エンジェルプリキュア   作:k-suke

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第18話 友との別れ、心美の涙

 

 

機械神聖帝国 ティア・ストラン  海底基地マシンランド

 

 

 

サイボーグのF・シアが、先日のプリキュアとの戦闘で破損していた部分の修理を自分で行っていた。

しかし、背中の部分の修復なので工具がうまく届かず、数日にわたり苦戦していた。

 

M・キュリー「貸しなさい」

 

そこに現れたM・キュリーが見かねたように工具を取り上げ修理を始めた。

 

 

M・キュリー「借りを残しておくのはごめんだわ」

 

F・シア「ナンノ事ダ」

 

M・キュリー「この間のプリキュアとの戦いであなたは私を助けた。自分が傷つくかもしれないのに。…いえ、現実にこうして傷ついている。どうして?」

 

M・キュリーはそれがずっと気にかかっていた。

 

 

F・シア「ナゼ、ソンナ事ヲ尋ネル?  仲間ヲ助ケル、当タリ前ノコトダロウ」

 

M・キュリー「仲間? そんな言葉は初めて聞いた…」

 

 

 

 

 

 

夢園市内某所

 

 

 

心美「ふああ、あれから三週間ほど経つけど、トリムも出てこないし、特に何も起きない。ティア・ストランってのは結構のんびりなのかな」

 

私こと火口 心美は一人で町中をぶらつきながらそう呟いた。

 

今日は日曜日であり、部活もたまにはいいだろうという事で部長権限で休みにした。

 

いつもならここで仲間達と一緒にいるのだが、私にも一人になりたいときはあるのだ。

 

 

心美「とは言え、一人ってのも退屈なもんだわね。特にやる事もないしね」

 

 

そんな私の前を、高校生ぐらいだろうか、いちゃつきながら歩いてくるカップルがいた。

 

すると、何か言い争ったと思うと、女の子の方が泣き始め男はオロオロしながら慰め始めた。

 

心美「バッカみたい。見ただけで嘘泣きってわかるのに」

 

 

私は自慢じゃないが今まで泣いた事がない。泣いたら負けだと思ってるからだ。

 

だから、ああいうかわいそぶりっ子を見ると腹が立つ。

 

それに気付かず機嫌を取ろうとする男子も男子だ。いくら独り身だからってあんなのとは付き合おうとは思わない。

 

 

心美「ふん、うらやましくなんか無いもん」

 

本当にうらやましくないのである。今の私には部活があるし、プリキュアもしなければならないのだから、恋愛なんか出来ないのである。

 

決して負け惜しみなどではない、断じてない。

 

 

そう呟いていると一匹の野良犬が路地から出てきた。

 

まだ子犬だろうがかなり薄汚れていた。

 

 

するとそのカップルは、何か汚いものを見るかのような目でその子犬をシッシッと追い払った。

 

心美「何よアイツら」

 

気分の悪くなった私は、その子犬のところに行き拾い上げると、例のカップルを一睨みすると、とりあえず別の場所に連れて行く事にした。

 

 

子犬を邪険にした奴らに頭に来ただけである。

 

余計な嫉妬も何もない。絶対にないったらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

機械神聖帝国 ティア・ストラン  海底基地マシンランド

 

 

 

この海底基地マシンランドにも、制作に失敗した機械やマシンロイドが多数いる。そして当然、それらを廃棄するための施設が存在している。

 

その廃棄された部品が何か意志を持ったかのように動きだし一つの形に組み上がり立ち上がった。

 

???「なぜ捨てる! なぜ壊した! A・テレス、憎い!! 奴が憎い!!」

 

そう叫んだその何かは、A・テレスのいる部屋に向けて歩き出した。

 

 

 

A・テレスの部屋

 

 

 

A・テレス「ん? 何事だ」

 

突然起きた爆発のような振動に続き、入り口の扉が破壊されA・テレスは動揺していた。

 

???「A・テレス。貴様を破壊する」

 

そこに入ってきたのは、先ほどのロボットだった。

 

A・テレス「何だ貴様は? この私を破壊するだと」

 

???「そうだ。俺は貴様に虐げられ破壊された機械の怨念が生み出したマシンロイド。リベンジのH(ヘル)・ケラーだ」

 

そう言ってそのロボットは、A・テレスに殴り掛かった。

 

 

 

H・ケラーとA・テレスの戦いが続いたが、H・ケラーはA・テレスの攻撃の前に防戦一方となっていた。

 

 

A・テレス「ふん、所詮はスクラップのツギハギでしかない。その醜い姿で私に勝とうなどと片腹痛いわ」

 

確かにA・テレスの言う通り、H・ケラーはいかにもスクラップの寄せ集めといった感じの姿であり、モチーフの分からない強いて言うならばキメラのような姿をしていた。

 

 

H・ケラー「黙れ、俺を気に食わないというのならば、お得意の裁断ショックを浴びせてみろ。貴様など、裁断ショックが無ければ何一つ従わせることのできない愚かな存在だ」

 

吐き捨てるようなH・ケラーの言葉にA・テレスは激高した。

 

 

A・テレス「ほざけ、文字通りのポンコツの分際で私に対しての口の聞き方を教えてくれる!!」

 

そう言うとA・テレスは大量の最大ミサイルを発射した。

 

 

H・ケラー「ぐおおーっ!!」

 

何発か直撃を受けたH・ケラーはふらつきながら一旦退却した。

 

H・ケラー「A・テレス。貴様は必ず破壊してやる。俺が眠る時、それは貴様への復讐を終えた時だ。首を洗って待っていろ」

 

その捨て台詞を残して。

 

 

M・キュリー「総統閣下、一体何があったのですか?」

 

異常を察知したM・キュリーが少し遅れて駆けつけた。

 

A・テレス「M・キュリー、廃棄したマシンロイドの残骸の処分はお前に一任しておいたはずだ。 なのにあんなものが生まれてくるとはどういう事だ。このポンコツめが!!」

 

そう言うとA・テレスはM・キュリーの裁断ショックを発動させた。

 

M・キュリー「うああーっ!! 総統閣下、一体何があったのですか? ぐああーっ」

 

ろくな説明も無いままにM・キュリーは鬱憤ばらしの様に裁断ショックの電撃を浴びせられ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

夢園市内 公園

 

 

 

心美「よーし、だいぶきれいになったな。 はい、これあげる」

 

私はさっきの子犬を公園の水道で軽く洗ってやり、途中で買ったドッグフードをあげていた。

 

雑種のようであるが、見慣れればこれはこれで味のある姿をしている。

 

心美「よーし、あんたうちで飼ったげる。幸い小さいけど庭のある家だし。何とかなるよ。えーっと名前は…」

 

ポチ、コロ、パンチなど色々考えていると携帯が鳴った。

 

心美「明日香、どうしたの?」

 

明日香「あっ心美ちゃん、大変ティア・ストランのマシンロイドが現れたみたい。廃品回収の車があちこちで襲われてるの。 すぐに来て場所は…」

 

 

心美「わかった、すぐ行くよ」

 

私は変身しようとしたが、足下にじゃれてくる子犬を思い出した。

 

心美「ええいしょうがない。ついておいで」

 

そう言うと私はキュアブレスを構えた。

 

心美「プリキュアパワー、サモンアップ!!」

 

『サモン、フレイムパワー』

フレイム「真っ赤に燃える心の炎 キュア・フレイム!」

 

フレイム「さっ、行くよ」

 

私は子犬を抱きかかえると、集合場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

夢園市内某所

 

 

 

そこでは一体のマシンロイドが廃品回収の車の荷台にてスクラップを物色していた。

 

運転手はというと、突然現れた謎のロボットに驚いて、運転席から逃げ出した後、腰を抜かしていた。

 

運転手「あわあわ、ば、化け物!」

 

 

しかし、そのマシンロイドはその運転手など気にも止めず、荷台の物色を続けていた。

 

H・ケラー「ふむ、ここにも大したものは無いが。まあさっきのより少しはましな部品があるが、まだまだこの程度では、A・テレスを上回る力にはならん」

 

 

ライト・ウイング「見つけたわよ」

 

その時上空から一足先に向かっていたライト・ウイングが舞い降りた。

 

 

フレイム「ティア・ストラン! 今度は何を企んでいるの?」

 

ゴールド「私達がいる限り変な事はさせないんだから」

 

ライト・ウイングに少し遅れて、私達エンジェルプリキュアも全員が到着した。

 

が、

 

 

H・ケラー「なんだ、プリキュアか。邪魔をするな、あっちへ行っていろ」

 

そのマシンロイドは私達プリキュアを一瞥するとまるで興味の無い声で、ぶっきらぼうにそう言った。

 

 

ウォーター「ふざけないで、片っ端から廃品回収の車を襲ったりしておいて」

 

ウッド「ティア・ストラン、許しません」

 

その言葉にそのマシンロイドはようやくまともに反応した。

 

 

H・ケラー「違う、俺はA・テレスを狙うもの。ティア・ストランではない!!」

 

ラウンド「なんですって!?」

 

私達が戸惑っていると、そのマシンロイドは強烈な光を発した。

 

 

ライト・ウイング「うわっ眩し!!」

 

ゴールド「目、目が〜」

 

そのまるで太陽が出来たかと思うほどの眩しさに私達は目がくらみ、視力が回復した頃には、すでにマシンロイドはいなかった。

 

 

ラウンド「今の奴、一体なんなの?」

 

ウッド「A・テレスを狙ってるとか言ってましたけど」

 

ライト・ウイング「適当な事言ったに決まってんじゃない! きったない奴!!」

 

ライト・ウイングが吐き捨てるようにそう言った。

 

かくいう私もまあそんなこったろうと思っていた。

 

 

 

「アンアン!!」

 

 

するとさっきの子犬が小さく吠えながら走って行った。

 

ゴールド「ん? 子犬だ」

 

フレイム「ちょっちょっと、どこ行くの?」

 

私は慌てて後を追った。

 

 

ウォーター「ちょっと、あなたこそどこに行くの?」

 

フレイム「さっき拾った犬なの。ごめんあたし抜ける」

 

 

 

 

 

心美「おーい、どこ行ったの?  あーっと、えーい早く名前決めとくんだった」

 

探そうにも名前を呼べないため、苦労していた。

 

 

まあそれでも、走って行った方向は分かっているため、わりとすぐに見つかった。

 

心美「あっいたいた」

 

子犬は走り疲れたのか道路の真ん中で座り込んでいたのだった。

 

心美「全く、そんなとこにいると危ないよ」

 

私が呆れながら近づいて行ったその時だった。

 

 

 

突然クラクションが鳴り響いたかと思うと、車が突っ込んで来た。

しかもご丁寧に進路上には例の子犬がいる。

 

心美「危ない!!」

 

思わず私が叫んだ時、何かが車の前を横切って子犬を拾い上げるのが見えた。

 

そして車が走り去った後それがなんなのかはっきりと分かった。

 

心美「あ、あんたさっきの」

 

そう、そこにいたのはさっきのマシンロイドだった。

 

 

 

 

 

機械神聖帝国 ティア・ストラン  海底基地マシンランド

 

 

 

M・キュリー「総統閣下、この度は私の管理不行き届きで申し訳ありませんでした」

 

必死に謝るM・キュリーに対しA・テレスの怒号が飛んだ。

 

A・テレス「直ちにあの出来損ないを処分しろ! 不必要なものなど存在する価値もないのだからな」

 

M・キュリーはA・テレスのその言葉にピクッと反応した。

 

M・キュリー(不必要? 処分?)

 

動きを見せないM・キュリーに対してA・テレスがいらだったように言った。

 

A・テレス「何をしている!! 早く処分に向かえ!!」

 

M・キュリーはその言葉にハッと正気に返ると進言した。

 

M・キュリー「お待ちください。あんなものでもまだ利用価値はあります。とことんまで使い倒してやるべきかと愚考します」

 

少しの間、重い沈黙が支配した。

 

A・テレス「…いいだろう。貴様の行動を許可してやる。ただし、妙な事をすれば、貴様もF・シアも私の判断ひとつで、裁断ショックの餌食になることを忘れるな!」

 

そして、F・シアの方を見て続けた。

 

A・テレス「まあ、F・シアにおいては、奴の記憶を奪ってある以上、それほど危険はないだろうがな」

 

A・テレスの手には、F・シアのメモリが入っていると思わしき小型端末があった。

 

 

 

 

 

 

 

夢園市内某所

 

 

 

わたしはマシンロイドが子犬を助けた事に驚いていた。ティア・ストランは命なんかに興味のないコンチクショウの集団だと思っていたからだ。

 

だから思わず口に出していた。

 

心美「驚いたわね。マシンロイドが、ティア・ストランが動物を助けるなんて。少しは情けってもんを知ってるのかしら?」

 

どこか皮肉げに聞こえたのは気のせいではないだろう。

 

 

H・ケラー「人間などにかける情けは持ち合わせていないがな」

 

そう言うと、目の前のマシンロイドは子犬を放した。

 

 

私は駆け寄ってきた子犬を抱え上げながら叫んだ。

 

心美「なんですって!? どういう意味よ!!」

 

H・ケラー「人間も奴とA・テレスと同じだ。自分たちに取って不必要なもの、欠陥のあるものと判断したものは次々に廃棄する。だからこそこの世界は醜く汚れて行く。妖魔獣とやらが生まれたのもその所為なのだろう?」

 

その言い様に私はいっさいの反論が出来ず、唇を噛み締める事しか出来なかった。

 

そんな私を見て、そのマシンロイドは見下すように言った。

 

 

H・ケラー「何も言い返さんか。所詮人間などそんなものよ。俺はそんな捨てられたもの達の怨念、リベンジのH・ケラーだ。だが安心しろ。俺の標的は、憎むものはA・テレスただ一人だ。貴様ら人間をどうこうするつもりはない」

 

そう言い残し、H・ケラーは去って行った。

 

私の耳にはそいつの言った言葉がいつまでも残っていた。

 

 

 

 

 

 

夢園市郊外 廃棄物処理場

 

 

 

H・ケラーはここ廃棄物処理場に侵入しようとしていた。

 

H・ケラー「ここには多くのスクラップがある。廃棄されたものの怨念よ。俺とともにA・テレスを倒すのだ」

 

しかし、正面から強行突破しようとしたのでたちまち警備員に取り囲まれた。

 

警備員「止まれ、止まるんだ」

 

 

そんな物は気にも止めないといった感じに、H・ケラーは突き進んで行った。

 

しかし、警備員に対して一切の危害を加える事はしなかった。

 

すると今度は通報を受けた警官隊が駆けつけた。

 

 

 

警官隊「止まれ、止まらないか!! さもなくば撃つぞ」

 

警告など聞こえないかのようにH・ケラーは歩みを止めなかった。

 

 

警官隊「やむを得ん。撃て!!」

 

その命令とともに警官隊の一斉射撃がH・ケラーに加えられた。

 

弾丸が何十発も着弾し、H・ケラーの体からあちこちの部品が飛び散り全身から煙を吹き始めていた。

 

それでもなおH・ケラーは反撃を行わなかった。

 

 

フレイム「やめなさい!!」

 

パトカーが何台も走って行くのを見た私はもしやと思い後をつけたのだが案の定だった。

 

一斉射撃の中に割って入ると、私のプリキュアの姿を見て驚いたのか射撃がやんだ。

 

私は警官隊を一睨みすると力の限り叫んだ。

 

 

フレイム「違う!! こいつは違うんだから!!」

 

私はH・ケラーに肩を貸すと、大ジャンプでその場を離れた。

 

 

 

 

 

廃車処理場

 

 

 

私は、あの後近くにあった廃車処理場にH・ケラーを連れて行った。

 

フレイム「ここの部品ならいくらでも使えるよ。アンタの言う通り人の情けないところが丸出しになってる場所だけどさ」

 

そう言ってあちこちの車の部品をH・ケラーに差し出した。

 

 

そのパーツを取り込みH・ケラーは傷ついた箇所を修復した。

 

H・ケラー「助けたのか、俺を」

 

H・ケラーは不思議そうに尋ねた。

 

 

その疑問に私は微笑みながら答えた。

 

フレイム「アンタだって、さっき子犬を助けたでしょう。それにあんなにやられてもアンタは人を傷つけなかった。 でもどうして?」

 

するとH・ケラーもまた堂々と答えた。

 

 

H・ケラー「俺の標的は、A・テレスただ一人。この体は、力はそのためのもの。他のものは傷つけない、それが俺の誇りだ」

 

H・ケラーの誇りに満ちた言葉に私はうれしくなった。

 

 

フレイム「戦おうよ、一緒に。私達とアンタ、敵は一緒だよ!!」

 

私はH・ケラーに拳を差し出した。

 

H・ケラーもまた拳を突き出し、私の拳と合わせた。

 

H・ケラー「お前のようなものがいるのならば、見直す必要があるな。人間について」

 

 

それを聞き、私は力強く頷いた。

 

フレイム「紹介するよ、みんなにも。さっき連絡は入れたから」

 

その時、機械的な笑い声が響いた。

 

 

 

フレイム「っ! この声は!?」

 

そうM・キュリーが現れたのだ。

 

M・キュリー「実にくだらないわね。所詮お前はスクラップ。私達に不必要な仲間意識だとか情愛だとかを抱くとは、実に不合理。ティア・ストランの汚点よ。 処分されたくなくば、ティア・ストランのために働きなさい」

 

それを聞き、H・ケラーは激高した。

 

H・ケラー「ふざけるな!! ティア・ストランにつくぐらいならば誇りのために喜んで破壊されてやる!!」

 

H・ケラーの言葉に一瞬M・キュリーが動揺したように私には見えた。

M・キュリー「所詮貴様はスクラップ。行きなさいゾーゾ!!」

 

 

ゾーゾが大量に出現して襲いかかってきた。

 

私達はゾーゾの攻撃をかわし、攻撃を片っ端から叩き込んでいった。

 

フレイム「今更こんなもんが相手になるもんか!!」

 

自慢じゃないがこれだけ戦っていれば必然的に強くなる。今の私にゾーゾはよくて足止め程度にしかならない。

 

しかし今回はその足止めで十分だった。

 

私とH・ケラーはゾーゾの群れに分断されてしまった。

 

M・キュリー「かかったわね。バーストミサイル」

 

M・キュリーの胸から発射されたミサイルの爆風でまだ完全に回復していないH・ケラーはダメージを受け、膝をついてしまった。

 

なかなか立ち上がれないH・ケラーにM・キュリーは何か機械のようなものを手に近づいて行った。

 

M・キュリー「あなたもマシンロイドだという事を分からせてあげる」

 

そう言うとその機械をH・ケラーの頭に押し付け、スイッチを入れた。

 

H・ケラー「ぐ、グアーっ!!」

 

するとH・ケラーの目が真っ赤に輝き始めた。

 

フレイム「H・ケラー!! アンタ一体何したのよ!?」

私は、M・キュリーに問いつめた。

 

するとM・キュリーはこともなげに言った。

 

M・キュリー「あら、そいつもマシンロイドの端くれだという事を思い出させてあげたのよ。人類を、そしてそれを守ろうなどと考えるプリキュアを倒すように思考プログラムを書き換えただけよ」

 

フレイム「な!?」

 

その言葉に私は驚くやら怒りが込み上げるやらで頭がぐちゃぐちゃになった。

 

そしてその言葉通りH・ケラーは獣のような雄叫びを上げて私に向かってきた。

 

フレイム「や、やめなさい。やめるのよ、H・ケラー!!」

 

私は必死にH・ケラーの攻撃をかわしながら、やめるよう叫び続けた。

 

しかし、その叫びもむなしくH・ケラーは止まらなかった。

 

 

 

 

 

ウォーター「プリキュア・ウォーター・バレット!!」

 

飛んできた水の弾丸がH・ケラーをひるませた。おかげで私は少し距離を取る事が出来た。

 

 

ゴールド「フレイム、大丈夫?」

 

ライト・ウイング「アイツはさっきの奴ね。やっぱり敵だったのね」

 

ラウンド「後は、私達に任せて」

 

次々到着した仲間達が、私を庇ってH・ケラーと戦おうとした。

 

だから私は

 

フレイム「待ってみんな。違う! アイツは違うの!!」

 

みんなの前に出て必死になって止めた。

 

ウッド「えっ!? 違うって…」

 

私の行為にみんなも戸惑っていたようだが、その隙をついてH・ケラーは背中から生やしたバズーカ砲の様なものを発射してきた。

 

「「「「「キャアアア!!!」」」」」

 

 

直撃を受けた私達は大きく吹き飛ばされた。

 

なおもH・ケラーは私達に向かってきた。

 

 

 

フレイム「あ…う…」

 

私は地面に倒れながらも、さっきの会話を思い出していた。

 

 

H・ケラー(俺の標的は、A・テレスただ一人。この体は、力はそのためのもの。他のものは傷つけない、それが俺の誇りだ)

 

 

フレイム「う…」

 

 

H・ケラー(ティア・ストランにつくぐらいならば誇りのために喜んで破壊されてやる!!)

 

 

 

 

フレイム「うおーっ!!」

 

私は雄叫びとともに立ち上がると、H・ケラーに向かって行った。

 

そんな私を見てM・キュリーが馬鹿にしたように笑った。

 

M・キュリー「あんなことを言っておきながら、やっぱり戦うとは。所詮あなたも自分がかわいいだけ。死の恐怖から逃れるために仲間を破壊しようとするのでしょう」

 

H・ケラーと戦いながら、私はM・キュリーに向かって叫んだ。

 

 

フレイム「黙りなさい!! アンタらみたいな奴らにはどうせ分からない事なんだから!!」

 

私はH・ケラーのパンチをかわして懐に飛び込むと、そのまま一本背負いの体勢に入り、H・ケラーを投げ飛ばした。

 

その時、立ち上がろうとするH・ケラーの装甲にまだ馴染みきっていない自動車の部品の亀裂があるのを私は見つけた。

 

 

フレイム「あれは、さっきの」

 

私は歯を食いしばり覚悟を決めた。

 

 

フレイム「アンタの誇り、私が守ってあげる!!」

 

私はもう一度H・ケラーの懐に飛び込むと、その自動車の部品目掛けて拳を放った。

 

 

フレイム「プリキュア・フレア・ボンバー!!」

 

装甲の亀裂から拳をぶち込み、火の玉をH・ケラーの体内に叩き込んだのだ。

 

体内に打ち込まれた私の必殺技の威力でH・ケラーは大爆発を起こし、ゼロ距離でそれに巻き込まれた私も当然吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

心美「うわーっ!!」

 

変身も強制解除され地面に叩き付けられた私はボロボロになっていた。

 

 

心美「ぐ…うう…」

 

ゴールド「心美ちゃん!! 大丈夫!?」

 

ウッド「無茶しすぎです」

 

ラウンド「一体なんであんなことを?」

 

 

心美「アイツは…H・ケラーは…」

 

ウォーター「あのマシンロイドならあの爆発で…」

 

その時、爆煙の向こうからガチャガチャと音を立てながら、おぼつかない足取りでH・ケラーが歩いてきた。

 

 

ライト・ウイング「くっ、まだやろうっての!」

 

血気に走るライト・ウイングをよそにH・ケラーは突然お礼を言い出した。

 

 

H・ケラー「ありがとう、キュア・フレイム」

 

H・ケラーも全身がボロボロになっており、あちこちから煙や火花を噴いていた。

 

心美「お礼なんて言われる義理じゃないよ。私はアンタを…」

 

私はH・ケラーを助ける事が出来なかった。それどころか、破壊しなければならなくなってしまったのだ。

そう思うと、顔を上げる事が出来なかった。

 

 

H・ケラー「胸を張れ。お前は俺の誇りを守ってくれた」

 

心美「H・ケラー…」

 

H・ケラー「俺の魂はお前とともにある。俺の復讐を、A・テレスを倒す事もお前達ならばできる。そうだろう」

 

私は力の限りの大声で返事をした。

 

 

心美「あったり前じゃない!!」

 

するとH・ケラーは満足したように頷いた。

 

 

H・ケラー「俺はスクラップから生まれた…。そして復讐を完遂できると知った今、もう一度スクラップに戻る…」

 

静かにそれをいい終えるとH・ケラーの体は次々に崩れ始め、10秒もしないうちに私の目の前にはただのスクラップが転がっていた。

 

 

顔が妙に冷たかった。

 

 

私は泣いているんだ。

 

 

それに気付くのにしばらくかかった。

 

 

 

 

 

 

機械神聖帝国 ティア・ストラン  海底基地マシンランド

 

 

A・テレス「くだらん作戦を立てた上、なんの成果も挙げられずおめおめと戻ってきおって!! どこまで不合理な事をすれば気が済むのだ。このポンコツめが!!」

 

 

M・キュリーは裁断ショックにより電撃を加えられながら、考えていた。

 

 

M・キュリー(私は間違いなくA・テレス総統の制作したプログラムでH・ケラーの思考プログラムを完全に書き換えた。にもかかわらず、奴の感情を完全に消し去る事が出来なかった。ならば、仲間意識や絆というものは、総統閣下の制御や支配に勝るということになる)

 

そのM・キュリーの視線の先にはF・シアが、青い目を光らせていた。

 

だが、その拳が固く握りしめられていたことにM・キュリーもA・テレスも気付いていなかった。

 

 

続く

 




怪人紹介


リベンジのH・ケラー

スクラップから生まれた キメラ型ロボット

名称モチーフはヘレン・ケラー (Helen Keller)
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