「起きなさい奴隷」
あの殺人メイドの声が聞こえ、本能で飛び起きる。
「ひっ…な、何だお前か」
一瞬素の部分がでてしまったが、殺人メイドは気づいていないようだ。
「お前じゃないわ。私は
「…メイド長ってことは、他にもいるのか?」
「それは今からわかるわ。出なさい」
従うがままに檻から出る。
あまりじっくり見なかったこの部屋を見る。
奥のベットに棺桶が見える。
「メイド長。あの棺桶は?」
「妹様がご就寝になられているのよ。だからあんまり大きな声を出さないように」
「妹様…あぁ、フランドールか」
咲夜の説明に納得し、奴隷は初めて部屋から出た。
十六夜咲夜の監視付きだが。
部屋を出てしばらく廊下を歩くと、咲夜と似たような格好をしている女性達が掃除をしている。
なんと、背中には透明な羽が生えている。
「メイド長。あの女性達は人間なのか?」
「人間は私一人よ。貴方が来たから今は二人だけれど」
咲夜はそう言いながら、奴隷にモップとバケツを渡す。
「これは?」
「仕事よ奴隷。貴方は奥の扉までの廊下を掃除してちょうだい」
咲夜に命令され、奴隷は掃除を始める。
咲夜は他のメイド達の様子を見に行ったようだ。
「(奴隷とまで言われて、どんな過酷な仕事が待ってるんだろうって思ったが…楽だな)」
モップに水をつけ、隅から隅まで掃除をする。
幸い、一人暮らしの時にいろいろな家事スキルを身につけているので、この仕事は苦ではなかった。
「まぁこんなものでしょ」
一通り掃除が終わって一休みしようとしたが、何故か廊下に細かいゴミが落ちていた。
「…おかしいな」
モップを持って、その場所を掃除する。
綺麗になったのもつかの間、今度は別の場所で同じことがおきた。
「(あの場所は掃除した。…嫌がらせか?)」
掃除しながら、耳に全神経を集中させる。
すると、微かに背後から音が聞こえる。
後ろを振り返ると、先ほど見たメイド達が廊下にゴミをぶちまけていた。
「あっ、やばいやばい」
奴隷の視線に気づいたのか、メイド達は慌ててどこかへ行ってしまった。
「なんだあいつら?」
多少苛立ちながらも、メイド達がぶちまけたゴミを片付けて咲夜が戻ってくるのを待った。
咲夜が戻ってきた。
奴隷は掃除をした成果を見せた。
「どうですかメイド長」
咲夜は一通り廊下を見る。
「悪くわないわね。うちのメイド妖精よりも断然いいわ」
褒められて、咲夜が見てないうちに照れる。
モップとバケツを片付けて、次の指示を聞く。
「次は部屋の掃除よ。ベットメイキングから床拭き、窓拭きもお願いね」
「分かった」
咲夜が部屋から出て一人になる。
軽くベットメイキングを済まし、脱出できそうな窓を開ける。
「…高いな。落ちたら最悪死、良くても複雑骨折だな」
あまりの高さに絶望する。
下にマットがあっても飛び降りたくはない。
「(他には花壇か。多種多様な花が植えられていることで…ん?)」
花壇を眺めていると女性が現れた。
手にはじょうろを持っており、花壇の手入れをしていることがわかる。
「(花壇の所有者か?メイド長が言ってたメイド妖精とは服装が全く違うけど…)」
遠くて顔までは見えないが、服装から見て中国人っぽい。
しばらく観察していると、中国人と予想した女性はじょうろを置き、奥の方…門の方に向かって行った。
「うわ、この館は門まであるのか。随分豪華だなぁ」
これ以上収穫がないと思い、窓を閉める。
その後は何も得られないまま部屋の掃除が終わり、奴隷は再び檻の中に入れられた。