猿王ゴクウ   作:雪月

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第四拾参回 島の住人たち

 

 

 

 

 

 

 ミホークの島、そしてミホークの『シマ』を管理しているのは、もちろんミホーク本人ではない。

 

 その内のいくつかは海軍に押しつけられた折の騒動で無人になってしまっているけれど、だからといって放置していいわけじゃない。知らない間に悪党が巣喰いでもしたら目も当てられない。

 

 では、それらをミホークの代わりに誰が管理しているのかというと、ミホークの館の万能執事アルフレッドさん。

 

 彼がミホークの名代として全てを任されている。

 

 館にいるのはアルフレッドさん以下、メイド長と数名の使用人。

 

 他にも何人か執事見習いがいて、外のシマの管理維持をフォローしている。

 

 アルフレッドさんたちがいなかったら、海軍だってミホークにシマを持たせようとは考えなかっただろう。

 

 

 そして彼ら、彼女らは全員がガンカタみたいな銃武術を使う。

 

 

 使用人としての必須スキルらしい。

 

 必須スキルなのか?と疑問に思ったけれど、商人のジョン・ドウ曰く、使用人でも船乗りでも海賊の襲撃くらいなら簡単にいなせるくらいのスキルを持っていてくれないと雇えないってさ。

 

 世知辛い海というか、山賊や海賊の襲撃がいつあってもおかしくないご時世、戦闘能力があるに越したことはないってことなんだろう。

 

 

 

 

 

 島には他にも武芸達者が揃っている。

 

 ミホークが使っていた前の船、池に浮かぶボートのような小船を足に、海獣を銛一つで狩ってくる漁師のケビンとか、フライパンでグランドラインの海賊団を壊滅させた武勇伝を持つ宿屋の奥さんとかその尻に敷かれている宿六とか。

 

 

 

 そして、ただのハゲじゃなかったパン屋のトマスとか。

 

 

 

 トマスは毎朝、ミホークの屋敷にパンを納めにくる。

 

 最初はパン屋が開店した時のサービスとして、各家庭への配達を始めたらしい。

 

 余所者が作るパンを受け入れてもらうための工夫だったそうだが、門戸の少ない小さな村だから大した負担にはならないしそれどころかいい運動になると言って、今でも毎朝続けられている。

 

 トマスが焼きたてのパンを抱えて村から屋敷へと続く道を上ってくる頃、俺はよく朝の鍛練をしていた。

 

 まだ、この島に来てそれほどは経っていない頃。

 

 ミホークにまずそもそもの身体の動かし方がなっていないとダメ出しをされてしごかれて、赤髪が茶化しに来、俺には剣は向いてないよなと適当な棒を振り回していた頃も、毎朝トマスは鍛練所の横を通り抜け、屋敷の裏の通用口へと歩いていた。

 

 ミホークの住まいは村からは少し離れているから、配達コースの一番最後に入っている。

 

 だからトマスに急ぐ理由はなく、帰り道に足を止めた。

 

 

 

「ぼうず。それは剣の素振りか」

 

 

 

 ミホークに中途半端に剣の扱い方を習ったせいで、棍の持ち方すらとんちんかんなことになっていたらしい。

 

 そんな感じで、見かねたトマスが俺にアドバイスをしてくれるようになったのだ。

 

 師事したとか、そんな大層なことじゃないと思っていたんだけどなあ。

 

 けれど『門の兄弟』なのに、通りすがりにちょっと軽い気持ちで声を掛けただけなんてありえないというか、ほんの少しでも教えたのなら全てに責任を持つものなんだってさ。

 

 ということで。

 

 島に帰ってトマスのところのパン屋に寄ったんだ。

 

 旅をしている西の門の兄弟にばったり会ったよと伝えるために。

 

「けど『門の兄弟』っていうのは凄いな。全然敵わなかった」

 

 俺が感心してみせると、トマスはなんたる不覚かと目尻つりあげて怒った。

 

 トマスにとっても俺はきちんと彼の弟子であり門の兄弟だったらしい。

 

 トマスは北の門の出だから、俺もある意味北の出だ。正式じゃなくて野良だけど。

 

 そして、お互い切磋琢磨する他門の兄弟は、つまりはライバル、負けてはいけない相手となるらしい。

 

 いやいや、勝負はつかない形で流れたんだから。俺、負けてないよ。

 

 ただ、技術に随分と差があったのは確かだけど。

 

 ちょっと金斗雲頼りだったところも無きにしも非ずというか。

 

 しどろもどろに弁解したが、それで聞き入れてもらえるはずもない。

 

 その日から、トマス師による猛特訓が始まってしまった。

 

 棍のみならず全てを叩き込もうと、24時間強化ギブスをつける勢いだった。

 

 思わず逃げ出した。

 

 

 

 

 

 スポ根ものは見て楽しいものであって、参加したいとは思わないんだ。

 

 

 

 

 

 

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