紅魔館の門には、空間を切り裂いたような跡があった。
「
「式ではなく、本人直接…ね。相当焦っているってことだわ」
レミリアは大量の目玉が映っているスキマの前に立つ。
「…この中に入るの?マジ?」
「文句言ってられないわよ奴隷。ついてきなさい」
レミリアに手を引かれてスキマの中に入る。
中にも大量の目玉が映っており、とても気味が悪かった。
着いた場所は一つの家。
入り口には、九本の尻尾を生やした女性が立っていた。
「お待ちしておりました。…そちらの人間は?」
「フランの奴隷よ。幻想郷の面子を紹介するには、丁度いい機会と思ってね」
「…最後にならないといいですが」
「まぁ、その話は中で聞くわ。大体予想はついているもの」
家の中に入る。
既に揃っていた。
どうやらレミリアと奴隷が最後らしい。
「席はあっちよ」
「分かってるわ」
レミリアは椅子に座る。
奴隷は座る椅子がないので立つ。
「奴隷、紹介しておくわ」
端から、『四季のフラワーマスター』
『
『語られる怪力乱神』
『彷徨わない亡霊』
『伝統の幻想ブン屋』、妖怪の山の長、天魔の代理の
『封印された大魔法使い』
そして、後から現れた『神隠しの主犯』
その式神の『策士の九尾』八雲
レミリアによると、この面子が揃っていることは滅多にないようだ。
「何の用だよ紫〜。まだお酒が残ってるぞ」
「二人で飲んでた時間がねぇ」
萃香と勇儀が文句を言う。
「悪かったわね。でも、これ見れば呼び出した理由が分かるわ」
紫が手に持っていた紙を広げる。
そこには、月からの宣戦布告が。
「…笑えない冗談よ紫」
「幽香、これが冗談に見える?」
幽香は首を振る。
「月から仕掛けてくるなんて、余程不味いことでもしたの?」
「憶えがないわ」
沈黙が走る。
月は恐ろしく強い。
第一次月面戦争は完敗。
第二次月面戦争は勝利ということになってるが、月側がその気になれば負けていた。
つまり、幻想郷は一度も勝てたことがない。
「白蓮には人里を任せるわ。必要ならば、歴史食いの半獣や不死人でも使いなさい」
「は、はい。人里は任せてください」
「萃香と勇儀は地底の入り口を、幽々子は冥界の入り口を、吸血鬼は紅魔館や霧の湖を、ブン屋は妖怪の山を任せたと天魔に伝えといて」
各々が頷く。
「あのー…」
奴隷が手を挙げて話す。
「宣戦布告の内容って嫦娥ですか?」
「そうよ。他にも、地獄の妖精のこととか」
「その嫦娥のことなんですが…」
「人間、少し黙りなさい」
幽香の言葉に、思わず黙る。
再び沈黙が走る。
すぐ後ろでガタッという物音が聞こえた。
次の瞬間、幽香と萃香が動いた。
「!?」
奴隷は驚きに尻もちをつく。
幽香が扉を壊し、萃香が扉の後ろにいた侵入者を捕らえる。
「くっ!?」
侵入者は抵抗したようだが、あっさりと捕まってしまった。
「月を知らない者にも見せてあげるわ。これは『玉兎』よ」
前に出されたのは、頭から兎耳を生やした少女達。
「盗聴…ね。既に来ているわよ」
勇儀が盗聴機を潰す。
「すぐに位置に着きなさい。私は各妖怪全員に伝えるわ」
そう言って、紫はスキマの中に消えていった。
他の者もスキマを使って消えていった。
「行くわよ奴隷」
「あ、ああ…」
レミリアも奴隷もスキマをつかって消えていった。
捕らわれた玉兎達は、幽香の所へ送られた。
「安心して。死なないように拷問してあげるから」
幽香は満面の笑みで、しかしどこか恐怖を感じる表情で玉兎達の拷問を始めた。
全ては幻想郷が勝利するためである。
八雲家から帰ってきたレミリアと奴隷は、全員を集めた。
明日、戦争が始まることを告げるためだ。
メイド妖精達はパニックになり始めた。
「落ち着きなさい。何があっても、貴女達を守るわ。紅魔館の主として」
その言葉に、メイド妖精達は落ち着いた。
「なぁ、レミリア」
「何かしら?」
「このこと…嫦娥に伝えとくか?」
「やめておいたほうがいいわ。信用ができないもの」
「…分かった」
幻想郷中が、月との戦争に備える。
華麗で美しい戦争が、明日勃発する。