それは必然だった。
お互い進むことしか知らない彼らは出会ってしまった。
嵐のような出来事である。
サイホーン VS サイホーン
目が合った。きっかけはそれだけだ。
彼らが走り出すのに理由はいらない。だが彼らが止まるには理由が必要だ。
二匹のサイホーンはお互いを目がけて突進をする。岩と岩のぶつかる鈍い音がした。彼らのまとう甲冑のような肉体が大いに揺れた。
しばらく競り合いを続ける二頭だったが、そのうち片方が競り負けて後ろに飛ばされる。
二頭はわずかだが体格差があった。仮に、この競り負けた小柄な方のサイホーンをサイ、そしてもう一頭の、顔に多くの傷を持つサイホーンをホーンと呼ぶことにする。
サイは前足を地面に叩き付け、何とか起き上がる。サイホーンの平均的な体重は115kg。彼らの行動の一つ一つは、確かな重みをもっていた。
ホーンは猪突猛進なサイホーンに珍しく、走りをやめた。そして振り向く。
二頭の視線が再び合った。明確にお互いを敵と認識した瞬間だった。
二頭がにらみ合う。ホーンは本能で、サイが技を使っていることに気付いた。『にらみつける』だ。だがなんら動揺することなく、ホーンは『こわいかお』で応戦した。これでサイのすばやさが落ちる。
早いのはホーンだった。みるみるうちにサイに近づき、目にも止まらぬ熟練された動きで『みだれうち』を放つ。ホーンの鋭い角がサイをうがった。それを真っ向からうけたサイは反撃にでるものの、発射した『ロックブラスト』の岩石があたったのはたった2回。大したダメージにはなっていなかった。
再びホーンの攻撃だ。サイは完全に後手にまわっていた。
ホーンの前足が大きく地面を削り、砂埃が舞い上がる。本気の突撃である。サイホーンの『とっしん』は、ビルさえ粉々に打ち砕く。しかしサイは逃げようなどとはかけらも思わなかった。そういう種族である。彼らには前進しかない。
サイは構えをとる。ただでやられてやるつもりは毛頭なかった。いや彼は、ホーンを打ち砕くつもりでそこにいる。
あっという間に間をつめてくるホーンを前に、サイは冷静に力をためていた。そして接触する寸前である。サイは渾身の力で技を放った。『メガホーン』を。
ホーンの体の下に角を滑り込ませ、ひっくり返すように投げ飛ばす。言葉で説明するのは簡単だが、かなりのスピードと本能的な恐怖が、それを容易にはしない。失敗すれば無防備に打ち砕かれること必須の危険な賭けだった。
しかしその賭けは成功した。最高のタイミング、最高の角度でサイは技を繰り出し、ホーンは数メートル飛ばされる。落下時にはかなりの衝撃が周囲に走った。
サイには見えた。舞い上がる砂埃の中、ひっくり返り、衝撃でひるんだホーンの姿が。
またとないチャンスである。それをのがす理由があるはずもなく、サイは駆け出した。
決めるのは一発逆転の大技。命中率が低いところが難点だが、今はその心配はない。
サイは眼前に迫るホーンに、最後の一撃を放った。
『つのドリル』。サイホーンの誇る一撃必殺の技である。
渦を巻く膨大なエネルギーが、ホーンの空いた腹にすいこまれるように決まる。そこでは些細な抵抗など問題にならない。
暴風をまき散らし、かな切り声のような音が接触面から響き渡った。大技の余波があたりに広がる。中心にいるホーンは、そのすべてを削り取るようなエネルギーを、抵抗もむなしく全身に受け止めていた。
ホーンは小さくうめき声をあげ、糸が切れたように力尽きた。それっきりぐったりとしてピクリとも動かない。もはやホーンには戦う元気など残ってはいない。
戦闘不能。紛うことなきサイの勝利であった。
勝者には高揚が、敗者には屈辱が待つ。それが世界の常だ。だがサイホーンの戦いにはそれはない。彼らの目的はただ走ることにあり、障害物を粉砕しただけのことに意義を見出さない。どうせ両者ともすぐに忘れてしまう。
サイはまた、あてもなく走り始めた。もはや彼をここにとどめる理由などない。
意味もなく、ただ本能の赴くままに走り続ける。
彼が再び立ち止まるのは、打ち砕くべき障害がまた、目の前に現れた時なのだろう。
サイホーンは哲学。あとおしりがかわいい