私はユリエル・セプティム。
タムリエルの皇帝として、60年以上に渡り帝国を統治してきた。
私の治世に帝国は栄え、私の政治に各地の諸侯も元老院も平穏を覚えた。
揺るかやな平和な日々。
しかしそれは一体いつまで続くものなのだろうか?
それは容易く壊れるひび割れた硝子細工のようなもの。
長い年月を掛け、次第に脆くなる平和な世界。
私は知ってしまったのだ。
見よ。
あのおぞましき軍勢を。
見よ。
あの真紅に燃える暗き炎の空を。
闇の到来とともにすべては一変するだろう。
闇の血潮が大地を覆う。
血塗られた、血に飢えた悪魔の軍勢がオブリビオンの彼方から侵攻を開始するだろう。
世界を闊歩するのだ。
世界を蹂躙するのだ。
……彼の軍勢が、全てを真紅に染める日もそう遠くはあるまい……。
誰が阻める?
誰が止める?
誰が……。
風は舞い、運ぶだろう。血の臭いを。
死者の怨嗟が響き渡る。
生者は死者を羨み、生を絶望しやがて死にゆくだろう。全ては終わったのだと。
もはや誰も助からない。
タムリエルに逃げる場所などありはしない。安全な場所もまたないだろう。
死者を羨む気持ちは、理解出来る。
……死してようやく、救われるのだ。
誰も助からない。
誰も救われない。
誰も……。
それを阻める者はただ一人だけ。
全ての運命はただ一人の手に握られる事となるだろう。
……おお、神よ。偉大なる九大神よっ!
運命の者を探し出し、オブリビオンの門を閉ざす使命を運命の者にお与えくださいっ!
「陛下っ! 陛下っ! お休みのところ申し訳ありませんっ!」
「何事か?」
「申し上げますっ! 真紅のローブを着た謎の集団が王宮を襲撃中ですっ! 既に多数入り込んでいるらしく、また王宮近衛兵の中にも内通している
者がいるようで現在王宮内は混乱し危のうございますっ!」
「息子達はどうした?」
「お、皇子殿下は……」
「……死んだか」
「い、いえ伝令は襲われたとしか」
「……」
「レノルト指揮官が親衛隊であるブレイズを召集させ陛下のご命令をお待ちですっ! こ、ここは一時避難が最善かと……」
「……」
私は帝国の皇帝ユリエル・セプティム。
数奇な運命を与えられし者。神々に予知的能力を与えられし者。
私の使命は運命の者を探し出し、オブリビオンの門を閉ざす事だった。しかしそれも叶うまい。
闇が胎動している。
いずれ門が開き、闇の力が噴出すであろう。
だが私にはもう止める術はない。結局、運命を変える事は出来なかった。
私は失敗したのだ。
神々の期待を裏切り、臣民の安全を勝ち得る事が出来なかった。
第三紀の末期。
アカトシュ433年収穫の月である今日この日が、私の人生最後の日となるだろう。