奴隷はレミリアの部屋に呼び出された。
レミリアはベッドに座っている。
奴隷は椅子に座る。
「呼ばれた理由は分かるわよね?」
「…」
レミリアの問いに奴隷は答えなかったが、奴隷はハッキリ覚えている。
昨日、解体作業中に監視役のメイド妖精を解体用包丁で切りかかって逃げ出そうとした。
当然逃げ出すことは出来ず、咲夜に抑えられて檻の中に入れられた。
あれが何度目の解体作業だったかは覚えていない。
しかし、もう限界だった。
「…いつまでだんまりを続けるつもり?」
レミリアはずっと黙っている奴隷にイライラしている。
「いい加減にしなさい」
レミリアは立ち上がって、座っている奴隷の前に立つ。
「いい加減にしなさい…だと?」
怒りのあまり、目の前にいたレミリアの胸倉を掴む。
「てめぇら妖怪の解体ならまだいい、だが俺と同じ人間の解体をやらされるとはなんだ!しかも何回も何回も!」
今まで溜まっていた怒りをレミリアにぶつける。
「お前は…同じ吸血鬼を解体できるのか!?」
全てを吐き出して、奴隷は息を切らす。
レミリアはしばらく沈黙し、奴隷の手首を掴む。
「…痛っ!」
小さな腕からは想像出来ない力によって、強引に剥がされる。
「できるわよ、それぐらい。だから私がここにいるのよ」
「なに…?」
レミリアの言葉に疑問を感じた。
「レミリア…お前まさか…」
「…もういいわ、仕事に戻りなさい。死にたくなければ、ね」
レミリアの言葉に遮られ、半ば強引に部屋から出された。
「(レミリア…)」
部屋から出された奴隷は、ほんの少しだけレミリアの過去に触れてしまったのかもしれない。
奴隷は今日の仕事の場へと戻った。
今日の仕事の場はヴワル魔法図書館。
「遅かったわね」
入るが否や、パチュリーはそう言う。
「レミリアに呼ばれてな」
「そう」
パチュリーに今日の場所を指示され、三階に行く。
今日はパチュリーが読んだ魔導書の片付けだそうだ。
自分で片付けろよ、と奴隷は思ったが口にはしなかった。
片付けを始める。
正直、ここには脱出に繋がるものがない。
窓もないし、出入口にはパチュリーの監視がある。
「はぁ、今日は何も収穫なしになるかな」
そう思い、床に置いてある魔導書を拾うために屈む。
その時、ポケットから何かが転がり出た。
「おっと、魔理沙にもらったキノコか。これ食えねぇし、本当になんの意味があるのかな…」
今はただしなびれない、という理由で今まで持っている。
「(何の役にもたたなそうだし、いっそ捨てようか)」
そう思いながら一つの魔導書を拾う。
「(…ん?)」
その魔導書のタイトルを見た。
『Escape from the cage』
と書いてある。
その魔導書をめくると、そこには脱獄する人の心境などが書かれていた。
ペラペラとめくり、最後のページまで到達した。
「おや?これは…」
最後のページには、魔法陣が描かれている。
魔法陣の下には『freedom』と書かれている。
「(…魔法に反応するやつか。
諦めて、その魔導書をしまう。
もう一つの魔導書を拾い、開いてみる。
「ここにもか…」
やはり、最後のページに魔法陣が描かれている。
「ほんと、ここだけ見るとファンタジーの世界だな」
そう思いこの本もしまおうとするが、手に持っていたキノコを魔法陣の上に落としてしまった。
「そういやキノコ持ってたこと忘れてた」
そう呟きながらキノコを取ろうとした時…。
魔導書から大量の弾幕が飛び出した。
「うっ、うわわわわ!?」
反射的に魔導書を離す。
その間にも、魔導書は弾幕を放っている。
「なんで弾幕が…あっ!」
奴隷は気づいた。
弾幕を放っている魔導書の魔法陣の上にキノコがある。
「まさか…あのキノコが?」
弾幕に気をつけながら、魔法陣の上からキノコを取る。
取った瞬間、弾幕が止んだ。
「(このキノコ…魔法を発動する力を持ってるのか?)」
よく見ると、さっきより少ししなびれている。
おそらく、キノコに蓄えられていた魔法の力が魔導書から発生した弾幕に使われたのだろう。
「ちょっと、なんの音!?」
遠くからパチュリーの声が聞こえた。
「やばい!」
このキノコのことがバレたらただごとではない。
奴隷は近くの本棚から本を大量に落とし、本の山を作る。
キノコをポケットの奥にねじ込んで、奴隷は本の山の中に入る。
「(これで、いかにも落ちてきた本に埋もれた人に見えるはず!)」
一応、手だけ出しておく。
しばらくすると、パチュリーが飛んできた。
「奴隷、なんなのこれは」
パチュリーに引き上げられ、無事本の山から抜け出す。
「いやぁ、片付けしてたら本が上から大量に…」
「そう、怪我はないかしら?」
「あー、大丈夫だ」
「そう」
パチュリーは音の原因が分かって安心したのか、戻って行った。
「(なんとか誤魔化せたか)」
奴隷の方も安心して、振り返る。
「…さて、仕事が増えたなぁ」
目の前には大量の本。
自分で仕事を増やしてしまった。
「(ま、バレるよりはマシか)」
奴隷は増えてしまった仕事を片付けるべく取り掛かる。
「終わった…」
あれから一時間ほどかかった。
しかし、同時に収穫も得た。
「これで檻から脱出できる…!」
手には『Escape from the cage』がある。
これで紅魔館から逃げ出すための準備が整った。
後は機会を伺うだけである。