世界の狭間で何を思うのか   作:皆のスフィンクス

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第1話「なんだよ…これ…」

都心部にある新生中高一貫女子校である五稜館学園。

 

この学園は五角形の敷地に様々な施設があり、全国から多くの生徒が集まっている超人気校だ。

 

生徒の中には大きな企業や財閥の娘から全国レベルのスポーツ選手、はたまた伝説の不良や謎の美少女探偵なんかもいる。

 

そんな個性豊かな面々の中にはこんな生徒も…

 

 

 

「くわぁ~…」

 

大きなあくびをしながら校門をくぐる生徒が一人。

 

「眠い。やっぱ朝方までのゲームはキツイな」

「あ、玲ちんだ!れーいちーん!」

「ん?」

 

振り返ると黄色い制服に身を包んだツインテールの女子生徒が手を振りながら走り寄ってくる。

 

「まっほー!」

「おはよう、まな」

 

まなと呼ばれた女子生徒、菜森(なもり)まなは目の前に来ると間髪入れずにしゃべり始める。

 

「聞いて聞いて!今日伊緒ちん学校に来れるんだって!」

「そ、そうか…」

「それを聞いてまな、朝からドキドキしっぱなしなんだよ!」

「分かったから落ち着きなさい。ほら、噂をすればなんとやら、だ」

 

校門のほうに目線を向けると金髪の長い髪を大きな三つ編みにまとめた紫セーターの女子生徒が他の生徒に囲まれながらこっちに歩いてくる。

 

「やっぱすごい人気だな」

「流石、まなの伊緒ちんなんだよ」

「いつからまなのものになったんだよ…」

 

校門で解放された女子生徒、夜木沼伊緒(やぎぬまいお)は若干疲れた顔をしていた。

そんな伊緒に二人で近づく。

 

「まっほー伊緒ちん」

「あっおはよう、まな」

「おはよう伊緒」

「玲もいたんだ。おはよう」

「幼馴染にむかっていたんだってなんだよ」

 

気軽に挨拶をかわす。

この三人は小さいころからの付き合いがあり、いわゆる幼馴染の関係だ。

 

「アハハ、ごめんごめん」

「それにしても相変わらずの有名人っぷりだな」

「それはキミもでしょ。この学園唯一の男子、日向 玲(ひなた れい)くん?」

 

女子校である五稜館学園にいるはずのない男子、それが玲である。

女のような名前で度々間違えられることもあったので今回もその口だと思って学園に連絡してみたら本当に自分あてだったのだ。

前の学校に未練がなかったわけでもないが授業料免除など諸々お得なこともあったので五稜館学園に転入した。

 

「まあ伊緒とは違う意味での有名だけどな」

「転入してきたときは本当にびっくりしたよ。確かそのことで七不思議にもなりそうだったよね?」

「そういえばそうなんだよ!え~っと確か…」

「おお、そこにいるのはもしや七不思議候補《謎に包まれた転校生》の日向玲さんでは?」

 

三人で話していると後ろから声がする。

同時に振り返ると小柄でたれ目の少女がいた。

 

「謎に包まれてるかどうかは知らんが日向玲は俺だよ」

「あ、サトちんまっほー!」

「サトカ、おはよう」

「伊緒さんにまなさんも。おはようです」

「なんだ、二人とも知り合いか?」

「うん!おんなじクラスのサトちんだよ」

「ども、澄原(すみはら)サトカです」

 

サトカはペコリと頭をさげる。

 

「知ってると思うけど俺は日向玲だ。よろしく澄原」

「よろしくです。では、早速謎の転校生さんに話を聞きたいんですが…」

「もう3,4か月経ってるから転校生でもないんだけど…」

 

と、ここでチャイムが鳴る。

 

「うおっ、もうこんな時間か」

「急がないとホームルームに遅れちゃうわね」

「すまん澄原。てことで話はまた今度だ」

「仕方ありません。また今度出直すです」

 

そういうと玲は急いで自分の教室に向かう。

他の三人も自分たちの教室に向かって走り出した。

 

 

 

 

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ギリギリでホームルームに間に合った玲はいつも通り寝ながら授業時間を過ごした。

そして昼休み。

この学園は1学年1000人以上もいるマンモス校なので学食、購買ともにすごく混雑する。

玲は目当ての焼きそばパンを購入するために急いで購買に向かう。

 

「日向くん、ちょっといいですか?」

 

しかし行く手を阻む者が一人。

 

「なんですかゆか子先生」

 

自分では落ち着いたオトナを気取っているが、実際はドジっ子キャラで人気を集める新米教師の小田切(おだぎり)ゆか子先生である。

制止を振り切って購買に向かいたい玲だが一応教師なので応じる。

 

「早く購買に行きたいんですけど…」

「すぐに終わりますから」

 

と言ってから10分が過ぎた。

内容はやれ居眠りがどうのやれ進路がどうのという説教。

いつもは自業自得とテキトーに相槌を打って終わるのを待つのだが空腹も限界だったので最後は強引に打ち切って購買に走る。

なんか最後に無茶な課題なんかを出された気がするけど関係ない。

今は焼きそばパンを買うことが最優先事項なのである。

 

「まだ残っててくれ…!」

 

しかし現実は残酷であった。

前にいた金髪ツインテールの小柄な女子に先を越され、最後の焼きそばパンを買われてしまった。

他のパンは残っていたのだが朝から焼きそばパンの気分だったので何も買う気が起きなかった。

そのまま昼休みが終わり空腹のまま授業に。

いつもなら満腹感を感じながら寝るのだが今日は何も食べていないので寝付くことができなかった。

この授業後に職員室では多少のざわつきがあり、ゆか子先生の株が上がったらしいのだがそれはまた別の話である。

 

 

 

 

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今日の授業が終了しホームルームも終わった放課後。

玲は伊緒とまなに連絡を取り、一緒に帰るための待ち合わせ場所である展望広場に来ていた。

ホームルームが長引いているのかまだ二人の姿はない。

近くのベンチに座り、密かに持ってきていた携帯ゲーム機を取り出した。

 

「…ん?鐘の音?」

 

ゲーム機に目を落としていた玲は顔を上げる。

微かだが確かにゴーンゴーンと鳴っていた。

その時1か月くらい前に発表された五稜館学園の七不思議を思い出した。

 

 

 

【新訂五稜館学園七不思議その7 鳴らずの鐘】

 

五稜館学園のシンボルとも言える本校舎の鐘楼。

しかしこれまでにこの鐘が鳴ったところを見たものは一人もいないという。

一説によればこれはとある神殿から移設した退魔の鐘であり有事の際この音色によって邪気を祓うと言われている。

 

 

 

七不思議なので本当に退魔のような効果はないと思うがここに転校してきてから鐘が鳴ったことは1度もなかった。

何かあるのだろうかとすぐさまゲームをカバンにしまい立ち上がる。

すると目の前の景色に驚愕した。

 

「なんだよ…これ…」

 

目の前に広がっていたは荒廃した自分たちの住む街だった。

 

 

 

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