早い物で、二学期も終了し冬休みに入った。
クリスマスイブである今日、私達は未来の部屋にパーティの準備のため朝から集まっている。
心美「いやあ、色々あったけど、無事にパーティが出来そうね」
聖歌「はい。私、友達とパーティするなんて初めてで楽しみにしてたんです」
心美ちゃんと聖歌ちゃんがクリスマスツリーを飾りながら楽しそうに話していた。
恵「パーティもいいけど、きちんと後片付けも忘れないようにね」
未来「それはわたしからもお願いするわ。ここわたしの家だってことくれぐれも忘れないでね」
恵さんと未来が釘を刺してきた。
晶「まあまあ、それぐらいみんな分かってるわ。準備ができたらゆっくり楽しみましょう」
明日香「でも準備が終わったらパーティの前に、こないだからずっと気になってる事をみんなと相談したいんだけど」
私はそう切り出した。
心美「気になってるって、何が?」
明日香「うん。フライシアの事なんだけどね…」
そう言うとみんなどこか重々しい空気になった。
私達はテーブルを囲んで座っていた。
するとグルトが切り出した。
グルト「そもそもの問題として、フライシアって何者グル? いったい何がしたいグル?」
グルトの言葉に私達は真剣に考え込んでしまった。
心美「ずっと戦ってきた相手だけど、その力も目的もほとんど知らないわよね」
晶「ちょうどいいわ。いい機会だし、これまでの事を振り返ってみましょう」
恵「そうね。まず気になるのは、この前の戦いかしら。私達の変身を強制解除して、変身不能にしたわ。でもあれはどういう事かしら?」
恵さんの言葉に、この前のティア・ストランとの最終決戦のことを思い返す。
あの時、F・シアの発射した光線で私達は強制的に変身解除され、しばらく変身できなくなった。
心美「どうって…、ティア・ストランの武器じゃないの?」
聖歌「違うと思います。もしそうならA・テレス自身や他のマシンロイドだって使えるはずです。それにそもそもF・シアはA・テレスに武装とかをつけられただけで、もともとマシンロイドでもないんですから」
恵「ということは、F・シアの元々持ってた力ってこと?」
確かに言われてみれば、そう言う事になる。でもそんな力をF・シアはなぜ持っていたんだろうと私は考えを巡らせた。
晶「そう言えば、A・テレスはF・シアの記憶を消したつもりだったのよね。失敗したみたいだったけど。でも、どうしてそこまでする必要があったのかしら」
心美「その方がF・シアを操るのに楽だと思ったから? いやむしろそこまでしないと従わないと判断したのかな」
未来「つまり、A・テレスはフライシアの何か特別な力、私達の変身機能を停止したりできる、そんな力を持っているのを知っていて、それを利用しようとしてアイツの記憶を奪った」
明日香「それに力って言えば、私が過去に飛ばされたときの事もあるんだよね」
私は過去に飛ばされたときの事を思い返した。
聖歌「そうです。タイマーのG・ベラーのエネルギーでは5秒戻すのでいっぱいいっぱいだったのに、フライシアの攻撃の影響でもっとずっと前に飛ばされたんですよね」
未来「ってことは、アイツのパワーはタイマーのG・ベラーの何十倍、何百倍ってこと? そんなすごい力がアイツにあるってこと?」
機械神聖帝国 ティア・ストラン 海底基地マシンランド
手術台のような所に横たわっていたM・キュリーの目が光り輝き、起動した。
M・キュリー「はっ、私はいったい?」
F・シア「目が覚めたか。なんとか元通りにしたつもりだけどな。不具合があったら言ってくれ」
M・キュリーは状況を把握すると尋ねた。
M・キュリー「F・シア、あなたが私を修理したの?」
F・シア「まあな、それがどうした?」
M・キュリー「気になるわよ。あなたは、どうしてそこまで私に入れこむの? ティア・ストランを滅ぼすために記憶喪失の振りまでして潜入していたのに。今更私を修理する理由があるのかしら」
F・シア「お前は私とよく似てる。信じてた奴に裏切られて捨て駒にされた。だからどうしても放っとけなかった」
F・シアは静かにそう言った。
M・キュリー「…F・シア。あなたは一体何者なの?」
しばらくの沈黙の後、M・キュリーは尋ねた。
F・シア「そうだな。ちょっと腹を割ってゆっくり話そうか」
そう言うと、F・シアは光り輝き始めた。
その光が収まったときにそこにいた物を見て、M・キュリーは驚愕した。
M・キュリー「っ!! まさか、あなたは!?」
未来の部屋
グルト「でも、そこまでして利用したかったF・シアの力って、結局は、妖魔獣の力ってことグル?」
そう、サイボーグのF・シアの前は、妖魔獣のカマイタチの風ライシアだった。
妖魔獣は色んな力を持っていたが、風ライシアの力はよく知らない。グルト達も見た事が無い妖魔獣だと言っていた。F・シアの持っていた変な力はそれなのかと思っていると、晶さんも同じような事を考えたようだった。
晶「これはあくまで仮説だけど、妖魔獣の力をティア・ストランが研究、増幅したということじゃないかしら?」
心美「妖魔獣との戦いか。アイツは私達じゃなくって、汁ベエのほうをラドンパの箱で封印しようとしたよね」
恵「そうそう、でも汁ベエには裏切りを見抜かれてて、失敗したのよね」
私は、風ライシアの最後の戦いを回想していた。
心美ちゃんや恵さんの言った通り、風ライシアの行動は汁ベエにはばれていた。
結局、その後風ライシアは筋タロウにゾーゾ草を取られて、あげくにエンジェリック・シンドロームの盾がわりにされて大爆発した。
聖歌「でも、その後の事を考えると、あの場ではうまく逃げたってことですよね」
確かに聖歌ちゃんの言う通りだ。ティア・ストランに自分から潜入しようとしていたとフライシアは言っていた。
つまり、私達の必殺技を受けても死ななかったどころか逃げる余力までもがあったという事である。
未来「それに、もう一つ気になる事があるわ」
明日香「何、未来?」
未来「うん。汁ベエを封印してしまったら、妖魔獣の力は著しく弱体化する。妖魔獣にしてみれば自殺行為なのに、どうして封印しようなんてしたのかしら」
心美「それは…、何でなんだろう?」
恵「何か、他に力を維持できる方法をすでに身につけていたってことかしら? だから別に汁ベエがいなくなっても良かった」
聖歌「そうです。実際妖魔獣が封印されてたのに、ブラックムーンにいたじゃないですか」
明日香「ブラックムーンか…。 あの頃は新月のフライシアって名乗ってたよね…」
聖歌ちゃんの言葉に、私はブラックムーンと戦っていた頃の事を記憶から掘り返した。
晶「元々は妖魔獣なのに、異次元人の振りをしてブラックムーンに加わっていたのかしら?」
心美「あの時、次元戦艦ツキノワの爆発に巻き込まれて、モスブラックとかと一緒に死んだと思ってたけどね」
聖歌「爆発にまぎれて、うまく自分だけは逃げたんですよ」
恵「そうね。あの後の話の流れからすると、私達をツキノワに拉致したのもわざとだったみたいだし」
未来「私はその頃のことよく知らないんだけど、なんで新月のフライシアって名乗ってまでブラックムーンにいたのかしら?」
未来がもっともな疑問を投げかけてきた。
その疑問に私達はなんとか納得のいく理由は無いかと考えた。
恵「う〜ん、その方が、都合がよかったのかしら? ほら、ブラックムーンの力が借りられるから、とか」
聖歌「ブラックムーンがエンジェルクリスタルを手に入れたら、裏切って自分のものにするつもりだったのかもしれません」
グルト「それは、変グル。妖魔獣はエンジェルクリスタルのことを知らないはずグル」
明日香「えっ、ホント?」
グルト「そうグル、エンジェルクリスタルのことはプリキュアにしか言ってないグル。色んな次元を移動できるブラックムーンが知っているのはともかく、妖魔獣は知らなかったはずグル」
グルトの言葉に思い返してみると、
明日香「確かに、汁ベエも筋タロウもエンジェルクリスタルを狙ったりしてこなかったけど…」
心美「えっ? でもそれならアイツはエンジェルクリスタルの事を妖魔獣の誰にもに伝えなかったってこと?」
未来「いつか、自分が手に入れて使うつもりだったのかしら? だから妖魔獣が復活した後も、もしかしたらその前もどんな願いも叶うというエンジェルクリスタルのことをずっと黙っていた」
晶「そうかもしれないわね。それでもどこにあるのかまでは分からなかったから、ブラックムーンに加わって探してたのかしら? もしくはブラックムーンでエンジェルクリスタルのことを聞いたかのどちらかね」
そうだ、エンジェルクリスタルはずっとうちの学校の図書館にあったのだ。
どこにあるか知らないからこそ、ブラックムーンはフェアリーゾーンに攻め込んだのだ。
明日香「そういえば、新月のフライシアの頃から、なんか変な相手だったよね」
聖歌「はい。初めて戦ったときも、今思えば、プリキュアが大きな音に敏感なこと、グルトさんが車の排気ガスが苦手な事を知っていて、三日月のチャドカリンを連れてきたのかもしれません」
恵「ブラックムーンとの決戦の前に私達を捕まえるために一対一で戦ったときも、私達の能力の弱点を知っていたみたいだったわ」
未来「それに、カッパの乾クロウの時だって、私の性格を知って作戦を立てたみたいだった。もしかしなくてもフライシアは、私達精霊やプリキュアのことを、詳しく知ってたってこと?」
未来の言葉に私達は一度話を整理する事にした。
聖歌「えーっと、妖魔獣が、プリキュアに封印されたのが、四年前ですよね。カマイタチの風ライシアは、その頃のプリキュアやグルトさんたちのことを、一人でこっそり調べていたから、でしょうか? だからプリキュアの力やグルトさんたちのこと、エンジェルクリスタルのことも知っていたのに、未来さん達は彼女の事を知らなかった」
聖歌ちゃんが ゆっくりと確認するように話すとみんなもそれに続けた。
晶「汁ベエと筋タロウというツートップをプリキュアに封印されて、力も失った妖魔獣たちは、表立って行動しなくなった。 でも…」
恵「風ライシアだけは、何かの力で異次元に逃げた、のかしら?」
心美「四年の間に、ブラックムーンの一員になって、力を蓄えたってこと? 汁ベエがいなくても力を維持できるように?」
みんな色々言っていたがどうもしっくり来ないようだった。
私もみんなの話を聞いて色々考えていたが、ふとある事が思い浮かんだ。
明日香「ねえ。もしかしたら、妖魔獣でもないんじゃ…」
その言葉にみんなは、えっ?という表情をした。
明日香「だって、こんなに色々姿変えてるんだよ。四年前までは妖魔獣だったとしても、その前があったのかも…。もっと別の何か…なんじゃ…」
私の言葉にみんなはどこか納得できるように感じたらしく、考えが進んだ。
未来「そうよね。それにフライシアって行動に一貫性がないというか、なんかこう、しっくり来ないのよね。まるで、こう、はじめから裏切るために色んな組織に潜入してるみたいだし」
心美「つまり、元々の自分の立場上、他の奴らが邪魔だったってこと? だから妨害のために潜入していた、ってこと?」
聖歌「でもそうすると、サイボーグのF・シアの前が、カマイタチの風ライシアですよね…」
恵「で、その前が新月のフライシアでしょ。じゃあ… その前は?」
そこで話が止まってしまった。私達の戦いの前の事なんて私達は分からない。
明日香「ん? ねえ未来とかグルトは何か心当たりないの? 昔のプリキュアと一緒だったんでしょ」
前のプリキュアと一緒にいたグルト達ならなにか知ってるかもしれない、そう思って私は尋ねた。
心美「そうよ、アンタ達もわかんないなら、せめて前のプリキュアがどこの誰か教えてよ。ひょっとしたらなにか手がかりを残したりしてあるかも」
聖歌「そうです。どこに住んでた人達なんですか? もしすぐに行けるところなら…」
すると未来は目をパチパチさせて、意外そうな顔をしてきた。
未来「って、あなた達。聞いてなかったの?」
晶「聞いてないって? えっ?」
未来「前のプリキュア、ゴッデスプリキュアっていうんだけど、
一瞬の沈黙の後
明日香・心美・聖歌・恵・晶「「「「「えーっ!!!!」」」」」
部屋が揺れるほどの驚きの大声を私達は出した。
恵「そ、それホント?!」
恵さんが身を乗り出して未来に尋ねた。
未来「ホ、ホントよ。嘘ついても仕方ないじゃない。大体わたしもあの二人が通ってたから、夢園中学校に転入したんだから」
聖歌「なるほど。そう言えば転入してきた時、そんな事言ってましたっけ。でもこれでいくつか疑問が解消しました」
明日香「そうだね。夢園中学の生徒だったから、エンジェルクリスタルを図書館に隠してたんだ。私達がプリキュアになれたのもそのせいかも」
心美「フライシアの奴、柔道場に簡単に侵入してきたこともあったけど、その時のプリキュアを調べるついでに、通ってる学校とかも色々調べてたのね」
晶「生徒会室に侵入したのもね。でも、そうなると話は簡単だわ。今年はもう学校に入れないから。年が明けたら、その人達について調べましょう」
恵「そんな事しなくても、その人達の住所この近くなんだろうし、未来やグルトが家ぐらい知ってるんじゃないの?」
恵さんが未来達の方を見てそう聞いた。
未来「ああ、駄目よ。私もヒューマンゾーンに来てすぐに、あの二人の家に行ったけど、更地になってたり、他の人が住んでたりしてたわ」
心美「それもそっか、じゃあやっぱり年明けね」
明日香「よ〜し、希望がみえた事でパーティ始めよう!!」
「「「おー!!」」」
私達はこの後パーティを思い切り楽しんだ。
グルトが浮かべているどこかおかしな表情に気付く事もなく。
機械神聖帝国 ティア・ストラン 海底基地マシンランド
その頃フライシアもまた、自分の素性をM・キュリーに語っていた。
M・キュリー「そう、そんな事があったの…。 それであなたはこれからどうするつもりかしら」
フライシア「そうだな、A・テレスに取り付けられた装甲とかも全部取り外して元通りになったことだし、元々いた私の場所に帰る事にするよ。そこでやらなきゃならないことも、やりたいこともあるしな。で、お前こそどうするつもりだ」
しばらくの沈黙の後、M・キュリーは口を開いた。
M・キュリー「…私は、A・テレス総統の考えのまま、人類が愚かな物と決めつけていた。だから、本当に人類が愚かなのかそうでないのか自分の手で調べてみるつもりよ。また五千年かけてね」
フライシア「そうか。でもまあ、調べるまでもないことだとは思うがな」
M・キュリー「かもね。でもこれは私の意地よ。自分自身で人類の価値を判断してみる。誰かの考えではなく、ね。 その先は…結論を出してから考える事にするわ」
M・キュリーは、どこか微笑んでいるような希望に満ちた声でそう言った。
フライシア「わかった。じゃあな、M・キュリー。 多分もう会う事もないだろうな」
M・キュリー「ええ、でもあなたの事はメモリーに永遠に記録しておくわ」
そうしてがっちりと握手をかわした後、フライシアはマシンランドから姿を消した。
M・キュリー「ありがとう。フライシア、いえ…」
明日香の部屋
未来の部屋でパーティを終え、帰り道でトリムを捕まえ、家でもまた家族とのパーティを終えて私はベッドに入っていていた。
明日香「前のプリキュアが、私達の先輩だったなんて驚きだよ。グルトも早く教えてくれれば良かったのに」
グルト「う、うん。つい言いそびれてしまったグル」
明日香「でもフライシアってホントになんなんだろ。考えれば考えるほどなんか変な奴なんだよね。 異次元の怪人でもないし、妖魔獣でもなさそう。もちろんマシンロイドでもなくて、おまけにプリキュアやグルト達の事に詳しい。 訳わかんないな」
後にして思えば、私はこの時に気がつくべきだった。自分の陥っている致命的な思い込みに…。
???
「…デ〜ストロ〜イ…」
続く