エンジェルプリキュア   作:k-suke

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第12話 信頼破滅のカウントダウン

 

 

夢園市内

 

 

 

心美「いやー夏休みはいいね、部活の他に何しようかな」

 

恵「みんなで海か山に行くのもいいかもね」

 

晶「遊ぶのもいいけど宿題もきちんとね」

 

8月に入り、私達は本格的に始まった夏休みに心踊っていた。

 

 

未来「あなたたち、宿題の他にプリキュアとしてやることがあることも忘れないでね。あんた達でも数のうちなんだから」

 

聖歌「大丈夫です。忘れてませんよ」

 

あの日以来、未来とはよく一緒にいる。私たちに対する態度も多少軟化してきている。憎まれ口は相変わらずなのだが。

 

 

 

明日香「そう言えばさ、未来ってどこに住んでるの?」

 

私はふと疑問を口にした。

 

未来は元々この世界の人間ではない。となれば家だってないはずである。

 

 

心美「そう言えばそうね」

 

晶「気になるわね」

 

すると未来はあっさりと答えた。

 

 

未来「私? このヒューマンゾーンにアパート借りて、そこで暮らしてるのよ」

 

恵「えっ、どうやってアパートなんか借りたの? 戸籍も身分証明も保証人も無いんでしょ」

 

未来「ああ、フラッシュイリュージョンで大人に姿を変えて契約したのよ。幸いフェアリーゾーンから持ち出した宝石の類いがいっぱいあるからそれをお金に換えてね。 十分すぎる金額を出せば案外何も言われないものよ」

 

心美「それは金でだまらせたと言うんじゃないのかな…」

 

心美ちゃんが引きつった笑顔を浮かべていた。

 

 

グルト「バター…、いつからそんな性格になったグル…」

 

聖歌「まあまあ。それより一度行ってみていいですか?」

 

すると未来は少し考えた後に答えた。

 

 

未来「まあいいわ、じゃあついてきて」

 

そう言うと未来は先頭に立って私たちを案内し始めた。

 

 

 

 

 

 

とあるアパート

 

 

 

明日香「へぇ〜ここに住んでるんだ」

 

目の前にあるのはくたびれたアパートだった。築ン十年といったところだろうか。

 

晶「でも、学校にも近いし結構いいところよね」

 

明日香「そうだ、ねえ未来このアパート私たちの集合場所にしない?」

 

私は思いついたことを口にした。

 

 

恵「確かに、夏休みな訳だし、どこかに集まれる場所はあった方がいいけど」

 

心美「明日香、未来の迷惑も考えなよ」

 

未来「はあ、まあそうくると思ってたけどね」

 

未来はため息をついた。

 

 

未来「まあいいわ、ここでならプリキュアの話もできるしね」

 

 

 

 

 

その後私たちは未来の家でお菓子を食べたりしながら夕方まで遊んだ。

 

聖歌「すいません、こんな時間まで」

 

恵「わるいわね、突然押し掛けておいて」

 

晶「じゃあね、未来」

 

心美「こいつにはちょっと言っとくから」

 

そう言って心美ちゃんは私の頭をグシャグシャしてきた。

 

 

明日香「イタタ、じゃあ未来またね」

 

未来「ええじゃあねみんな」

 

 

 

帰る道すがら心美ちゃんたちが私にお説教をしてきた。

 

心美「全く、人んちを勝手にたまり場にしようなんて言い出すなんて。何考えてんのよ」

 

明日香「う〜っ ついポロッと口からでちゃったの」

 

恵「思いついたら即行動って悪くないけど、少し相手の気持ちを考えてもいいんじゃないかしら。未来も一人暮らしじゃ色々大変だろうし。私も母しかしないからその辺り分かるのよ」

 

明日香「うん、ちゃんと謝っとく」

 

晶「じゃあ私はこっちだから」

 

聖歌「私もあっちですから」

 

明日香「うんバイバイ」

 

そうして私たちは別れていった。

 

 

心美(全く明日香ときたら、まあ止められなかった私も悪いけど。みんなももうちょっと強く言ってもいいんじゃないかな)

 

心美は明日香の行動力、それを止められなかった自分への罪悪感、仲間への不満を抱えていた。このメンバーで集まると、明日香に対してのブレーキ役がほぼ自分になってしまうからだ。

 

 

 

 

聖歌(未来さんには突然押し掛けて迷惑を掛けてしまいました。気分を悪くしてないといいんですけど)

 

聖歌は新しくできたクラスの仲間でもある未来に嫌われていないか不安になっていた。友達に裏切られた経験が友達を失うことに対して敏感にさせてしまうのかもしれない。

 

 

 

 

恵(未来も大変だろうな、部屋も散らかってたし片付けぐらい手伝ってもよかったな)

 

母親と二人暮らしである恵は、必然的に家事の大半を自分で行っている。普段きれい好きで通っている自分が掃除のことについて何も言わなかったのは少しまずかったかと後悔していた。

 

 

 

 

晶(最近みんなと一緒にいる時間が多くなっている。嫌じゃないけど生徒会の仕事がおろそかにならないようにしないと)

 

以前の強迫観念に似たようなプレッシャーは晶からなくなっていたが、彼女が生徒会役員であることには変わりはない。当然夏休みにも一定量の仕事が存在しているのだ。中途半端には出来ないと気を引き締めていた。

 

 

 

明日香(未来には迷惑かけちゃったな。でもみんなも乗ってきたくせに私だけ悪者呼ばわりはひどいな)

 

私は未来の家を集合場所にしようとは言ったけど、今日あそこで遊ぼうとは言っていない。そもそも誰一人本気で反対してこなかったのだから全員同罪のはずだと私は思っていた。

 

 

 

この時私たちはもう少しお互いについて話し合うべきだった。そうであればこの後起きたことにも対応出来ただろうから。

 

 

 

 

 

 

 

とある学校

 

 

 

バレーボール部の練習が終わったらしく数人の女の子が談笑しながら帰ろうとしていた。

 

 

女子生徒1「お疲れさま」

 

女子生徒2「あんた今日調子よかったね」

 

女子生徒3「明日も頑張ろうね」

 

女子生徒4「私、ちょっと顔を洗ってくるから」

 

 

そう言って一人の女生徒が仲間から離れて水飲み場に向かった。

 

女子生徒4「ふぅー汗びっしょり」

 

 

 

そう言って顔を洗う女生徒の背後に、何かが忍び寄り、少量の水をかけた。

 

その女生徒は何かの気配を感じて振り返ったが誰もいない。

 

女子生徒4「? 気のせいかな」

 

 

 

顔を洗い終わった女生徒は、友達を見つけて追いつこうとしていた。

 

すると、悪口が彼女の耳に聞こえてきた。

 

女子生徒1『あいつさ、今日の紅白試合1人で勝ったとか思ってない?』

 

女子生徒2『チョー感じ悪いよね、調子乗ってるって感じで』

 

女子生徒3『大体今日のだって、まぐれでしょ?』

 

女子生徒4「何よ、あの子達。あんた達こそ何も出来なかったじゃない。自分たちのこと棚に上げてよくも言う」

 

悪口に陰口を聞いた女生徒は、友達と合流せず怒って一人で帰ってしまった。

 

 

 

木の陰からその一部始終を見てほくそえむ存在が居た。

 

「ふふふ、久しぶりだったからうまく行くか心配だったけど問題はないわね」

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

町中は平穏に賑わっていた。仕事中のサラリーマン、デート中のカップル、買い物中の主婦、まるで変わらない日常があった。

 

そこに突如として妖魔獣が現れた。

 

「さーて、仕事と行きますか」

 

その妖魔獣は水を吐き散らし、多くの人をびしょ濡れにしていた。

 

 

ゴールド「待ちなさい妖魔獣!!」

 

フレイム「夏休みに暴れないでよね、せっかくトリムも捕まえたってのにいい気分台無しよ」

 

ウッド「一体何をするつもりなのですか」

 

ラウンド「どうせ碌でもないことなんでしょ」

 

ウォーター「私たちが必ず止めてみせます」

 

 

「来たわねプリキュア。でも、妖魔獣なら何でもかんでもヒトの敵って決めつけないで欲しいけどね。この人魚の(きょ)レムはヒトの為になることをしてるのよ」

 

ゴールド「そんなこと信じられるもんか」

 

妖魔獣の言葉など信じられない、私たちはそう思った。

 

 

フレイム「大体あんたのどこが人魚よ、外見からして大嘘つきじゃない」

 

確かにこの人魚の嘘レムは人魚というより半魚人というような醜悪な外見だった。

 

 

 

嘘レム「やれやれ、地球温暖化って知ってるでしょ。暑い思いをして苦しんでるヒトに涼しくなってもらおうとしただけなのに、ひどい言い草ね」

 

ラウンド「何ですって?」

 

辺りを見回してみたが妖魔獣の言う通り、別に誰も苦しんでいる様子すらなかった。

 

 

ウッド「確かに却って喜んでる人も居るようです」

 

涼しくなって喜んでいる人も中には確かにいた。

 

 

嘘レム「わかった? 妖魔獣にもヒトの味方はいるんだよ。お前達もちょっと涼しくしてあげるよ」

 

そう言うと嘘レムは私たちに水を浴びせてきた。

 

 

フレイム「ぶわっ」

 

ウォーター「ちょっといきなり」

 

かけられた水でずぶ濡れになったが別に痛くもかゆくもない。

 

 

ゴールド「これホントにただの水?」

 

ウッド「信じられません」

 

 

嘘レム「信じて欲しいんだけどね。ん?」

 

嘘レムに対する疑問が大きくなった時、つむじ風が吹いた。

 

 

風ライシア「見つけたぞ、人魚の嘘レム。てめえどういうつもりだ、裏切るのか」

 

現れた風ライシアは、かなり怒っているようだった。

 

 

嘘レム「ああそうよ、大体ヒトの数は妖魔獣を大きく上回っている。ヒトを滅ぼすなんて考えるより、静かに暮らしていく方が利口でしょうが」

 

フレイム「あんた、ホントに妖魔獣を?」

 

目の前の現実に私たちの頭は混乱する一方だった。

 

 

風ライシア「ざけんな」

 

そう言うと風ライシアはカマイタチを起こして嘘レムを攻撃した。

 

 

嘘レム「うわっ、ここは逃げるが勝ちだね」

 

そういうと嘘レムは水たまりの中に消えてしまった。

 

 

風ライシア「あの野郎、絶対許さねえ」

 

怒りを込めた声でそう言うと風ライシアもつむじ風とともに消えていった。

 

 

 

ゴールド「一体何だったんだろう?」

 

ウッド「さあ?」

 

私たちが今の出来事に首を傾げているとライト・ウイングがやってきた。

 

ライト・ウイング「買い物してて遅くなったわ、妖魔獣はどこ?」

 

フレイム「いや、それがさ…」

 

 

 

 

 

私たちは今の一部始終を話した。

 

 

 

ライト・ウイング「妖魔獣が人の味方を? ありえないわそんなこと」

 

ウッド「でも現実に…」

 

ウォーター「しばらく様子を見るしか無いわね」

 

ラウンド「確かにそれがよさそうね」

 

そう言って私たちは解散した。私たちの異変や近くのビルの屋上にいる存在に気づくこともなく。

 

 

 

 

 

ビルの屋上

 

 

嘘レム「ふん、へたな芝居までさせたうえ、攻撃してくるなんて聞いてなかったわよ。おかげで大事な鱗が少しはげちゃったじゃない」

 

風ライシア「悪い悪い、それよりどうやらうまくお前の鱗を連中に貼付けられたみたいだな」

 

嘘レム「ああばっちりさ。しかしあんた初対面のくせによく私のこと知ってるね。いきなり来たときは何かと思ったよ」

 

風ライシア「お前の根性の悪さを知らん奴はいないさ」

 

嘘レム「褒め言葉として受け取っとくよ。ヒトの平和なんて表向きだけのこと。それを存分に思い知らせてやるよ」

 

 

 

 

 

柔道場

 

 

 

心美「さあて、部活部活」

 

心美はさっきの戦いの後、夏休みの練習のため柔道場へ向かっていった。

 

中を伺うと、練習をしている部員がいたので、声を掛けようと近づいていったら部屋の中から、話し声が聞こえてきた。

 

 

部員1『部長ってさ、存在自体無意味じゃない?』

 

部員2『最近遅れることも多いし私たちだけでいいよね』

 

部員3『練習できる場所が欲しかっただけで最初っから必要とも思ったことも無いけど』

 

 

心美「みんなそんなこと考えてたの…」

 

部員達の言葉を聞いた心美は力なくドアの横に寄りかかった。

 

 

心美「ええい、気合い気合い」

 

心美は頬を叩いて、気を取り直し、柔道場に入っていって部員に声を掛けた。

 

 

心美「みんな、遅れてごめん。私は、反省すべきところはちゃんと反省して、直すべきところはちゃんと直す。だから、問題点をどんどん言って」

 

部員1「はあ?」

 

部員2「わかりました」

 

真剣な心美とは裏腹に部員たちはポカンとしていた。

 

 

 

 

 

生徒会室

 

 

 

晶「いけないいけない、私から言い出した会議だったのに遅れてしまったわ」

 

晶は8月の生徒会の方針を決めるための会議を申請していたのだ。

 

 

生徒会室に入ろうとしたら、役員の話し声が聞こえてきた。

 

役員1『まったく夏休みに会議なんて面倒なことをするよ』

 

役員2『自分が生徒会を取り回してるとか思ってるならとんだ勘違いだよ、水野のやつ』

 

会長『もっとまじめな奴だと思ってたんだが、最近は友達と遊んでばかりの様だし。少し失望だな』

 

 

 

晶はこの言葉にショックを受けていた。

 

晶「そんな、そんなふうに言われるなんて」

 

大慌てで部屋に入ると彼女は頭を下げた。

 

晶「ご迷惑をお掛けしてすいません、全力で頑張りますのでどうか許してください」

 

 

役員1「あっ、はあ?」

 

会長「まあ、じゃあ会議をしようか」

 

役員達は狐につままれたように会議を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

市内某所

 

 

 

市内の清掃ボランティアが本日行われており、恵もそれに参加していた。

 

しかし、いつも率先してやる方だった恵はなぜか意気消沈していた。

 

恵「嫌われるのは慣れてたつもりだけど、学校の外でまであんなこと言われるなんてさすがにきついな」

 

 

市民1『中学生が偉そうにしゃしゃり出てくるなっての』

 

市民2『どうせ内申点稼ぎなんでしょ』

 

市民3『あるいは、いいカッコしたいだけか』

 

 

恵「私は掃除が好きなだけなのにそんな風に思われちゃうんだ」

 

深くため息をついてノロノロと恵は清掃を始めた。

 

 

 

 

 

 

市立図書館にて

 

 

 

聖歌「えーっと、この本とこの本はまだ読んでないから」

 

図書館で聖歌が本の物色をしていた。

 

すると静かな図書館内でひそひそ話が聞こえてきた。

 

 

利用者A『あの子いっつも一人で来てるよね』

 

利用者B『本ばっかり読んで友達いないのかしら』

 

利用者C『友達いないのから来てるんじゃない』

 

 

 

聖歌「何も聞こえるように言うことじゃ…それに私だって友達ぐらい」

 

聖歌は本を棚に返すと俯きながら図書館を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

夢園市内 公園

 

 

 

女性「あたしちょっと散髪失敗しちゃったかな。切り過ぎたみたい」

 

男性「ううん、その髪型もかわいいよ」

 

女性「そうよかった」

 

ほっと胸をなで下ろした時、男性の声が聞こえた。

 

 

 

男性『短かろうが長かろうが変わらねぇっつーの、自意識過剰なんだよ』

 

 

この言葉に彼女はカチンときた。

 

女性「何よその言い草!!」

 

男性「なんだよ急に!」

 

 

 

 

 

 

某会社オフィス

 

 

サラリーマン「使えない部下で悪かったですねぇ!」

 

と、いきなり上司につかみかかるサラリーマンがいました。

 

上司「いきなり何なんだね!? 私が何を言った」

 

上司は、心当たりが無く困惑するばかりだった。

 

 

 

こんなことが、街の至る所で起きていた。

 

悪口を言った、言わないで多くの人が揉めている。

 

 

ビルの屋上からそれを見て大笑いしているものがいた。人魚の嘘レムだ。

 

嘘レム「ヒトには、何かしら痛いところや弱いところがある。私の水を浴びた時に張り付いた鱗の力で、そんな部分を周りの人の声で聞こえさせる。いくら取り繕って生きてても、ヒトなんてコンプレックスのカタマリ。一皮むけばこんなもんさ。揉めろ! 揉めろ! もっと揉めろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れの町中をトボトボと歩いている人影が四つあった。

 

心美・聖歌・恵・晶である。

 

今日一日、散々に周りから言われたくないことを聞かされた彼女達は、何かにすがるように未来のアパートに足が向いていたのだ。

 

アパートの前でたまたま合流した四人はお互いに驚いた。

 

 

心美「あっあれ、みんな。どうしたのこんなとこで」

 

聖歌「心美さんこそ今日部活じゃ無かったんですか」

 

恵「私は、ここを集合場所にしたから来ただけで」

 

晶「プリキュアの活動も全力でやらないといけないし」

 

皆どこか取り繕うような会話をしていた。

 

 

 

その時心美に聖歌の声が聞こえた。

 

聖歌『自分は集合場所にすること反対していたくせに、どういうつもりなんでしょう』

 

心美「なによ、それ…」

 

 

 

同じようなことが他の三人にも聞こえていた。

 

 

恵『連絡もなしにいきなり訪ねれば迷惑だってことぐらい分からないのかしら』

 

聖歌「恵さんひどいです…」

 

 

 

晶『美化委員のくせに人の家をまた散らかすつもりなのかしら。結局自分のことしか考えてないのね』

 

恵「晶、そんな言い方は…」

 

 

 

心美『生徒会って忙しそうに見えるけど、結構暇なのね。それなら柔道場の件もっと早く対応できたんじゃないの』

 

晶「私だって、一生懸命…」

 

 

 

 

四人とも会話も無く肩を振るわせていた。その時

 

明日香「ひどいよ、未来もグルトも」

 

明日香が未来の部屋から叫びながら飛び出してきた。

 

 

 

 

私は悲しかった。グルトは友達だと思ってた。未来とも仲良くなれたと思ってた。なのにグルトも未来も私のことをあんな風に思ってたなんて。

 

そんなことを思いながら未来の部屋を飛び出すと心美ちゃん達がいた。

 

 

明日香「あっみんな、ねえ聞いてよ。グルト達が」

 

その時私の耳にみんなの声が聞こえてきた。

 

 

心美『まったく、すぐ友達の所に行くんだから。自分でなんとか出来ないのかね』

 

聖歌『未来さんだけが友達のつもりなんでしょうか。いっぱいいる友達だって口先だけだったりして』

 

恵『いつもいつもヘラヘラして、都合のいいときだけ友達になるんだから』

 

晶『特にやることも無いくせに、忙しいの意味を知ってるのかしら』

 

 

 

それを聞いて私の頭の中はぐちゃぐちゃになった。

 

明日香「みんなひどいよ、友達だと思ってたのにそんなこと言うなんて!!」

 

 

 

するとみんなも箍が外れたように怒りだした。

 

心美「なによ、それはこっちの台詞よ!!」

 

聖歌「迷惑を掛けてることは知ってます。でも皆さんだってここにいるじゃないですか!!」

 

恵「学校とプライベートは別でしょ、別にいいじゃない!! 少しぐらい息を抜ける場所があったって」

 

晶「息抜きですって! 私がどれだけ忙しいか知って言ってるの!!」

 

 

まさに一触即発といっていい状態になった。

 

 

 

 

 

すると外の騒ぎを聞いて、未来も部屋を飛び出してきた。

 

未来「何!? どうしたの?」

 

グルト「みんなどうしたグル? いつもと違うグル!!」

 

 

いつもの五人からは考えられないような険悪な空気に未来達も驚いていた。

 

 

未来「いつもと違う? やっぱり妖魔獣がなにか? と、とにかくやめなさいあなた達」

 

ののしり合いを始めた五人の間に未来は割って入った。

 

その時五人の耳に未来の言葉が響いた。

 

 

 

未来『まったく、だらしないったらありゃしない。やっぱ袂を分かった方がいいかしら。もううんざり』

 

 

 

明日香「いい加減にしてよ!」

 

心美「うんざりなのはこっちもよ!」

 

聖歌「こんな人達だなんて思ってませんでした!」

 

恵「もう顔も見たくないわ!」

 

晶「学校も終わったことだし、いい機会だわ! サヨナラ!!」

 

 

 

捨て台詞を残して五人はけんか別れをしてしまった。

 

グルト「みんな、どうしちゃったグル? 明日香〜」

 

グルトが明日香を追いかけていったが

 

 

明日香「グルト、もう家に来ないでね!」

 

今まで聞いたことも無いような言葉で拒絶されてしまった。

 

 

 

未来「まずいわね、プリキュアがバラバラになっちゃうわ」

 

グルト「そんなことになったら大変なことになるグル!!」

 

 

 

 

 

この一部始終を見ていた嘘レムが大笑いしていた。

 

嘘レム「こっちが何か仕掛ける前に、勝手にケンカをはじめやがった。あいつら馬鹿だな」

 

 

 

 

 

 

 

とある洞穴

 

 

 

筋タロウ「汁ベエ…風ライシア…どこに行った…」

 

筋タロウが汁ベエ達を探していたら声が聞こえてきた。

 

 

汁ベエ「筋タロウ、あいつはダメだねぇ~。短気で、頭も悪い。吾輩の相棒には、まったく相応しくない。あの程度なら誰でも務まるって」

 

風ライシア「同感。腕っ節だけは認めてやるけどさ」

 

汁ベエ「ああん、ダメダメ。あの程度では、プリキュアにも、すぐに追い抜かれちゃうよ。奴とはもう縁を切りたいよ」

 

筋タロウ「なんだと…許さん…俺の力…見せてやる…」

 

遠巻きにふたりの声を聞いた筋タロウは怒りに震えて町へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日 夢園市

 

 

 

未来は、妖魔獣を探して朝から町を探索していた。

 

昨日の大げんかの原因はやはり妖魔獣にあると判断したからだ。

 

 

未来「妖魔獣の気配を感じる。やっとみつけたわ、みんなに連絡を…」

 

携帯電話を取り出した未来だったが、ハッと気がついた。

 

 

 

 

 

 

裏路地から嘘レムがまた鱗の入った水を撒こうとしていた。

 

嘘レム「さあて、そろそろヒトも疑心暗鬼で社会生活も滅茶苦茶になっていく頃だね。だめ押しと行こうか」

 

未来「見つけたわよ、妖魔獣!!」

 

そこに未来が姿を現した。

 

未来「みんなを仲違いさせたのもあなたね!」

 

 

嘘レム「知らないよ、勝手にアイツらが喧嘩したんでしょ」

 

すっとぼけたように笑う嘘レムに未来は怒りながらシャイニング・パレットを取り出した。

 

 

 

未来「許さない! シャイニング・トランスフォーメーション!!」

 

『トランスフォーム』

 

 

ライト・ウイング「清らかな光溢れる正義の翼 ライト・ウイング」

 

 

ライト・ウイングが嘘レムに向かっていったが、嘘レムはのらりくらりと攻撃をかわすだけだった。

 

 

ライト・ウイング「どうしたの! かかってこないの?」

 

嘘レム「別に戦う理由なんて無いからね。怪我したら損じゃないか」

 

嘘レムに戦うつもりは全くなかった。

 

その態度にライト・ウイングの怒りはつのっていった。

 

 

 

ライト・ウイング「あんたって奴は! え?」

 

その時火の玉がどこからとも無く飛んできてライト・ウイングの目の前で爆発した。

 

 

 

フレイム「プリキュア・フレア・ボンバー!」

 

嘘レム「キュア・フレイム!?」

 

そう、キュア・フレイムが到着したのだ。

 

 

ゴールド「フレイムだけじゃないよ!」

 

エンジェルプリキュア全員がそろったのだ、が

 

 

フレイム「なによ、あんた達引っ込んでなさいよ!!」

 

ウォーター「こっちの台詞よ! あなたこそ部活でもやってなさい!!」

 

ラウンド「そう言うあんたこそ、忙しいなら生徒会の仕事してればいいでしょ!! 中途半端に関わられると迷惑なのよ!!」

 

ウッド「あなた達こそ、そんなに騒いで私の迷惑になってるって分からないんですか!!」

 

ゴールド「もういいよ!! こんなんなら一人でやるから!! 元々プリキュアは私一人でやるつもりだったことなんだから!!」

 

 

全員バラバラの方向からやってきた上、顔を合わせたとたんの罵り合いである。

 

しかもだんだんとヒートアップしていった。

 

 

ゴールド「もう嫌!! この場で終わりにしようよ」

 

フレイム「望むところよ!!」

 

ウッド「賛成です!!」

 

ラウンド「やってやろうじゃない!!」

 

ウォーター「これで終わりよ!!」

 

 

全員キュアブレスに力を込め始めた。必殺技の体勢に入ったのである。

 

 

ライト・ウイング「みんな! やめなさい!!」

 

ライト・ウイングの叫びもむなしくキュアブレスの輝きはどんどん強くなっていった。

 

 

嘘レム「ウキャキャキャ馬鹿な奴ら、自滅しちゃいな!!」

 

プリキュアの醜態を見て嘘レムが馬鹿笑いをしていたその時だった。

 

 

 

へしゃげた自動車と折れた電信柱がものすごい勢いで飛んできた。

 

ライト・ウイング「え、何これ?」

 

 

ライト・ウイングが驚いていると

 

筋タロウ「貴様ら…! 俺の力…見せてやる…」

 

荒れ狂った筋タロウが乱入してきた。

 

 

ライト・ウイング「筋タロウ!? こんなときに!!」

 

猛烈な勢いで振り下ろしてきたパンチをなんとかライト・ウイングは受け止めたが、その一撃で全身が痺れてしまい反撃に移れなかった。

 

 

ライト・ウイング「ぐうぅぅ、なんて馬鹿力」

 

筋タロウ「そうだ…これが俺の力だ…」

 

続けて放たれた筋タロウの蹴りにライト・ウイングは吹き飛ばされた。

 

 

 

風ライシア「こうもあっさりかかるとはな、却って気味が悪いな」

 

その様子をビルの陰から見ていた風ライシアが嗤っていた。

 

そう、筋タロウの背中には嘘レムの鱗が貼付いていたのだ。

 

この鱗は、風ライシアが嘘レムを攻撃した時に剥がれたもので、それを風ライシアがこっそり貼付けたのだ。

 

 

嘘レム「なによ、筋タロウの奴。突然来てどういうつもり?」

 

 

突然乱入してきた筋タロウに嘘レムも困惑していた。

 

その次の瞬間

 

ウッド「プリキュア・アイビィ・チェーン!」

蔦の鎖が絡みつき、

 

ウォーター「プリキュア・ウォーター・バレット!!」

大量の水の弾丸が

 

ラウンド「プリキュア・サンド・ソーサー!」

砂の丸鋸が、

 

フレイム「プリキュア・フレア・ボンバー!」

火の玉が、

 

ゴールド「プリキュア・ゴールド・ブレイカー!!」

オレンジの光をまとった突撃が、

 

 

 

 

すべて嘘レムと筋タロウに炸裂した。

 

 

 

嘘ウコ・筋タロウ「「グワアー」」

 

プリキュアの一斉攻撃をまともに受けて、嘘レムと筋タロウは大ダメージでふらふらになっていた。

 

筋タロウ「く…そ…」

 

そのまま筋タロウは姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

訳が分からないのは嘘レムだった。

 

嘘レム「ど、どうなってんの? あんたたち喧嘩したんじゃ…」

 

 

ゴールド「ふっふっふっ、あーはっはっは 作戦成功!」

 

フレイム「いやー見事にはまってくれた、ざまあ無いわね。この嘘つき」

 

ウッド「みなさんなかなか演技がうまいんですね」

 

ラウンド「半分本気だったしね」

 

ウォーター「ラウンドったらもう」

 

 

 

妖魔獣のうろたえぶりを見て私たちは大笑いしていた。

 

ゴールド「私たちはもう喧嘩なんかしてない、未来のおかげでね」

 

フレイム「さっき未来が教えてくれたんだ、妖魔獣の力が私たちに作用してるかもって」

 

ウッド「だからお互いに体を調べたんです。変なものがついてないかって」

 

ラウンド「そしたら、変な鱗を見つけたってわけ、だったら利用してやろうと思ってさ」

 

 

 

私たちの言葉を聞いて、妖魔獣は困惑していた。

 

嘘レム「どうやってそんな打ち合わせができたの? まともな会話なんて出来ないはず…」

 

 

ウォーター「コミュニケーションは会話だけじゃないのよ、メールなんて便利なものがあるの」

 

 

そう私たちは未来からメールを受け取ったのだ、変な声が聞こえるのは妖魔獣の力の可能性がある。だから、メールでお互いにとことん会話してみてくれと。

 

昨日のやり取りがあった所為で嫌々だったが、メールで話し合ってお互いに誤解だったことがすぐに分かった。なんせ自宅でメールをしている最中にまで相手の声が聞こえてくるのだから。

 

 

ライト・ウイング「まったく少しハラハラしたけどね」

 

ゴールド「ありがとうライト・ウイング。それと妖魔獣。あなたのおかげで私たちはとことん話し合うことが出来た」

 

フレイム「お互いのことを前より分かり合えたと思うわ」

 

ウッド「思えばこんなに喧嘩したの初めてかも知れません」

 

ラウンド「喧嘩するほど仲がいいってよく言ったもんだわ」

 

ウォーター「私たちの絆、あなた達なんかに壊させないわ」

 

 

私たちは妖魔獣に凛とした声で言い放った。

 

 

 

「「「「「絆の生んだ奇跡の力!! エンジェルプリキュア!!」」」」」

 

 

嘘レム「こしゃくな」

 

嘘レムは私たちに向かってきたが、さっきの攻撃ですでにグロッキーだった。

 

体当たりをジャンプで躱すと私たちは大きな光の玉を作った。

 

 

 

ゴールド・フレイム・ウッド・ラウンド・ウォーター

「「「「「悪しきを砕く、絆の生んだ奇跡よ! プリキュア・エンジェリック・シンドローム!!」」」」」

 

 

嘘レム「ギャ〜」

 

 

 

光の玉の直撃を受けた嘘レムはそのまま灰になって消滅した。

 

と同時に、色んな人に貼付いていた鱗もすべて剥がれ落ちた。

 

 

 

 

明日香「ごめんね、昨日は変なこと言っちゃって」

 

私はみんなに心から謝った。

 

 

心美「いいって私もそうなんだし」

 

聖歌「あんな大声出して今思えば恥ずかしいです」

 

恵「でも却ってすっきりした気がするわ」

 

晶「言いたいことをいっぱい言ったからかしら」

 

私たちはすっきりした顔をしていた。

 

 

未来「やれやれ、あんた達もプリキュアらしくなったってことかしら」

 

グルト「グル!! 仲良くなれたのはいいことグル!」

 

 

 

明日香「あっトリム見っけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

とある海岸

 

 

 

筋タロウ「おのれ…おのれ…おのれ…」

 

筋タロウは荒れていた。

 

仲間だったはずの汁ベエに散々に罵られ、プリキュアにはあっさり敗北し、怒りが収まらなかったのだ。

 

「ずいぶん荒れているわね」

 

突然背後からした機械的な声に筋タロウは振り返った。

 

そこにいたのは人間の女性的なフォルムをしたロボットだった。

 

 

筋タロウ「なんだ…お前…」

 

「私はエージェントのM(メタル)・キュリー。あなたと少し話がしたいの。決して無駄な時間にさせるつもりはないわ」

 

 

 

 

続く

 

 

 

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