「無鬼夜行とは危険な妖怪であり、異変でもあります。当時も今と同じように暴れ回ったようですが、当時博麗の巫女…三代目によって封印されました。封印場所は明記されてないですが…」
阿求の歴史の授業を聞き終えた奴隷達は、先程戦闘した相手があれほどの実力を持っていたことに納得する。
「ううむ、話を聞く限り全く『残党』ではないな。空間割って幻想郷内を移動しているのなら、同じような能力の持ち主の紫さんに追ってもらうのが得策かな」
奴隷の考えは四人を納得させた。
「決まりですね。私が紫様に伝えに行きましょう」
妖夢は稗田邸を出て上空へ飛んでいった。
「指示待ちでもしてるか」
夕飯は稗田家の方で用意してくれた。
奴隷達はそれを頬張った。
大体食べ終わった頃に妖夢は戻ってきた。
「紫様から伝えられた事をそのまま言いますね。各自、帰っていいと」
「本当にそれだけ?」
「私達に関係するのはこれくらいでしょうね」
流石に寝泊まりは失礼だと思ったのか、椛と妖夢は稗田邸から飛んで行った。
妹紅も竹林の方面に行ってしまった。
奴隷は夜の人里に取り残されてしまった。
今から紅魔館に帰るとしても、夜の外は危険だ。
宿に泊まろうと思っても手持ちが無い。
奴隷は野宿の覚悟を決め(幸い夕食は稗田邸でとってある)近くの椅子に座った。
横になって目を閉じたが、風が吹いていて風邪をひくんじゃないかと思った。
しばらくそうしていると、ふと、奴隷の視界が真っ赤に染まった。
目を開けてみると、提灯を持った慧音がそこにいた。
「…何をしているんだ?」
「えーと、野宿です」
慧音は言葉の意味を考えた。
「もしかして、夜遅くだから紅魔館に帰れないのか?」
「全くそのとおりです」
「そうか、そうか!」
慧音は激しく頷き、奴隷を片手で起こした。
「それなら私の家に泊まるといい。風邪をひかれても困るしな」
その誘いは嬉しいのだが、奴隷は困惑した。
「いいんですか?貴女とはまだ…」
「そうだな。寺子屋で顔を合わせた程度の仲だ。それでも構わないさ」
「ならお言葉に甘えさせてもらいます」
器の広い人だなぁと奴隷は思った。
お風呂まで借してもらい、奴隷はほくほく顔で布団へと飛び込んだ。
その過程で、奴隷と慧音はタメ口で話せるほどの仲になった。
人の家で就寝するというのは初の経験で、緊張して寝られないと思っていたが、疲れが溜まっていたのかすぐに寝息を立てた。
慧音は障子の隙間からそれを見守り、床についた。
翌朝、朝食を出してくれた。
奴隷はそれを食べ、支度をして慧音の家を出た。
「ありがとうございます慧音さん。この恩は必ず返す」
「気にするな。またここに来る時は寄るといい」
奴隷は人里を出て帰路についた。
しばらく歩き、霧の湖へと出た。
「(…紅魔館に帰る前に、先にあっちに寄るか。あー、緊張する)」
奴隷は廃洋館へと足を向けた。
深夜の幻想郷は騒がしかった。
紫は暴れる無鬼夜行を抑えた。
「紫様!」
藍が弾幕を展開するも、紫は片手を振って静止させる。
「思い出したわ無鬼夜行」
紫は無鬼夜行の顔面を掴む。
「(無鬼夜行は人型ではないはず。…まさか)」
掴んだまま、勢いよく顔面の皮膚を剥がす。
しかし、紫が剥がしたのは一枚の、博麗の文字が刻まれていた札だった。
無鬼夜行は激しい咆哮を行った。
紫が怯んだ隙に抜け出し、両手で禍々しい何かを生成する。
札が剥がされたことによって、それによって封じられていた力が解放されたのだ。
何かは上空に放たれた。
紫は廃電車を召喚したが、無鬼夜行は空間を割って逃げ出してしまった。
無鬼夜行が生み出した何かは瞬く間に崩れ、幻想郷中に拡散していった。