の意志でそうしたいって決めた結果ですもの。褒めこそすれ、怒るなんて見当違いよね」
そうそう、そのまま何も無かった体で進めるんだ。つーか、今出たら怒られるに決まってんだから。お願いだからその辺汲み取ってくれって頼むからさ!
「その、違くてですね。えっと・・・・・・・全然いますけど、
彼」
なんで言ってる先からバラすのお前は。
「・・・・・は?」
ほーらー、今の発言で今までの空気なんてどっか行っちゃったし、徐々に圧が強くなってるし。
「・・・・・いつから?」
「入れ替わった瞬間から、ですかね」
なぁ〜んでそこで正直に言っちゃうんですかねぇ!?ねえぇもうヤダよ俺。
「ちなみに・・・・・ちなみになんだけど、入れ替われたりしない?」
「・・・・・できますけど」
イヤイヤイヤイヤ、アンタ一体何しようとしてんの!?終わったじゃん、ついさっきお互いに納得して終わったじゃん!後腐れない終わり方だったじゃん!しかもハミア《オマエ》もなんであっさり許可しちゃうんだよ。もういいだろ疲れたんだってオレはこれ以上シンドいのは勘弁なんだよ!?
「何も終わってないのよ。それなのにアイツ勝手に消えて、これでいいとでも思ってるのかしら?大丈夫、全然怒ってないからちょっと言い忘れた事があるだけだから」
全然怒ってるじゃねぇかよ!しかもなんか会話してるみたいになってるし。なぁ嘘だよな、別に俺の声が聞こえてるとかそんな事は起きてないよな!?お前も何さっきから聞こえてない振りしてんだよ考えてもみろって、俺がまた表に出るって事はお前の自由が無くなるって事なんだぞ!
『いやまあ、出て来てあげてもいいんじゃないの?別に物騒なことされる訳じゃないでしょ?それに僕にも黙って消えようしてたんでしょ?』
「別にずーっとって訳じゃないのよ?ただ、ちょーっとだけ会わせて欲しいだけなの」
こういう時ばっかり息ぴったりになってんじゃねぇよ!ヤメロよ2対1で責めるの。多少一方的に去った形を取って罪悪感ある分だけ、断りづらいじゃねえかよ!あと今更気づいたみたいに反応すんな、聞こえてんのはわかってんだから最初から反応してくれよっ!?
「それともひょっとして出てくる方法が解らないのかしら?それなら私が手伝ってあげるわ、少しだけ気絶してもらうだけだから安心して?大丈夫、ほんの一瞬で終わるから」
『・・・・・・あれ?』
思いっきり物騒じゃねぇかよっ!?早く止めろ、じゃなきゃお前だってただじゃ済まないんだぞ!だって
『・・・・・・・・』
どうしてそこで黙るんだよ、納得しないでくれよ!!せめてそこは反論して欲しかったよ!
『・・・・・じゃあ、そういう事だから』
うわっ、このタイミングで入れ替わるか普通!?
そして俺は意図せず再び表にハミアとして出ることになってしまった。
「ちょ、ちょっと待って
「・・・・・・」
聞こえてないっ!?くそう、もっと呼びかけるしかないのかよっ!!
「ホラホラ戻ってきたって言ってるじゃん!イヤイヤだったけどちゃんと戻ってきたんだよ。だから大人しくしてくれよ。返事してくれよ!!」
「大丈夫よ、ちゃんと理解してるから。あなたが勝手に納得して消えようとしたんだって、私はちゃんと解ってるわ」
じゃあどうして
「聞こえてないんじゃなくて、そもそも聞いてないってそういうことなの!?待って待って本当に勘弁して、痛いのは嫌なんだよ!具体的には『ゴンッ』とか『ガンッ』とかって音が生じる鈍器系は許してって!?」
眼前に迫る
その代わり、ふわっとしたものに包まれた。
「ぇ?」
「・・・・・・良かった、良かったよぉ。また会えたよ、まだ消えてなくて良かったよぉ!」
「なんで・・・・・泣いてるんですか?」
てっきり、思いっきり殴られるとばかり思っていたからどう反応していいのかわからなかった。
「なんでって、それは・・・・」
わからなかった、どうしてニセモノと再会して喜べるのだろうか。なんで
「・・・・・嬉しいからに決まってるじゃないっ!なんで、世の中にとって自分が不要だなんて思えるのよ。そんなハズないじゃない!どっちがホンモノだとかニセモノだとか、そんなの関係ないの、私にとっては
「・・・・・」
「何よ・・・・・アナタは違うの?」
本当はもう出てくるつもりなんて無かった、なんて言える雰囲気じゃないしなぁ。
「どうなのよ?」
余計なことはしないって決めてたのになぁ。
「返事くらい、しなさいよ。でないと・・・・・・このまま抱きしめ続けるからね」
・・・・・・それは困るな。もうこの状況が恥ずかしいんだから、これ以上続けられると色々とやりにくい。後、気のせいかもだけどちょっと力が強いような。只でさえ苦しいのによりキツくなるのは嫌だし。
「・・・・・・ッ!」
あ、ほら今ちょっと強くなった。うわ思ってたよりも痛いねコレ・・・・・・苦し。
「・・・・・役目を終えたと思ってたからもういいかなって。理由はどうあれ、別れた人格とそれぞれの担当分野。どっちかが出来て、どっちかが出来ないコト。集約させるには片方に移すしかないから。どっちかが消えれば残った方がホンモノになる。だから、コレしかないなって」
「私はそんな事、これっぽっちも望んでないわよ。次勝手なコトしたら・・・・・・これ位じゃ済まさないから」
すぐ隣に見える義姉の頬には涙が伝っていた。
『ほら、まだ存在して良いってさ』
冗談じゃない。タダでさえ人と接するのが苦手なんだからこれ以上、表には出てこないって決めてたのに・・・・
『じゃあ、反抗してみる?・・・・・・無理でしょ、知ってるよ義姉さんを悲しませないように行動してるって』
・・・・・・・前から思ってたけど、いい性格してんなオマエ。正直言って関わりたくないレベルで、友人にもなってほしくないってぐらい嫌な奴。
『まぁまぁ、自分に褒められたところで嬉しくないからあんまり言わないでよね・・・・・・・で、答えは決まったかな?』
別に、
結論、ハミア(自称偽物)の出番はまだ続くことになりました。前回の後書きで伝えてたのは一体なんだったんでしょうね。あまりに予想外過ぎる展開、うーん不思議でしょうがない。
それではまた次回