艦これーさざんかのようにー   作:アテネガネ

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これまでの『さざんかのように』

一話
吹雪率いる「吹雪哨戒班」は、ある日の哨戒任務で悪い噂の絶えない「ゆうれい」と出くわす。
実際に目撃したのは磯波ただ一人だが、噂が噂だけに酷く困惑し精神的にダメージを受ける。
そんな中、再び哨戒任務を言い渡された吹雪哨戒班は、人員不足を補うため時雨をメンバーに加え出撃する。
そして「ゆうれい」と二度目の邂逅をする哨戒班だったが、同時に戦艦大和とも相見える。
「ゆうれい」とは、そしてこの戦艦大和は何者か、叢雲の苦悶は続く。

二話
事務の冴えない男が吹雪型担当の、艤装検査点検及ビ修理担当係員こと艤検員になっていた。
叢雲はぶち切れるが現実は非情である。
落ち込む叢雲を見て、夕張はなけなしの年上力を発揮し叢雲をたらしこむ。
そこに仮称大和が現れ彼女も叢雲を甘やかす。
さらに大和の計らいで鎮守府をお散歩し叢雲のイメージアップを目論む。
その後色々あって古鷹とお茶した。

三話
駆逐寮ロビーで吹雪、磯波を待つが霞にビンタされる。
ところを変えて工廠第三実験場第三プールへ移動する叢雲であったがプールの底で謎の存在に襲われ仮称大和に助けられる。

四話
助けられた叢雲であったが気絶。夢の中でまた謎の存在と邂逅、目覚めると仮称大和にセクハラされる。医務室で陸奥と雑談に花を咲かせつつ艦娘とは何か?を教えてもらう。

五話
仮称大和に、夢で会った存在が艦娘で自身こそ深海棲艦だと告げられる。でも、多分叢雲は仮称大和が好きなので許した。多分好き。いやきっと間違いない。

六話
叢雲は川内に尿失禁させられて吹雪と磯波は司令官に防衛軍の秘密を軽々しく話されてエライこっちゃ。



7話

 私は壊れているの?

 

 

 ■ ■ ■ 

 

 

 

人型艦艇吹雪型駆逐艦五番艦叢雲ニ指示

 

人型艦艇保護令第〇〇〇號ニ基キ下記ノ通リ示ス

 

人型艦艇大和型一番艦大和ノ艤装ヲ海上ニテ捜索スベシ

 

一、当任務ハ単独デ遂行サレタシ

 

二、当任務ハ秘匿ヲ要スル

 

                 

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 

 おそらく見つからないだろう。

 叢雲の嘘偽りない感想である。

 

 これまで数多くの艦娘が出撃しその海を浚っている。敵艦の索敵や資源を確保するために、血の滲むような努力をしてきた。特に駆逐艦娘は性質上「もの探し」系の任務に就くことが多く、帰還時は目が充血するほどだ。

 

 だから、駆逐艦娘は海上事情にめっぽう強い。それだからこそ委員会が長年にわたり捜索している「遺失物」がそうやすやすと見つかるとは思えない。

 

「つって、やんないわけにもいかないのよねぇ……」

 

 駆逐の噂話は確度が高い、それは自らの目で見てきた生きる情報だからだ。

 そんな駆逐が噂していない物品が出てくるのか? 例え、現在捜索しているこの海域が、普段の哨戒ルートから外れているとしてもだ。

 

「なんか右舷の調子悪いわね」

 

 叢雲の右脚部艤装は、時折“ぶすん”と音を立てている。

 大丈夫か? と思うと同時に、あの元事務員殺してやろうか? と純粋な気持ちがもりもりと湧いてくる。

 最近こんなんばっかだな。叢雲は愚痴るが話相手もいないので虚しいばかりだ。

 

「……」

 

 「仮称大和」は今、叢雲の中で神出鬼没なやばい奴といった認識だ。なんで今出てくんの? といったタイミングでエンカウントする。というかどんな場面でも出てくるので多分ストーキングされている。

 

 とはいえここは太平洋のど真ん中、と言う程航海してはいないが、それでも洋上に変わりはない、のであの大和も気軽に湧いてこない。

 ただ「大和ならあるいは」といった感情も拭えない。

 こうして独り言を重ねていれば、そのうち大和、もしくは大和に類するなにがしか、そう例えば「艤装」とかが出てくるんじゃないか? と叢雲は思っている。

 

 つまり験担ぎだ。

 

「……敵艦見ゆ」

 

 叢雲は正面に、自身の進行方向に対して右へ垂直に航行する敵影を確認した。

 規模は軽巡二、駆逐が三。叢雲の手腕ならば損害軽微から中程度で済む相手だが、現在は索敵任務のため、敵艦は可能な限りやり過ごすつもりでいる。

 痛いのは嫌だ。

 

 姿勢を低くし左へ流れるように移動する。と、そこで敵影を一つ見落としていたことに気がつく。軽巡二隻を先頭とした輪陣形、その中央に護られている塊がある。輸送船だ。

 

 どうしよう。

 叢雲の嘘偽りない感想である。正直言って戦いたくない。

 こんな何もない場所での輸送船団、怪しすぎる。しかしだ、ここで臨検しようにも任務の性質上応援を呼べず、単艦で挑むほかない。負けない自信はあるが、それだけだ。絶対はない。職務に殉ずる覚悟はまああるが、流石にこんな意味不明な任務で死ぬのは困る。

 

 何より隠蔽される。おそらく私が死んでもその事実を公表せず、代わりを用意するだけだろう。駆逐の一隻や二隻、代償にすらならない。

 私の後釜は誰になるだろうか、それはわからない。わからないが、誰かにこんなクソみたいな仕事をさせるなんて、それはよろしくない。

 

(強く先導する誰か、か……)

 

 古鷹は己の在りようを示した。叢雲は少なからず、いや、おおいに心動かされていた。

 

 きっと駆逐はその器じゃない。でもなにもしないのは癪なのだ。

 

(戦闘はしない、ここで死ぬ事に意味はない。後をつける、あの積荷が何なのかその情報を得よう)

 

 遮蔽物のない海洋で後をつけるなど、結局無謀だが、叢雲は「在りよう」という酷く脆い生き方を知り、言い知れぬ興奮に身を包まれていた。

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 

 結論を言えば失敗した。

 

 おいおい、冗談だろう。確かにフラグを立てはしたがあれは故意に立てたのであって、そう、いわば保険だ。

 わざとらしくしちゃえば、地の文だって堅苦しくして……、あのさあ。

 

「何でよ」

「貴女の身柄は我々が預かります、文句は全て文書でどうぞ」

「何でよ」

「ここは譲れません」

「言いたいだけでしょあんた!」

「鎧袖一触よ」

 

 失敗した、とは戦闘して敗北した、とかではない。なんか知らんが横から艦娘の艦隊が現れてしまったのだ。

 戦艦二、空母二、重巡二、……燃費という概念は知らないらしい。とにかく物量と火力でモノを言うぞ、という意思表明を感じる。

 

「そもそも私、艦娘の固有のセリフ無理矢理ブッ込んでくるの嫌いなのよ」

「何か相談? いいけれど」

「良くねえっつってんだけど?」

「貴女、口が悪いのね」

「あんたは頭が悪そうね」

 

 やばい奴に捕まったな、と叢雲は思う。

 こいつは寡黙型殺戮空母、八八艦隊計画の加賀型正規空母一番艦『加賀』だ。叢雲の所見では、この艦隊の旗艦だろうと推理する。

 

(こんな奴が旗艦? やっぱやばい艦隊ね」

「途中から声に出てるけれど)

「途中から黙るな」

 

 私の手法を引き継ぐな、めんどくさい。

 

「面倒なのはお互い様だと思うのだけれど」

「やかましいわ」

 

 意味有りげにやれ右舷の調子がとか、つぶやいてれば大和が、とか言ってたのに全てご破算だ。なんなの?

 

「そもそもなぜ不調をつぶやく必要があったのかしら」

「自分の調子と引き換えに運を手繰り寄せられればなって思ったのよ」

「……あの……いえ、 なんでもないわ」

 

 すごい顔で見られている。

 そんな可哀想なものを見る目で……。

 

「やめなさいよ、興奮するじゃない」

「……興奮?」

「別に自分で艤装ぶっ壊して快楽を得ていたわけじゃないわよ」

「誰も自傷癖を疑っていません」

「痛いのは嫌だけど、締め付けられるのは好きよ」

「聞いてません」

「腕を入れると自動で測ってくれる血圧計とか狂おしいほど好き」

「そう」

「あれに全身を挟まれたい」

「ラバースーツですか?」

「途端に上級者じゃない……」

 

 さすがの私もラバースーツは詳しくない。てかあれ締め付けとかあるのか? あるのか?

 

「なによ、気になってきちゃったじゃない」

「貴女の処遇についてですが」

「え、話を戻すの?」

「所属する鎮守府には戻らず、行動制限管理部門に引き渡します」

「は?」

「ここは各鎮守府等の哨戒ルートから著しく逸れたポイントです。了承区域外での人型艦艇としての行動には厳しい処罰が下されます。よって貴女の身柄は先に述べた通り、我々が引き取り、然るべき審査の後、行動制限管理部門に引渡します」

 

 行動制限管理部門とは、有り体に言うと営倉の様なものであり、また軍属専門の精神科病棟も兼ねている。

 しかも委員会直轄だ。嘘でしょ?

 

「……困るのよ、いくら私の性癖がおおらかだとしても、それを責め立てるのは良くないわ」

「おおらかなのは結構です。しかし行動には責任が付いて回ります」

 

 うーん、困ったぞ。一応理由が有ってこの海域を探索していたのだが……、果たしてそれを言っていいものか。多分駄目だが鎮守府に話を通しちゃ駄目だろうか?

 

「あー……、鎮守府に確認取ってもらってもいいかしら? 行き違いがあったかもしれないのよね」

「貴女の身柄は所属する鎮守府を経由しません」

「いきなり精神科はないんじゃないかしら?」

「精神性に疑問を感じているのではありません。行動を制限したいだけです」

「それなら」

 

 うちの営巣でもいいんじゃ、と言おうとしたが。

 

「締め付けられるのが好みと聞きました」

 

 取りつく島もなかった。

 

 こうして私は、自らの性癖により自身を締め付ける極限プレイによって、身柄を拘束された。

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 逃げ出す術は、なかろうか。

 先程から同じ考えを巡らしている。

 錠を破壊するか鍵を盗むか、どちらが現実的か、実現困難な思考に支配されている。

 最終的に、脱走した後の処遇が焦点となり、諦めるところまでで一巡だ。

 

 まったく……。

 逃げ出す術は、なかろうか。

 

「はい、あーん」

「やかましい」

 

 しばきこきおろすぞクソ尼が。

 

「はあ? 人がせっかく食べさせようってのに、もう知らないっ!」

「ならその手を下ろしなさいよ」

「あーん!」

 

 私の目の前にいるのは存在ステルス型艦こと、陽炎型駆逐艦一番艦『陽炎』である。

 ぶちころがすぞ。

 

「存在感無いのはあんたんとこの長女の方でしょ!」

「吹雪の悪口はもっと言いなさい」

「なんでよ……」

 

 喜ぶからよ。

 

「というか私、存在感についてのキャラ付けしてるつもり無いんだけど?」

「ノベライズ版が無ければ姉妹に食われてたくせに?」

「ぶっ殺すぞ」

 

 まあやめといてやろう。実際ノベライズでは、私も相当世話になったのだ。

 

「あんたがいなかったら、私もここに居なかったわね」

「そうなの?」

「二人で一つの砲を撃ったのはエモかったわね」

「知らないなぁ」

 

 知らないのか。

 面白いのに。

 

「いいからさっさと食べてよ、腕が重いんだけど」

「なら下げればいいじゃない」

「あー、なるほどね! って服が汚れちゃうじゃん!」

「スプーンごと下ろすな」

 

 内緒だが、陽炎のことは結構好きだ。私がこれまでに出会った陽炎は、皆ノリが激しい。ノリノリだ。

 

「突然告白するのやめてよね!」

「気軽に心読むのやめなさいよ」

 

 これまで陽炎には厳しいキャラで通してきたのだ、こんな所で破綻させるわけにはいかない。

 

「ふん、ヘドが出るわね」

「『陽炎』狙い撃ちで嫌いなキャラとか不自然が過ぎない?」

「ふん、……ヘドが出るわね」

「ボキャブラリー」

 

 仕方ないだろう、好きなんだから。悪口も言えない。

 

「自分の知らないところで自分の好感度が上がってるのって……」

「なによ、嫌なの?」

「すっごい気持ちいいわねっ!」

 

 うーん、このキマってる感。凄くいい。

 一家に三人くらい欲しい。

 

「は? 家に三人もあんたがいたら気絶しそう」

「キマってるのはどっちよ!」

 

 やばいな、これは。また話が停滞する。進展させなければ。

 

「くっ……! 早く私を解放しなさい!」

「唐突が過ぎるわ……。あーん」

「……懲りないわね」

 

 懲りない……、懲りないのは、まあいいとして。良くないのは私の現状だ。

 

「なんで私は手足をふん縛られてんの?」

「えっ?」

 

 不思議な顔をされたが、この有様を見てのその表現は、頭腐ってるとしか思えない。

 

「あんたこの、え? この格好見て? 好きでやってる様に見えてたの?」

「……だってそういう申し送りだったし」

 

 加賀この野郎。

 

「『ラバースーツか拘束帯か、好きな方を貴女が選びなさい』って言われたんだけど」

 

 まさかの温情があったらしい。

 さすがにゴムを全身に巻きつけられたら堪らない。

 

「可哀想だけど、拘束帯にしたわ」

「おっとぉ、情けが常軌を逸してる」

「自由を縛るのに、好きなものじゃ意味無いものね」

「誤解が凄い」

「安心して、棺はラバーよ!」

「いっそ殺して!」

 

 締め付けは続く。

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 

「いいか、よく聞けボンクラ共! 今日は欠員多数な吹雪哨戒隊に代わって、この天龍様と愉快な鉄砲玉隊が出撃する。異論がある奴はいるか?!」

「はい、愉快な鉄砲玉という括りに著しい不快感を感じます」

「よし、却下する! 行くぞ鉛玉ぁ!」

「聞いちゃいない」

 

 普段の調子を崩さず号令を掛ける。

 

 天龍は今朝方、『大和が消えた、見つけてこい』と秘書艦様から直々にお言葉を賜っていた。

 消えたじゃねえぞクソボケが、と思ったものの失せちまったら仕方がないので探す事にした。まあ言い方はアレだが、正式な命令のため本当は拒否権など無い。それに他にもお使いを頼まれちまった。

 

「隊長、どの辺を捜索しますか?」

「そうだな、……海?」

「あてがない……!」

 

 仕様がねーだろどさんピンが。わかってたら捜索なんざしねえ。

 

「ああ興奮すんな。目星は付いてるからよ」

「それを教えてって聞いたんですよ?」

「あ? 口答えか?」

「権利の主張です!」

 

 ピーヒャラピーヒャラ喧しいんだよ、パッパラパーが。しばかれたくなかったら返事だけしてろ。

 

「諦めい、天津風。隊長に日本語は難しい」

「は? ことごとく潰すぞ」

 

 俺に逆らうコイツらは……。いや。

 

「死ぬ奴の自己紹介なんていらないか」

「殺す者の地の文こそ不要では?」

「てめえ言うじゃねーかよ」

「叢雲が隊長の扱いを教えてくれたからの」

「やっぱあのクソガキぶちのめすしかねえな」

 

 そういや今日はあいつを見てねーな。サボりか?

 俺に反抗するコイツは駆逐の初春でくそったれだ。

 

「ゴテゴテのロリータファッションとかさせるか?」

「ノリノリのロリータファッションを見る羽目になるのぉ……」

「なんで?」

 

 恥はないのか?

 

「仕方ねえ。……仕方ねえから出発すっぞ、ケツメド雷管野郎ども」

「応、と言うとでも……?」

「探すのは委員会直轄領だ。気合い入れろよ」

 

 え? と聞こえた気がするが、魚でも鳴いたか?

 

「魚が鳴くわけないでしょ!」

「正統派ツッコミ」

 

 もう少しパンチの効いた返しが欲しいな。叢雲を呼べ。

 

「呼んで来るような女だからやめて」

「なんだと? 仲間はずれか?」

「ハズレてるのは隊長の倫理道徳じゃ……?」

「あ? この前の山岳地帯で匍匐前進の旅を回避してやったのは、誰だと思ってんだ?」

「そんな恐ろしい拷問が……?」

「人情派艦娘とは俺のことだぞ」

「ちょっと待ってください? その拷問は一体?」

「全裸匍匐前進富士登山画鋲コース」

「呪文系の拷問……?」

「脳の処理が追いつかない!」

 

 安心しろ、俺もだ。

 

「いつまで遊んでるんだい?」

「どうした便利な女」

「便利な女……?」

 

 こいつは時雨だ。多分どっかで紹介されてると思うから省くぞ。

 

「すまねえ間違えた。どうした時雨」

「次期主人公の僕に、そんな扱いしてもいいのかな?」

「脅しか? そういうのに弱いんだよ俺は。おかし食うか?」

「頂こう」

 

 そうだよ、駆逐は餌付けに屈してればいいんだよ。

 

「不味い」

「薄荷の飴だ」

「この世で最たるまずいもの」

「そんな言う?」

 

 掴みはバッチリみたいだし、そろそろ行くか。

 

「天龍。キミは頭がおかしいのかい?」

「お前も言うじゃねーかよ。だが安心しろ」

「何がだい?」

「……」

「え?」

 

 安心要素なんて特に無かった。口を突いて出ただけの言葉だ、許せよ。

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 さて、委員会直轄領までは難なく来れた。途中深海棲艦が数隊出たが、まあ羽虫みたいなもんだったな。

 

「隊長が一番大怪我じゃないですか」

「それな。片乳まろびでちゃったぞこれ、どうすんだ?」

「知らんが」

 

 なあところで、こいつらがちゃんと自己紹介してないせいで誰が喋ってんのかわかんなくねーか?

 

「おい、俺が名前を言った奴以外二度と喋るなよ」

「自分で必要ないとか言っといてそれはやばいぞ」

「はい号令ぇ」

「それ名前読んでないから喋れないじゃない」

「喋ってんじゃねーか」

 

 つってこれは中隊だから一応全員名前は登場させた筈だ。まず俺。その他は初春、天津風、時雨。うん平気だな。まあこいつらの区別は微妙な口調の違いで感じ取って欲しい。

 

「天龍。そういえば今更聞くけど島風はどうしたんだい? 僕が呼ばれた時に聞くべきだったけど」

「知るかよ、早いやつは嫌いなんだよ俺」

「え、私情?」

 

 天龍中隊は確かに島風が席を置いているが今はいない、営巣にいる。なんか知らんがやらかしたらしい。

 

「あれほど悪いことする時は俺を呼べって言ったのにな。あいつ一人でやるんだもんよ」

「呼べ、とかじゃなくて止めるべきじゃないのかい?」

「本当にヤバいことは止める、そうじゃなきゃ後押しする、バレたら尻尾切りする。そうして生きてきたんだ俺」

「クズじゃないか?」

 

 だから呼ばれなかったのかもな。

 

「上手いこと俺の隊を紹介してくれてサンキューな。さすが便利女」

「怒るよ」

 

 すまんな。

 

「あ、おい無駄話してんなよ。敵いるぞ、ほれ狙え狙え撃ち殺せ」

 

 二時の方向に艦隊が見える。まあ敵だろうから撃っちまうか。

 

「……あ、やっぱお前ら撃つな。俺にやらせろ」

「は? なんでじゃ。撃ちたくてうずうずするんじゃが」

「お前そんなやつだっけ?」

「せっかく魚雷の先端を釘沢山のクラスターに換装してきたのに」

「過激な武装かますな」

 

 そんなヤベーのは没収だ。魚雷を俺のと交換する。……本当に釘塗れじゃねーかよ。

 駆逐はこんなんばっかだな。全く。

 

「まあ控えろよ。俺が撃つって言ってんだぞぶっ殺すぞ」

「片乳出てるのにか?」

「支障はねーよ」

「僕が支えよう」

「片乳を?」

「さわっ」

「その効果音で先端摘むなよ」

 

 びっくりしちゃったろ。変なことすんな。

 

「おらっ」

「うわっ! 僕が目の前にいるのにどうして撃ったんだい?!」

「勝手に射線に割り込んだのはテメーだろ」

「追撃するわ」

「まて天津風」

「おいおい隊長殿。あまりわらわを待たすでないぞ? 我慢が効かんくなるぞ?」

「効かなくなったら何なんだよ。爪先から裂くぞ」

「五等分になってしまうではないか」

 

 全爪先だから二十等分だ。

 

「お、あいつら気づいたみたいだな。よかったマグロでも撃ったのかと思ったよ」

「気づかれる前に攻撃を重ねるべきじゃなかったのかい?」

「まあ見てろって」

 

 艦隊が近づいてくるが、攻撃の意思は見られない。どころか艤装を構えることさえしない。

 まあそりゃそうだ。なんせあいつらは……。

 

「え? あれって……、艦娘じゃない?!」

「あちゃー。俺としたことが間違えちまった!」

「白々しさ凄まじいの」

「言い訳はどうするんだい?」

 

 距離は縮まり、恐らく旗艦であろう『翔鶴』はすでに手の届く位置にいる。

 さて、どうもこうも無い。謝るだけだ。

 

「おう! 済まねえな。ここいらへ出撃してんのは俺らだけのはずだったから撃っちまったよ」

「貴方たちは委員会直轄領を侵犯しています。即刻立ち去ってください」

 

 人の心配をよそに仕事の話か。参ったな。

 

「怪我はねえか?」

「これは正式な命令になります。立ち去ってください」

 

 今のでどうにかなってないか気になるんだが。

 

「例えば腕とか」

 

 もげてくれねえかな。

 

 

 

 

 

 

 




年内に投稿できてよかったです。本当は五話くらいで終わるでしょって思って作ってたんですけどお話を作るって難しいんですね。がんばります。

タイトルが間違ってました。「7話」に修正しました。
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