「それじゃあ、クロコダイル。マリンフォードで」
ミホークを会議に連れていくことができたら、早々に再会することになる。
「ふん。万一にも鷹の目が来たら、その時は秘蔵の酒を出してやろう」
海軍本部の混乱を見ながら飲む酒はうまいぞと皮肉られる。
クロコダイルの酒ならいつ飲んでもうまいが。
「別の所で再会したら、俺が奢るよ」
俺だってミホークが会議に出向くために動くとは思ってない。
けれど、ジンベエとの喧嘩が上手くいってないのなら、いざ再戦とわざわざ海軍本部に出向いて仕掛けるかもしれないじゃないか。
それにクロコダイルには今回世話になった。
礼に奢るくらいなんでもないから、軽口でしかないような十中八九負けが決まっている賭けに乗る。
お邪魔しましたと手を振って、俺はクロコダイルランドを後にした。
金斗雲でびゅんと飛び出し、火山を滑るようにして上り、てっぺんから吹き出している黒い煙と一緒に雲海の上に出た。
雲海っていうからには海だ。
水の固まりには違いないし、綿菓子みたいなエイみたいな生き物が悠々と飛んでいたりトビウオが跳ねていたり、たまには人がボートに乗っていたりするのに、なぜか海のように恐怖を感じることはない。
だから、長く飛んでいなければならない時は、雲の上をのんびりと行くのが好きだ。
急いでミホークの元に辿りつこうという気は元々あまりない。
ミホークを必ず連れてこいと言ったセンゴクのじいさんだって、本気でミホークの参加を考えているわけでもないだろう。
けれど前にも同じように、会議にミホークを連れてこいと言われたことがある。
とうとう、新しい七武海が決まるのだろう。
つまりは、ジンベエ。
そして、ナミだミカンだアーロンだ。
あれ?
俺は雲海の上をふよふよ飛びながら、首を傾げた。
ちょっとまて。
もしかしなくても、ミカンくれた軍人のおねーさんがベルメールさんか。
みずみずしい果実は魅力的だから東の海に行ったらまた寄ろうと思っていたけれど、この様子だと止めておいたほうがよさそうだ。
アーロンだって自分の支配地にひょいひょい猿が買い物に来ていたら面白くないだろう。
残念だな。
え?
助けないのかって。
新しく七武海となったジンベエが解き放ったアーロンに、同じく七武海であるミホークの配下が手を出してどうするよ。
ちなみに俺がミホークの配下なのは自称じゃないから。
自他共に認められているから。
よそ様からペット呼ばわりされることはあっても、ちょっとミホーク海賊団を名乗らせてもらえなかったり、旗を作らせてもらえなかったり、海賊として基本的なところをどうにもできないだけで、って頑張って主張しなくちゃいけないこと自体がどうだって話だけど身内って認識されているから。
そこのところはきちんと忘れないように。
それにこの大海賊時代、海賊名乗ってバカやってる奴らがどれだけたくさんいると思うよ。
実際、ミホークが通りかからなかったら、襲われていたはずの島。
そして今度はアーロンに目をつけられるはずの島。
海賊に襲われても撃退できるだけの力があれば何も問題はない。
でも、アーロンの支配を受けたということは、そこまでの防衛力がなかったということ。
じゃあ、一度だけ助けても意味はない。
それどころか、アーロンがいないせいで他の海賊に襲われて皆殺しになるかもしれない。
実際、略奪したいだけ略奪して殺したいだけ殺して。
このご時世、そんな話はグランドラインじゃ当たり前。
最弱の海と呼ばれる東の海にだっていくらでもある話なのだから。
海賊に限らず、村も国も島も、誰も彼も強くなければ生き残れない。
だから海賊の支配を受け入れる道も間違いではないのだ。
魚人島が白ひげの旗を受け入れたように。
そんなふうに直接の支配を受け入れている土地はたくさんあるし、旗は掲げなくても寄港を認めて定宿になったりして恩恵に預かることだって多い。
まあ、だから。
いいじゃん別にアーロンパーク。
人間憎しで、それこそなぶり殺して焼き払って、血で洗われた更地の上に城を建ててもいいのに。
みかじめ料もらうだけの支配だろ。
ゆるいゆるい。
一応あれでもジンベエに恩義を感じているんだろうか。