進路がやっと決まったと思えば、最近は宿題やら車校やらで慌ただしくて、落ち着く時間がないんです。
それでも、更新していこうと思っています。
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
教室から廊下へ出て、階段を上る。
無人の屋上まで辿り着くと、クルルシファーは手すりに近づき、そっと眼下を見下ろした。
広い学園敷地内の景色が、ここからは一望できる。鮮やかな緑の中庭と、大きな学舎。
少し離れた場所に、女子寮と、機竜演習場、”D”の為の演習場や宿舎、機竜格納庫が見える。
そして、まだ知らない建物が、他にもいくつかあった。
ルクスが話しかけようとした丁度その時、悠が息を切らせて入ってきた。
「はぁ・・・・・はぁ」
「どうしたの悠?」
ルクスは振り返り、悠に尋ねた。
「追いかけられた」
「・・・あはは、大変そうだね」
「えっと、ありがとう。クルルシファーさん」
とりあえず一息ついたルクスは、まず礼を述べる。
クルルシファー・エインフォルクの噂は、妹のアイリから少しだけ聞いている。
勉学も、体技も、
その常人離れした美貌も含め、学園中の人間に一目置かれている才女だ。
「助けてくれた・・・・・・んだよね?たぶん」
「二人もか?」
「質問攻めにあって、ね」
「お互いに苦労するな」
「ああ」
「あはは・・・」
ハミアと悠がお互いの方に手を置いている光景を見たルクスは苦笑してしまう。
そんなルクスの耳にクルルシファーの声が聞こえる。
「子供っぽい顔の割には、以外と鋭いのね?」
「そ、それは関係ないでしょ!?何でそんなこと言うのさ!?気にしてるのに!」
ルクスが思わず顔を赤くすると、クルルシファーはくすっと笑い。
「旧帝国の王子のくせに、そうやってすぐムキになるところが、子供っぽいのよ。あなたも元とは言え皇族なのだから、こんな見え透いた挑発なんて、皮肉の一つも交えて返してみて欲しかったわ」
「・・・・・」
「そうなんだよなー、ルクスはほら、真面目っていうか」
「確かになー。まぁ悠もだけどな」
「って、二人まで何言ってるのさ!?」
ルクスがへこんでいると、
「でも、それ以外は褒めているのよ?感心しているといってもいいわ。私の意図に気付いてくれて。手間が省けたわ」
「・・・・えっと。じゃあ、やっぱり、僕たちに話があったの?」
「ええ、いくつかあるのだけど。まずはひとつ、ハミア君に」
そう言って、透き通った瞳を、ハミアに向けてくる。
「どうして昨日、あの時倒してしまわなかったの?」
「・・・・んー、どっちの事かな?」
「私は両方倒せたと思っているのだけど?それに、ルクス君と悠君も出来たと思うのだけれど?」
ルクスと悠は見透かすようなクルルシファーの視線に、一瞬口籠り、
「・・・・・まさか」
「・・・・買い被り過ぎだよ」
数秒の間を空けて、そう答えた。
「確かに、僕は
完全な防御と回避に徹し、一切の攻撃をしないスタイルから名付けられた、『無敗の最弱』の二つ名。
だが、その名が示す通り、戦績は全て引き分けだ。
ルクス一度も、勝利を収めてはいない。
「それに俺は”D”だ。機竜を相手に一人でってのはさすがに、な」
「安心して。言いたくないことまで、無理に言えというつもりはないわ」
「おいハミア」
「うん。間違いないね」
「僕達って、信用されてないんだね」
三人揃って項垂れていると、クルルシファーは答える。
「あら、信用なんてできるはずないでしょう?覗き魔に下着ドロの共犯者たちだもの」
「だ、だから!それは違うんだって!」
「あれは事故だって!」
「確かに!あれは二人の不注意が招いた事だしなー」
「ハミア!」
「お前も否定しろよ!」
三人が顔を真っ赤にして言い合っていると、クルルシファーはくすっと、微笑んだ。
同い年の少女とは思えない、気品のある笑み。
その表情に、ルクスは一瞬、ドキリとしてしまう。
「ちょっと、安心したわ」
「えっ・・・・・?」
「あなた達が、思ったより無害そうだから。ルクス君は皇族っぽくないし」
「・・・・・・・」
褒められているのか、馬鹿にされているのか、わからない口調。
でも少しだけ、彼女は楽しそうに見えた。
「それは仕方ないんじゃないのかな?」
「そうね。三人とも女子みたいだもの」
三人は再び落ち込んでしまう。
「ふふ、ごめんなさい」
「まあ、慣れてるけどさ」
クルルシファーが再び笑ったことで、三人の緊張は解けた。
「聞きたいんだけどさ、クルルシファーさんの依頼は何?」
ハミアの問いに、クルルシファーは笑顔をやめた。
「革命時、帝国を敗北へと追い込んだ『黒き英雄』を探して欲しいのよ」
「・・・・・・」
ハミアが黙って、しばらくした時、再びクルルシファーが口を開いた。
「もうすぐ午後の授業が始まるわよ」
そう言って、クルルシファーは屋上を離れていった。
「困ったね」
「ああ・・・・。昼食はまだっだたしな」
ルクスと悠が悩んでいる中で、ハミアだけは違った。
「まぁ、そんな事だろうとは思ったよ」
そう言って、ハミアはどこからかアップルパイを三つ取り出した。
「はい、二人の分」
「ありがとう」
「悪いな」
「いいって。こうなると思って朝作ったんだし。ほら時間がないから急ぐぞ」
昼食を取った三人は午後の授業に間に合ったのだった。
「・・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・」
それぞれ午後の授業を終えた三人は静かにエントランスの掃除をしていた。
三人の少女が目を光らせる中でルクスは床を、悠は窓を、ハミアは階段を担当していた。
「兄さん、まだ汚れが取れていませんよ」
「待ってよ、アイリ」
「待ちません。少しはハミアさんを見習ってください!」
「・・・・・」
アイリに言われてルクスはハミアの方を向く。
丁度その時、
「ほら、兄さん!」
「深月、休ませてくれないか?」
「兄さん!」
「わかったよ」
「まったく。ハミアさんに弟子入りしてはどうですか?」
悠と目が合った。
「・・・・・」
ルクスはハミアが静かな事を不思議に思った。
「兄さん!」
「待てって、深月」
そう言って、悠がハミアの近づくと、
「ぐ~」
寝ていた。
「・・・・・・」
「兄さん、どうかしたんですか?」
「なんでもない。ルクス、来てくれ」
どう対応していいか分からず、困惑していると深月が尋ねてきた。
すぐになんでもない風を装って、ルクスを呼んだ。
「どうしたの悠?」
「ハミアが・・・・寝てる」
「・・・・・えっ?」
「いいから見てみろ」
「・・・・本当だ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人は黙り込んでしまった。
本人に言うと怒られてしまうが、寝顔は女の子みたいだ。
「寝ながらでも掃除ができるのか・・・・」
「ひょっとして、寝ながら勉強も出来るとか・・・・・」
「さっきから、何をコソコソしているんですか?」
「まだ雑用は終わっていませんよ!」
二人はとうとう怒られてしまった。
「Yes.ハミアさんの事でしたら先程から知っています」
「えっ!?」
「じゃあ、何で注意しないんだ?」
「決まっています」
「寝ていても、掃除をこなしています。それに、夜中は一人で別の用事をこなしていますから」
ハミアが夜中も仕事をしている事に気付けなかっった二人は黙ってしまった。
「Yes.ですがこのままでは、他の掃除が終わらないと思います」
「ノクトの言う通りですね」
「じゃあ、ハミアさんを大広間にお願いします。くれぐれも気をつけてください」
ラナは三人の言葉に頷くとハミア近づく。
「ほら起きて!他の場所に案内するから!」
「・・・・あ、おはよ」
「ああ」
「おはよ。寝てても掃除ができるなんてすごいね」
「でも、いい事ばかりじゃないんだよね」
「?」
「どういうことだ?」
二人はハミアの言葉を不思議に思った。
「家事を全てやらされるんだよ・・・・」
「そ、そうなんだ」
「・・・・大変だな」
遠い目をするハミアに二人は納得がいった。
「早く!」
ラナの後ろをついていくハミア。
「兄さんは大浴場ですよ」
「なっ!?」
「急いでください!」
「お、おい」
悠も行ってしまい、ルクスは一人でエントランスの掃除をする事になってしまった。
「・・・・・ハァ」
「・・・・・・」
連れてこられたハミアは黙り込んでしまった。
「どうしたの?」
「・・・・広くない?」
「大広間だもの」
「だよね~・・・・」
「早く終わらせてよね!それから、食堂は開けちゃダメだから!」
「食堂?」」
「ダメだから!」
念を押したラナは食堂に繋がる扉の前に置いた椅子に座った。
「は~い」
そう言って、ハミアは掃除を開始した。
「・・・・・ねぇ」
ハミアはラナの前に立ち話しかけた。
「何?」
「何時までやればいいの?」
「もう少し」
「さっきも言ってなかった?」
「気のせい」
「それに食堂の中から音がするし・・・」
「気のせい!」
ガタッ!
ラナが椅子から立ち上がった。
それによって驚いたハミアはバランスを崩し、前に倒れてしまった。
ドアが開き、ラナと共に食堂に倒れ込んでしまう。
ラナが頭を打たないようにハミアは気をつける。
食堂では多くの士官候補生や”D”が何かの準備をしている最中だった。
「・・・・ダメって言ったのに」
「・・・ハハハ・・・・・」
ラナの言葉に苦笑してしまうハミア。
そんなハミアにシャリスが声を掛ける。
「ハミア君、君に与えられる選択肢は一つだ」
「・・・・知りたくないけど一応」
「君も手伝いたまえ。衣装も用意してある」
「逃げたいんですけど?」
「なるほど。つまり君は
「手伝わせてください!」
「いい返事だ。さあ、着替えてきたまえ!」
「・・・・・・」
抵抗を諦めたハミアは大人しく、シャリスについていくのだった。
「ルクス」
アイリに言われ、大広間に来たルクスは悠と会った。
「悠、君も呼ばれたの?」
「ああ。何をやらされるんだろうな?」
「さあ?ところでハミアは?」
「見てないな。もう来てるんじゃないのか?」
「そうかもね」
「二人とも身だしなみは整えて来たようですね。入りましょう」
アイリと共に二人が中に入ると、
「編入、おめでとう」
少女たちの声が一斉に聞こえてきた。
「えっと・・・・・?」
「これって・・・・・?」
正面を見ると大きなテーブルの上には、たくさんの料理や赤いワインボトル紅茶のポットまで用意されている。
「ええ、兄さん達の編入祝いとマギアルカさんへの歓迎です」
二人の反応を見て、深月が軽く微笑んだ。
小さなパーティ会場のようにセッティングされた食堂には、何人もの生徒たちが集まっていた。
リーズシャルテ、クルルシファー、フィルフィ。
ライグリィ教官と篠宮先生、マギアルカまでもが隅に座っていた。
二人はその光景が、一瞬信じられなくて少しの間、ぼうっとしてしまった。
「・・・・・あれ?」
「・・・・いないな」
「どうかしましたか?」
周囲を見渡している二人にアイリは質問した。
「ハミアは?」
「それに
「心配しなくても後から来ますよ」
アイリが言い終えると同時に数名の少女が前に出る。
「わたくしはリーザ・ハイウォーカー。これからよろしく」
「フィリル・クレスト。趣味は読書です。よろしく」
「ボクはアリエラ・ルー。弱い人は嫌いだ」
「・・・・レン・ミヤザワ・・・・・」
「あ、あたしはイリス・フレイア」
どうやら自己紹介らしい。
「兄さん?」
アイリに言われてルクスは自己紹介をする。
「えっと、ルクス・アーカディアです」
「・・・・・まあ、いいです。今、兄さんと自己紹介をした方たちが悠さんと同じブリュンヒルデ教室の生徒です」
「よっ。そのなんだ」
お互いの紹介が終わったのを確認したリーシャが、が軽く手を上げて椅子から立ち上がった。
「正直、わたしはこういう行事とか苦手なんだ。それに、何が喜ばれるのかわからん。つまりその・・・・」
赤いドレスを着たリーシャは、恥ずかしそうに顔を逸らした。
「・・・・・ありがとうございます。リーシャ様」
「い、いやっ・・・。わたしは別に・・・・・」
ルクスの笑顔にリーシャは顔を赤らめた。
「さて、そろそろ乾杯といこうかのう?」
マギアルカの一言に、皆がグラスにワインを注ぎ、掲げる。
賑やかな夜が開始された。
歓迎パーティが行われている頃、扉一枚隔てた隣の部屋では、
「・・・・・」
「どうした、ハミア君?早くしたまえ」
「・・・・本当に着るんですか?」
「はっきりしないねー」
「Yes.もう全員分の雑用・・・・・」
「着るから!」
ハミアが渋っている理由は一つ。
手に持っているのが女子用の制服なのだ。
「・・・僕は男なのに・・・・」
「ごちゃごちゃ言わない!」
いつまでも実行しない事に痺れを切らせたティルファーが、ハミアの口にワインを流した。
「む!ごほっ、げほっ!」
「それっ!」
突然のワインにむせたハミアにシャリスが一撃を喰らわせる。
ハミアは気絶してしまった。
ハミアが気絶したことで三人は計画を実行する。
「さぁ、急ぐぞ!」
「Yes.ですがやり過ぎでは・・・・・」
「いいんだよー。今なら私たちも楽しめるって!」
「・・・・う、ん」
「くっ、もう気付いたのか」
シャリスはハミアの目覚めを残念がった。
「・・・えっと、三人は何をしているんですか?」
「まあいい。これを見たまえ!」
シャリスは質問には答えず、ハミアに鏡を見せた。
「・・・・・・」
自分の姿を確認したハミアは固まってしまった。
しかし三人は満足そうに頷いている。
鏡を見て数分が経過した時、ハミアはシャリスに話しかけた。
「ねぇ、シャリスさん?」
「何かな?早くみんなを驚かせてきたまえ」
「みんなを驚かせる前にやることがあるんで・・・・」
「いいとも!早く終わらせたまえ!」
シャリスはハミアの言葉を遮り、許可を出した。
次の瞬間、ハミアはシャリスに歩み寄った。
「どうしたんだい?」
「僕は貴方に”お礼”をしなければなりません」
「ふむ。それはいいが口調がおかしくないか?」
「・・・・・ノクト」
「・・・・Yes.言いたい事は分かります。ハミアさん、酔っていますね」
「・・・・まさかあの量で酔うとはね。・・・・ってあたし達もまずくない!?」
「・・・Yes.ここはシャリスを置いて逃げた方がいいかと」
「・・・・じゃ、ルクっち達のところまで行こう!」
二人は離脱しようとゆっくり移動する。
しかし、自分だけが被害に遭うのを嫌がったシャリスはそんな二人の行動をハミアに教えた。
「ハミア君!二人が逃げようとしているぞ!」
「もー!シャリスってば自分だけは嫌だからって・・・・」
「大丈夫ですよ。お二人にも”お礼”はしますから」
「シャリス、ごめん!」
「Yes.貴方の事は忘れません!」
ハミアの言葉を聞いた二人は、そう言い残すと食堂に向かって走っていった。
「待て!私も逃げ・・・・・」
「させませんよ」
次の瞬間、シャリスの悲鳴が響いた。
「今の悲鳴って・・・・・」
「Yes.シャリスでしょう」
シャリスを置いて逃げた二人は、走りながらそんな事を言う。
そんな時、
「逃がさないよ、二人とも」
二人の背後から声がした。
ティルファーが恐る恐る後ろを向くと、声の主は歩きながら迫っていた。
走っている自分たちよりも、歩いているハミアの進むスピードが速い。
ティルファーが理由について考えていると、正面に回り込まれてしまった。
「捕まえたよ、ティルファー」
「えっ、ちょっと!?謝るから!」
「謝る?僕は感謝してるんだよ。だから逃げようとしないで?」
どうにかして距離を取ろうとするティルファーに笑顔で迫るハミア。
この光景を目にしたノクトが取った行動は、
「Yes.それでは」
やはり離脱だった。
「ノクトー!?待ってハミっち話せば分か・・・・・」
今度はティルファーの悲鳴が響いた。
「あとはノクトだけ、っと」
ハミアは笑顔でそう呟いた。
「もう少しで・・・・逃げられる」
ガチャガチャと、ノクトはドアノブを捻る。
「開いた!これで・・・・・」
「やっと逃げれる?」
ノクトは声がした後ろを振り向かずにドアを開けた。
そしてルクスと目が合い、助けを求めた。
「ルクスさん!助けてください!」
「待ってて!」
目が合った途端ルクスは理由も聞かず、素早くノクトに寄った。
次の瞬間、ルクスは目を見開いた。
ノクトが音も立てずに崩れ落ちたのだ。
そしてルクスは再び驚いた。
倒れたノクトの背後に一人の女生徒が立っていたのだ。
その瞬間からルクスは目の前の女生徒を警戒する事にした。
「君は誰?もしよかったらノクトが倒れた理由も聞かせてもらえないかな?」
「・・・・はい。私の名前はミア。ノクトさんが倒れた理由は・・・・・わかりません」
「・・・そっか。まずは皆と話をしたいから一緒に来てもらっていいかな?」
「・・・・・はい」
ミアはそう言うと、ルクスの後をついていった。
「・・・・って事なんですけど、どうしますかリーシャ様?」
「わたしは構わないぞ」
「わかりました」
リーシャから許可を得るとルクスはミアに向き直った。
「パーティの途中にすいません」
「いいんだよ。それよりミア、わかっている範囲でいいから何があったのか教えてもらえないかな?」
ずっと、下を向いている少女にルクスは優しく尋ねる。
「悪い、ルクス。先に質問させてくれ」
「いいけど。どうしたの?」
「ちょっと気になってな。変な事を聞くけど、ミアさんって俺と会うのは初めて?」
「・・・・そうですけど」
「本当に?」
「はい。どうしてそんなことを?」
「なんて言うかさ、いつも会ってる気がしたんだ。悪かった」
「いえ」
今度はルクスが質問をした。
「ノクトが倒れた理由は知らないんだったよね。なら、ハミアの居場所を知らない?」
「・・・・いいえ」
「ルクスさんも悠さんも何を勘違いしているのかわかりませんけど、お探しの人でしたら・・・・・むぐっ!?」
「ラナ、それ以上は駄目じゃ」
ラナが何か伝えようとした瞬間、マギアルカがラナの口を塞いだ。
「もふぁうふぁば(お母様)?」
ラナは理由を尋ねた。
「・・・・せっかくの楽しみがなくいなってしまうからのう」
マギアルカの本音が聞こえた途端、ラナは強引に口を塞いでいた手をどけた。
「・・・ぷはっ!二人とも聞いてください!今、目の前にいるミアさんが『ハミアくん』なんです!」
「・・・・えっ?」
「・・・うん?」
ルクスと悠はラナが何を言っているのか理解できなかった。しかし、ラナの後ろでマギアルカが溜め息をつき、
ラナ自信が真剣に訴えている事を考える限り、冗談とは思えなかった。
「急いで捕まえてください!」
その時、悠は嫌な予感がし、ルクスに目配せをした。
ルクスも気づいたようだ。
「彼、酔ってるんです。だから・・・・」
その瞬間、ルクスと悠はハミアを捕らえようと走り出した。
ハミアは匂いだけで酔ってしまうほど酒に弱い事を二人は知っている。
過去にも一度、ハミアが酔った時があった。
その時、ハミアは二人が気付かないほど素早く移動し、二人に悪戯をしたのだ。
幸い、その時は三人以外に人がいなかったから、ハミアを確保するのにあまり時間はかからなかった。
しかし、今回は状況が違う。
周りには歓迎パーティの為に集まってくれたリーシャ達がいる。
加えて、ラナの様子からハミアが飲んでしまった事が理解できる。
匂いだけでもアレな思いをした二人は、『ハミアの飲酒』という言葉がどれだけの危険を伴うのかわかっているのだ。
だから被害が出る前に・・・・と、急いだ二人だが、既に遅かった。
二人の目の前からハミアが消え、同時に背後からバタバタと人が倒れる音が続く。
振り向けば、半数が倒れていた。
数分後、ハミアを捕らえる事には成功した。
しかし、ライグリィ教官・篠宮先生・マギアルカ・ラナ以外の全員が気を失っていた。
それから数十分が経過し、ハミアも元に戻り、倒れていた生徒たちも目を覚まし始めた為、パーティは続いた。
しかし、生徒たちの記憶からは『騒動』に関する記憶は失われていて、代わりに『楽しいパーティ』の記憶があったらしい。
ハミアもわからないと言っていたので、ルクスたちは『騒動』に関する事を、口外しないと密かに誓ったのだった。
今年もよろしくお願いします。