異世界流しをされた奴隷は、スキマ移動を終えて放り出された。
落下した衝撃で、自分が生きていることを実感する。
奴隷は辺りを見渡し、ここがどこなのか確認する。
空は晴天、高台から見渡すには絶好の時だった。
視界に捉えたのは、特徴的な建物だ。
「東京…スカイツリー?」
その他にも、高層ビルが列をなして建っている。
一度目をつぶり、頬をひっぱたいてから目を開く。
「夢じゃ…ない?俺は異世界…いや、外の世界に流されたのか!?」
初めて幻想郷に流れ着き、紅魔館に奴隷として住みついた当初から、目標であったこと。
現在では帰りたい、なんて一切思ったことはなかった。
ここより面白みを感じており、何より感謝していたからだ。
奴隷は、家が近くにあることが分かった。
この高台から、見慣れた公園が見えたからだ。
「幻想郷に帰るにはどうすればいい…?」
パチュリーは、程度の能力の暴走によって幻想郷に流れ着いたと言っていた。
なら話は簡単だ。
酒を飲めばいい。
幸い紅茶代の残りはある。
しばらく懐かしんでいると、ふと、視界の端に何かを捉えた。
「スキマ!?」
奴隷の注目は一気に向いた。
一瞬、正邪の顔が見えた…気がした。
そのスキマから何かが放り出された。
なにかが放り出されたかは分からなかったが、それが公園の方に落下していくのが見えた。
スキマは閉じ、後には青空が残る。
「(なんだ?なにが落ちた?)」
この辺りの地形は知っているため、奴隷は確かめようと急いだ。
もしかしたら、幻想郷に戻れるきっかけになるかもしれないと思った瞬間…大地震が発生した。
振動によって転倒した。
緊急地震速報の音すら聞こえない。
「さっきのが原因か…うわっ!」
奴隷の目の前に、先端が尖った石が降ってきた。
その瞬間、大地震がパタリと止んだ。
「…収まった?」
だが、目の前の石が割れた瞬間、再び大地震が発生した。
「やばいやばいやばい…。正邪め、外の世界を滅茶苦茶にする気か!?」
奴隷は月傘を突き立てて、振動する地面を慎重に進んでいく。
同時期、二人の大学生が公園へと足を向けていた。
今も尚地面は激しく揺れていて、ほぼ這っている状態だった。
「メリー!本当に見えたの?」
「間違いないわ。公園の方に何かが見えたのよ」
一つの家から、悲鳴とともに爆発がおきた。
その影響で出火した。
倒壊する家、地割れする地面、そんな中でマエリベリー・ハーンと宇佐見蓮子は公園へと這って行った。
同じく奴隷も、公園へと歩いていた。
月傘を杖がわりに、何とか歩けている状態だ。
視界の端に、先端が尖った石が落下しているのが見えた。
「(チャンスだ…!)」
大地震が収まった。
同時に奴隷も走る。
無事に公園へと辿り着いた瞬間、大地震が再び発生した。
「おっ、おおおおう!?」
月傘を深く突き刺して何とか耐える。
少し収まった後、奴隷はゆっくりと近づく。
「…ん?」
近くに二人の女性が見えた。
何かを引き抜こうとしているようだ。
「おい!何をしてる!?」
奴隷は声を荒らげ、二人に近づく。
帽子をかぶった大学生が何かを握っている。
それは、倒れている女性の腹に刺さった剣だった。
「あぁ…抜けないの?」
話を聞くと、この倒れている女性が剣を抜いて欲しいと頼んだそうだ。
奴隷は、この女性がスキマから放り出されたことを思い出した。
耳に口を寄せ、小さな声で話す。
「幻想郷の者か?」
「幻想郷…まぁ、最近は行ってなかったわ」
女性の反応を見て、奴隷は大学生らと協力して剣を引き抜いた。
同時に、あれほどまでの大地震が一気に収まった。