エンジェルプリキュア   作:k-suke

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第3話 友達なんていらない

 

ジリリリリ…

 

 

目覚まし時計が無機質に朝を告げた。

 

 

聖歌「もう朝か、学校に行かなくちゃ」

 

 

そうつぶやくと、私はベッドから起きだした。

 

私、木戸(きど)聖歌(せいか) は、夢園中学の2年生。

 

趣味は小説を読む事。小説や物語は好きだ。

 

いろんな驚き、感動をくれる。

 

そして何より、私を裏切らない…

 

 

 

聖歌父「転校して、ひと月ほどたったが学校はどうだ?」

 

朝食の席で、父が聞いてきた。

 

 

聖歌「うん、大丈夫。みんなと仲良くやってるよ。前の学校みたいじゃないから」

 

 

半分は嘘だった。仲良くしている人などいない。

 

でも少なくとも、前の学校みたいな目にはあってない。それだけは本当だった。

 

 

聖歌母「そう、それはよかった。お友達と仲良くね」

 

聖歌父「そうだぞ、友達は大切にな」

 

父も母も、ありきたりの言葉を投げかける。

 

でも、わたしはもういいと思っていた。友達なんて、もういらない。あんな思いをするぐらいなら…

 

 

聖歌「うん、大事にするよ」

 

私は、作り笑顔とともに答えた。

 

父と母も、そんな私の事をわかっているのかそれ以上の事は言わなかった。

 

 

 

 

 

 

夢園中学校 廊下

 

 

聖歌「この学校、大きな図書館があるのがうれしいな。珍しい本がいっぱい読める。それに図書館の中なら誰とも話をしなくても済むし」

 

私は、廊下を歩きながらこの学校に来てよかったと思っていた。

 

新学期に転校したおかげで、あまり周りと話さずに済んだことだし。

 

はじめの頃は、色々質問されたこともあったが、おざなりな返事を繰り返した結果、今ではクラスメイトでさえも挨拶すらろくにしてこない。

 

 

たった一人を除いて…

 

 

 

明日香「おっはよー、木戸さん」

 

この朝から妙にテンションの高い隣の2-Aの女の子、金城 明日香。

 

毎朝校門前で、馬鹿みたいな大声張り上げている子だ。

 

 

聖歌「おはようございます」

 

私は適当に返事をして、さっさと教室に向かおうとした。

 

でも、この人は…

 

 

明日香「いつも暗いね、挨拶ぐらい大きな声でしようよ。一日の始まりだし」

 

いい迷惑である。他人との距離を考えない人は嫌いだ。

 

 

聖歌「放っておいてください。予習がまだなので」

 

私はそう言い残して、早足で教室に向かった。

 

 

 

 

2-A内

 

 

明日香「ねぇ心美ちゃん。あの木戸さんってなんであんなに暗いんだろう」

 

心美「あんたね、嫌がってる子に声かけまくってりゃ、ますます避けられるに決まってんでしょ」

 

明日香「でも仲良くしたいじゃない。一人じゃ寂しいだろうし。いろんな本とか読んでるなら、話聞いてみたいし」

 

心美「ああいう子は、一人で本読んでるのが好きなの。それで寂しいなんて思わないぐらいにね。それにさ」

 

心美は周りを見渡して、小声で言った。

 

 

心美「あの子あんまりいい噂がないのよ」

 

明日香「どういうこと?」

 

 

心美「声が大きい。部活にあの子と同じクラスの子がいるから聞いたんだけどさ、あの子学年変わるのと一緒に転校してきたじゃん。その理由がさ、万引きで補導されて、前の学校に居辛くなったかららしいの」

 

 

 

 

友達なんて信用できない。私はあの日いやというほど思い知った

 

 

前の学校では、私にも友達がいた。確かに私は物静かな方だから、決して多くの友達に囲まれていたという訳ではないが、その友達も本を読むのが好きな子で、私とは好みが一致したこともあって仲が良かった。

 

休み時間には読んだ本の感想を言い合ったり、休みの日には本の貸し借りをしたり、将来小説家になろうかなんて軽口を叩き合ったり、それに。

 

新しい本が出たら、一緒に買いにいったりした…。

 

 

 

 

そうあの日、私たちは前から気になっていた本の新刊が出たというので日曜日に待ち合わせをして、本屋に向かった。

 

でも、運が悪くその友達は財布にお小遣いを入れ忘れてきており、お金が足りなかった。

 

私が貸してもよかったが、二人の所持金を計算してみてもその本を二冊買えるだけの金額には届かなかった。

 

聖歌「しょうがないよ、今日は帰ろう。また今度くればいいじゃない」

 

友達「やだよ、せっかく来たのに。聖歌もあの本読みたいでしょ」

 

聖歌「そうだけど、お金がないんじゃ仕方ないよ」

 

友達「そうだ、ちょっと周り見てて」

 

聖歌「え、どうしたの。ちょっとまさか…」

 

友達「大丈夫…、一冊ぐらい」

 

友達はそっと本を鞄に入れようとしていた。

 

聖歌「だ、だめだよ!! 何考えてるの!!」

 

私はあわてて、止めようとして大声を出した。友達の鞄を押さえて、本を出そうとした。

 

 

その時、私の声に驚いて周りの人がこちらを向いた。

 

友達「やば!」

 

友達は鞄を私に押し付けて逃げ出した。

 

鞄を押し付けられた勢いで、私はバランスを崩し尻餅をついてしまった。

 

聖歌「いたた…」

 

そして立ち上がったとき

 

店員「ちょっと君、鞄の中見せてくれる」

 

聖歌「え…」

 

 

 

その後、私は事務室に連れて行かれ、親と警察がやってきた。

 

幸い、鞄に友達の名前が入っていたこと、監視カメラに一部始終が映っていたこととで私の濡れ衣はすぐに晴れた。でも…

 

 

 

 

翌日に学校に行くと、私が万引きで補導されたと噂されていた。

 

友達が言いふらしたらしい。

 

今にして思えば、本を買いにいった人間という噂だけが流れ、友達も自分だとは言えなかったことで、消去法的に私が犯人にされただけなのかもしれない。

 

でも、少なくともその友達は私が万引き犯じゃないとも周りに弁明しなかった。

 

彼女が自分を目からそらすために、私を都合のいいスケープゴートにしたのだった。

 

あげく、その子は別の女の子たちとあっさりグループを作り、私に話しかけてくることもなくなった。

 

 

結果、一人になった私は周りから無視されるようになり、靴や教科書を隠されるといった古典的かつ陰湿ないじめを受けた。

 

弁明をするもかえって言い訳がましくなり、事態が悪化し、さらに無視され…と言ったことが続き、ついには、いたたまれなくなって転校した。

 

というのが、今現在私がこの学校にいる理由である。

 

 

親や先生が私に非がないということを分かってくれていたのがせめてもの救いだが、私はもう人を心から信用しないことにした。

 

友達なんて物語の産物、妖精や怪物の類いだと思うようにした。

 

 

 

 

 

 

 

という話を、私は何をトチ狂ったのか、この人にしている。

 

今日に限って、休み時間ごとにあんまりしつこく絡んできて、ついには放課後、あげくの果てがこの人とは本来逆方向のはずの帰り道である。

 

だから、ついイライラして思考が鈍ったのかも知れない。

 

 

明日香(←この人)「木戸さんの気持ちも分かるよ、でも新しい友達も作らないなんてだめだよ。そんな人ばかりじゃないんだから」

 

聖歌「いい加減にしてください!! みんながみんな、あなたみたいに友達が欲しい人じゃないんです。勝手な価値観を押し付けないでください!!」

 

 

毎朝毎朝馴れ馴れしく挨拶をしてくるだけでもうんざりしていたのに、さすがに今日という今日は我慢の限界が来た。

 

聖歌「私はもう友達を作りません。どうしてもというなら、妖精か怪物でも出してみてください。それができないなら、二度と話しかけないでください!!」

 

最後通牒のつもりで、絶対にできないことを言ってやった。

 

 

つもりだった…

 

 

 

 

グルト「じゃあ、明日香と友達になってくれるグル?」

 

聖歌「…」

 

明日香「この子はね、妖精のグルトなの。これで友達になってくれるよね、ね」

 

聖歌「えーと…」

 

 

はっきり言う、今何が起きているのかまったく理解できなかった。

 

鞄の中からぬいぐるみが話しかけてきている。

 

鏡があったら、私の過去最高に分けの分からない顔が映っていたと思う。

 

 

聖歌「なんですか、これ?」

 

やっとの思いで搾り出したのがそれだった。

 

 

明日香「言ったでしょ。この子はね、妖精なの。これで友達もいるって信じてくれるよね」

 

 

まさか、そんなことがと思っていた。あるはずないことが起きた。じゃあひょっとして。

 

いや違う、きっとこの人もいざとなれば裏切るんだ。

 

もうあんな思いはごめんだ。

 

 

 

心美「あーすーかー!」

 

明日香「あっ、心美ちゃん」

 

 

遠くから、また誰か走ってきた。

 

心美「まったく、完全に逆方向じゃない。探すの大変だったんだから」

 

まったくだ。なんでそこまでしてついてくるんだろう。意味なんかないのに。

 

 

心美「ったく、ほらトリム。見つけたんだから、ちゃっちゃっとする」

 

グルト「やったグル」

 

そう言って彼女は光るチョウをガラスのピラミッドに入れていた。

 

いったい何をしているのかと思ったが、別にどうでもよかった。

 

早く帰ろう。そう思ったときだった。

 

 

二回目の非常識が訪れたのは。

 

 

 

???「今日こそもらうぞ、エンジェルクリスタル」

 

 

聖歌「ひいっ!! な、何?」

 

そこにいたのは、黄色い蜘蛛のような怪物だった。

 

 

???「おれさまは、ブラックムーンが一員、寝待月のキイロスパイダー。おとなしくよこせばよし、さもなくば」

 

 

心美「明日香!!」

 

明日香「うん!」

 

二人は、まったく臆することなくブレスレットを構えると叫んだ。

 

明日香・心美「「ブリキュアバワー、サモンアップ!!」」

 

『サモン、ゴールド(フレイム)パワー』

 

オレンジと赤い光が二人を包んだと思うと、二人はフリルのついたゴスロリファッションにかわっていた。

 

ゴールド「金に輝く明日への希望 キュア・ゴールド!!」

 

フレイム「真っ赤に燃える心の炎 キュア・フレイム!!」

 

 

その二人は、ライトノベルで見たような、スーパーヒーローのようだった。

 

ゴールド「早く逃げて、木戸さん」

 

聖歌「え、はっはい」

 

私は思わずうなずくと、その人たちに背を向けて駆け出していた。

 

フレイム「いくよ、蜘蛛の化け物」

 

キイロスパイダー「ふっ、柔よく剛を制すだったか。まったくその通りだよな」

 

 

ゴールド「えっ?」

 

その次の瞬間、大量の糸を吐き出したようだった。

 

 

 

必死に逃げながら、私は考えていた。

 

もう何がなんだか分からない。あの人たちが何なのかなどもうどうでもいい。

 

私は静かに生きていたいのだ。

 

でも何か引っかかった。私は逃げている、あの人たちを見捨てて?

 

そうだ、私は見捨てた。あの時私が見捨てられたように。

 

そう思うと、急に足が止まった。

 

 

あの金城さんはこんな私にとことんまで話しかけてくれた。

 

迷わず逃げろといってくれた。

 

ここで逃げていいんだろうか?

 

私が裏切られた時のように?

 

いいわけがない。

 

それは私が一番よく知っているはずだ。

 

 

そして振り向いた私の前に蛍のような物が飛んできた。

 

 

 

 

キイロスパイダー「どうだプリキュア。おれさまの糸はそう簡単には解けんぞ」

 

そう自慢げに告げたキイロスパイダーの目の前には簀巻き状態になったプリキュアが二人転がっていた。

 

ゴールド「くそ、ぐるぐる巻きにされて動けないなんて」

 

フレイム「ぐっ、火でもなかなか燃えない」

 

 

キイロスパイダー「ふん、その前に猛毒を注ぎ込んで殺してやる」

 

キイロスパイダーはそう言うと口から牙を出して近づいていった。

 

グルト「あっ、プリキュアがまた…」

 

 

 

 

次の瞬間、緑の鎖のような物がキイロスパイダーの口に巻き付いた。

 

かと思うと、キイロスパイダーはその鎖に引っ張られるように大きく投げ飛ばされていた。

 

キイロスパイダー「む、むごが(な、なんだ)?」

 

口が塞がっていて、しゃべれないのだろう、ぐもった声だった。

 

 

その鎖を持っていたのは…

 

 

 

「新緑の映える聖なる木々 キュア・ウッド」

 

 

ゴールドでもフレイムでもない、誰もが初めて見る緑色のプリキュアだった。

 

キイロスパイダー「む、むひぐわ(プ、プリキュア)?」

 

ゴールド「もしかして」

 

フレイム「あれって」

 

 

 

 

もうなかばやけくそと言った感じだった。

 

普段の制服が絶対着ないようなゴスロリの服になっているわ、メガネがなくなっているのに周りがよく見えるわ、とんでもなく早く走れるわ、である。

 

 

蛍みたいな物が飛んできたかと思うと、緑の光が私を包み込み気がついたらこの有様である。

 

でも、他人を見捨てるという後悔をしたくなかったのだ。

 

 

ウッド「プリキュア・アイビィ・チェーン はぁぁ!!」

 

 

私は気合いを入れると、鎖を力任せに振り回した。

 

当然、その先にいる蜘蛛の化け物も一緒に振り回されており、目を回しているようだった。

 

キイロスパイダー「ひゃめろー(やめろー)」

 

 

ウッド「だぁー」

 

そのままの勢いで、地面に叩き付けた。

 

そして蜘蛛の化け物がダメージで立てない隙に何度も何度も同じことを繰り返した。

 

 

結果、相手は完全にグロッキーになっていた。

 

 

キイロスパイダー「ぐ…が…げ…」

 

 

 

フレイム「解けた」

 

ゴールド「やった」

 

二人は、火でようやく糸が燃えたようだ。

 

 

ゴールド・フレイム「「さっきのお返し!!」」

 

フレイム「プリキュア・フレア・ボンバー!」

 

ゴールド「プリキュア・ゴールド・ブレイカー!」

 

火の玉が飛んできて蜘蛛に直撃したかと思うと、オレンジの光の塊が飛んできた。

 

 

結果、蜘蛛の化け物は大きく吹き飛ばされて、そのまま灰になった。

 

 

 

 

 

聖歌「え、えっと」

 

私はどう言っていいか分からなかった。

 

すると二人は微笑みながら手を差し出してきた。

 

 

明日香「私、金城 明日香。明日香でいいよ、聖歌ちゃん」

 

心美「私は柔道部の火口 心美。心美でいい。よろしくね、聖歌」

 

私は、二人の手を握って答えた。

 

 

聖歌「はい、よろしくお願いします」

 

声が少し震えているのが分かった。

 

私は泣いていたのだ。

 

 

明日香「大丈夫、私も心美ちゃんも裏切るような人じゃないから」

 

心美「そうそう、裏切りなんて最低のやつがやることだよ」

 

グルト「そ、そうだグル」

 

私は、心の底からうれしかった。

 

 

 

 

 

次元撃滅軍団ブラックムーンアジト 次元戦艦ツキノワ内

 

 

 

レッドビー「くそ、またしても。プリキュアとはいったい何人いるんですか!」

 

レッドビーは、悔しさのあまり壁に拳を叩き付けていた。

 

 

フライシア「そうだな、この分だと後二人ぐらいいそうだな」

 

からかうような口調で、フライシアが言った。

 

 

レッドビー「茶化すな!!」

 

 

 

 

 

 

夜  木戸家 食卓

 

 

聖歌母「聖歌、お友達と仲良くしてる?」

 

聖歌父「そうだぞ、友達と仲良くするのはいいことだからな」

 

聖歌「うん、とっても仲良くしてるよ」

 

今朝と、ほとんど同じ会話。

 

ただ一つ違うのは、私が作り笑顔でなかったことだろう。

 

 

 

続く

 

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