とある洞穴
汁ベエ「筋タロウの奴はな〜にを考えてんだろうね。せっかくうまく行きかけてた作戦を勝手なことをして台無しにして。挙句の果てにあっさり負けて。あ〜んな奴、もう仲間でもなんでもないね」
筋タロウの勝手な行動に汁ベエは激怒していた。
風ライシア「まあまあ、少し頭を冷やして。カッカしてると碌なこと無いですから」
汁ベエ「お前さんは冷静だね、自分の作戦パァにされたのに」
風ライシア「失敗したならまた次を考えるよ。まだまだ終わってねえんですから」
汁ベエ「確かにね。しかしアイツら、初めて会ったときはたいしたこと無かったのに相当やるようになった。やり方を根本的に変えるべきかもね」
風ライシアの言葉に冷静さを取り戻した汁ベエだったが、それで現状が改善しないことも理解していた。
風ライシア「ええ、何か思い切った手を考えるべきかも知れませんね」
未来の部屋
明日香「ねえ、前々から思ってたけど妖魔獣ってどうして蘇ったんだろ」
私はふと疑問を口にした。
今日は未来の部屋に集まって夏休みの宿題をみんなでやっている。
いつ宿題ができなくなるか分かんないし、早めにやっておけば後遊べるからという理由である。
晶「どうしたの急に」
明日香「だってさ、前のプリキュアが一度はやっつけたんでしょ。それが生き返ってくるなら、私達がどんなに頑張って倒してもまた生き返ってくるんじゃないかって思ってさ」
そう、妖魔獣は一度プリキュアが倒したはずなのだ。それが生き返ったなら、なにかきっかけがあったんじゃないかと思ったのである。
倒してもいつか蘇ってくるなら意味が無い。
心美「なるほどね、あいつらが生き返った理由か」
聖歌「妖魔獣の力の源みたいなのがあるんでしょうか」
私たちが考えていると未来が言った。
未来「妖魔獣は倒されたんじゃなくて封印されたのよ。プリキュアに」
恵「えっ封印?」
恵さんが聞き返すと、未来が呆れたように言った。
未来「なによお兄ちゃん。そのこと話してなかったの」
グルト「そ、そういえば話してなかったグル」
グルトが頬を掻きながら言った。
グルト達の話によると、妖魔獣が作った不思議な箱、通称ラドンパの箱というものがあるらしい。何でも吸い込んでしまうブラックホールのような機能があるらしい。
昔のプリキュアは戦いの果てに、その箱を奪って妖魔獣を封印したらしいが、それまで受けたダメージで自分たちも、ということらしい。
心美「ふ〜ん、じゃあその封印が何かの弾みで解けて汁ベエ達が復活しちゃったってことか」
晶「うまくすれば、妖魔獣をもう一度封印することも出来るかもしれないわね」
晶さんのその言葉に未来は声を張り上げて言った。
未来「馬鹿なこと言わないで!! あの二人でさえそれで…。あなた達がただで済むわけないじゃない」
未来はどこか涙目だった。
聖歌「未来さん…」
恵「ありがとう、心配してくれて」
明日香「大丈夫、私たちは絶対死なないよ」
私は胸を叩いた。
未来「ふん、分かればいいのよ」
未来はぶっきらぼうにそう言った。
とある洞穴
汁ベエ「何? ラドンパの箱を使う? 正気かい?」
風ライシア「はい、ことここに至ってはそれぐらい思い切ったことが必要かと思うんですよ」
汁ベエ「確かにねえ〜、そりゃ尤もだけどね〜」
風ライシアの提案に汁ベエは渋い顔をしていた。
風ライシア「あまり気が進まないようですが」
汁ベエ「当たり前だよ、あれが何なのか知ってるのかい」
風ライシア「はい大体は。妖魔獣の父とも言うべきアンタが持てる力のすべてを注いで作った箱。凄まじい力であらゆるものを吸い込んでしまえるとか」
風ライシアの返事に、汁ベエはため息とともに答えた。
汁ベエ「まあ、間違っちゃな〜いけどね。確かに、お前さんの言う通りこの箱は凄まじい力を持っている。で〜もね、その分かなり不安定でね。自分で作っといてな〜んだけど、扱いが難しいんだよ。しくじれば、とばっちりを食らっちまう。実際それが原因で、我が輩達は封印されちゃったんだよ。そ〜りゃ気も進まないって」
風ライシア「まあ、知ってるけどさ。でもあたいがその封印を解いたのも知ってるでしょ。なんとか使えるんじゃないかと思うんだ」
汁ベエ「う〜ん、わかった。ただし準備を万全にしてからと、我が輩も一緒に行くことにするよ。しくじってプリキュアに箱を取られでもしたらそれこそ面倒だ」
夜 明日家宅
明日香「やれやれ、今日はもう寝ようかな」
私は機嫌が良かった。
この間の一件以来、みんなといっそう仲良くなれたと実感しているからだ。
思ったことをお互いに言い合うようになって、今までより話すことも増えたと思う。
私達プリキュアのパワーは夢や希望といったエネルギーで少しずつ強くなっていくらしいし、それを思うといい傾向だろう。
明日香「それにしても、妖魔獣を封印したプリキュアか。ねえグルト、前から聞きたかったけど一体どんな人たちだったの?」
私は以前聞きそびれたことをグルトに質問した。
グルト「えっ、ど、どうしたグル? 急に」
明日香「えっほら、やっぱり気になるじゃない。私たちの先輩にあたる訳だし」
私達の先輩筋に当たるプリキュア、未来の憧れの的でもある人達。どうしても気になってしまう。そんな立派な人たちだったなら、私達も目指すべき目標になるかもしれない。
と思って聞いたのだが
グルト「あまり気にすることは無いグル。明日香達はエンジェルプリキュア、あの二人ゴッデスプリキュアとは違うグル。明日香達は明日香達らしくしていればいいグル、どうせあの二人にはなれないグル」
グルトの言葉に私は納得した。
明日香「うん分かった、私達らしく頑張るか。そうだよねその方がいいよね。それにしてもゴッデスプリキュアか、よっぽど立派な人達だったんだろうな。名前からして女神だもんね」
グルト「いや、そういうわけでもなかったグル…。どっちかといえば明日香達の方が立派グル」
明日香「またまた、そんなわけないじゃない。じゃあお休み」
翌日
今日も私たちは未来の部屋で宿題をする予定だった。
明日香「よーし、この調子だったら明日か明後日ぐらいには全部宿題終わってそうだね」
昨日やった宿題の量からして、おそらくそれぐらいで全部終わりそうだと思っていた。
明日香「終わったらみんなで遊びに行こう。山がいいかな、海がいいかな」
もうすでに遊びに行く予定で頭の中はいっぱいだった。
グルト「グル! トリムグル」
明日香「おっ、いいことが続くねっと」
そうしてトリムをゲットしたらグルトが震えだした。
明日香「どうしたのグルト? まさか!」
グルトは頷いた。
グルト「妖魔獣グル!」
夢園市内
ゾーゾ「「「ゾーゾーゾー」」」
突然町中に多くのゾーゾたちが出現していた。幸い、人々に危害を加えてはいないみたいだが、人々はパニックになり逃げ惑っていた。
フレイム「早く逃げてください」
ウッド「ここは私たちが引き受けます」
私が連絡をしたことで、すぐにみんなが駆けつけて、ゾーゾと戦いながら人々を安全な場所に誘導していた。
ゴールド「倒しても倒してもいるよ〜」
ラウンド「こいつら毎度毎度うっとおしいわね、雑草みたいに」
ウォーター「それより気をつけて、こいつが居るということは」
ライト・ウイング「アイツが居る!?」
風ライシア「正解だよお前ら」
ひっきりなしに現れるゾーゾにうんざりしていると、私達の会話に答えるようにつむじ風が起き、カマイタチの風ライシアが私達の前に現れた。
ゴールド「風ライシア!!」
フレイム「今日こそ決着つけたげるよ」
風ライシアの出現に私達は気合いが入っていた。
風ライシア「それはこっちの台詞だ。これまでの勝利は、ただの運にすぎなかったってことを教えてやるよ」
風ライシアが腕を一振りすると小さな竜巻が起こり、それに巻き込まれた私達は吹き飛ばされた。
ラウンド「くっやるわね」
ウォーター「だったら接近戦を」
でも接近戦に持ち込もうとしたウォーターを、風のようなスピートで風ライシアはいなしてきた。
風ライシア「ふん、お前たちなど所詮はその程度よ。そんなんで妖魔獣に勝てるつもりか」
風ライシアが私達を馬鹿にしたようにそう言うと汁ベエまでやってきた。
汁ベエ「全くだ。こ〜れならこの場でとどめを刺せるか〜もね」
そう言いながら汁ベエは体を一部ちぎった。
ウッド「えっ!?」
フレイム「アイツ何やってんの!?」
その光景に私達は驚いた。
汁ベエ「ほ〜れ、喰らいな」
汁ベエはそのちぎった部分をボールの様に私達に投げてきた。
そしてそのボールは生きているかのように私達の周りを飛び回って何度も私達にぶつかってきた。
ラウンド「くっ、よれきれない。ウワッ!!」
ウォーター「変幻自在にも限度が、キャッ!!」
そのボールが何度もぶつかってきてかなりのダメージを受けた。
風ライシア「私も忘れんなよ」
風ライシアも高速で移動し、かぎ爪で攻撃してきた。
ライト・ウイング「くっ調子に乗るな、ジャスティス・フェザー」
光の羽根が舞い散って、爆発し風ライシアの足を止めるとともに、ボールをたたき落とした。
ゴールド「今だ!!」
チャンスと見た私達は攻撃を仕掛けた。
汁ベエ「来るかい、プリキュア」
風ライシア「ちょこざいな」
風ライシアと汁ベエも私達に向かってきた。
こっちが攻撃すると向こうも躱したり受けたりして攻撃を仕掛けてきた。
それをこっちも躱して攻撃をするといった一進一退の攻防が続いた。
ウッド「プリキュア・アイビィ・チェーン!」
そんな中蔦の鎖が風ライシアを搦め捕った。
風ライシア「ぐっ! おのれ」
風ライシアはそれを引きちぎろうともがいたが
ゴールド「今だ!! プリキュア・ゴールド・ブレイカー!」
私の必殺技が直撃し、風ライシアは大きく吹き飛ばされビルの壁に叩き付けられた。
風ライシア「うあーっ!!」
そのまま彼女は地面の上に倒れてしまった。
ライト・ウイング「汁ベエ、次はアンタよ! 受けなさいシャイニングナックル」
ライト・ウイングの鉄拳が汁ベエに炸裂し、汁ベエも吹き飛ばされた。
その時、汁ベエの体から、六角形の箱のようなものがこぼれ落ちた。
ラウンド「ん? 何あの箱」
ライト・ウイング「まさかあれはラドンパの箱?」
ゴールド「それって、妖魔獣を封印したっていう?」
ウォーター「あれを奪えば、妖魔獣を倒せる!」
私達はその箱を奪おうと駆け寄った。
汁ベエ「そ〜うはさせないよ」
汁ベエがどす黒い色の光の弾を発射してきて、目の前で爆発が起きたので私達の足が止まってしまった。
しかし、爆発で箱の方も飛んで行ってしまった。
その飛んで行った先では風ライシアが立ち上がっていた。
ライト・ウイング「あっ、ラドンパの箱が!」
汁ベエ「今だ、箱の力を使え! プリキュアを封印しろ風ライシア」
汁ベエが風ライシアに向かって叫んだ。
すると、風ライシアが頷いた。
風ライシア「ああ、封印してやるよ汁ベエ。てめえをな!!」
汁ベエ「何!」
ゴールド「えっ!?」
ライト・ウイング「どういうこと!?」
あまりの展開に頭がついて行かない私達をよそにラドンパの箱が開いた。
箱の中に向けてものすごい風が吹き始め、まるでブラックホールのように汁ベエを吸い寄せ始めた。
風ライシア「汁ベエ、てめえの世界はこの箱の中がお似合いだ!」
風ライシアが勝ち誇ったように笑っていた。
汁ベエ「き、貴様!」
だんだんと吸い込まれて行く汁ベエを見ながら、私達は巻き込まれまいと必死に踏ん張っていた。
ウッド「す、すごい吸引力です。ホントのブラックホールみたい」
ライト・ウイング「にしても、一体どういうつもりよアイツ」
が、急に箱が吸い込むのをやめてしまった。
風ライシア「な、何!?」
ラウンド「えっ?」
ウォーター「止まった?」
次の瞬間ラドンパの箱が大爆発を起こし、風ライシアはその爆発に巻き込まれ大ダメージを受けていた。
汁ベエ「フォッフオッフオッ。我が輩を出し抜こうなんて甘いねえ風ライシア」
それを見ながら汁ベエが笑っていた。
汁ベエ「はじめから分かってたよ。お前さんはた〜またま我が輩達の封印が解けたときに近くにいただけだってね。使えそうだから泳がしておいただ〜けさ。お前さんに箱を使わせたのもわざとさ。使うと大爆発するように仕掛けといたのさ」
風ライシア「き…さ…ま…」
爆発を至近距離で受け、ダメージを受けた風ライシアはなんとか起き上がろうとしていたが、
筋タロウ「ふん!!」
突然筋タロウが現れて風ライシアを後ろから殴りつけた。
風ライシア「ぐわっ!!」
さらにダメージを受けて風ライシアの体から何かの入った袋がこぼれ落ち、筋タロウがその袋を拾い上げた。
筋タロウ「これが…欲しかった…」
汁ベエ「そのゾーゾ草の種。ラドンパの箱より便利そうだ〜しね。何よりこれで我が輩達は封印されることも無くなった。筋タロウ、ナ〜イスフォローだよ。我が輩達を仲違いさせて、隙を作ったつもりだったんだろうけどね」
筋タロウ「これで…俺の…目的…達成…」
めまぐるしく変わる目の前の状況に私達は混乱していた。
ライト・ウイング「あなた達、ぼーっとしないで!!」
ライト・ウイングの喝で私達はハッとした。
ウォーター「みんな!!」
フレイム「オッケー」
ウッド「はい」
ラウンド「チャンスよね!」
ゴールド「いくよ!」
私たちは、金色の光を放つキュアブレスを頭上に掲げ、大きな光の玉を作った。
ゴールド・フレイム・ウッド・ラウンド・ウォーター
「「「「「悪しきを砕く、絆の生んだ奇跡よ! プリキュア・エンジェリック・シンドローム!!」」」」」
ライト・ウイングもシャイニング・パレットに力を込めていた。
ライト・ウイング「汚れた魂を浄化する正しき光を受けなさい!! ライト・ウイング・サンシャインフラッシャー!!」
パレットを一振りすると、大きな光のヒマワリがライト・ウイングの前に現れすごくまぶしい光が照射された。
私達の必殺技が妖魔獣に向けて発射された。
と、その時だった。
筋タロウ「ふん!」
筋タロウが倒れていた風ライシアを放り投げ、私達の必殺技の盾にした。
風ライシア「ちぃっ! ぐわぁーっ!!」
必殺技の直撃を受け、風ライシアは絶叫とともに大爆発を起こした。
そして爆発が収まった時、風ライシアの姿は無かった。
汁ベエ「フォッフオッフオッ。 跡形も無く吹き飛んじゃったかい。 これが因果応報という奴だよ風ライシア」
ゴールド「妖魔獣、あなた達仲間を盾にして!!」
妖魔獣の行動に私は怒っていた。
裏切ろうとしたとは言え、仲間だったものを盾にしたのだから。
筋タロウ「仲間…か…」
汁ベエ「ふん、あいつはただ利用してやっただけ。まあプリキュアが怒るのも当然だね。まあ次に会う時を楽しみにしてな」
そう言い置いて、汁ベエと筋タロウは消えた。
ゴールド「妖魔獣、絶対許さないんだから!!」
フレイム「ええ、絶対倒そう!!」
ウッド「仲間だったものにあの仕打ちひどすぎます」
ラウンド「自業自得の気もするけど気分は悪いわね」
ウォーター「ええ、私達なら絶対勝てます」
ライト・ウイング「その意気よ、あなた達」
私達の士気は相当高くなっていた。
この一連の出来事をビルの屋上から眺めている者たちがいた。
その一人は、筋タロウと話をしていたあのロボットだった。
M・キュリー「うまく行けばこの場ですべて片付くかと思ったけれど、計算をもう少し入念にしておくべきでした。でもまあ、とりあえずこちらの目論見通りといったところでしょうか、総統閣下」
彼女が総統と呼んだもう一人、それは鎧武者のような甲冑に身を包んだ白いロボットだった。
「ふん、妖魔獣にせよ人類にせよ愚かな存在には変わりない。たとえどちらが残ろうとも、私に支配されるだけのものでしかない。この機械神聖帝国 ティア・ストラン総統
M・キュリー「イエス」
続く