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第零回 はじまり
お約束だが、
「ワンピースの世界に転生してもらう。ひとつだけ願いを叶えよう」
と言われた。
誰に言われたのかって?
俺には、後光の射した釈迦如来像に見えたよ。
約30センチくらいの、虫食いだらけで木目も朽ちているような年季のある木像が、目の前にぷかぷかと浮かんでいたんだ。
その存在は人間よりも高位に存在する精神集合体であり、人間に理解できるように説明するなら最も近い表現が「神」であり、各々のイメージで見える姿も変わるそうだ。
だから、人によってはモーゼに見えたり、ジーザスに見えたり、サタンに見えたり、閻魔大王に見えたり、ご先祖様に見えたり、亀に見えたりするらしい。
亀って微妙だな。
でも悪魔も祖霊も神獣も、崇拝の対象と思えば納得できる。
……なんで木像なんだ俺。
それはともかく、釈迦如来の「何が欲しい」という問いかけに対し、俺は即座にこう答えたね。
「孫悟空になりたい!」
普通、ワンピースなら「○○の実の能力が欲しい」とか答えるものなんじゃないのかって?
まあいいじゃないか。
願い叶って、今の俺は岩から生まれた猿だ。
美猴王(びこうおう)と呼んでくれ。