王下七武海の最大の特徴は「世界政府公認の海賊」であるということ。
つまり、世界政府にはその勢力をきちんと把握しておく義務があるということで、なんと驚くことに申告制なんだぜ。
拠点も明らかにしておかなければならないし、船を買うのにも申告する。
その拠点や船を武装するために兵器を買うなら、また申告だ。
ちなみに、申告の窓口は海軍本部のおつるさん。
しかしもちろん、ここで馬鹿正直に申告するような真っ当な生き方をしてきたなら、海賊なんてやっていないわけで。
海軍に申請しているのとは別に、こっそり拠点を増やしたり配下を隠していたりしているようだ。
バロックワークスとかな。
クロコダイルだけじゃなくて、ドフラミンゴも色々たっぷりと隠していそうだよな。
この大海賊時代、縛りのない海賊たちのほうがよっぽどおおっぴらにやっている。
ミホークには、そういう後ろ暗いところはないな。うん。
ほとんどの拠点は海軍に押し付けられたものだし、配下いないし、兵器には興味なくて刀一本だし。
それはともかく、建前というものは大切だ。
世界政府にも海軍にも許可されている公の拠点であるならば、誰でも大手を振って出入りができる。
それが闇の商人とか死の商人などと呼ばれる「お前らのほうがやばくね?」と言いたくなる人物であってもだ。
実際はこれまたそこいらの海賊より、七武海に接触するほうがリスク高いけどな。
世界政府にも海軍にも隠し事がないからといって、警戒されていないわけでもない。
だから、七武海に接触した時点で海軍に裏取られて監視されているんだぜ、きっと。
案外、海軍怖いよ。付き合っているといろいろ見えてさ。
でも七武海ってお金持ちなんだ。
その上、海賊の性分で金遣いが荒い。
気に入ったからとか言って、ぽんと島を買うんだぜ。
それを定例会議の席で事後申告したら、俺もこの間キャラック一隻増やしたんだとかいう、とんちんかんな相槌が返るんだ。
その上それをただのポケットマネー扱いするとかどうよ。
庶民感覚の俺としては、どいつもこいつも金銭感覚おかしいと思うことばかりだけど、商いをする者から見れば美味しい相手だ。
メリットデメリットを両天秤にかけて、それでも接触してくる商人は多い。
だがしかし。
七武海でもやはりミホークは例外で、鷹の目相手にちゃんと取引が成立する人物は少ない。
まずは会話が成り立たない。
弱いものを相手にしないミホークだけど、その強さっていうのは武の強さだけを示しているんじゃない。
気まぐれキングな剣豪様を前にして、機嫌を損ねたらばっさり無礼打ちされかねないという風評に怯えて逃げ腰になっているようでは駄目だ。
たまに、じゃあとばかりに俺に粉かけてくる奴もいるけれど、キャプテンのミホークが相手にしないなら、クルーである俺も相手にしないよもちろん。
それも分かっていないなら、やっぱり駄目だね。
更にはなぜだか誰も隠し立てしていないのに、ミホークの拠点って一般には知名度低いんだよな。
ミホーク探すのは海軍でも苦労しているのに、そう簡単に会えるものでもないという思い込みもあるらしい。
だから屋敷にそういった客が訪れることはないんだ。
あるかないかわからないようなふるいにかけられて、来るのはシャンクスを始めとした一般人ではない者たちばかりだ。
だから、島の外から屋敷に出入りしている商人は一人だけ。
名は、ジョン・ドウ。
偽名すぎてあからさまに怪しい男である。
見た目も、アラブの裏街道で魔法のランプを売っていそうな怪しさで、海賊にもひけをとらない勢いで胡散臭い。
しかしミホークの島に到着した俺に、必要なものをすべて用意してくれた凄腕の商人だ。
俺が東の海でミホークと再会したことをどう知ったのか。相変わらず不思議な情報事情だが、到着した時には既に屋敷で待ち構えていた。
「ゴクウさまに必要なものを用意してまいりました」
どうにも胡散臭げな笑顔で迎えられ、通された客室では確かに所せましと無数の品が並べられていた。
服の他にも細々とした生活用品とか、準備されていたのはどれもこれも俺サイズ。
アラブというかシルクロードちっくなデザインが多いのはご愛嬌。
さてここで問題です。
俺サイズというのは、人型・人獣型・獣型の内のどれを指すでしょう。
――答え、全部。
なんと驚くことに、3種類とも揃っていた。
その上、オオフグカバシリーズの服や靴もあった。
オオフグカバというのは、見た目が背びれのついた河馬で、大きな口をかぱりと開けて空気を吸い込み、クジラ並に膨れ上がり、風船のようにぷかぷかと海を渡るのだそうだ。
いつか実物を見てみたいこのオオフグカバの皮は、伸縮自在で頑丈で軽い。
小人族から巨人族まで幅広く着られるフリーサイズシリーズとして好評らしい。
でも、何で俺が大猿になるって知っていたんだろう。
ミホークと長い付き合いだと言うだけあって、この商人にも不思議がいっぱい詰まっているのかもしれない。
ちなみに。
用意された服の中には、マタドールが着るような金糸の刺繍が派手な洋服もあった。
「ミホーク!このシャツ」
嬉々としてミホークに見せたら、そんなのが趣味なのかという顔をされた。
「違う、ミホークにだ!」と言えば更に変な顔をされた。
でもジョン氏にはウケて、その後ミホークの服の多くがこの路線で揃えられるようになった。