倒れている非常事態
真夜中の夜、幻想郷に一つの流れ星が見えた。
しかし、流れ星は消滅しなかった。
それは、あまりにも幻想郷に近づきすぎた。
「あれは…?」
一人の女性が消えない流れ星に気づく。
「見に行く?」
「ただの流れ星だと思うけど…一応行こっか」
二人の女性は、流れ星が落ちた場所に向かった。
朝がやってきた。
照りつける太陽光は、目を覚ますにはちょうどいい。
「美鈴。こっちの花壇は俺がやるよ」
「お願いしますね奴隷さん」
手にじょうろを持ち、仕事に取り掛かる。
もう花壇に咲いている花の扱いは憶えている。
「これはおっけー、これは抜いたら駄目なやつで…ん?」
ふと、雑草が生い茂っているところに人の足が見える。
不審に思い、奴隷は近づく。
「…?」
足を引っ張ってみると、なんと女性が倒れていた。
服装から見ると、かなり裕福そうだ。
「だ、大丈夫ですか?」
声をかけてみたが、反応はない。
どうやら意識を失っているようだ。
「ほっとくわけにもいかないしな…」
奴隷は意識を失っている女性を抱え、紅魔館へと戻った。
奴隷は咲夜と共に調理場所にいる。
先ほど介抱した女性に、何か温かいものを作ろうとスープを作っていた。
「さっきのは誰なの?」
「さぁ、俺も知らない」
「知らないのに介抱したの?ここは診療所じゃないのよ」
「分かってるよ。でも、見てしまった以上ほっとくわけにもいかないだろ」
スープを作り終え、介抱した女性がいる部屋に運ぶ。
「それにしても…何であんな場所で倒れてたんだろ」
しかも紅魔館の敷地内に倒れていた。
只者でないことが伺える。
「ん…んぅ…」
そんな時、女性が目を覚ました。
「大丈夫ですか?」
奴隷は声をかけるが、女性は周りをキョロキョロと見渡した後に、大声で叫んだ。
「け、穢れが!?穢れている!?」
「えっ、穢れている?」
女性はパニックに陥っている。
奴隷は穢れ、というのがよく分からなかったが、この女性にとっては相当深刻な問題なのだろう。
奴隷は霊力を消費し、この部屋の穢れとやらを消し去る。
「これでどうですか?まだ制御できないので…」
「おお、穢れがなくなった…。礼を言うぞ」
女性は安心したようだ。
奴隷は質問をする。
「どうして意識を失っていたんですか?」
「むぅ…それが分からん。余はいつもの部屋で寝ていたはずなのに…」
妖怪に襲われた線もあるが、それなら何故紅魔館の敷地内で倒れていたのか説明がつかない。
わざわざ運ぶなんてことはないだろう。
「そうですか。まぁ、しばらく安静にしたら人里に送り届けますよ」
「人里?」
「…人里に住んでいるんじゃないんですか?」
「いいや、違う。余はいつも檻の中にいる」
その言葉に驚いた。
自分の過去と似ていたからだ。
「そ、そうですか…」
女性はスープを飲み、美味しいと言った。
話している時に、レミリアと咲夜が部屋に入ってきた。
「私の許可なしに介抱とはいい度胸ね奴隷」.
「悪かったな。でも見捨てるわけにはいけないだろ」
「そこが奴隷の甘さなのよ。少しは非情になりなさい」
「へいへい、善処するよ」
適当に返答する。
レミリアは女性の方を見る。
「貴女も奴隷に感謝することね。私だったら……………え?」
レミリアが突然硬直した。
「ど、どうされましたお嬢様」
「ちょ、ちょっといい?」
レミリアは女性が着ていた服や付属品を見る。
見る度に、レミリアの顔がどんどん青ざめいく。
「どうしたんだレミリア?」
奴隷は疑問の声をあげる。
レミリアは震える指で女性指さしながら、声を震わせながら言った。
「貴女…月人!?」
月。
誰でも必ず見る星だ。
太陽の光のあたりかたによって満ち欠けを繰り返す。
数々の詩人も月を題材にしてきた。
人間も月に着陸した。
しかし、それは表側の月だった。
彼らは月の裏側を知らない。
月の裏側…月の都では非常事態が発生していた。
「どこにもいません!」
「そんな馬鹿な!」
「まさか例の三人組に…」
「いや、あいつらにこんな姑息な真似ができるとでも?」
「確かに…」
「じゃあ誰が!」
月人はパニックに陥っている。
「落ち着け!」
一人の月人の声に、皆静かになる。
「
「では嫦娥様の意思ではないと?」
「しかし、そんな事ができるやつなんて…」
「いるわ」
奥から現れたのは、賢者の
「私と類似している能力の持ち主。あの檻を壊さずに嫦娥様を攫える…穢れた者が」
「八雲…紫…」
一同が口々にそう言った。
八雲紫を知らない人はいない。
豊姫の説明に、皆が納得した。
「先ほど、地上調査部隊の報告がありました」
綿月家のペット、レイセンが報告用紙を持ってやってきた。
レイセンは一枚の写真を取り出す。
「言葉で言うより、見る方が早いと思います」
レイセンの持っている写真に皆が注目した。
そこには、嫦娥と思われる女性を抱えている奴隷の姿が映っていた。
「どうされますか、大賢者様?」
「既に嫦娥様は穢された。我々はそれを許さない。…宣戦布告だ」
大賢者の指示に従い、月人は一本の弓と文がついた矢を取り出す。
それを地球に向かって放つ。
「許さないぞ…幻想郷」
皆、幻想郷に怒りを覚えた。
我らが嫦娥様が穢されたのである。
各々は戦争の準備を始めた。
「…」
震える手で文の内容を見ているのは、妖怪の賢者の八雲紫。
幻想郷創設者の一人でもある。
「いかがされましょう紫様」
九本の尻尾を生やした妖狐の八雲藍が指示を待つ。
紫はしばらく震えていたが、文を折りたたんで指示を出す。
「招集なさい」
「かしこまりました」
藍はその場から消える。
この日、各所で九尾の妖狐の姿が目撃されたという。
レミリアに月人、と言われた女性は頷く。
「余は嫦娥と言う」
その言葉に再び固まる。
目の前にいる女性が月の女神なのだ。
「お嬢様!お嬢様!」
部屋に慌てた調子の美鈴が入ってくる。
「お嬢様、八雲紫から…」
「分かっているわ。咲夜、嫦娥の監視を頼むわ。奴隷、貴方は私についてきなさい」
了解し、それぞれ行動を移す。
これが後に幻想郷縁起に書かれる大異変の一つである。
地上調査部隊はイーグルラヴィじゃない、別のものだと思ってください。
大賢者様は月のトップです。