猿王ゴクウ   作:雪月

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第九回 桃と剣士

 

 

 

 

 

 

 というわけで、現在酒盛り進行中である。

 

 

 

 酒は、俺がストックしていたものと、こざるたちが作ったいわゆる猿酒と呼ばれるもの。それから、ミホークが自分の船から下ろしてきたもの。

 

 随分ときつい酒だ。

 

 更にミホークは酒を持ってくるついでにと、ウミヘビに似た(しかし随分と巨大な)海王類を仕留めてきた。

 

 

 

 流石はミホーク。

 

 

 

 海王類を仕留めたことよりもそのサイズを肩に担いできたことにびっくりだ。

 

 いやホント、人間として間違っているよ、あの視覚効果。

 

 ので、俺が狩ったマンモスみたいな獣の肉も合わせてこざるたちが調理した。

 

 串に差して火で焼いただけの単純なものだけど、ブラックペッパーが素材の味を引き締めて美味いんだぜ。

 

 こっちに来てから、新鮮な肉がどれほど美味いかを初めて知った。

 

 新鮮な肉、そして出来上がったばかりの熱々の料理。

 

 もうコンビニ弁当なんて食べられないだろうな。

 

 

 

 ちなみに俺は今、人獣型になっている。

 

 

 

 人型だと見た目6歳、いやもっと小さく見えているのか、ミホークが酒を飲ませてくれなかったんだ。

 

 俺もいままで酒は大猿の姿でしか飲んだことなかったから、人型で飲むよりも人獣型で飲むほうが不安がないのは確かなんだけど、ただ人型じゃないと喋りにくいんだこれが。

 

 それに、この世界には「お酒は二十歳になってから」ってのはなかったはずだよな。

 

 そうじゃなきゃ麦わらの奴らは皆子供ビールってことになる。

 

 ナミがバロック・ワークスとやっていた飲み比べだって子供ビールで、ゾロが甲板で抱えている酒瓶だって葡萄ジュースとか健康酢?

 

 ないだろそれは。

 

 

 

 

 

 

 酒を飲みながらミホークが語るのは、仙桃の島の伝説。

 

 そこはグランドラインの端、カームベルトと交わる荒れ狂う海にあると言われてはいるが、伝説はあくまで伝説でしかなかった。

 

 空島のように、確かにあるが辿り着けない夢物語ではない。

 

 ただ、古の英雄のひとつの冒険談として語られ、子供が憧れるだけだ。

 

 今は昔に滅んだ大国の皇帝が不老を求めてこの島を探したと語り継がれてはいるけれど、それもまた伝説。

 

 

 

 しかしその伝説も、とある海賊が手に入れた一枚の海図により、変わった。

 

 

 

 海賊が襲った町の資産家が持っていた古文書(好事家には高値で売れる)に、挟まっていた古ぼけた羊皮紙。

 

 書かれていたのは、一本の航路。終点にある島の名前は記されていない。

 

 すわ宝の地図か、と。

 

 色めき立った海賊は、持ち船すべて連ねてその島を目指した。

 

 見つけたのは、伝説そのままの島。

 

 手に入るものは、不老。そして巨万の富。

 

 しかし、海賊がそれを手にすることはなかった。

 

 伝説通りの荒波と渦潮を生み出す岩礁。

 

 訪れる結末は、近年グランドラインでも名が売れてきていた海賊団の壊滅。

 

 そしてその生き残りによって新たな伝説が生まれる。

 

 

 

 ――その島には、化け物猿の守り神がいる、と。

 

 

 

「まことであれば面白いと思ったのだ」

 

 串から肉をかじりとりながら、終わりに近づいてきたミホークの話に耳を傾ける。

 

「新鋭の海賊を倒したほどの化け物がいるのなら、ちょうどよい暇潰しになろう」

 

 それはただのひまつぶし。

 

 ただの、……興味本位?

 

 確かに鷹の目のミホークなら「暇潰し」でどんなことでも仕出かすイメージはある。

 

 けれど俺はミホークの言葉に違和感を感じる。

 

 本当にそれだけなのか。

 

 それだけではなく、つまりミホークは必要に迫られて桃を探しに来たのではないか?

 

 

 

「ミホ、ク、大切な人、ビョウキな、のか」

 

 

 

 だから、俺は思うままを口にした。

 

「いや」

 

 ミホークは、眉を寄せて口を噤んだ。

 

 後で知ったことだが、「大切な人」と言われたことに引っ掛かったらしい。

 

「……ただ、傷から毒が入ったと聞いた」

 

 強きものが失われるのは惜しい、と。ミホークはしばらくの間をおいてから言葉を紡いだ。

 

 ふーん、と俺は焚き火に照らされるミホークの顔を見上げる。

 

 俺は食べ終わった串を焚き火に放り込むと、立ち上がった。

 

「ミホーク。行、こう」

 

 ミホークも杯を干すと、脇に置いていた剣を持ち立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

「ミホーク、この向こう。潜って」

 

 俺はミホークを、あの滝へと案内した。

 

 ちなみにここまでの道のりはジャングルの枝を渡って先導してきたが、今は人型になってミホークの肩に掴まっている。

 

 うん、まだ怖いんだ。

 

 というかこの滝、俺にはトラウマものなんだ。

 

 人型であれば何とか滝の前に立っていられるけど、そこまで。

 

 それ以上は無理。

 

 だからミホーク。

 

 何も聞き返さずに即行動っていうのは、俺の言葉を疑ってない証拠っていうか、信じてくれて嬉しいけれども。

 

 

 

 頼むから、いきなり俺ごと滝つぼに飛び込むのは止めてくれ。

 

 

 

 

 

 

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