「いいかい、ゴクウ。ちゃんと鷹の目を連れてくるんだよ」
俺は今、海軍本部に来ている。
七武海の定例会議に「今回もミホークは欠席です」と知らせに来たのだ。
いつもはこんな欠席連絡のためだけに、マリンフォードまで出向いたりはしない。
七武海にはそれぞれ海軍直通の電伝虫が渡されているから、それで用は足りる。
ただ、その電伝虫はミホークの元にはいないけどな。
ミホークってば電伝虫が鳴いても出ないどころか、持ち歩いてもいなかった。
受け取った当初はきちんと持ち歩いていたが、煩わしくなって止めたらしい。
そうして捨て置かれた電伝虫は、屋敷の片隅でじめじめと黄昏ていた。その後ろ姿は、あまりにも哀れで涙を誘った。
仕方がないから俺が電伝虫の面倒を見るようになり、海軍からの連絡も受けるようになった。
一番初めに俺が電伝虫を使った時のこと。
電伝虫はやっと訪れた出番に滂沱の涙を落とし、海軍はなしのつぶてだったミホークがどんな気まぐれを起こしたのかと驚いた。
相手が俺だと分かって少し落胆したようだけれど、それでもミホークに無視されていた頃に比べると全然マシになったって感謝された。
が、ぬか喜び。
残念なことに相手は鷹の目のミホークだ。
俺が伝えたところで、ミホークが海軍のご希望通りに動くものか。
連絡が取れなくて捕まえられないが、連絡が取れても動かないに代わっただけだ。
しかし今回、いつもと同じように「ミホークさぼるって」と電伝虫で返事をしたら、それだけではすまなかった。
会議が始まる前に俺だけでも顔を出すようにとおつるさんに言われ、それでもって言われるままに顔を出したら、今から鷹の目を連れてこいと来た。
無茶振り過ぎるだろ、それ。
「おつるさんだって知ってるだろ。ミホークってばいつも暇だ暇だって言うくせに、酷い面倒くさがりなんだ」
期待しないでくれよと、念を押さずにはいられなかった。
「猿がいるぞ」
「能力者か」
「なんで私服なんだ」
「どこの所属だ」
「なんだ、ゴクウじゃないか」
「あれが猿王」
「ああ、そういえばさっき猿船が」
おつるさんの部屋を出て、海軍本部の廊下をほてほてと歩いていたら、遠巻きにした海兵たちの会話がぼそぼそと響いて俺の耳に届く。
え、なんで猿猿言われているかって?
海軍本部を訪れる時は基本人獣型か獣型しているからな。
だって、俺が初めてここに来た時のお子さまっぷりを覚えている海兵は多いんだ。
何年経っても成長しない子供って、服着て歩いている猿より不気味だろ。
せっかく仲よくやってるのに、嫌われるのは嫌だ。
だから、つまりはそういう心理からってこと。
さて、と。
自分の船に向かう道すがら、俺は考える。
ミホーク、おとなしく自分の館にいてくれるといいけど。
おつるさんに呼ばれたからマリンフォード行ってくると伝えた時は、まだ島にいた。
ここ3ヶ月ほどは鍛練ばかりしていたんだよな。
赤髪が一度来たくらいか?
そろそろ退屈の虫が疼く頃ではあるんだ。
出かけていたら、探すのが面倒だ。
う~ん、今度こざるを一匹ミホークにつけるかな。
こざるたちは便利だ。
どんなに遠く離れていても、なんとなくだが意思疎通できる。
だからミホークのいる場所の特定くらいはわけないはずだ。
ただこざるたちがいるとそのせいで、ミホークが余計に何もしない駄目な子になってしまう気がするけど。
既にその傾向があって、猿船にいる時のミホークは何もしない。
それはもう見事に。
元々ミホークが何するのさって言われれば、そりゃ何もしないけど。
やる気のなさを如実に現した足取りで、のんびりと桟橋に着いた俺は絶句した。
……おいこらちょっとまて。
湾に停泊しているはずの、猿船の姿がなくなっていた。
ミホークか!ミホークに呼ばれたんだなそうだろう。
ああそういえば、屋敷にもこざるたち何匹か残しておいたよ。
こざるずネットワーク侮りがたし。
すでにミホークに呼ばれたのか。
俺がミホーク捜す前に、俺の船はミホークの元へと行ってしまったらしい。
港で途方にくれた俺は、がっくりと肩を落としたままおつるさんの執務室に戻った。
「おつるさん。俺、船に置いていかれた」
「なんだい。情けない」
「船が戻ってくるまで、ガープのじいさんと遊んでていい?」
「ガープなら東の海に行っているよ。いいから船にお戻りな。そして直ぐに鷹の目を連れておいで」
「えーめんどい。もう諦めようよ」
「駄目だよ。新しい七武海を決めなくちゃいけないからね」
え?