紅魔館の奴隷   作:ハクキョミ

30 / 62
賢者会談+奴隷

奴隷と紫、イーグルラヴィに連れられて月面に降り立った。

穢れはすでに消し去った。

月人が二人を囲んでいた。

「歓迎は…されてないみたいですね」

「当然でしょう」

イーグルラヴィと別れて、月人の監視を受けながら月の都に入る。

一度だけ見た光景が目に映る。

「(たしか…あいつらともうちょい奥まで進撃したんだっけ)」

残念ながらその部屋に行くことは無かった。

すぐに左に曲がり、その突き当たりの部屋に案内された。

扉を開けると、そこには長机と六個の椅子が設置されてあった。

どうやら、ここで話し合いをするらしい。

「…緊張するわね。これから来る相手は、私では敵わない者達。震えが止まらないわ」

紫の手は微かに震えていた。

「俺はあまり緊張してませんよ」

不思議と緊張していない。

ルナサのおかげだろうか?

二人は幻想郷側の席に着席する。

奴隷はあらかじめアタッシュケースの鍵を開けておく。

賢者達はすぐにやって来た。

綿月依姫。

綿月豊姫。

稀神サグメ。

月夜見。

「待たせましたね。それでは始めましょうか」

依姫の号令の後に、話し合いは始まった。

奥に動く人影が見える。

嫦娥だろうか。

奴隷は賢者達の方に向きかえる。

この場にいるのは、八雲紫に奴隷。

そして賢者に嫦娥の総勢七名。

一つ咳払いをし、奴隷は内容を話す。

「この異変…もとい戦争を起こしたのは我々幻想郷ではありません」

「ほう」

「我々が嫦娥を月の都から攫うなどーー無理に決まっています」

「奴隷の言う通りだわ。私の程度の能力でも、月の都に直接は容易に開けられない。私が全力で月の都にスキマを作ろうとしても…せいぜいお酒(・・)を盗める程度でしょう」

その言葉に、依姫と豊姫はハッとした。

おそらく第二次月面戦争の結果を思い出したのだろう。

「しかし、幻想郷側からの侵入があった。貴公だろう?奴隷とやら」

奴隷は心の中で舌打ちをした。

「…流石は賢者様ですね。お気づきになられましたか」

月夜見とは直接的に一度対面している。

しかも、あの面子を揃えてだ。

「…」

チラとサグメを見たが、口に手を当てたままだった。

「あの後、貴公は三人の中にいなかった。どこに行っていた?」

「大賢者の部屋だ」

「「「「「「!?」」」」」」

奴隷を除く全員が反応した。

大賢者と言えば、月側のトップ。

「その行為は重罪だ!」

依姫が声を荒らげる。

その手には、すでに刀が握られている。

「待ちなさい依姫。わざわざ危険を冒してまで大賢者様の部屋に侵入したのは、何か理由があるのでしょう?」

豊姫の質問に奴隷は胸を張って言った。

「もちろん!俺はあるものを探していました。証拠です」

「証拠?」

「この戦争は、幻想郷側が起こしたものではないという、つまりはアリバイですよ。単に嫦娥を返すだけでは、月側のお偉い様に不平等な条約を結ばさせられるでしょう。例えばーー地獄への道の浄化作戦を黙認しろ…など。俺はこの戦争に裏があるんじゃないかと、とある動物達(・・・・・・)に言われました。だから、俺は月の都に侵入し、大賢者の部屋にも侵入し、見事証拠を掴みました」

アタッシュケースを長机の上に置く。

「中身はーー稀神サグメさん。お願いします」

「…」

サグメは、口元から手を離してアタッシュケースを開く。

そこから、まとめてある紙を取り出す。

サグメはそれらを長机に並べる。

その内容はーー簡単に言えば、嫦娥は月側の一部の上層部が意図的に地上に放った。

それを満月の日に行い、その日のみスキマを繋げられる八雲紫ーーつまりは幻想郷側のせいにし、それを理由に戦争を行う。

幻想郷は月より弱い。

勝利することを前提に、地獄に進出するという内容だった。

「それが我々のアリバイです。大賢者が管理している書物は、賢者ですら見るのは難しいとされていると聞きました。しかし、サインぐらいは見たことあるでしょう?」

賢者達は沈黙した。

長机に並べられた証拠に釘付けのようだ。

しばらくすると、紫が何かを知った口調で話した。

「…稀神サグメ、月夜見。そのサインに見覚えがあるのでしょう?」

なんと、微かな反応に紫が気づいたようだ。

「確かに…大賢者様のサインだ」

その発言に、奴隷は心の中でニヤリと笑った。

同時に安心した。

「し、しかし…」

豊姫が意見を言おうとしたが、サグメが首を横に振った。

「大賢者様のサインがここにある以上…認めざるえない。嫦娥様を穢した真の犯人は、大賢者様という事だ」

サグメは証拠をまとめる。

それらを再びアタッシュケースの中に入れる。

サグメは口元に手を当てながら話す。

「青年。そちらが何もしてないということが分かった。月側が勝手に起こした戦争ということも、よく分かった」

「ああ、俺はこの戦争を終わらせるだけでいいんだ。これ以上、犠牲も出したくないしな」

ついでに、と紫が横槍を入れてきた。

「あの飛行物体も早く回収してくれないかしら?あのままだと河童の餌よ」

「依姫、豊姫!すぐに行動に移れ!」

依姫と豊姫は部屋を出る。

奴隷は嫦娥の近くに寄る。

「…地上での生活、どうだった?」

その質問に、嫦娥は微笑した。

「楽しかった。特に、あの宝石の羽が生えた者と楽しめた時間がな」

「そいつはよかった」

嫦娥から離れ、八雲紫の隣に並ぶ。

「帰りましょうか紫さん」

「そうね。ここにいても、もうお邪魔虫でしょう」

「そうですね。後は月側がやってくれるでしょう」

八雲紫と奴隷は月の都を出た。

イーグルラヴィが手を振って待っていた。

二人の妖怪と人間は、無事戦争が終わったことを幻想郷に伝えに行った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。