初仕事から一週間ほど経過した。
檻の中にカレンダーがないので正確とは言えないが。
いつものように廊下や部屋の掃除。
たまにメイド妖精に虐められることもある。
しかし、それが習慣になっていた。
そんなある日に咲夜が話をもちかけてきた。
「奴隷、たまには外の空気も吸ってみたい?」
その言葉に思わず驚いた。
どんな時でも廊下や部屋の掃除しかさせてくれなかったので、単純に喜んだ。
「いいのか?」
「いいわよ。その代わり、やってもらいたいこともあるけど」
咲夜と共に廊下を歩き、紅魔館を出る。
目の前には噴水に花壇が広がっている。
よく部屋の窓から花壇を眺めていたが、間近で見ると美しさがより際立っていた。
「それで、やってもらいたいこととは?」
「最近雑草が生い茂っちゃって…。この鎌で雑草を刈りなさい」
鎌を手渡される。
奴隷は了承する。
「(雑草を刈るのは初めてだな。いけるかな?)」
屈み、そこら中に生い茂っている雑草を刈り始める。
あらかた刈り終わったあと、目の前にある壁を見る。
「(梯子があれば行けそうだな。…流石に何もなしじゃあ登れないか)」
振り返ると、紅魔館の窓から掃除中のメイド妖精達の姿が見える。
「(…丸見えだな)」
仮に梯子があっても、これではすぐに見つかってしまうだろう。
夜になればあの姉妹も…。
梯子作戦は断念し、もっと練りこんだ作戦じゃないとここから脱出出来ない事を再確認する。
「(残念だなぁ…)」
そう思いながら近くの雑草を刈ろうとする。
しかし、奴隷が刈ることは無かった。
「待ってください!それは刈っては駄目です!」
突然の制止の声に、驚きながらも手を止める。
声がした方を向くと、いつも窓から外の景色を見ていると花壇の手入れをしている女性の姿がそこにあった。
「危なかったですね。それはマンドラゴラといって、引き抜いたり刈ったりすると泣きだすんですよ」
「マンドラゴラって…二股の?」
そんな危険な植物を握っていることを知って、慌てて離す。
もし刈っていたら、今頃発狂して死んでいただろう。
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして。次は気をつけてくださいね」
彼女に刈っていい雑草と駄目な雑草を教えてもらい、作業を再開する。
しばらく草刈りをやっていると、咲夜からサンドイッチが入ってるバスケットを貰った。
「昼食よ」
そう言い残して咲夜は紅魔館内へと入っていった。
「(一休みするか)」
鎌を置いて、噴水に腰掛けてサンドイッチを食べる。
「(ここのメイド長、咲夜だっけか。意外と料理がうまいんだよな)」
一つ食べ終わり、二つ目を食べようとした時、ふと横から視線を感じた。
見てみると、先ほどの女性が涎を垂らしてこちらを見ていた。
「あー…」
奴隷は察した。
「貴女も食べます?」
「いいんですか!?」
女性の目が光る。
「ど、どうぞ」
サンドイッチを差し出し、女性はそれを食べた。
よほどお腹がすいていたのか、貪るように食べていた。
結局、残りのサンドイッチを全て食べられてしまった。
「いやぁ〜、もう何日も食べてないんですよ。ありがとうございました」
「そ、そうなのか。それならメイド長にお腹がすきましたって言えばいいのでは?」
「それが、寝てしまったので咲夜さんに罰としてご飯抜きにされているんですよ」
「寝ている…?もしかして、貴女は
「そうですけど…初対面のはずなのに、よく私の名前を知っていましたね」
美鈴は驚いているようだ。
実は、奴隷も知りたくて知った訳では無い。
つい二日前、十六夜咲夜がまた美鈴が寝ている、と呟いていたのを耳にしたからだ。
「メイド長が貴女のことを愚痴ってるところを見たんですよ。その時名前を知った」
それを聞いて、美鈴は少し慌てた。
「奴隷さん、咲夜さんは何か言ってませんでしたか?」
「特に何も言ってないと思うぞ」
「そうですか。また罰を追加されたらと思いまして」
美鈴は苦笑いしながら話す。
「
「…まだなんとも。入ったことない部屋とかも多々あるし」
「そうですか…。今回の奴隷は妹様の特にお気に入りだってメイド妖精達から聞いたのですが…」
「…へー、そーなのかー」
聞いたことない話に、素っ気ない返事しかできなかった。
しばらく美鈴と話していると、咲夜から戻ってこいと言われた。
「また話しましょうね奴隷さん」
美鈴は手を振る。
「…奴隷にさん付けかぁ。優しいんだな」
小さな声でそう言い、紅魔館へと戻った。
久々に外の空気を吸えた奴隷は、檻の中に再び入れられても外の実感を忘れなかった。