猿王ゴクウ   作:雪月

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第拾九回 ミホークの島にある日常

 

 

 

 

 

 

「ミホーク!おつるさんに宝の地図貰った!冒険行こう、冒険!」

 

 俺は屋敷の裏の鍛練場で、どでかい鉄の模造剣を振り回しているミホークを見つけると、古びた地図をぶんぶんと振りつつ声をかけた。

 

「ゴクウ、貴様あの将校にいいように使われているぞ」

 

 剣を地面にがんと突き刺して手を止めたミホークが俺に返す声は、どことなく呆れている。

 

 

 

 でも、それはちょっと違うと思う。

 

 

 

 俺なんて動かして、おつるさんに旨味があるものか。

 

「いいように動かされているのはミホークさー」

 

 だってもちろん俺の冒険に付き合ってくれるんだろ?ミホーク。

 

 俺はごきげんな口調で歌った。

 

 

 

 

 

 

 ミホークと合流したのは海軍本部ではなかった。

 

 いや、ミホークはあれからちゃんと会議の場に顔を出してくれたらしいよ。

 

 肝心の俺がいなかったけどね。

 

 で、俺がいないと知ったミホークは会議にも出ずにマリンフォードを後にした。

 

 じゃあ、どこで再会したのかというと東の海だった。

 

 ガープのじいさんの遠征は生まれた孫の顔見に行くついでに予定組んだんじゃねえのって聞きたくなるような、東の海まで行って帰ってくる長期間遠距離なものになっていた。

 

 そうそう、ここに来てやっと今がいつか分かった。

 

 じいさんの孫は1歳か2歳くらいだってさ。

 

 ミホークも若いしそうじゃないかとは思っていたけれど、原作開始はまだまだ遠いらしい。

 

 でも残念なことにフーシャ村に海軍の船で直接乗り付けた訳じゃないから、赤ん坊ルフィを見ることはできなかったけどな。

 

 

 

 ミホークはどうして東の海にいたのか。

 

 

 

 なんでも東の海で行われる剣術大会に行ったらしい。

 

 大会に参加したとか乱入したとか荒らしたとか、そんなミホークならありえそうな切った張ったの物騒な話じゃなく、東の海の端に埋もれるには勿体ない使い手がいるそうだ。

 

 普段は剣術道場の先生をしていて他所には出てこないけれど、この時ばかりは審判役として顔を出す。

 

 ミホークは毎回、大会の開催に合わせてその先生に会いに行く。

 

 彼との手合わせが目的ではあるけれど、ただ酒を酌み交わすだけの時もあるらしい。

 

 そんなわけで、東の海でガープじいさんとミホークの航路が交わり、海の上で偶然としかいいようのない再会を果たしたというわけだ。

 

 

 

 

 

 

 海に生きる海賊たちにも根城はある。

 

 どこぞの大国の空母かよと言いたくなるような、まるで街が海に浮いているかのような巨大な船を母体にしていたり、馴染みの港や馴染みの宿をいくつも持っていたり、村を襲って支配して吸い尽くしたら次に移る寄生虫のような奴もいたりと様々だ。

 

 

 そして、彷徨う剣士なのかと思っていたミホークにだって、ちゃんと拠点があった。

 

 

 ミホークはとある島の、そこを治めているという館に住んでいる。

 

 島にはひとつ小さな村があるだけだ。

 

 ミホークは「お館さま」だなんて呼ばれている。

 

 他の海にもいくつか島や屋敷を持っていて、それらはいつもミホークいわく海軍から押し付けられるらしい。

 

 荒れ果てた城に山賊が住み着いているから壊滅しろだとか、圧政しいてる政権への反乱が長引いているからどちらが勝ってもいいけれど沈めてこいだとか。

 

 海軍には手を出せない、たった一人の剣士が暴れるなら問題はないような、そんな厄介ごとの解決。

 

 それを命じただけでは気紛れキングな剣豪様を動かすには至らないが、海軍も心得たもので、珍しい武器や武術の使い手がいてそれでもって強いらしいと、きちんとミホークのツボをついた面白い情報を添えてくる。

 

 そして、持ち主のいなくなった城や島がミホークの管理下に入る。

 

 というか、海軍に報酬という名目で押し付けられる。

 

 そうでなければ、ジャングルで猛獣に警戒されながらの野宿でも、小船に揺られてカームベルトで漂流でも全く気にしないのがミホークだ。

 

 

 

 何かあった時の抑止力。――そういう意味ではミホークもちゃんと王下七武海の務めを果たしている。

 

 

 

 その館でミホークはほとんど鍛練ばかりをして過ごしている。

 

 俺も一緒に鍛えている。

 

 元々が大自然相手の無手勝流だったから、ミホークとの鍛練は随分と為になる。

 

 ちなみに原作を思い出し、でかい岩を3つ鉄の棒に差して素振りをしていたら、ミホークに重いものを振り回すだけでは意味がないとダメ出しされた。

 

 すわ、ゾロの鍛練まさかの全否定?と慄いたが違った。

 

 俺が見よう見真似でやるのが駄目らしい。

 

 筋が伸びきっている重石に振り回されていると、俺が全否定された。

 

 そして思い出したくもない特訓の末、体の動かし方の基礎をばっちり仕込まれた。

 

 更には剣の握り方も振り方も教わったけれど、こちらはどうにも性に合わない。

 

 なので、今はまた昆を使っている。

 

 木を切り出したものではなく、鉄のものを誂えてもらった。

 

 そんな鍛練の日々を繰り返し島から出ることのないミホークを、たまに俺が引っ張り出したり、海軍が引っ張り出したりするんだ。

 

 出不精の海賊ってどうなんだろう。というか、だから島の外に行くには海に出るしかないこの世界での海賊の定義って何さ。

 

 そのくせ気まぐれに、ミホークはふらりと海に出ていく。

 

 あの小さい船に酒だけ積んで出かけていくミホークに、俺は一緒に行くこともあれば別行動することもある。

 

 ミホークの目的は先の東の海のように、強者との手合わせがほとんど。

 

 

 

 そして、今一番のご執心が赤髪の海賊なのである。

 

 

 

 

 

 

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