世界の狭間で何を思うのか   作:皆のスフィンクス

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第4話「なんかこういうの懐かしいね」

翌朝、あくびをしながら起き上がる。

 

「もう5時か…」

 

先ほどの気になる夢を見てからはよく寝つけず、気が付くと夜が明けて外も明るくなってきていた。

 

「散歩にでも行ってくるかな」

 

玲は手櫛で寝癖を直し、掛けていたタオルケットをたたむ。

 

「にゃー」

「おはよ隊長。隊長も一緒に行くか?」

「にゃう」

 

一鳴きして玲の肩に乗る。

外に出ると少し肌寒かった。

 

「昼はあったかいけど朝はまだ少し冷えるな」

 

ポケットに手を突っ込み、辺りを散策し始める。

 

「この広い学校に誰もいないのはなんか違和感あるな」

 

グラウンドや中庭などいろいろなところを見て歩く。

女神像のところまで来るとちょうど日が昇ってきた。

眼前に広がるのは昨日も見た荒廃した街。

 

妖魔(オブリ)か…」

 

昨日見た謎の黒い生き物、妖魔(オブリ)

先生曰く正体もほぼ解明されていないらしい。

そしてそれに対抗できる五次元感知能力、平行世界を行き来できる力が強い者を集めた〈フィフスフォース〉。

今でも少し信じられないが、実際に妖魔(オブリ)を見たし、それを倒す伊緒も見た。

 

「……とりあえず戻るか」

 

もう誰かが起きて朝食を作っているかもしれない。

そう考えると腹も減ってきた。

玲はそのまま来た道を戻り、宿舎に帰っていった。

 

 

 

 

 

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宿舎の前に来ると風切り音が聞こえてくる。

見てみると椿芽が木刀を振っていた。

軸もブレてなく、きれいな振りである。

 

「ふぅ…」

 

少し見ていると椿芽が素振りを終え、一息つく。

それを見計らって出ていく。

 

「精が出るな」

「あ、玲さん。隊長さんもおはようございます」

 

ペコッと一礼する椿芽。

 

「おはよ。朝練か?」

「はい。そんなところです」

「…ちょっとそれ貸してくれない?」

 

不意に玲は椿芽が持っている木刀を指さして言う。

 

「?どうぞ…」

 

椿芽は玲に木刀を渡す。

 

「ありがと。ちょっと下がってて」

 

椿芽は言われたとおりに少し下がる。

隊長猫も玲の肩から飛び降りて椿芽の横に座る。

 

「すぅ…はぁ…」

 

深呼吸を一度して、木刀を腰に構える。

 

「ふっ…!」

 

木刀を刀を抜くように振るう。

 

「…!!」

 

それによって玲の周りの空気が震えた…ような気がした。

少なくとも椿芽にはそう感じた。

 

「うーん…。ちょっと鈍ってるかな」

「玲さんは剣道か何か習っていたんですか?」

「ん?ああ…まあそんな感じだ。高校に入るときにやめたけどな」

 

少し言葉を濁した様子に椿芽は違和感を感じたが、言いづらいことなのだろうと深く聞くのをやめた。

 

「とりあえず腹減ったから中入ろうぜ」

「あ、はい」

 

とりあえず玲に促されたので宿舎に戻っていった。

 

 

 

 

 

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中に入るとパンの焼けるいい匂いが漂ってきた。

 

「おー、お帰り~!」

 

悠水が制服にエプロンという姿で出迎えてくれる。

 

「もうすぐ朝ご飯できるよ」

 

そう言われたのでロビーに行くとまだ誰もいなかった。

 

「あの二人はまだ朝に弱いのか…」

 

思えば小学生の時は大変だった。

朝起きないせいで何回遅刻しそうになったことか。

 

「まなちゃんと伊緒はまだいいほうです。問題はサトカの方です…」

「澄原か…」

 

あの二人より起きないとはとんだ強者もいたものだ。

 

「…よし美山。澄原は任せた」

「えぇ!?」

 

返事を聞かずに玲は二階へ上がっていく。

 

あの驚き方からすると二人を起こすより骨が折れるんだろうな。

まぁとりあえずまなを先に起こしに行こう。

 

玲はそのまままなの部屋に向かっていく。

親しき仲にも礼儀あり、ということでノックをする。

十中八九寝ているのでもちろん返事はない。

入るぞ、と一言声をかけて扉を開ける。

しかしすぐに閉めた。

決してまなが起きていて着替え中だったり、全裸で寝ていたというわけではない。

きちんと服を着て布団に入っていた。

扉を閉めた理由は他にある。

 

「なんであんなに伊緒の人形があるんだよ…」

 

そう、まなの部屋のいたるところに大小さまざまな伊緒の人形が置いてあったのだ。

しかしあの空間に入らなければまなを起こすことはできない。

数回深呼吸してから、また扉を開けて部屋に入る。

ベッドの近くまで来て、まなを軽くゆする。

 

「起きろ、まな」

 

しかし、これくらいで起きないことは小学生で学んでいる。

とりあえず、アプローチを変えてみよう。

 

「……これだけ伊緒の人形があったら一個くらい貰ってもバレないよな」

「ダメなんだよ!!」

 

勢いよく起き上がるまな。

 

「いくら玲ちんでも伊緒ちん人形は一つもあげられないんだよ!!」

「落ち着け、そんなことくらいわかってるよ。さっきのはお前を起こすための冗談だ」

 

まなを宥め、朝食ができていることを伝える。

 

「じゃ、二度寝するなよ」

「わかってるんだよ!」

 

そのまま、まなの部屋を出る。

 

伊緒の部屋に行く前に少し澄原の部屋見てみるか。

 

少し気になったので澄原の部屋をのぞいてみる。

 

「サトカ、起きて!」

「もう食べられないです…」

「今から朝ご飯なんだけど!?」

 

見てみると美山が澄原の肩をグワングワンと揺らしていた。

しかし全然起きない。

 

……がんばれ美山。

 

そのまま見なかったことにして伊緒の部屋に移動する。

ここでもまなの時と同じように一応ノックはする。

しかし案の定返事はない。

ドアを開け、部屋に入る。

伊緒は学校では容姿端麗、学業優秀、スポーツ万能の完璧超人ではあるが私生活はそうでもない。

どちらかというとダメな部類に入るだろう。

結構ズボラなところがあり、現に部屋には脱ぎっぱなしの衣類がその辺に投げられている。

ちなみに下着もあるが、目の前で着替えられたりしているので別に気にはならない。

……本当だぞ?

 

「起きろ~」

 

まなと同じように最初は軽くゆする。

起きない。

布団をめくる。

少ししかめっ面になったが起きない。

頬をつまんで左右にひっぱる。

少し薄目を開けた。

 

「起きろ伊緒」

「んっ…、今何時…?」

 

ボーっと目をこすりながら起き上がる伊緒。

 

「6時半。朝飯の時間だ。さっさと顔洗ってこい」

「は~い、お母さん…」

「誰がお母さんだ」

 

伊緒の頭を軽くはたく。

 

「バカなこと言ってないで早く降りて来いよ」

「ふぁ~い…」

 

伊緒の部屋を後にして下へ降りていく。

ロビーに戻ると悠水が朝ご飯をテーブルに運んでいた。

 

「手伝うぞ」

「本当に?ありがとー!」

 

悠水を手伝っているとまなが降りてくる。

朝食を運び終えたので席に座って他の3人を待つ。

するとサトカと椿芽が降りてきた。

サトカは半分寝ている感じだったが、朝食の匂いを嗅ぐと目をカッ!と見開いて席に着く。

あとは伊緒だけだがなかなか降りてこない。

 

「あいつ二度寝したな…」

「いつもは眠そうでもちゃんと起きてくるんですけど…」

 

椿芽が申し訳なさそうに言う。

伊緒も俺みたいに眠れなかったんだろうか。

俺はもう一度起こしに行くと言い、みんなには先に食べているように伝えた。

再び伊緒の部屋の前に立ちノックする。

しかし返事がないのでやはり二度寝しているようだ。

ため息を吐きつつ部屋に入る。

部屋では制服に着替えているがそのままベッドで寝ている伊緒がいた。

 

「はぁ~、まったく…」

 

再び揺すったり頬を引っ張ったりして伊緒を起こす。

 

「ん~…あと5分…」

「ベタな寝言言ってないで起きろ!」

 

その後なんとか起こし、ベッドに座らせる。

 

「お前はいつまで経っても朝が弱いな」

「えへへ…ごめんなさい。でもこういうのなんか懐かしいね」

「ん?ああそうだな」

 

こういうのというのは、今俺は伊緒の髪をとかして結っていることである。

小さい頃は伊緒の髪は短かったのでとかすだけだったが。

 

「本当にお母さんみたい」

「誰がお母さんだ。……よし、できたぞ」

「うん、ありがとう」

「早く下行こうぜ。もう腹ペコペコだ」

「ふふ…そうだね」

 

俺たちはそのまま部屋を出て共有スペースに行き、みんなに遅れて朝食を食べ始めた。

 

 

 

 

 

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