エンジェルプリキュア   作:k-suke

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第24話 さようならエンジェルプリキュア

 

キュア・アルティメットに全てを知らされ、滅多打ちにされたあと、私達は誰も何も言わないままだった。

 

 

未来のすすめで怪我の手当のために未来の部屋に向かったが、その道中も手当の最中も誰も口を開かなかった。

 

 

そんな沈黙の中、心美ちゃんがポツリと言った。

 

心美「…グルト、アンタずっと私達を騙してたの?」

 

その言葉にグルトは怯えたように体を震わせた。

 

 

グルト「グ、グルトは騙してなんか…」

 

その言葉に心美ちゃんはテーブルをバンと叩いて怒鳴った。

 

心美「騙してたじゃない!! 私達がずっと戦ってきたのって、ただのマッチポンプじゃない!!」

 

確かにそうだ。私達がトリムを集め続けていたから色んな組織が次々に現れたのだから。

 

 

聖歌「前のプリキュアが行方不明だって言ってましたけど、それだってあなたの所為じゃないですか!!」

 

聖歌ちゃんも珍しく怒っていた。特に彼女は裏切られる事に敏感なのだろう。

 

 

 

晶「あなたは一体私達を何だと思っていたの? 使い捨ての都合のいい駒?」

 

晶さんもいつもと違う厳しい口調だった。

 

 

グルト「たっ大切な友達グル。だからフェアリーゾーンに招待しようと」

 

恵「世界が滅んだ後に私達だけでも助けようってこと? 冗談じゃないわ!! あなたが何もしなければ、何もしなくて済んだんじゃない!! それで罪滅ぼしのつもりなの!?」

 

グルトが何かいうたび皆が怒鳴り返し、もう収集不可能といった感じだった。

 

 

 

グルト「そっそんなつもりじゃ…。バッ、バター!」

 

グルトは救いを求めるように未来に話し掛けたが逆効果だった。

 

 

未来「お兄ちゃん言ったよね、プリキュアは世界のために死んだって。エンジェルクリスタルのことも何も教えてくれなかったよね。全部隠してたの!?」

 

憧れの人と戦うはめになってしまった未来のショックは相当なものだろう。

 

冷たい目でジロリとグルトを睨み返していた。

 

 

 

 

グルト「だって…だって… プリキュアは伝説の戦士で…世界を、フェアリーゾーンを守ってくれる人達グル…」

 

その言い方に何かが切れるような音が聞こえた気がした。

 

心美「いい加減にして!! 何でもかんでも私達があなたの都合で動くと思ってるの!」

 

聖歌「友達友達って口先だけじゃないですか!」

 

恵「一体私達がどんな大変な思いをしたと思ってるの!」

 

晶「私達はあなたの便利屋じゃないのよ!!」

 

ひとしきり怒鳴るとみんな少し落ち着いたらしくなんとか静かになった。

 

でも…

 

 

心美「もういいわ、これでさよならよ。もうプリキュアなんかやってらんない」

 

そう言い捨てると心美ちゃんはキュアブレスを投げ捨てた。

 

 

聖歌「私もです。また友達と信じてた人に裏切られるとは思ってませんでした。もうあなたなんか信じられません、勝手にしてください」

 

恵「私の父と一緒ね。世界を守るだの言った人が世界を壊そうとするなんて。プリキュア止めるにはちょうどいいわよね、もう戦う相手も出てくる事無いわけだし」

 

晶「期待を裏切らないよう頑張っていたつもりだけど、一体なにをやってたのかしら。馬鹿馬鹿しいわね」

 

みんなも続けてキュアブレスを投げ捨てて部屋を出て行こうとした。

 

 

 

 

明日香「み、みんなちょっと待ってよ…」

 

私は部屋を出ていこうとするみんなを止めようとした。が

 

晶「何? 明日香さん。もうここに私達がいる意味は無いわ、フェアリーゾーンを復興させる方法も無いし、そんなつもりもなくなったから」

 

そう言って晶さんは部屋を出て行った。

 

 

恵「私も、あんな汚れた人と話をしたくないの」

 

聖歌「しばらく放っておいてください」

 

恵さんと聖歌ちゃんもそうして出て行った。

 

 

心美「明日香。その内、ろくでもないのと友達になって、いいように使われたりするようになるかもなんて言ったけど、ホントにそうなっちゃったね。最後の忠告よ。もうプリキュアや妖精と関わらない方がいいよ。何させられるかわかんないから」

 

それを最後に心美ちゃんも出て行った。

 

私は一体どう言っていいかわからず、しばらく呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

そうして、みんなと一度も会う事無く冬休みも終わり三学期に入った。

学校でみんなに会ったが、挨拶をしてもどこかよそよそしかった。

 

聖歌ちゃんや晶さんからなんとか聞き出した話によると未来はずっと休んでいるらしい。

 

グルトもあれ以来どこかに行ってしまって、一度も家に来ない。

 

せめてみんなと打ち解けたいのだが、なかなかきっかけがつかめなかった。

 

 

 

昼休み

 

三学期が始まってからこっち、すでに二週間以上経っているのだが一度もみんなと食事をしていない。

 

心美ちゃんは、部活の準備だといって柔道場で食事をしているらしい。

 

恵さんは、購買でパンを買って適当なところで食べているらしい。

 

聖歌ちゃんは図書館の飲食スペースで、晶さんは生徒会室で仕事をしながら食事をしているらしい。

 

今まで仲の良かった私達が、急にバラバラになったのは学校でも噂になっているらしいが、正直私も参っていた。

 

 

明日香「はぁ、なんとかみんなと話をするきっかけがあればいいんだけど…」

 

私は机に伏せながら呟いた。

 

いつもなら、なりふり構わず話し掛けるのだが、さすがに今回は事情が事情なだけにどう言えばいいのかわからないでいた。

 

 

「あのう、金城さん? ちょっとお願いしたい事があるんだけど…」

 

そう言って話し掛けてきた人を見てみると、新聞部の朝日さんだった。

 

 

明日香「えーっと朝日さん、何か用ですか?」

 

朝日「あっ、うん、実はね…」

 

 

 

何でも、OGの人にインタビューをするといった企画を考えていて、明日の休みにその人に会いに行く約束をしているらしい。

 

しかし、他の部員は用事があるとかで、自分一人しか行けなくなったらしい。

 

おまけにそのOGの人の都合上、その日の会見場所に電車で一時間ほど離れた所を指定してきたというのだ。

 

一人で行くには遠すぎるので、何人か手伝ってもらえそうな人を知らないかと言うのだ。

 

 

これを聞いて私はしめたと思った。

 

明日香「うん、いいよ。私を含めて六人かな。すぐ声を掛けるから」

 

 

プリキュアの事と全く関係のない事でうまくみんなと過ごせれば、仲直りできるかもしれない。

 

それにみんなはああ言ってたけど、私はグルトを友達だと思ってる。なんとかしてフェアリーゾーンを復興させる方法を考えたかった。

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

私達は、朝日さんと一緒に電車に乗っていた。

 

朝日「みなさん、来てくれてありがとうございます」

 

心美「まあ、こんな時期だし。部活は休みだから暇つぶしにはいいか」

 

聖歌「特にやる事もありませんし」

 

恵「たまには遠出するのも悪くないわね」

 

晶「OGの人と話をする機会をもうけるのもいいことだわ、生徒会で提案してみようかしら」

 

あの後、みんなのところを駆けずり回って、必死に頼み込みなんとかみんな来てくれる事になった。

 

未来は行けたら行くとだけのメールの返事だったのが残念だったが、これをきっかけにみんなと仲直りできたらいいなと私は思っている。

 

 

心美「にしてもさ。確か新聞部って十人ぐらいいたよね。全員用事ってどうよ」

 

恵「そうね。他になにか取材するようなことがあったのかしら」

 

 

朝日「ぎく」

 

 

晶「そういえば、なんて人に会いに行くの? まだ聞いてなかったけど」

 

明日香「そういえばそうだね。一体どこに行くのかも聞いてなかったよね」

 

 

朝日「ぎくぎく」

 

 

みんなの言葉に朝日さんは冷や汗でびっしょりになっていった。

 

聖歌「さっきから、なんなんですか。はっきり言ってください。なにか裏があるんですか」

 

聖歌ちゃんの以前のおどおどした様子など微塵も無い、しっかりとした問いかけに、朝日さんは観念したように言った。

 

朝日「はい、白状します。実はみんなに同行を断られたんです。不良に会うのは嫌だって」

 

 

明日香「ふ、不良!?」

 

その言葉に私は驚いた。

 

 

恵「あなた、一体どんな取材しようって言うの。みんなに何かあったらどうするの!?」

 

恵さんの剣幕に朝日さんはたじたじになりながら言い訳した。

 

 

朝日「だ、大丈夫です。その人はもう更生して、レーサーを目指してるんですから。そういうレッテルで人を判断しないようにしようという意図も今回はあるんです」

 

 

晶「まあいいわ。生徒が困ってるなら手助けするのも仕事ですものね」

 

晶さんが仕方ないかというようにつぶやき

 

 

心美「まあ、なんかあったらあたしがちょちょいとやっつけてあげるって」

 

心美ちゃんが胸を叩いてそう言った。

 

以前のような空気が戻ってきた感じになり、私は嬉しかった。

 

次の質問をするまでは。

 

 

明日香「さっすが心美ちゃん。でなんて人なのその人?」

 

朝日「あ、はい。その人の名前は…」

 

朝日さんの答えに空気が一気に重くなり、私は質問した事今日ここに来た事を思いっきり後悔した。

 

 

 

 

 

 

レース場

 

 

ここのレース場はオフロードのダートコースであり、本日は練習のために開放されていた。

 

そこで練習をしている女性ライダーがいた。

 

彼女がコースを一周して帰ってくるとタイムを測っていたコーチらしき男性が喜びとともに駆け寄った。

 

 

健三「ひかる、見ろこのタイムを。長い事練習をさぼってたからみっちり仕込んでやろうと思ってたが、なんのなんの。前より良くなってるんじゃないか」

 

ひかる「へっへっへ。ただ遊んでたんじゃねえってことよ。おやっさん、もう一周してくるぜ」

 

この二人は神代 ひかると佐島 健三である。

 

今日はひかるの特訓のためこのコースに来ているのである。

 

 

健三「おいおい、久しぶりで飛ばしすぎるなよ」

 

ひかる「まあ見てなって、今は軽く流しただけだからな。本気でやりゃ、あと10秒ぐらい短縮できるぜ」

 

健三「大きく出たなこいつ」

 

 

そう言って健三は笑いながらひかるの肩を叩いた。

 

ひかる「へへっ、行くぜ」

 

ひかるもまた笑いながら、アクセルを吹かし二周目に入った。

 

 

そんなひかるの後ろ姿を見て健三は呟いた。

 

健三「ひかるが帰ってきてくれたおかげで、わしの夢がまた大きく膨らんできた。グランプリレースの優勝。わしが昔果たせなかった夢をあいつはきっと叶えてくれる。 わしだって修理工場のオヤジで終わりたくない」

 

 

 

 

 

 

 

朝日「あの〜すいません。私達夢園中学校の新聞部の者なんですけど、神代ひかるさんは…」

 

健三「ああ、こないだ電話してきた子かい。なんでも学校の新聞にOGのインタビューを載せたいっていう?」

 

健三は優しい声で朝日を迎えた。

 

 

朝日「はい、夢園中学校の朝日と言います。それで神代さんは…」

 

健三「ああ、すまんな。今コースに出たところなんだ。じきに帰ってくるだろうから、少し待っててくれるかい」

 

 

朝日「構いません。みんなもいいですよね?」

 

明日香「うん…」

 

心美「はあ…」

 

聖歌「まあ…」

 

恵「別に…」

 

晶「構いませんが…」

 

俯いて暗い表情でぼそぼそ呟く私達を見て、コーチらしい人が心配そうに尋ねて来た。

 

 

健三「なんか元気がないけど、どうかしたかな?」

 

明日香「いえ、そういうんじゃないんです。はい…」

 

 

 

 

 

ひかるはコースを走りながら満足そうな笑みを浮かべていた。

 

ひかる「おやっさん、グランプリの優勝はあたしの夢だ。もうこの世界は、誰かに絶望させられる事はない。みんなが全力で夢に向かって突き進んで行ける。あたしも夢に向かって進んで行く。見てろよ、ろくでなし」

 

そう呟くと、より風を感じるかのようにひかるはアクセルを吹かした。

 

 

 

「…デ〜ストロ〜イ…」

 

 

ひかる「何!?」

 

突然聞こえた不気味な声にひかるは急ブレーキをかけた。

 

 

ひかる「今の声、まさか!?」

 

 

ひかるが険しい表情で辺りを見回したのと、地面からゴキブリを模したような真っ黒の怪物が大量に出現したのはほぼ同時だった。

 

 

「…デ〜ストロ〜イ…」

 

 

そのゴキブリの怪物はまるでゾンビのようにそう呟きながら、ひかるへと襲いかかってきた。

 

ひかる「くそっ、こいつら」

 

ひかるは、アクセルを吹かして包囲を突破するも、ゾロゾロと襲いくるゴキブリにすぐに取り囲まれてしまった。

 

やむなくバイクから飛び降りるとライダースーツのポケットからゾーゾ草の種を取り出した。

 

ひかる「ちぃっ、ゾーゾ!」

 

ひかるはゾーゾ草の種をばらまき、ゾーゾを出してゴキブリと戦わせ、その隙に自分は少し距離を取ると両腕のキュアブレスを目の前で交差させた。

 

ひかる「プリキュアパワー、サモンアップ!!」

 

『Summon, lightning cyclone power. Explosion, ultimate power』

 

落雷と竜巻が発生し、それが収まった時には変身完了しており、何人かのゴキブリを同時に叩きのめしていた。

 

ゴキブリを倒しながら彼女は名乗った。

 

 

アルティメット「闇を裂く究極の閃光 キュア・アルティメット!!」

 

 

アルティメット「行くぜ、採伐セイバー!!」

アルティメットは、腰の小型ラドンパの箱を開けて剣を取り出すと、片っ端からゴキブリを切り倒して行った。

 

 

「…デ〜ストロ〜イ…」

 

 

そんなアルティメットに対して、少し離れた所にいるゴキブリは、どす黒い光弾をマシンガンのように連射してきた。

 

 

アルティメット「ちぃっ、プリキュア・サイクロン・ソーサー!!」

 

アルティメットは左手で風のソーサーを展開するとその攻撃を全弾防ぎきり、攻撃が途切れたのを見計らい、ソーサーを投げつけて大量にゴキブリを切り裂いた。

 

倒されたゴキブリは、溶けるように消えて行ったが、次々に現れており、まだまだゴキブリの数は減らなかった。

はじめに出した何体かのゾーゾも善戦はしていたが、すでに全滅していた。

 

 

アルティメット「ええい、どんだけいるんだ。プリキュア・エレクトロン・シャワー!!」

 

電気の火花が、雨の様に降り注ぎ、ゴキブリはショートしたように倒れて行った。

 

 

ある程度までゴキブリの数が減ったのを確認すると、大ジャンプし、電撃のような物を全身に纏った。

 

アルティメット「プリキュア・ライトニング・ブレイカー!!」

 

 

稲妻のようにゴキブリ達に突撃し、ゴキブリの大半は消し飛んだ。

 

そして、一体だけ残したゴキブリを地面に押さえつけるとすごい剣幕で尋ねた。

 

 

アルティメット「言え!! テメェらはナニもんだ? 目的は何だ!?」

 

 

 

「…デ〜ストロ〜イ…。 プリキュアよ、我ら終焉のデスローチが出現した以上、すでに手遅れだ。世界の終焉を楽しみにしていろ」

 

 

アルティメット「何だと!? はっ!!」

 

次の瞬間、アルティメットが捕まえていたゴキブリは大爆発した。

 

 

そして爆発が収まった時、バイクの下の影からアルティメットが姿を現した。

 

咄嗟に足下の影に潜って、爆発を回避したのだ。

 

アルティメット「くそっ自爆するとはな。しかし、もう手遅れっていうのは…」

 

 

アルティメットは神妙な顔つきになっていたが、思い出したような表情になった。

 

アルティメット「いけね、練習の最中だった。急がねぇと!!」

 

 

 

 

 

その頃、健三はストップウォッチを片手に苛ついたようにうろうろしていた。

 

健三「な〜にが10秒短縮だ、馬鹿たれが!! もう1分もオーバー…」

 

そこまで言って健三はふと気がつき、コースの方をのぞき始めた。

 

 

健三「待てよ、待てよ待てよ。いくらなんでも遅すぎる、これはひょっとしてひょっとすると…」

 

 

 

明日香「あのどうしたんですか?」

 

コーチらしき人が突然取り乱し始めたので私も驚いて尋ねた。

 

 

健三「いや、もうとっくに戻ってこなきゃ行けない頃なんだが、姿が見えんのだよ」

 

明日香「って、まさか事故じゃ…」

 

私の頭に最悪の展開が浮かんだ時だった。

 

バイクの音が響き、神代さんが戻ってきた。

 

 

健三「おお、ひかる。随分遅かったが一体どうした?」

 

ひかる「わりぃわりぃ。調子に乗ってたら転倒しちまったんだ」

 

健三「全く心配させおって。まあいい薬になったろう。っと、お客さんだぞ」

 

ひかる「え? ああ夢園中学の新聞部か」

 

そう言って見渡した先に明日香達がいるのを見てひかるは珍しいものを見つけたといった表情をした。

 

 

ひかる「あり? お前らは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝日「じゃあ、今の後輩達に向けて最後に一言お願いします」

 

ひかる「そうだな、長い人生色んな事が起きるだろうけど、他人を当てにして生きる事だけはするなってことかな。ちゃんと自分を信じて、自分の足で立って歩けって言っとくよ」

 

朝日「ありがとうございました。新聞ができたら一部送らせていただきます」

 

ひかる「おう、楽しみにしてるぜ」

 

 

 

朝日さんの神代さんへのインタビューを私達は、遠巻きに聞いていた。

 

心美「よくも、いけしゃあしゃあとまあ」

 

晶「でも、いいこと言ってるようには聞こえるわ」

 

恵「信じられるのかしら、あの人?」

 

聖歌「でも、悪かったのは私達なんですよね?」

 

みんなが色々感想を持つ中、私は意を決して前へ進み出た。

 

 

明日香「神代ひかるさん」

 

ひかる「ん?」

 

明日香「大切な話をしたいんですが、ちょっといいですか?」

 

ひかる「ああいいぜ。少し場所を移した方がいいか?」

 

私はコクンと頷いた。

 

 

 

 

少し離れたところで、私達五人と神代さんの話が始まった。

 

ひかる「で金城、何の話だ?」

 

 

神代さんは面倒くさそうに尋ねてきた。

 

私はどういったものか考えていたが、思い切って本音をぶつける事にした。

 

明日香「お、お願いします!! グルトを許してあげてください!!」

 

そう言って私は頭を下げた。

 

 

心美「ばっ、許す訳無いでしょ!! 家族の敵も同然なのに!!」

 

私の言葉に驚いた心美ちゃんが諌めるように言った。

 

私だって断られると思っていたが、神代さんの返事は意外なものだった。

 

 

 

ひかる「ああいいよ。許す許す。んで?」

 

心美「ほら見なさい! って、え?」

 

恵「ゆ、許す!?」

 

明日香「ほ、ホントですか!?」

 

意外すぎる言葉に私を含めてみな驚いていた。

 

私も驚く以上にすごく嬉しかったのだが、

 

 

ひかる「あんな野郎、もうどうでもいい。恨むほどの価値もねえしな」

 

手をヒラヒラとさせながらの言葉にわたしは愕然とした。

 

おそらく彼女の中ではもう、グルトはティッシュ一枚ほどの価値も重さも無いのだろう。

 

それがわかっても、私は必死に食らいついた。

 

 

 

 

明日香「そ、それでも!! 私はフェアリーゾーンを復興させたいんです!!」

 

ひかる「やれば? 別に止めねえし、邪魔もしねぇよ」

 

すると、神代さんは何言ってんだこいつというように顔をした。

 

 

明日香「だ、だから、その、手を貸して欲しくてですね…」

 

あまりの返事に戸惑った私に神代さんは耳をほじりながら続けた。

 

 

 

 

ひかる「なんであたしが手貸さなきゃならねぇんだ? 関係ねぇだろ」

 

聖歌「か、関係ないって… そ、そもそも、あなたがフライシアって名乗ってフェアリーゾーンを滅ぼしたんじゃ…」

 

ひかる「あん? あぁ言ってなかったか。あたしがフライシアに化けたのはブラックムーンの連中がヒューマンゾーン( こっち)に来てからだ。滅ぼしたのはモノホンの新月のフライシアだろ。だからあたしにゃ関係ない」

 

 

恵「そ、それでもあなたもプリキュアなんですよね!! 関係ないとは言えないんじゃ…」

 

神代さんの言い様に恵さんが思わず尋ねた。

 

 

ひかる「プリキュア? 違うな。あ、た、し、は、神代ひかるだ」

 

晶「自分はプリキュアじゃないと?! それは無責任すぎるんじゃないですか!!」

 

晶さんも我慢できないように叫んだ。

 

 

ひかる「無責任だぁ? そこまで言うんならテメェら自分でやれよ。少なくともあたしは、誰がなんと言おうと、自分のやりたいことをやりたいようにやるだけだ。他人に文句言われる筋合いはねぇよ」

 

その言葉にみんなも諦めたようだった。

 

 

 

心美「ったく、こんなんが先輩だとはね。もう一人の方もしれたもんだったんでしょうね」

 

心美ちゃんがため息をつくかのようにそう言うと

 

 

ひかる「おい火口、お前翼の知り合いか?」

 

突然眼光の鋭くなった神代さんが尋ねてきた。

 

 

心美「知らないけどあなたを見たらわかりますよ。どうせ大した人じゃなかったんでしょ」

 

そう言った次の瞬間、心美ちゃんは神代さんに殴り倒されていた。

 

 

 

心美「なっ何を…」

 

地面に倒れながらも心美ちゃんは文句を言おうとしていた。

 

すると、神代さんは心美ちゃんの髪をつかんで持ち上げ、低い声で言った。

 

 

ひかる「確かにアイツはただのろくでなしだ。だがな、アイツをディスりたけりゃ、あたしにまず断りを入れな。許可を出す気はさらさらねぇがな」

 

 

あまりの展開に、私達は混乱しており

 

明日香「や、止めてください!!」

 

それだけ言うので精一杯だった。

 

 

ひかる「ふん!!」

 

すると神代さんは心美ちゃんを投げ捨てるように放した。

 

 

ひかる「ったく、お前らもう帰んな。ああ、そうそう。柔道場の鍵、いい加減で直せよ。あたしがサボりに使ってた頃そのまんまってのは不用心だぜ。簡単に出入りできるからな」

 

 

心美「よーく覚えときます!!」

 

 

 

 

 

 

 

結局、この日はこれで帰る事になり、朝日さんのいい取材が出来たとの喜びとは裏腹に私達は暗い気分だった。

 

 

 

駅で朝日さんと別れて、みんなで帰り道を歩いていたら心美ちゃんが怒り始めた。

 

 

心美「ったく、なんであんな人がプリキュアになれたのよ!!」

 

晶「昔はもっと優しい人だったのかもしれないわ。でも辛い経験をして変わってしまったんじゃないかしら」

 

聖歌「何となく分かります。私も裏切られた事で人間不信になりましたから」

 

 

私も、おそらくあの人はグルトに裏切られた事が原因で変わってしまったのだろうと思っていた。

 

そうだとすれば、一体どうしたらいいんだろう。

 

 

そうしてみんなで歩いていると、随分やつれた顔でフラフラと歩いている未来を見つけた。

 

明日香「あっ、未来。どうしたの」

 

未来「ああ、みんな新聞部の手伝いでどっか行ってたんだっけ。あたしも、いい加減に何か食べようかなって。食欲全っ然ないんだけどね」

 

未来はやつれた顔でそう言った。

 

まともに寝ても無いのだろう、目の下には深いクマがあった。

 

そんな未来はとても痛々しかったが、意を決したように恵さんは言った。

 

 

恵「未来、ショックかもしれないけどよく聞いて」

 

明日香「め、恵さん!?」

 

恵「言いたい事は分かるわ。でもやっぱり話しておくべきよ」

 

恵さんの言葉に私達は納得し、今日の事を未来に話した。

 

 

 

 

 

するとそれを聞いた未来は、地面にへたり込んでしまった。

 

未来「ほ、ホントにひかるがそんなことを…」

 

心美「ホントよ、ショックだろうけど…」

 

へたり込んだまま、ぽろぽろと涙を流し始めた未来に対して、心美ちゃんが慰めるように未来の肩に手を置いた。すると

 

 

 

 

 

 

未来「よかった〜!!!」

 

心美「へ?」

 

未来「ひかるだ〜!! 全然変わってない〜!! ひかるのまんまだ〜!!!」

 

未来は泣きながら嬉しそうにそう言った。

 

 

恵「ま、まさか嬉し泣き?」

 

私達は未来の態度に混乱した。

 

 

明日香「ちょっ、ちょっと。えっ、変わってないって? えっ?」

 

未来「うん、変わってないよ。変わってたらどうしようと思ってたんだけど心配して損した〜」

 

そう言うと未来は突然明るくなり、涙を拭いて立ち上がった。

 

 

 

 

未来「そうと分かるとお腹空いちゃった。お腹いっぱい食べよっと」

 

そんな未来を見て私は、どうしても聞きたい事があった。

 

 

明日香「ね、ねぇ。ホントにあの人が変わってないなら、フェアリーゾーンの復興に手を貸してくれるかもしれないってこと?」

 

未来「ん? あぁ無理無理、ぜ〜ったい無理!! 全っ然変わってないんだもん、西から日が出ても手なんか貸してくんない」

 

未来は実にあっけらかんとそう言った。

 

 

聖歌「えっ、だって変わってないなら? え? え?」

 

聖歌ちゃんもそうだが、私も未来の言ってる事がチンプンカンプンだった。

 

 

未来「だって、ひかるも翼も、ヒューマンゾーンのためにすら戦った事ないもん。フェアリーゾーンのためになんか尚更何もしてくれないよ」

 

 

晶「は? だってプリキュアだったんじゃ…」

 

未来「ちがうちがう。あの二人はプリキュアだったけど、どこまでいっても『神代 ひかる』と『嵐山 翼』だったもの」

 

 

私には未来の言ってる事がどうも理解できなかった。

 

だから混乱を押さえるため話題を変えた。

 

明日香「えーっと。じゃあフェアリーゾーンはどうするの?」

 

未来「そうね、何か手を考えましょ。週明けから学校行くから色々相談に乗ってよ。あー今夜はぐっすり寝れそう」

 

そう言うと未来はさっきの様子はどこへやら、実に軽い足取りでスーパーへと向かって行った。

 

 

 

明日香「どういうことなんだろう?」

 

心美「昔から変わってないってこと? あれで?」

 

恵「あれでプリキュアだったの? 自分の事しか頭になさそうなのに?」

 

聖歌「でも、考えてみればプリキュアの力があの人を認めてるんですよね?」

 

晶「もう少し詳しい話を聞いてみる必要がありそうね」

 

 

続く

 

 

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