双子の姉と友達を守るためだったら無機物だって殺して見せる! 作:ねふてぃー
中学ももう三年生になり、簪姉さんは日本の代表候補生になっていた。楯無様はロシアの国家代表になり、今はIS学園に行っている。いろいろと忙しい簪姉さんとは最近遊ぶことが出来ていない。それがたまらなく寂しく感じ、代わりとばかりに本音姉さんと遊ぶことが多くなっていた。
「ねー、刈夜君。最近、かんちゃんと遊べなくて寂しそうだよねー」
「……寂しい。本音姉さんと遊ぶのも楽しいけど、また、三人で遊びたい」
「でも、かんちゃんは日本の代表候補生になっちゃったからねー。そうだ!この機会に姉離れに挑戦してみるのってどうかな~」
「……姉…離れ?」
「そうそう。かんちゃんと遊ぶ機会が減ってるし、少しはかんちゃんに依存するのは抑えようよ~」
本音姉さんの言葉はボクの心を抉っていく。小さい頃も言った気がするけど、ボクは簪姉さんが好き。未だに姉として好きなのか、異性として好きなのかはわかっていない。わからないままの方がいいかもしれないと思い始めている。最近は簪姉さんと遊ぶ機会も減り、心の中はいろいろとすり減ってきているような気さえもする。袖があまる長袖の服を着ているため気が付かれることはないが、ボクの左腕はリストカットやアームカットにより、ボロボロにまでなっていた。
本音姉さんがボクのためを思って姉離れをさせようという気持ちはわかっている。姉離れをできる期間はこの時しかないということも。でも、ボクの心に余裕がない今、無理にそれをやろうとしてもだめかもしれない。…というよりは、心が簪姉さんと本音姉さんから離れることを拒絶している。
「…………うん、ゆっくり考えてくるね。ちょっと公園に行ってくる」
「そう?そんなに難しく考えない方がいいと思うよ~」
「……うん、それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい~」
いつもとは違い、指輪を右手の中指につけたまま短刀を腰に差し公園へと向かう。家から出るときに本音姉さんの「私もついていこうかな~」という声が聞こえてきたが、気にする必要はないかもしれない。
いつもの公園に着き、誰もいない廃れた神社がある方へと向かう。だいぶ前から使われていないようで、既に外見はボロボロになっている。腰に差している短剣を右手に持つと左の袖を捲る。何度も浅く刃物で斬ったような傷が腕中に存在していた。まだ傷のない部分に、短剣を突き立てる。左腕は既に痛みを感じない。肉を断つ感覚が心の中に安心を作る。
「……あぁ、最高に気持ちいい。でも、ちょっと物足りない。…あ、そうか」
左肩を服から出すと、短剣を突き立てる。腕と同じように痛みは一切ない。ただ、肉を断つ感覚が、心の中に安心を生む。簪姉さんと一緒に居る時とは違った安心が心の中に生まれる。ボクは根っからの殺人鬼なのかもしれないね。
肩を胴体から分ける。血が服を汚し、地面を容赦なく汚していく。しかし、心の中には先ほどまでなかった安心感がある。これならきっと姉離れもできるかもしれない。少なくとも今日だけは姉離れが出来る。
「……ボクの様子を見ている本音姉さんにも悪いし、早めに家に帰ろうかな」
――――――その腕って俺たちが貰っていいのか。
「うん、何時もキミ達にはお世話になっているからね。たまにはボクの方からプレゼントをさせてもらうよ」
―――――(人''▽`)ありがとう☆
―――――久しぶりの血肉だぜェェェ。
地面に落ちた左腕を空中に投げると、指輪から無数の腕が左腕を掴み、指輪の中に引きずり込む。ぐちゃぐちゃと肉を貪り、骨を齧る音が指輪から聞こえてくる。彼らが嬉しそうにしているならボクも嬉しい。
服を着直し、家に帰る。公園から出ようとするとき、頭の中にボクでも両義でもない別の人の声が聞こえてきた。
――――――ますたぁ、私を見つけてくださいね。
声の強くなる方向に歩いていくと、そこには虹色に輝く宝玉のようなものがあった。それがボクに声をかけているようだった。手に持つと、意識がどこかへと引っ張られていく。紅い地面に、桃色の桜が咲き誇る場所、そんなところにボクはいた。見たことのない幻想的な世界に目を奪われていると、背後から頭の中に聞こえてくる声と同じ声が欠けられる。
「ますたぁ、私を見つけてくれましたね」
「……キミのいる方向に行くと、声が強くなっていたから」
「嬉しいですわ、
緑髪の幼い白拍子風の格好に竜の角が生えた少女は自らをそう名乗る。
「私、気が付けばこの世界にいました。この場所で外の世界を眺めているとき、あなたが私の視界に入り込んできましたわ。多分、私、ますたぁに一目惚れをしてしまいましたわ。ですからますたぁ。私はあなたの物になりますね」
話を聞く限り、清姫は気が付くとISのコアの中にいたらしい。コアの中から外の世界を見ていると、ボクが清姫の視界にいたらしい。一目惚れしたからボクのコアになるとのことだった。そのままだね。
しかし、世界の認識としてインフィニット・ストラトスという代物は男性には使えない。それが常識であり、当然のことだった。未だに男性操縦者が出てこないのはISのコアにも人間と同じように人格が存在し、男性が乗ることを拒絶しているからというのがボクの考えだったりする。
「折角ですので、今、ここで私と一つになりませんか」
「……どういうこと?」
「旦那様はつい先ほど左腕を失いましたよね。私を左腕の付け根に埋め込んでください。私が左腕の代わりになりますわ」
意識が現実に戻る。あの世界で清姫に言われた通り、先ほど切った肩の付け根にコアを埋め込んでいく。清姫の艶やかな声が聞こえてくるが無視し、埋め終える。腕が出ろと思うと、半透明の腕が肩の付け根から出てくる。思った通りに動くのはどういう仕組みなのだろうか。
「……でも、ま、これでたくさんの人が殺せるよね」
――――――刈夜、発想がただの殺人鬼になっているよ。
「……簪姉さんと一緒に居られないんだから、忘れられるように別のことをしないと。心を安心できるのは肉を断つ感覚だけだよ」
――――――簪姉さんと一緒に居られないのは寂しいのも事実だからね。…うん、私も一緒に殺そうっと。いいよね?
「……もちろん。両義も清姫も一緒だよ」
明日からのことを考えながらも、家に帰ると本音姉さんがボクをみると泣き出す。ボクが腕を切り落とした瞬間を見ると、家に帰ってしまったらしい。…よかった、明日からボクがやることについては何も聞いていないらしい。
「……安心してよ、本音姉さん。頑張って、姉離れをするから」
「そんなに死んだ目で言われても、安心できないよ!無理して姉離れをしなくてもいいから、ね?。自傷行為はやめよう?」
「……大丈夫、もう自傷行為なんてしないから」
「安心できないよ!」
ボクは清姫が嫌う嘘をつく。体中を焼き尽くそうと内部から炎を噴き出すが、彼らがボクの心を冷やしていく。大丈夫。熱くない。清姫がボクを焼き殺そうとしても、二人のためになら平気で嘘をつく。二人が安心するなら、ボクの体が燃えても、嘘をつく。
大丈夫。ボクはこの世界にいてはいけない人間だ。ボク一人がいない程度で世界に変化などは訪れない。でも、ボクの命が消えるその瞬間まで、ボクは二人を守るために嘘をつき続ける。
――――――たとえ、この体が焼き尽くされたとしても。