チュパカブラはじいっとレミリアの姿を見つめていた。
この生物はレミリアが部屋に引き篭もった時に、孤独を紛らわすために部屋に入れた。
その効果はあるようで、レミリアは毎日餌をあげている。
チュパカブラがいることでレミリアは暴れない。
そんな役目を担っているチュパカブラは疑問に思っていた。
レミリアは何を作っているのだろう?
片手に本を持ち、目の前には液体が入った瓶が置いてある。
匂いを嗅いだが、酒の匂いではなさそうだ。
しかし、人間程の知能はないチュパカブラは途端に興味を無くし、眠りについてしまった。
咲夜はいつものようにカップに紅茶を注いでいた。
しかし、カップから紅茶が溢れていても注ぐことをやめなかった。
「メイド長?大丈夫か?」
奴隷は咲夜の背中を叩く。
ハッとした咲夜は、慌てて注ぐのを中断した。
「しっかりしてくださいよ」
そう言って、奴隷は雑巾でこぼした紅茶を拭く。
「ねぇ」
「?」
咲夜は廊下を眺めながら、
「さっきお嬢様があそこを通っていたのだけれど…私の幻覚かしら?」
「…!」
奴隷は咲夜に雑巾を渡し、駆け足で廊下に向かっていった。
奥の方を見ると、レミリアの後ろ姿が見えた。
「レミリア!」
駆け寄ったが、レミリアは一切振り向かなかった。
「…レミリア?」
三秒ほどした後、ゆっくりと振り向いた。
「…?あら、奴隷じゃない。何か用かしら」
「何か用って…大丈夫なのか?その…体とか」
「私はヴァンパイ…吸血鬼?いいえ、大丈夫よ。ええ、ええ、何も心配いらないわ」
「そうか!よかった…」
奴隷は安心感に浸っていると、レミリアは図書館はどこだと聞いてきた。
「あっちの方だけど…忘れたのか?」
レミリアはしばらく虚空を見つめた後、
「ああ、忘れたのね?大丈夫よ、憶えてるわ、憶えてるから大丈夫」
「…?」
レミリアは再び歩いて行った。
奴隷はレミリアの挙動に疑問を抱いたが、復帰した事の喜びの方が大きく、すぐさま咲夜、それに美鈴に知らせに行った。
咲夜と美鈴に知らせ、一時的に門番を代わった。
「(少し変だったが…レミリアが立ち直って本当によかった)」
長い時間引き篭もっていたので、少しすればまた元の我儘お嬢様に戻るだろう。
「あれ?今日はどれーの日なのか?」
声が聴こえた方を見ると、チルノと大妖精にルーミアがいた。
「うんにゃ、今は美鈴の代わりを一時的にやってるだけだ」
「そーなのかー」
「へぇ、何か理由でもあんの?」
「ああ。レミリアが復帰したんだ」
「館の主人が?」
「俺も驚いたよ。ほとんど祈るしかなかったからな」
なんにせよ、最終手段を使わなくてよかったと思う。
「奴隷さん!」
美鈴が帰ってきた。
美鈴は泣きそうな顔だった。
「どうだった?」
「パチュリー様と話したいと言ってましたよ」
「積もる話でもあるんだろう。今のうちに夕飯でも作るか」
門番を代わり、奴隷は紅魔館へと戻る。
手洗いを済ませ、厨房へ向かう。
「今日は豪勢な料理を振る舞うんだったな。手伝いますよ」
「ええ、お願いするわ」
咲夜と二人で、レミリアの復帰祝いの料理をした。
二人は満面の笑みを浮かべていた。