紅魔館の奴隷   作:ハクキョミ

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手伝いの報酬

奴隷は頭に走った痛みによって飛び起きた。

「痛ってぇ!?なんだよ突然!?」

眠気まなこをこすり、檻の外を見る。

そこには、いつものメイド長ではなく紫色を基調とした服を着た女性が立っていた。

「口で言っても起きないからこうしたのよ。来なさい奴隷、今すぐ」

急かされて、まだ眠気が残っているまま檻の外に出る。

 

 

朝食を歩きながら食べ、先頭を歩く女性について行く。

「…失礼だが、名前は?」

「パチュリー・ノーレッジよ。今から向かう場所の管理をしているわ」

そう言ってパチュリーは扉を開ける。

入口にあるプレートには、ヴワル魔法図書館と書かれている。

奴隷の視線に気づいたのか、パチュリーはため息混じりに言う。

「あぁ…それね。小悪魔がどうしてもこの図書館に名前をつけたい、といったから…」

確かにプレートは後から付けたような跡がある。

「とりあえず入りなさい」

パチュリーに促されて部屋の中に入ると、そこには奴隷の身長を軽々とこす本棚がズラリと並んでいた。

しかも、ヴワル魔法図書館はかなり広くて、見る限りでは四階まである。

「この館にこんな広大な図書館があるなんて…」

あまりの凄さに固まってしまう。

「ほら奴隷、こっちよ」

周りをキョロキョロしながらパチュリーの後を追う。

パチュリーに案内されたところは、ヴワル魔法図書館の二階の一角。

床には大量の本が床に落ちている。

「昨日の魔法実験で失敗しちゃってね…。奴隷、この本を元通りの位置に戻してくれないかしら」

「この量を!?元々の本の位置とか知らないから無理なんだけど…」

「その点は心配いらないわ」

パチュリーは紙を取り出し、奴隷に渡す。

「その紙に本の位置が描いてあるから、頼んだわよ」

パチュリーが去った後、奴隷は落ちている本を一つ拾い上げる。

「一人でとかマジかよ…。いつもより絶対きついじゃんこれ…」

パチュリーに貰った紙を見ながら本を元の位置に戻していく。

一応、一つの本を取っては中身を見ているが、日本語ではないようで読めない。

英語でもないようだ。

「何語だよこれ。なんか変な魔法陣まで描いてあるし…」

とても脱出に繋がりそうにない。

ヴワル魔法図書館を二階から見渡すが、窓がない。

「(窓から脱出…は無理か。つか窓ないとか空気が淀みそうだな)」

ここに脱出に役立つ物はないと思い、作業に戻ろうとした。

その時、視界の端で何かが動いた。

「(…何かいたな。俺の監視か?)」

奴隷は足音をたてないように慎重に歩き、本棚の後ろへ回る。

「(音が聞こえるな)」

ゴソゴソと音が聞こえる。

顔だけ本棚から出すと、視界の先には黒色の魔女帽をかぶった少女がいた。

本をとっては帽子の中に入れている。

奴隷は盗みの現場を目撃してしまった。

「(おいおい…泥棒かよ)」

奴隷はどうしようかと考える。

このままパチュリーに知らせてもいいが、別に知らせる義務はない。

そもそも、パチュリーがいる場所まで行くのに時間がかかるため、知らせても遅いだろう。

「(んじゃ、残された道は…)」

奴隷は一度深呼吸して、泥棒少女に声をかける。

「そこの君、何してんの?」

「!?」

突然の声に、泥棒少女は持っていた本を落とした。

こちらを見ている泥棒少女は目を見開いて驚いているようだ。

「こんなところに見張りをつけていやがったのかパチュリー!こりゃ逃げるぜ!」

泥棒少女は回れ右をして、奴隷から逃げた。

「あっ、おい!待て!」

泥棒少女はすぐそこの本棚を左に曲がった。

そっちには…大量の本が床に散らばっていたはずだ。

本に足を取られて、奴隷の目の前で泥棒少女はすっ転んだ。

「あーあ、だから待てと言ったのに。大丈夫か?」

転んだ泥棒少女に手を貸す。

「…悪いな」

手を掴み、泥棒少女は立ち上がる。

「パチュリーには言わないから。面倒だし」

「おおっ、そりゃ助かるぜ!そういやお前は初めて見るな、なんて名前なんだ?」

「名前?奴隷だけ…!?」

言いかけて、慌てて口を塞ぐ。

今、自分の名前を奴隷と言いそうになった。

「(最悪だ)」

ここにもう一ヶ月ほど住んでいる影響だからなのか。

「どうした?」

泥棒少女は不審に思いながら、こちらを見ている。

「…俺は紅魔館(ここ)に住んでるただの人間さ。君は?」

「私は霧雨 魔理沙(きりさめ まりさ)。普通の魔法使いだ」

「魔法使い?」

突然のファンタジーの話についていけない。

この少女…魔理沙は何を言っているのだろうか。

「そのまんまだよ。それよりお前、パチュリーにバレないように出口までついてきてくれないか?」

「別に構わないけど」

魔理沙と共に、ヴワル魔法図書館の出口に向かう。

道中、羽が生えた赤髪の女性の姿が見えたが、無事出口までたどり着いた。

「あとは大丈夫か?」

「ああ。すまなかったな、ついてきてもらって」

魔理沙は帽子をかぶり直し、懐に手を入れて奴隷にキノコを差し出す。

「これ、お礼にやるよ。魔法の森の最深部に生えていた、特別なキノコだぜ」

「お、おう…。ありがとう」

魔理沙はキノコを奴隷に渡し、そのまま振り返らずに帰っていった。

「…キノコ?」

貰ったキノコを懐に隠し、パチュリーに見つからないように二階に戻った。

結局、本の片付けだけで一日を使い果たしてしまい、奴隷は夕食を食べた後に檻の中のベットに吸い込まれるように飛び込んだ。

今日の仕事は、今までで一番疲れたかもしれない。

 

 




ここでは、大図書館をわざと
「ヴワル魔法図書館」
と呼んでいます。
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